ISアドベンチャー 聖騎士伝説   作:イナビカリ

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平成最後の更新です

これからも頑張っていきます!!!



第094話:変わらない本質

 

 

「終わりました。」

 

 試合を圧勝した鈴が地上に降りると【メギド・ドラグーン】は元の【メガロ・ドラグナー】に戻った

 そして、鈴はそのままISを解除した

 

千冬

「ご苦労だったな。それでどうだった?向こうのアイツ等は?」

 

「つまらないですね。」

 

千冬(平行)&束(平行)&真耶(平行)

「!?」

 

 千冬の質問に鈴はたった一言で答えた

 だが、そんな鈴の答えに平行世界の面々が反応した

 

千冬(平行)

「つまらないとはどういう意味だ!!」

 

「そのままの意味です。弱すぎますよアイツ等。アレで本当に専用機を与えられた代表候補生なんですか?真面目に訓練してるか怪しいくらいですよ?」

 

千冬(平行)

「グッ!?」

 

「特に箒(平行)が駄目ですね。折角の専用機もあれじゃ宝の持ち腐れにしかなりませんよ。馬鹿の一つ覚えみたいに正面から突っ込む事しかしないし、博士もその事を忠告したのに全く聞いてないじゃないですか。アレで『つまらない』以外の言い方があるんですか?あっても『弱い』の一言しかありませんよ?」

 

千冬(平行)

「ウグッ!?」

 

 鈴のダメ出しに千冬(平行)は言葉を詰まらせた

 

「ただ…一夏(平行)だけはこっちの一夏よりかはマシって言うレベルでしたね。あくまでマシって言う程度ですけど。」

 

千冬(平行)

「…その言い方だとそっちの一夏は相当酷いと聞こえるが?」

 

「酷いですよ。この世界の一夏(平行)の様に【白式】は二次移行(セカンドシフト)もしてませんし、二次移行(セカンドシフト)どころか一学期が終わってる今の時点で瞬時加速(イグニッション・ブースト)すら使えない『口先だけの雑魚』です。これまで『問題行動』を散々起こした上に期末テストも赤点だらけだったから夏休みの殆どが補習で潰されてます。」

 

千冬(平行)

「問題行動?」

 

「はい、この臨海学校でもしてますよ。【福音】の暴走事件から始まって勝手な事ばかりした挙句最後は【ルーチェモン】にボコボコにされて【白式】がぶっ壊されました。今は修理も兼ねて千冬さんに没収されましたよ。」

 

 そのまま鈴は向こうの一夏のIS学園における経歴を簡単に話した

 

千冬(平行)

「…【白式】が…専用機が没収されるとは…確かに酷いとしか言えんな…………それなら、鈴…お前はそっちの一夏の事を…」

 

「あんな男の事なんてもう何とも思ってません。アイツの『顔』と『よく回る口』に騙されましたよ。アイツとの出会いも今となっては記憶から消去したい『黒歴史』です。アイツが初恋の相手だなんて私にとって『恥』でしかありません。過去に戻れるなら全力で阻止しますよ!!」

 

千冬(平行)

「…顔と口だけって…随分な言い方だがお前にそこまで言わせるのか…そっちの一夏は…」

 

「ええ、ココだけの話ですけどこっちのアイツ等見てると気持ち悪くて吐き気がします!!」

 

千冬(平行)

「吐き気って…それほどまでお前に嫌われているのか…」

 

「当り前じゃないですか。今の私がどんな気分かそっちの千冬さん(平行)に分かります?目の前で一切の興味を無くした男に言い寄る自分や仲間達がいるんですよ?吐き気位して当然でしょ?」

 

千冬

「………そう…かもな…」

 

 鈴の話を聞いてその余りの酷さに千冬(平行)は頭を抱えた

 この平行世界の鈴が一夏(平行)に好意を持っている事は千冬(平行)もよく知っていた

 その鈴が違う世界とは言えここまで正反対の態度を取るとは思ってもみなかったからだ

 それと同時に鈴の言った『こっちの一夏(平行)の方がマシ』と言う意味も理解出来た

 だが、弟の鈍感ぶりを考えるとこちらの一夏(平行)が向こうの一夏の様にならないとも限らないのでそう思うと冷や汗が出て来るのだった

 そして、吐き気がすると言う鈴の言い分もココまで一夏を嫌っていれば仕方のない反応だと思うのだった

 そんな話をしていると…

 

箒(平行)

「鈴!!!」

 

「ん?」

 

 海に叩き落とされた一夏達が全身ずぶ濡れになって戻って来た

 その中で箒(平行)は岸に上がると同時に鈴に喰ってかかって来た

 

「何?」

 

箒(平行)

