ISアドベンチャー 聖騎士伝説   作:イナビカリ

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第044話:未来を決める一手

 【アルフォースブイドラモン】を展開し、IS学園から飛び立った太一は現在、束との合流地点であるドーバー海峡に向かっていた

 その速度はISとは比べ物にならないもので余りの速さに各国のレーダーにかかっても、気づいた時には範囲外に出ていた

 そうしている内に太一は束との合流場所であるドーバー海峡上空に差し掛かった

 日本を昼過ぎに飛び出した為、時差の関係でフランスは現在深夜となっていた

 到着した太一が周囲を見渡すと…

 

太一

「いた。」

 

 海上に明らかに不自然なニンジンがぽつりと浮かんでいた

 太一はそのニンジンに近づくとそのサイズは人間の数倍の大きさがある物だった

 するとニンジンの一部が開いてそこから出て来たのは…

 

「やっほ~たっくん♪久しぶり~♪」

 

 束が出て来た

 このニンジンは束の移動用ロケット兼研究所を兼ねた物だった

 太一はそのままISを解除するとニンジンの中に入っていった

 

「ね~ね~たっくん♪…アッくん出して♪」

 

太一

「は?」

 

 ニンジンの中に入るといきなりコロモンを出せと言って来た束に太一は呆気に取られた

 

「今のアッくんはコロモンって言う幼年期の姿なんでしょ?さっき管制室のモニターからセシリアちゃん達がアッくんを撫で回していたのを見てたらさ~、束さんもその触り心地を確かめたいんだよ~♪」

 

太一

「…コロモン…こう言ってるがどうする?」

 

 太一は【デジヴァイス】を取り出すと中に入っているコロモンに聞いてみた

 コロモンの答えは…

 

コロモン

『なんか怖いんだよね~…』

 

 束から滲み出る何とも言い難いオーラを怖がっていた

 

太一

「…諦めろ。」

 

「そんな事言わずにお願いだよ~…束さんもアッくんを撫で撫でしたいんだよ~…」

 

 なおも懇願する束を見て…

 

コロモン

『も~…分かったよ…ちょっとだけだよ?』

 

「やった~♪アッくん大好き!!」

 

 コロモンは観念して【デジヴァイス】から出て来た

 

「!?」

 

 コロモンを直接見た束は雷にでも打たれたような衝撃を受け固まった

 だが次の瞬間…

 

「可愛いいいいいいぃぃぃぃぃぃぃっ♥」//////

 

 セシリアと鈴の様にコロモンに抱き着いた

 

コロモン

「わあああああぁぁぁぁぁっ!!!」

 

 コロモンが悲鳴をあげるが束はお構いなしにコロモンを撫でまくっていた

 

太一

「やっぱりこうなったか…」

 

 その光景を太一は半ば諦めた表情で見つめていた 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 それから少ししてコロモンを撫で回している束を太一が奪い返した

 解放されたコロモンはゲッソリとしていた

 

「…もっとアッくんを撫で撫でしたいよ~…」

 

 だが、束はコロモンを未だに諦められずにいた

 

コロモン

「もう嫌だよ!!」

 

太一

「ココに来た目的を忘れるな!!」

 

「あ!そうだった!」

 

 太一がそう言うと束は本気で忘れていた様で慌てていた

 それを見て太一もコロモンは呆れながら溜め息を吐くのだった

 

スコール

「終わった?」

 

 すると奥からスコールとクロエの二人が現れた

 

太一

「ああ、やっと落ち着いた………久しぶりだなスコール。」

 

スコール

「そうね、そっちは色々と大変みたいね?」

 

太一

「仕方無いさ…」

 

スコール

「仕方無いって…【七大魔王】はそれで済むけど…織斑一夏に随分振り回されてるんでしょ?オータムからの定期報告でも彼の愚痴をよく聞かされているわ。」

 

太一

「アイツそんな事してたのか…まあ気持ちは分からなくは無いが…」

 

 オータムがまさかスコール相手に一夏の愚痴に付き合わせていたとは知らず驚いていた

 だが、オータムの気持ちも理解出来るのでそれ以上は何も言う気は無い太一だった

 

