ISアドベンチャー 聖騎士伝説   作:イナビカリ

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第062話:機竜撃墜!?

 旅館を飛び立ったマドカと一夏は【福音】との接触予定のポイントに向かっていた

 

マドカ

「………」

 

 だが、マドカは自分の上に乗せて運んでいる兄に不安を募らせていた

 今回の作戦は【福音】を止める事と、操縦者を救出する事

 その為には【福音】を【零落白夜】で一撃で機能を停止させ、尚且つ、中の操縦者を傷付けないようにする針に糸を通す様な精密な技術が必要とされる

 それは本来、生身でも相当難しい事なのだが、それをISで行うのだから難易度は格段に上がる

 ハッキリ言って剣もISも碌な腕を持たない一夏では成功させるのは至難の業だった

 にも拘らず当の本人は何処から来るのか分からない自信に満ち溢れており、目がギラギラと輝いていた

 マドカにはそんな一夏が空回りして失敗する姿しか思い浮かばなかった

 それから暫くして…

 

マドカ

「兄さん!もうすぐ奴と接触するぞ!!」

 

一夏

「!?…オ、オウ!!」

 

 【福音】との接触予定ポイントが近づいて来た

 それを聞かされた一夏は【雪片】を構え、何時でも行けるようにした

 

マドカ

「…出来るだけ私が接近する!タイミングは兄さんに任せるけど行けると思ったら全力で行くんだ!!」

 

一夏

「任せておけ!!一発でケリをつけてやるぜ!!」

 

マドカ

「分かってると思うけど中の人まで斬るなよ?」

 

一夏

「…わ、分かってるよ…」

 

マドカ

(忘れてたな?)

 

 念の為にパイロットのナターシャの事を言っておいたが、やはり一夏はその事を失念していた

 その為マドカは…

 

マドカ

(注意はしたがISだけを斬るなんて器用な真似を兄さんが出来るとは思えないし…仕方無い…兄さんの剣がパイロットごと斬りそうだったら止めに入るか…兄さんを殴り飛ばすか…それとも《ジオグレイソード》で受け止めるか…その時にならないとやはり分からないか…)

 

 一夏がナターシャまで斬らない様に止めに入る事にした

 そして遂に二人の前に【銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)】が姿を現した

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 一方、旅館の指令室では…

 

真耶

「2人がもうすぐ接触します!」

 

千冬

「ウム…八神、何時でも出られるように準備に入れ!」

 

太一

「分かった。」

 

 一夏が失敗する事を前提にした太一の出撃準備に入っていた

 残ったセシリアと鈴は束の調整を終えたラウラとシャルロットと共にバックアップに動ける用意をしていた

 

オータム

「なあ千冬…この作戦…成功すると思うか?」

 

千冬

「私には失敗する光景しか思い浮かばん…」

 

オータム

「同感だ…」

 

 千冬もオータムもこの作戦が成功するとは初めから思っていなかった

 それ程一夏に不安を感じていたのだった

 その為、二人は失敗するなら被害を最小限に留めてくれるように祈っていた…

 だが、その想いは見事に打ち砕かれる事になるのだった…

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

マドカ

「来い!!《ジオグレイソード》!!」

 

 マドカは迫りくる【福音】を迎え撃つ為、《ジオグレイソード》を呼び出した

 

マドカ

「行くぞ兄さん!!」

 

一夏

「オ、オウ!!」

 

 そして背中に乗せた一夏と共に【福音】に向かって行った

 

銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)

「La~♪」

 

 一方の【福音】も二人を認識すると攻撃態勢を取った

 

銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)

「La~♪」

 

 そして【福音】は翼から無数のエネルギー弾を撃って来た

 

マドカ

「!?…コイツが特殊武装か!?」

 

 これが【銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)】に装備された大型スラスターと広域射撃武器を融合させた新システム…【銀の鐘(シルバー・ベル)】だった

 高密度に圧縮したエネルギー弾を全方位に撃ち出せる広域殲滅兵器だった

 

一夏

「うおっ!?マ、マドカ!?」

 

 【福音】の【銀の鐘(シルバー・ベル)】に狼狽える一夏に対して、マドカは冷静に状況を分析しながら攻撃を躱しつつ少しづつ接近して行った

 そして【福音】にかなり近づいた時…

 

マドカ

「そろそろだな…兄さん!!」

 

一夏

「オ、オウ!!」

 

 マドカの合図と共に一夏が飛び出した

 だが…

 

銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)

「LaLa~♪」

 

 ドドドドドドドドドドドドドドドドッ!!!

