ISアドベンチャー 聖騎士伝説   作:イナビカリ

7 / 133
第003話:ファーストコンタクト!篠ノ之束!

 

 ココはとある島…地図にも載っていない無人島…なのだが…

 現在この島では5人の女性が暮らしていた

 

「あ~~~暇だな~…」

 

 機械のウサ耳とエプロンドレスを着た女性が愚痴っていた

 彼女の名前は【篠ノ之束】…ISの生みの親であり、自ら天災科学者を名乗っている変人である

 

「何か面白い事無いかな~…いっその事起こしちゃおうかな?」

 

 などと物騒な事を考えていると…

 

?2

「束様!島の上空で空間の歪みが発生しています!」

 

「何ですと!?」

 

 突然入って来た銀髪の少女は束の助手、クロエ・クロニクルだった

 

?3

「クロエ!それホントなの!?」

 

 クロエの言葉に、長身で金髪の女性が聞き返してきた

 彼女はスコール・ミューゼル…かつて【亡国機業(ファントム・タスク)】と呼ばれる組織の幹部だった

 

クロエ

「はい!」

 

「とにかく外に出てみよう!!」

 

 3人が外に出ると先にロングヘアの女性と黒髪の少女が空を見上げていた

 ロングヘアの女性はオータム、黒髪の少女はマドカ、二人共スコールと同じ【亡国機業(ファントム・タスク)】に属していた

 束達も二人の見ている方を見るとそこには空に黒い穴が開いていた

 

「…アレが空間の歪み…」

 

オータム

「まるで穴みたいだな?」

 

マドカ

「何か落ちてきたりするのか?」

 

スコール

「そんなまさか…って!?」

 

「ホントに何か落ちて来たよ!って人間!?」

 

 落ちて来たのはモチロン【イグドラシル】に送り出された太一であった

 

「危ない!!」

 

 束は胸元からリモコンを取り出すと侵入者撃退用に用意していた仕掛けを動かした

 地面から巨大なネットが現れ、落ちてきた太一を受け止めた

 束達は太一をネットから降ろすと彼を囲む様に見ていた

 

「…見たところ男の子の様だね?」

 

クロエ

「その様です。………アレ?」

 

スコール

「どうしたの?」

 

クロエ

「この子の持っているこれって………」

 

「…これ…もしかして…」

 

 束が【デジヴァイス】を手に取ろうとした時…

 

 カッ!

 

 【デジヴァイス】が輝きだした

 

「わっ!?」

 

アグモン

「…ココは…着いたのかな太一?…太一?」

 

 光が収まるとそこにいたのは【デジヴァイス】から出て来たアグモンだった

 

「な、何この生き物!?」

 

クロエ

「黄色いトカゲ!?」

 

マドカ

「しかも、しゃ、喋った!?」

 

 束達はアグモンを見て狼狽えていたが、肝心のアグモンはそれに気付かず、未だに意識を取り戻さない太一に呼びかけていた

 

アグモン

「起きてよ太一!太一~!」

 

オータム

「…太一?…コイツの名前か?」

 

アグモン

「太一~!折角生き返ったんだから起きてよ~!」

 

束達

「は?」

 

スコール

「今、生き返ったって言わなかった?」

 

オータム

「言ったな。」

 

 そして漸く太一が目を覚ました

 

太一

「…うっ…ココは…!?…アグモン!?」

 

アグモン

「太一!よかった目を覚ましたんだね!」

 

太一

「…アグモン…また…会えたんだな…」

 

アグモン

「うん!…また会えたんだよ太一!」

 

太一

「アグモン!」

 

アグモン

「太一!」

 

「あの~~~…お取込み中悪いんだけど…」

 

太一&アグモン

「…誰(だ)?」

 

「それはこっちが聞きたいんだけど…君達は何者なの?」

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 太一達は取り合えず互いに自己紹介をする事にした

 

太一

「…俺の名前は八神太一。人間だ。」

 

アグモン

「僕はアグモン。デジモンだよ。ヨロシク!」

 

「私は篠ノ之束。天災科学者の篠ノ之束さんだよ~♪」

 

クロエ

「束様の助手を務めておりますクロエ・クロニクルと言います。」

 

スコール

「スコール・ミューゼルよ。訳あって束の所で世話になってるわ。」

 

オータム

「俺はオータムだ。」

 

マドカ

「…マドカ…」

 

 互いに名乗ると太一は自分達が何処から来たのか、デジモンの事、この世界に来た目的を話した

 太一の話を聞いた束達は当然驚いていた

 

「別の世界からやって来たあああぁぁぁ―――っ!!」

 

クロエ

「デジモン…ですか…」

 

