二日目の夜、宿屋で(ベルは個室)エイナは気になっていることを他のメンバーに聞いた。
「私はベル君のアドバイザーを務めている者ですが、みなさんそれぞれベル君の知り合いのようですね。
どの様な知り合いなんでしょうか、またアドバイザーとしてお聞きしたいのですが彼の印象は?」
「18階層へ逃げ込んできたところを私たちが保護しました。ですが水浴びは覗くし、おまけに図々しい。
一言でいうと最低なヒューマンです。」むっとした表情でレフィーヤが言った。
「覗きについては神の悪戯と聞いているが、図々しいかどうかはこの一日で判断できるだろう。
彼は私の恩人の伴侶予定者だ。謙虚で誠実、ヒューマンとしては最高だと思う。」覆面の人。
「あたしの印象はちょっと違うな。まだまだ足りないところが有るがアイツはオスだ。
なんせ初めて会ったのは歓楽街、精力剤を持って一人であたりをキョロキョロしていたね。
その後面白半分に皆で追っかけたんだが逃げられてね、あれは惜しいことしたよ。
それから妹分を取り合い、見事に持っていかれたがね。」アイシャは笑って言った。
レフィーヤはやっぱりドスケベなんだ思い、リューはまた神の悪戯に巻き込まれたのだと思った。
エイナはこの話(男の武勇伝?)を聞いて大いに狼狽えた。
アイシャがエイナを見て言った。「中々楽しかったな、ところであんたの印象も聞いてみたいんだがね。」
その言葉にエイナは少し落ち着きを取り戻して言った。
「夢見がちでお調子者、危なっかしくて見ていてハラハラする存在ですね。実際にはいないけど弟みたいな感じかな。
ただやるときは、ビックリする位の事をやり遂げちゃう所も有るかな。」
アイシャが笑って言った。「確かにそんなところもあるね、中々的確だよ。妹分を連れてったからあたしも姉かね。」
レフィーヤは純朴そうにふるまうこれが奴の手口、アイズさん達もこれに騙されているんだと思った。、
リューは言った。「いろんな見方が有るようだが、私は私の見てきたものを信じる。
もし気になるならこの旅で自分の目で確かめれば良いだろう。」
アイシャはその言葉ににやりと笑った。エイナが言った。「あなたのお名前を教えて戴きたいんですが。」
リューは少し考えて言った。「秘密にしておきたい所だがそれでは不便だろう。仮にリューとでも呼んでくれ。」
「リュー、あの疾風と同じ名前ですね。」とエイナが少し不快そうに言った。レフィーヤは知らない様だった。
「そうだ、私は奴とバトルスタイルが似ていると言われた事が有る。
それに最後には致命傷を負わされ、のたれ死んだはずだ。偽名として使うには丁度いい。」
その言葉にエイナは納得した。「明日もある。そろそろ休んだ方が良いだろう。」
ようやくギルド支部前まで来た。「では3時間後に門の所で。」と言い残してリューは去っていった。
「しかし報告やお金の受け取りに往復最短4日も掛るなんてね。」とエイナ。
「だったらヘルメス運輸を利用してはどうだい。郵便、トラベラーズチェックなんかも扱ってるよ。」
「トラベラーズチェックってなんですか?」とベル。
「リヴィラの町の証文を使ったことは無いかい、あれと似た様なもんだよ。近くの町にはヘルメス支店が有る。
そこで自由にお金に変えられる。手数料は掛るが安全だよ。」とアイシャ。
エイナは支店受付に向かいそして帰ってきた。
レフィーヤとベルに袋を渡して言った。「経費と報酬、事情を話して3か月分先渡しで貰ってきたよ。大切に使ってね。」
エイナは大半、ベルは半分トラベラーズチェックに替えた。レフィーヤは替えなかった。
エイナはベル達にこの町の簡単な地図を渡して言った。「各自必要な物を買ってね、集合時間に遅れないように。」
旅最後の野宿、見張りは初日と同じ、ベル、アイシャ、リューの順。
翌朝、ベルはリューに一声かけて、少し離れた大きな木の下で日課になっている鍛練をしていた。
しばらくしてレフィーヤが起きた。エイナとアイシャはまだ寝ている。杖を持ちベルの様子を見ようとするも不在。
リュー(仮)さんによると近くの木にいるととの事。そっと覗くと鍛練中、強さの秘密を暴くチャンス。
こっそり近ずく、視線に敏感なベルだが森の中の森の妖精、気づくことは出来なかった。
大きく回って木に上った。ちょうどベルは、小休止とばかりに膝に手を置き腰をかがめ地面を向いて呼吸を整えてた。
レフィーヤは何をしているか確かめるべく、ベルの真上の枝に移動した。