 

一夏

「ぐあああああぁぁぁぁぁ―――――っ!!」

 

 あっさり撃ち落とされた

 しかし、それを見てマドカはある疑問が浮かんだ

 

マドカ

(何故瞬時加速(イグニッション・ブースト)を使わなかったんだ?)

 

 それは一夏が瞬時加速(イグニッション・ブースト)を使わずに仕掛けた事だった

 一撃で勝負を付けなければならないこの作戦では瞬時加速(イグニッション・ブースト)は必要不可欠のものだった

 にも拘らず、体勢を立て直した一夏は再び仕掛けようとするのだが瞬時加速(イグニッション・ブースト)を使おうとはしなかった

 その為…

 

 ドドドドドドドドドドドドドドドドッ!!!

 

一夏

「があああああぁぁぁぁぁ―――――っ!!」

 

 【福音】の攻撃で全く近づけなかった

 マドカが自分に注意を向けさせようとしても【福音】の【銀の鐘(シルバー・ベル)】は全方位攻撃の為、二人同時に相手出来るので余り意味が無かった

 

マドカ

「クソッ!兄さん!何で瞬時加速(イグニッション・ブースト)を使わないんだ!!」

 

一夏

「うっ!?」

 

 このままでは埒が明かないと考えたマドカは一夏に瞬時加速(イグニッション・ブースト)を使う様に言った

 だが、肝心の一夏は【福音】の攻撃を受けながらも使おうとはしなかった

 そんな一夏の姿にマドカは理由に気付いた

 

マドカ

「まさか…使えないのか!?」

 

一夏

「ぐっ…」

 

 コレが理由だった

 一夏は未だに瞬時加速(イグニッション・ブースト)を習得していなかったのだ

 

マドカ

「(瞬時加速(イグニッション・ブースト)すら使えないのに自分がやると言ったのか!?兄さんは今回の作戦をどれだけ楽観視していたんだ!!)クソッ!《グロリアスバ―――スト》!!!

 

 マドカはそんな一夏に呆れながらも【福音】に向けて《グロリアスバースト》を撃ったのだが…

 

銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)

「La~♪」

 

 ドドドドドドドドド…ドガアアアァァァンッ!!

 

マドカ

「何!?」

 

 【福音】は全方位に向けていた【銀の鐘(シルバー・ベル)】を全て《グロリアスバースト》に集中させた

 更に、全力で撃てば搭乗者も無事では済まないので威力を抑えて撃った事も相まって《グロリアスバースト》の火球は撃ち落とされてしまった

 その時…

 

一夏

「貰ったぁぁぁぁぁっ!!」

 

 自分への攻撃がやんだ瞬間を狙って斬りかかった一夏だが…

 

銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)

「La?」

 

 ドガガガガガガガガガガガッ!!!

 

一夏

「ぐあああああぁぁぁぁぁっ!!」

 

 【福音】はアッサリと一夏を迎撃した

 この時、一夏が瞬時加速(イグニッション・ブースト)を使えれば一撃を入れる事も出来たのだろうが覚えていないこの男では無理な話だった

 

マドカ

「(くっ!これ以上は【零落白夜】に回すSEが…仕方無い!)兄さん!!撤退するぞ!!」

 

 これ以上の戦闘継続は危険と判断したマドカは撤退する事にした

 だが一夏は…

 

一夏

「ふざけるな!!俺はまだやれる!!」

 

 案の定、撤退する気が無かった

 

マドカ

「何を言ってるんだ!【白式】のSEだって相当減ってるんだぞ!!最初の一撃が入れられなかった時点ですでに作戦は失敗してるんだ!!」

 

一夏

「ぐっ!ま、まだだ!今から一発も喰らわずに【零落白夜】で斬り付けてやれば…」

 

マドカ

「アレだけ喰らっておいて何を言ってるんだ!!後は太一兄さんに任せるんだ!!」

 

一夏

「太一に任せるだと!?アイツの手なんか必要無い!!俺だけで十分だぁぁぁっ!!」

 

 マドカが太一の名前を出した途端、一夏は更にムキになってしまった

 

マドカ

「チッ!これ以上駄々を捏ねるなら………ん?」

 

 もはや言葉では無理と判断したマドカは千冬に言われた通り力づくで一夏を連れて行こうとした

 だがその時、マドカの視界にある物が映った

 

マドカ

「何だ?…今のはまさか………!?…船だと!?」

 

 ハイパーセンサーを使って調べてみるとそれは一隻の船だった

 

マドカ

(どういう事だ!?この海域は教員達が封鎖している筈…それに国籍不明だと?…まさか…密漁船か!?)