太一

「今はアイツの事はいい…束!そろそろ行くぞ!社長の現在位置は分かってるか?」

 

「あ、うん!え~っと、今日は会社に泊まり込んでるね。」

 

太一

「なら行くぞ!早くしないと夜が明ける!」

 

「分かったよ!!」

 

太一

「必要なデータは揃っているな?」

 

「勿論だよ♪この束さんに抜かりはないよ!」

 

 太一の最後の確認に束は大丈夫と言って力強く頷いた

 

太一

「それならいい、それからスコールも念の為に一緒に来てくれ。クロエは留守番を頼む。」

 

スコール

「いいわよ。」

 

クロエ

「分かりました。」

 

太一

「よし、行くぞ!!」

 

 太一はそう締めくくるとコロモンを【デジヴァイス】に戻し、束とスコールを連れてデュノア社に向かうのだった

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 デュノア社の社長室…ココには現在シャルル・デュノアの父が一人でいた

 彼は社長椅子にもたれ掛かるようにして天井を見上げながら…

 

デュノア社長

「………シャルロット…」

 

 男の姿でIS学園に送り込んだ娘の本来の名前を呟いていた

 

デュノア社長

「………無事だといいが…」

 

「ほぉ?娘の心配か?」

 

デュノア社長

「!?…だ、誰だ!!」

 

 突然聞こえた声にデュノア社長は椅子から飛び上がり、辺りを見渡した

 すると部屋の一角に3つの人影を見つけた

 

デュノア社長

「何者だ!!ココが何処か分かっているのか!!」

 

「分かってるさ、ココはデュノア社の社長室、そしてあんたはその社長だろ?」

 

 そう言いながら影の一つが社長に近づいて行った

 すると月明かりによってその姿が露わとなった

 

デュノア社長

「き、君は確か…八神太一!!二人目のIS操縦者!!」

 

 現れたのは太一だった

 

太一

「俺を知ってるのか?ならコイツが誰かも分かるよな?」

 

デュノア社長

「え?」

 

 太一が後ろを指差すと残る二人が姿を現した

 現れたのは束とスコールの二人だった

 束の姿にデュノア社長は…

 

デュノア社長

「あ、あ、あ、貴方は…篠ノ之束!?」

 

 顎が外れんばかりに口を開け驚いていた

 

「ヤッホ~社長さん♪その通り、私が天災の束さんだよ~♪」

 

デュノア社長

「な、何故行方知れずの貴方がココに居るんですか!!」

 

 太一に続いて現れた束にデュノア社長は目が飛び出す程に驚いていた

 

「うん、ちょっと君と話がしたくて来たんだよ。勿論、君一人の時を狙ってね、本妻やその取り巻き連中がいないところで話したかったんだよ。」

 

デュノア社長

「ま、待って下さい!この部屋は…」

 

「連中に監視されてるんでしょ?でも大丈夫だよ!束さんがハッキングして偽の映像を送ってるからバレて無いよ♪」

 

デュノア社長

「!?」

 

 デュノア社長は束が既にそこまでの根回しをしてまで自分に会いに来たと分かると、驚きながらも気を引き締めた

 

デュノア社長

「分かりました。そこまでの手回しをして頂きありがとうございます。そちらの用件を伺いましょう。」

 

 そう言って太一達を目の前のソファーに座るように促した 

 太一達も頷くとソファーに座った

 

デュノア社長

「…それで失礼ですが…貴方は?」

 

 そう言ってデュノア社長はスコールに視線を向けた

 デュノア社長は太一と束は知っていたがスコールの事は何も知らなかった

 

スコール

「コレは失礼しました。私はスコール・ミューゼル…束の研究の手伝いをしている者です。」

 

デュノア社長

「篠ノ之博士の…そのような人がいるとは知りませんでした…」

 

スコール

「手伝いと言っても私は助手ではありません。束が研究に没頭し過ぎて死なないように監視する程度の事しかしていませんよ。」

 

デュノア社長

「そ、そうですか…」

 