スコール

「貴方が95歳で死んだお爺ちゃんって言われてもね…」

 

オータム

「生き返って若返るとかそんな事があるのか?」

 

マドカ

「だがこの男が現れた時の事を考えれば嘘とも思えないが?」

 

 太一の現れ方からマドカは嘘ではないと判断した

 そして、束達もマドカの言う事に頷いた

 

スコール

「それにしても【七大魔王】の侵略ね~…」

 

 次に束達が気になったのは太一がこの世界に来た目的だった

 

オータム

「…なあスコール…もしかして…」

 

スコール

「多分そうね…【亡国機業(ファントム・タスク)】を壊滅させたのはそいつらの仕業ね。」

 

太一

「心当たりがあるのか!?」

 

スコール

「ええ、私とオータム、マドカの3人は【亡国機業(ファントム・タスク)】って言う組織に所属していたんだけど、少し前に謎の襲撃を受けて壊滅させられたのよ。」

 

オータム

「その時、本部を襲ってきた奴らはISにしては変わった姿をしているとは思ったんだが…」

 

太一

「そいつらを見たのか!?」

 

オータム

「あ、ああ…と言っても遠目でだけどな。」

 

太一

「ならこの中にいないか?」

 

 太一は【デジヴァイス】を起動させオータムに【七大魔王】のデータを見せた

 

オータム

「え?…コイツ等が【七大魔王】か?…え~っと………あ!コイツと…コイツだ!!間違いない!この2体だ!!」

 

 オータムが指したのは悪魔の様な姿をしたデジモンと長い顎鬚を生やし杖を持った老人の様なデジモンだった

 

太一

「…【デーモン】…【バルバモン】…【憤怒】と【強欲】か…」

 

マドカ

「【憤怒】?【強欲】?何の事だ?」

 

太一

「【七大魔王】が司っているものだ。【七つの大罪】って言葉を知っているか?」

 

スコール

「それなら聞いた事があるわ。確か人間の持つ七つの罪の事よね?」

 

太一

「そうだ。【憤怒】【暴食】【色欲】【傲慢】【強欲】【嫉妬】【怠惰】この七つだ。」

 

オータム

「その罪をこの魔王達は象徴にしてるって事か?」

 

太一

「ああ、その【亡国機業(ファントム・タスク)】って言う組織を潰したのは【憤怒のデーモン】【強欲のバルバモン】の2体だ。」

 

「その魔王達は何が目的なの?まあ【亡国機業(ファントム・タスク)】を潰してくれたのはありがたいけどさ。」

 

スコール

「束…元とはいえ【亡国機業(ファントム・タスク)】の人間の前で言わないでよ…」

 

「別にいいじゃん。もう無いんだから。それで?」

 

太一

「奴らの目的はこの世界を永遠の闇に包み込む事だ。」

 

マドカ

「何故そいつ等はこの世界に来たんだ?自分達が元いた世界ですればいい事だろ?」

 

太一

「さあな?…奴等は俺のいた世界とも違う世界から来たから元の世界がどうなっているのかは俺も知らない。ただ、奴らがこの世界を選んだのはココが奴等にとって侵略しやすい世界だからだろうな。」

 

マドカ

「侵略しやすいだと!?」

 

太一

「…俺達はこの世界に来たばかりだから詳しくは知らないが、俺達をここに送り込んだ【イグドラシル】が言うにはこの世界は女尊男卑とか言う思想で腐敗の一途を辿りこのままでは滅びるのも時間の問題だと言っていたな。そんな世界だから【七大魔王】達に目をつけられたんだ。何時滅んでもおかしくないからな。」

 

束達

「!?」

 

太一

「こんな世界だから俺が選ばれたんだ。相手がデジモンだけなら【イグドラシル】の世界の子供達でも何とかなるかもしれない。けど、相手が人間、それもそんな腐った思想を持った危険な人間が大勢いる世界に若い子供達は危険だからな。そうじゃなきゃ、違う世界の、それも老衰で死んだ俺をわざわざ生き返らせた上に若返らせてまでココに送ったりしない。」

 

束達

「………」

 

太一

「…ISって言ったか…あの欠陥品の名前?アレが原因でこの世界は腐っていく一方らしいな。…誰が造ったのかは知らないが下らない物を作ったもんだ。」

 

「!?…けっ欠陥品!!下らないだと!!」

 

太一

「そうだろ?女しか使えないなんて欠陥以外の何だっていうんだ?男女関係なく使えていればこんな腐った世界にならずに済んだ筈だろ?」

 

「………り…せ!」

 

太一

「ん?」

 

「…取り消せ…今言った言葉…取り消せ!!!」

 

太一

「何をだ?」

 

「ISを欠陥品って、下らないって言った言葉!…今すぐ取り消せ!!」

 