「卑怯者!!!」

 

「…は?」

 

 すると開口一番鈴を卑怯者呼ばわりして来た

 

「卑怯って何が?」

 

箒(平行)

「何がだと!?あんなけったいな力を使っていただろうが!!!」

 

 その理由は【エヴォリューションプログラム】を使った事だった

 しかし、箒(平行)のこの台詞は…

 

「…アンタさ?『ブーメラン』って言葉知ってる?その台詞、アンタにも返って来るのよ?」

 

 箒(平行)に返って来るのだ

 だが…

 

箒(平行)

「私の何処が卑怯なんだ!!」

 

 やはり箒(平行)は分かっていなかった

 

「ハァ…あのさ~?けったいな力って言うけどアレは単一仕様(ワンオフ・アビリティー)よ?私は単一仕様(ワンオフ・アビリティー)を使っただけなの。単一仕様(ワンオフ・アビリティー)を使うのが卑怯だって言うならアンタも使ったわよね?それにそっちの一夏(平行)も【零落白夜】って言う単一仕様(ワンオフ・アビリティー)を使ってたわよね?」

 

箒(平行)

「!?」

 

 ココまで言われて漸く箒(平行)は鈴の言った『ブーメラン』の意味を理解した

 

「アンタは今、自分で自分の事を卑怯者って言ったのよ。それとも自分が使うのはよくて相手が使うのは駄目なの?そう言う奴こそ『卑怯者』って言うんじゃないの?」

 

箒(平行)

「ウッ…グッ…ウウウッ…」

 

「そんな風に自分の気に入らない事に難癖ばかり付けて、我儘ばかり言うからこっちの箒は【ルーチェモン】から『世界一の【傲慢】』なんて言われて憑りつかれたのよ。アンタもこっちの箒と一緒じゃない。それとも『世界一の【傲慢】』の称号が欲しいの?私は『世界一の【憤怒】』なんて称号欲しいとは思わないけどね?」

 

箒(平行)

「!?…ウウウウウゥゥゥゥゥッ…」

 

 その結果、箒(平行)は何も言えなくなってしまった

 そんな箒(平行)を誰も擁護しなかった

 箒(平行)の言った事は自分が負けたことを認められずにいちゃもんを付けているだけでしか無いからだ

 尤も、束(平行)だけは擁護しようとしているみたいだが千冬(平行)に睨まれ何も言えなかった

 その時…

 

一夏(平行)

「俺と戦え!!!」

 

「今度は何?」

 

 聞こえて来た声の方を全員が向くと、そこには太一に絡んでいる一夏(平行)の姿があった

 

太一

「…こっちの織斑先生が言っただろ?俺と戦いたかった先ずはこっちの鈴に勝てと。負けたお前に俺への挑戦権は無い。」

 

 だが、太一は千冬が試合前に出した条件をクリア出来なかったと言う理由で断った

 すると…

 

一夏(平行)

「さ、さっきのは6人がかりだから手を抜いただけだ!!」

 

全員

「…は?」

 

 鈴に負けたのは自分が手加減したからだと言い出した

 一夏(平行)も箒(平行)と同じようにいちゃもんを付けて来たのだ

 その為、一夏(平行)のこの言い訳に太一だけでなく鈴や千冬達も間の抜けた声を上げた

 

太一

「お前…今の本気で言ったのか?」

 

一夏(平行)

「当り前だ!!()()()()()()()()()()()()!!」

 

「!?」

 

 あくまで自分は本気を出していないと言い張る一夏(平行)の台詞を聞いた瞬間…

 

 パンッ!

 

一夏(平行)

「…え?」

 

 いつの間にか鈴が一夏(平行)の前に来ており一夏(平行)の頬を引っぱたいた

 叩かれた一夏(平行)はそのまま尻餅をつき、頬を抑えながら…

 

一夏(平行)

「何しやが…え?」

 

「………」

 

一夏(平行)

「り、鈴?」

 

 怒鳴り声を上げようとした

 だが、鈴の表情を見て続く言葉が出なかった

 鈴の一夏(平行)を見る眼はまるで汚物を見るような軽蔑した眼を向けていたからだった

 始めて見るそんな鈴の眼に一夏(平行)は言葉を詰まらせた

 

「アンタ…やっぱり最低な男ね?こっちの一夏よりかはマシだと思っていたけど違ったわ。世界は変わっても『織斑一夏』って言う男は『最低なクズ』だったみたいね…」

 

一夏(平行)

「な、な、な、何だよ行き成り!?俺が最低なクズだと!?何でそこまで言われないといけないんだよ!?」

 

 やはりこっちの一夏(平行)も自分が何を言ったのかを理解していなかった

 