 

一夏

「があぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

マドカ

「!?…兄さん!?」

 

 マドカが密漁船に気付き、調べている間も一夏は懲りずに【福音】に向かって行ったのだが全て撃ち落とされていた

 一発も喰らわずと言いながら今までと変わっていなかったのだ

 そして、もはや【零落白夜】を発動させられるかギリギリの所まで来ているのだが、それでも【福音】に向かおうとする一夏に…

 

マドカ

「兄さん!船だ!!」

 

一夏

「!?…船だと!?」

 

 この海域に船がいると言われ流石の一夏も【福音】への攻撃を止めた

 

マドカ

「ああ!恐らく密漁船だ!これ以上ココで戦えば船を巻き込んでしまう!奴をココから離すぞ!」

 

 マドカは撤退を中止し、船が戦闘に巻き込まれない様にする為、移動しようとした

 だが…

 

一夏

「そんな奴等放っておけ!!」

 

マドカ

「…え?…兄さん?」

 

一夏

「そいつ等は犯罪者だろ!!そんな奴等どうなろうと知った事か!!」

 

マドカ

「………」

 

 何と一夏は船を放置し、そのまま戦うと言い出した

 彼等が犯罪者だからと言って見捨てると言ったのだ

 これには流石のマドカも言葉を失った

 

一夏

「そんな奴等よりコイツだ!!コイツを倒して俺の力を皆に思い知らせてやるんだ!!」

 

 しかも一夏は自分の見栄を張る事しか考えていなかった

 

マドカ

「…兄さん…そこまで…落ちぶれたのか…」

 

一夏

「!?…マ、マドカ!?」

 

 そんな兄の姿に妹は失望してしまった

 そして一夏は妹の言葉に動きを止めた

 

マドカ

「犯罪者でも人は人だ…それを…平然と見捨てるなんて…」

 

一夏

「ち、違う…違うんだマドカ…俺は…そんなつもりで…」

 

 更に妹の悲痛な表情と続けられた言葉に一夏は持っていた【雪片】を落とした

 【雪片】はそのまま量子変換され消えて行った

 だが、今は戦闘中…そんな所で動きを止め、武器を手放せば…

 

銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)

「La~♪」

 

 【福音】の格好の餌食になるだけだった

 

マドカ

「兄さん!!!」

 

一夏

「…え…」

 

 無防備な一夏に向かって【銀の鐘(シルバー・ベル)】が降り注いだ

 遅れて気付いた一夏では一発も躱す事は出来なかった

 

 ドガガガガガガガ…ドガアアアァァァンッ!!!

 

 だが、一夏は無事だった

 何故なら…

 

マドカ

「ぐっ…ううっ…」

 

一夏

「マ、マドカ!?」

 

 マドカが一夏の盾になって守ったのだ

 だが、【福音】は盾となったマドカの隙を見逃さず…

 

銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)

「LaLa~♪」

 

 更なる攻撃を降り注いできた

 

マドカ

「!?………くっ!?」

 

 だがマドカは一度後ろを振り返るとそのまま動かず躱そうとしなかった

 今避ければ無防備な一夏も密漁船共々巻き込まれてしまう位置だったからだ

 

 ドガガガガガガガガガガガッ!!!

 

 その為、マドカは避ける事が出来ず【銀の鐘(シルバー・ベル)】を全て一人で受けたのだった

 いかにマドカのISが従来のISを上回る【Dシリーズ】の【シャイン・ドレイク】と言えどISである以上SEが存在し、限界値は存在する

 そして【福音】の何百と言う連続攻撃を全て受ければSEはあっと言う間に0になってしまう

 その結果…

 

 ドガアアアアアァァァァァンッ!!!

 

一夏

「マドカアアアアアアアアァァァァァァァァァッ!!!!!」

 

 撃墜され、そのまま海に沈んでいった…

 

 




 <予告>

 海に消えたマドカ

 だが、駆け付けた太一によって九死に一生を得た

 しかし、その一方で千冬達は今回の事件の裏にデジモンの影を見つけたのだった



 次回!!

 ISアドベンチャー 聖騎士伝説

 福音に潜む影

 今、冒険が進化する!

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