太一

「何故アンタが怒るんだ?」

 

 束は太一に対して殺気と怒気を出して睨みつける

 篠ノ之束は見かけはこれでも人外と言ってもいい人間だが、束の出す殺気では太一は全く怯まなかった

 それもその筈、太一は中身は95歳の老人であり7歳の頃からデジモンに関わってきた為、束や【亡国機業(ファントム・タスク)】のスコール達とは比べ物にならない程の修羅場をくぐって来たのだ

 そこに人生経験も加算されているのでこの程度はどこ吹く風と言う感覚なのだ

 

クロエ

「…ISを造ったのは束様です…」

 

太一

「え?…アンタが造ったのか?なら怒ってもしょうがないか…けど俺は取り消さないぞ。」

 

「何!?」

 

太一

「あんな欠陥兵器が出て来たばかりにこの世界は滅びに向かってるんだ。取り消すつもりなんて無いな。」

 

「兵器だと!?ISは兵器じゃない!!そんな事の為に造ったんじゃない!!宇宙に行く為に造ったんだ!!」

 

太一

「宇宙に行く、ね…なら聞くが今世界の何処かでISを宇宙開発の為に研究してる国や組織が一つでもあるのか?」

 

「そ、それは…」

 

太一

「無いんだろ?アンタ自身も含めて。」

 

「!?」

 

太一

「アンタ自身が研究しているなら自分がしていると答える筈だ。だがアンタは答えなかった。それはつまりやっていないって事だ。それでよくISは宇宙に行く為の物なんて言えたな?」

 

「ぐっ…ううっ…」

 

太一

「欠陥を残したまま世に出てしまったのか、あえて出したのかは知らん。だがアンタは欠点を直そうともしなければ本来の目的の為の研究もしていない。それで俺の言葉を取り消せなんてよく言えるな。」

 

「………」

 

太一

「アンタがIS本来の目的を忘れたのか、それとも諦めたのかは知らない。だが、今ここでアンタが何を叫ぼうとその言葉に俺は何も感じない。言葉に何の重みも無いからな。」

 

「…言葉の重み…」

 

太一

「そうだ。…もしアンタが研究を続けていて、宇宙に行く為と言えば俺は言葉を取り消した。世界は腐って行ってもアンタだけは本来の目的を目指してるんだからな。その覚悟が言葉にも込められる。」

 

「………」

 

太一

「思いの込められていない言葉では誰も動かない。何も伝わらない。ただ自分が惨めになっていくだけだ。」

 

「………私だって…」

 

太一

「ん?」

 

「…私だって…思いを込めて叫んだんだ!!…ISを造って…発表会で宇宙に行きたいって皆に叫んだんだ!!…でも…誰も聞いてくれなかった!!馬鹿にされるだけだったんだ!!!」

 

太一

「………」

 

「だから思い知らせてやったんだ!!…ISの優秀さを世界に知らしめる為に【白騎士事件】を起こしたんだ!!」

 

太一

「【白騎士事件】?」

 

スコール

「…10年前に起こった事件よ。当時世界中の軍事基地から日本に向かって2000発以上のミサイルが発射されたの。」

 

オータム

「それをISを纏った一人の女がミサイルを全て撃墜して日本を守ったんだ。」

 

マドカ

「その時、現れたISが全身が白く、剣を持っていた事から【白騎士】と呼ばれた。それから、その事件を【白騎士事件】と言う様になったんだ。」

 

太一

「なるほど…その事件がきっかけでISが世界中に知れ渡った訳か。」

 

クロエ

「…はい…」

 

太一

「…やはりISは兵器だな。宇宙に行く為の夢のパワードスーツじゃ無い。」

 

「!?」

 

太一

「俺が事前に聞いた話だとアンタの作ったISの登場で調子に乗った女共の中にはただ気に食わない、男だからと言う理由だけで赤ん坊でさえ平気で殺す奴もいるそうだな?」

 

スコール

「そ、それは…」

 

太一

「正直その話を聞いた時は自分の耳を疑ったよ。同じ人間としてそこまで腐った人間がいるなんて思いたくなかったからな。」

 

「………」

 

 太一の言葉に誰も言い返す事が出来なかった

 太一が言っている事は全て事実であり、腐ったと言われればその通りだからだ

 

太一

「所でアンタ発表会でISを紹介したって言ったけど何回やったんだ?」

 

「え?…1回だけだよ…」

 

太一

「バカかお前?」

 

「何!?」

 

太一

「たった1回叫んだだけで人の心が動くと思ってるのか?どんなに優れた発明でも最初は誰にも受け入れられないものなんだ!!それは歴史が証明している!飛行機に最初から皆が乗ったのか?皆が自分の家に電話を置いてくれたのか?皆が初めから電気を使って生活してくれたのか?」