「そこも同じか…自分が何を言ったのか分かって無い所も一緒みたいね?」

 

一夏(平行)

「どう言う意味だ!!」

 

「フン!!だったら教えてやるわよ!!アンタ6人がかりで私に挑んだから手加減したって言うけどね…負けた時点でそんなもの『ただの醜い言い訳』にしかならないのよ!!!」

 

一夏(平行)

「!?」

 

「それに女には本気になれない?随分とくだらない言い訳ね?言い訳なんてしないで正直に言ったらどうなの?」

 

一夏(平行)

「正直にって…何の事だよ…」

 

「何?言いたくないの?ならアンタの本心を当ててやるわよ。アンタは女の私1人に束になって負けたから男の太一で『()()()()()』がしたいだけでしょ!!」

 

全員(平行)

「…え?」

 

一夏(平行)

「!?…ち、違う!!俺はウサ晴らしなんて…」

 

「違わないわよ!アンタがやろうとしたのはウサ晴らしよ!!八つ当たりよ!!ちっぽけなプライドに縋りつく『小者』のやる事よ!!!」

 

一夏(平行)

「こ、小者!?…俺が…小者…」

 

「そうよ!アンタはね?いつもそれらしい言い方をするから皆騙されるけど要するに女を見下して言い訳に利用してるだけよ!そんな男が小者じゃ無かったらなんて言うのよ!!クズ以外にどんな呼び方があるのよ!!!」

 

一夏(平行)

「!?…お、俺は…そんな…事…」

 

鈴(平行)

「ちょ、ちょっとアンタ!!いくら何でも『幼馴染』に対して言い過ぎよ!!」

 

 すると、言い負かされている一夏(平行)に鈴(平行)が口出しをしてきた

 だが、鈴(平行)はこちらの鈴にとって今や『禁句』となっている言葉を言ってしまった

 

「…幼馴染?誰と誰が?」

 

 そう、平行世界の面々はこちらの鈴と一夏の関係がどうなっているのかを知らなかった

 

鈴(平行)

「え?だ、誰って…私と一夏(平行)…だけど…」

 

「…悪いけどさ…私と織斑一夏が幼馴染って言うのは止めてくれる…()()()()()()()!!!」

 

全員(平行)

「えっ!?」

 

 幼馴染と言われた事が切っ掛けとなって鈴の怒りが爆発してしまった

 

「言ったでしょ!私はその男に何の興味も無いって!!私はもう織斑一夏を幼馴染なんて思って無いのよ!!!その男は幼馴染どころか友達でも何でもない『赤の他人』よ!!!」

 

一夏(平行)

「…あ、赤の…他人…」

 

全員(平行)

「………」

 

 一夏(平行)を赤の他人と言い放つ鈴の眼は一夏を嫌悪する眼だった

 平行世界の鈴達女性陣は試合前にこちらの鈴が織斑一夏を嫌っているという事は知っていたが、まさかここまで嫌っているとは思ってもみなかった

 

「そうよ!向こうの一夏は再会した私をずっと怒らせ続けていたのよ!!こっちがどんなに言ってもアイツは反省もしなければ私が怒る理由を考えもしなかった!!自分が悪いって言う考えを一切しなかったのよ!!しまいには勝手に怒る私の方が悪いって言い出す始末よ!!!」

 

鈴(平行)

「…怒り…」

 

「………そっちの私も程度は違っても同じような事があったみたいね?」

 

鈴(平行)

「!?」

 

 鈴は話を聞いている平行世界の自分を見て、こっちでも同じような事があったのだと察しがついた

 実際はその通りで、この平行世界でも一夏(平行)は度々鈴(平行)を怒らせていた

 だが、こちらの鈴と違って何故かこの世界の鈴(平行)は一夏(平行)に愛想をつかしてはいなかった

 

「まあいいわ…それでアイツが私を怒らせ続けた結果どうなったと思う?」

 

一夏(平行)

「え?」

 

「最初に教えたわよね?私には【憤怒の魔王】が眠ってったって。」

 

一夏(平行)

「…ま、まさか…」

 

「そうよ!!私の中に眠っていた【憤怒の魔王デーモン】を復活させたのよ!!他の誰でも無い…織斑一夏がやったのよ!!!」

 

一夏(平行)

「お、俺が…魔王を復活させた!?…そ、そんな…」

 

「しかも向こうのアンタはね、自分が【デーモン】を復活させたって言う自覚がなかったのよ!!【デーモン】自身がアンタのお陰で復活出来たってお礼まで言ったのにその事を記憶から消去して復活の原因を全部私のせいにしたのよ!!」

 

一夏(平行)

「お、俺がそんな事を!?」

 

「そうよ!!太一に助けられた私にアイツは『俺が知る訳無い!お前が吠えたらああなった!』そう言ったのよ!!しかも助けてくれた太一に悪態まで吐く始末よ!!」

 

一夏(平行)

「そ、そんな事を…」

 

「その時に私は織斑一夏って言う人間の底が見えた…何一つ反省しないで…自分の気に入らない結果は全部他人のせいにするアイツに…愛想が尽きたのよ!!そのお陰で怒りも冷めたけど…アンタと幼馴染って言われるとね…冷めた怒りが込み上げてくるのよ!!!」

 

一夏(平行)

「あ…ああ…」

 

 鈴の話を聞き終わると一夏(平行)は酷く狼狽していた

 一方で鈴は怒りを爆発させた事で落ち着き始めていた

 

「…それで最初の話に戻すけど…今さっきアンタが太一に言った事とこっちの一夏のやった事の何処に違いがあるの?自分の気に入らない結果に難癖つけただけよね?」

 

一夏

「うっ…うううっ…」

 

 自分を軽蔑する目を向けられ、何も言い返せない一夏(平行)はその場で蹲った

 それを見て…

 

「…ちっぽけな男…」

 

一夏(平行)

「!?」

 

 最後にそう吐き捨てて太一の所に戻った

 

一夏(平行)

「うっ…ううう…うあああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

 鈴の最後の台詞を聞いた瞬間、一夏(平行)は叫び声を上げた

 その姿は自ら墓穴を掘った男の惨めな姿だった

 

一夏(平行)

「…俺は…俺はあああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!(何であんな事言っちまったんだ!?)」

 

 そして、自分の口にした言葉を後悔するのだが全ては遅かった

 一夏(平行)は自らの器量の狭さを全員の前で暴露してしまったのだ

 

専用機持ち(平行)

「………」

 

 そんな一夏(平行)に5人はどう声を掛ければいいのか分からずにいた

 今のは鈴の言い過ぎな所は確かにあったが明らかに一夏(平行)が自分で招いた自業自得の結果だった

 その為、千冬(平行)は鈴に対して何も言うつもりは無く、寧ろ暴れそうにしている束(平行)を押さえつけていた

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 一方、鈴の方はと言うと…

 

 コツン!

 

「たっ!?」

 

 戻って来たところを千冬に軽く小突かれた

 

千冬

「言い過ぎだ!!」

 

「でも!!」

 

千冬

「お前の気持ちも分かる!だが私達は余所者という事を忘れるな!!」

 

「…はい…」

 

 と、説教をしたのだが…

 

 コツン!

 

太一

「お前が言えるのか?」

 

千冬

「ウグッ!?…そう、だったな…」

 

 同じように太一に小突かれて千冬は言葉を詰まらせた

 千冬も平行世界の自分に同じような事をしたのでこれ以上強くは言えなかった

 

「まさか…千冬さんも?もしかしてさっき離れたのって…」

 

千冬

「…スマン…実は私も同罪だ…どうしても我慢出来なくてな…」

 

「…ですよね…」

 

 謝る千冬に鈴もそう答えるだけだった

 平行世界の同一人物に会ってしまえば気にかけてしまうのは仕方の無い事だった

 その為、太一も千冬に強くは言わなかったし、千冬も鈴にあまり厳しく言えなかったのだ

 そんなやり取りをしている時…

 

太一

「………ムッ!!」

 

 太一が何かに気付いた

 

太一

「アグモン!!!」

 

 すると、太一は【デジヴァイス】を取り出すとアグモンを外に出した

 太一のただ事ではない雰囲気に千冬達も身構えた

 一方で平行世界の面々はそんな太一達の状況がよく分からず首を傾げるだけだった

 その時…

 

『ジジジジ…』

 

千冬

「!?…あの声は!?」

 

「まさか!?」

 

 何処からともなく謎の声が聞こえて来た

 その声に千冬や束達は聞き覚えがあった

 そして、次の瞬間…

 

 ブンッ!

 

全員

「!?」

 

 全員の根の前に一つ目の異形の生物が突然現れた

 それは…

 

太一

「出て来たか…【()()()()()()】!!!」

 

 太一達を平行世界に飛ばしたデジモン…【パラレルモン】がその姿を現したのだった…

 

 




 <予告>

 太一達を平行世界に飛ばしたデジモン・パラレルモンが再び現れた

 だが、現れたのはパラレルモンだけでは無かった

 パラレルモンと共に現れたもう一体のデジモンとは?



 次回!!

 ISアドベンチャー 聖騎士伝説

 出現!2体の突然変異(ミュータント)型デジモン!!

 今、冒険が進化する!


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