 

「それは…」

 

太一

「最初は与太話、法螺話と言われる物なんだ!それでも今この時にそれらが生活の一部になるほど浸透しているのは何故だと思う!」

 

「………」

 

太一

「諦めなかったからだ!周りに何を言われようと決して諦めずに叫び続けたんだ!!それが一人、また一人と理解者を増やしていったんだ!!時にはそう言った理解者が先人達の夢を引き継いでくれもしたんだ!それらの積み重ねがあるから今も彼らの発明は万人に受け入れられているんだ!偉大な人間として歴史に名前が刻まれているんだ!!!」

 

「…諦めない…」

 

太一

「そうだ!アンタと先人達の一番の違いだ!!アンタはたった1回で諦めた!!10回、20回と諦める事無く叫び続ければ少しづつではあっても理解してくれる者達も現れたはずだ!!」

 

「………」

 

太一

「だがアンタは自分でそれらの可能性を潰した!たった1回受け入れられなかっただけで安易な方法を選び自分の夢を自分で潰し、自分の夢を込めたISを兵器と言う最低な物に貶めたんだ!!」

 

「あ…ああ…」

 

太一

「アンタの名前は後世の歴史に刻まれるだろうな!…だがそれは、偉人としてじゃない!!人類史上最悪の兵器を造った人間…人類の汚点としてだ!!!」

 

「!?…うっ…うううっ…うあああああぁぁぁぁぁ―――――っ!!!」

 

クロエ

「束様!?」

 

「…どうすれば…いいの?…私は…どうすればよかったの?」

 

太一

「知らん!時間は戻せない。過去を変える事は出来ない。」

 

「そんな…」

 

太一

「…だが…未来は変えられる。」

 

「…え?」

 

太一

「さっきも言ったがこの世界はいずれ滅びる。その理由の一つが【七大魔王】による侵略だ。」

 

束達

「………」

 

太一

「俺が来なければこの世界は闇に染まり、全ての命が奪われる。だが、今ここに俺がいる。俺が奴らを倒せば、少なくても【七大魔王】によって滅びると言う未来は回避出来る。」

 

「………」

 

太一

「それと同じだ。ISがこのまま兵器として使われ続けて世界を滅ぼす要因となるか…それとも、再び宇宙を目指す為に使われるのか…それは、これからのこの世界の人間たち次第という事だ。」

 

「これからの…私達次第…」

 

太一

「そうだ。」

 

オータム

「随分他人事みたいに言うな?お前が魔王達を倒した後、元の世界に帰れなかったらどうするんだ?お前も下手したらこの世界の滅びに巻き込まれる事になるんだぞ?」

 

太一

「別にそれならそれでいい。俺は一度死んだ身だ。骸が再び土に還る。ただそれだけだ。」

 

オータム

「な!?」

 

太一

「俺は別にこの世界がどうなろうと興味が無い。この世界には来たばかりだし、何が何でも守ろうと言う人間もいない。まあ折角貰った二度目の人生だからな、俺はアグモンと一緒にいられれば世界が滅びようと構わないんだよ。」

 

マドカ

「…お前…どういう神経してるんだ!」

 

太一

「神経ね…そんな物とっくの昔に擦り減ってるのかもな。」

 

マドカ

「ぐっ…」

 

太一

「そもそも俺に何が出来るって言うんだ?俺は【七大魔王】を倒しに来ただけだ。それ以外に出来る事なんか無い。」

 

束達

「………」

 

太一

「それにな!【イグドラシル】だって【七大魔王】がこの世界を侵略しなかったら放っておくって言ってたんだぞ?あくまでこの世界をどうするのかはこの世界の人間がする事なんだよ。」

 

「………フッ…フフフッ…」

 

太一達

「?」

 

「………束さんにここまで言った人間は初めてだよ………いいよ…やってやろうじゃん!」

 

太一

「何が?」

 

「ISを完成させるんだよ。男女両方が使えて宇宙に行く為のパワードスーツとして完成させるって言ってるんだよ!」

 

スコール

「束!?」

 

「…その為にも【七大魔王】が邪魔だね………よし!束さんは君に協力するよ!!」

 

太一

「………へ?」

 

 束の突然の提案にさすがの太一も面食らっていた

 

 




 <予告>

 突然、太一に協力を申し出る束

 その理由はISを完成させ無限の空に飛び立つ為だった

 協力関係を結んだ彼女達は太一の持つISに興味をそそられていたのだった



 次回!《ISアドベンチャー 聖騎士伝説》

 ロイヤルナイツ

 今、冒険が進化する!


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。