「スーちゃん!いくら何でもそれは言い過ぎじゃない?」

 

スコール

「何言ってるのよ?ここ最近は何度か本当にそうなりかけたじゃない。研究室に籠って飲まず食わずで餓死しかけたり、不眠不休で幻覚を見て暴れたり、その時私がどれだけ大変だったと思ってるのよ!!」

 

「うぐっ!」

 

 スコールの言う事に束は反論出来なかった

 実際、最近の束はデジモンと【Dシリーズ】、男も使えるISの研究と寝る間も惜しんで研究していた

 スコールの言う通り本当に死ぬ一歩手前に来ていた事が何度もあったのだ

 

太一

「束…お前な~…」

 

 スコールの話を聞いて太一も呆れ果てた

 

「うぅっ…ゴメン…これからは気を付けます…」

 

太一

「そうしてくれ、お前に何かあったらこの世界は本当に終わるんだぞ?」

 

スコール

「貴方の気持ちも分かるけど物には限度って物があるんだからその辺の事を少しは考えて頂戴!」

 

「はい…」

 

デュノア社長

「………」

 

 太一達の一連のやり取りを見てデュノア社長は言葉を失っていた

 自分が聞いている束と目の前にいる束が余りにも違い過ぎていたからだった

 世間で知られている束は自分の気に入った人間以外は道端の石ころ程度にしか思わない極度の人間嫌いで傍若無人な性格をしていると言われている

 だが、目の前にいる束は自分に対しても普通に話しかけている上に太一とスコールに説教されて反省して謝っていた

 その余りにも激しいギャップに3人の会話に入れずにいた

 

太一

「あ!」

 

 すると太一が一人蚊帳の外になっていたデュノア社長の事を思い出した

 

太一

「束、その事についてはまた今度だ。今は本題の方が大事だろ。」

 

「そ、そうだったね!ゴメンね待たせちゃって?」

 

デュノア社長

「い、いえ、大丈夫です…そ、それで一体どのような御用で?」

 

 太一が話を戻した事で全員が気を取り直した

 スコールの紹介も一応終わったので本来の話を始めたのだった

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

「単刀直入に言うよ?私と契約しない?」

 

デュノア社長

「………え?」

 

 束の突然の申し出にデュノア社長は理解出来なかった

 だが、少ししてその意味を理解すると今度は違う意味で理解が出来ていなかった

 

デュノア社長

「…契約、ですか?」

 

「そうだよ♪」

 

デュノア社長

「何故いきなり我が社と?」

 

「うん、実は束さんは今ある物を研究してるんだよ。」

 

デュノア社長

「ある物?………もしやそれは以前博士がIS学園で仰られた男女両方使えるISの事ですか?」

 

 束の研究と聞いてデュノア社長は束の言いたい事が何か気付いた

 

「お!知ってたんだね?なら話が早いね。実はそのISが完成したらこの会社でそれを発表したいと思ったんだよ。」

 

デュノア社長

「わ、我が社でですか!?ですがこの会社は今…」

 

「知ってるよ。君の本妻の無駄遣いで経営危機になってるんでしょ?」

 

デュノア社長

「!?…そこまでご存知でしたか…」

 

 自分の会社の経営危機の理由を束が知っていたのに驚いたが、束ならそのくらいすぐに調べられるかと思い落ち着いた

 

「うん、そしてそいつ等がこの会社を隠れ蓑にして非合法な商売をしているのも調べが付いてるよ。ココのお金はそれに使われてるんだよ。」

 

デュノア社長

「な!?あいつ等はそんな事までしていたのか!!何と言う奴等だ…社員達が必死に働いていると言うのに………ですがそれなら尚の事我が社と契約するのは危険です!博士の開発しようとしているISは奴等にとっては絶対に受け入れられない物です!!」

 

 だが、束から聞かされた裏での行動までは流石に知らなかったようで再び驚きの声をあげた

 それと同時にそんな自分の会社では束の研究成果を発表するのは不味いと考え束を思い止まらせようとした

 

「分かってるよ。だから契約する前にまずこの会社の膿を出す事から始めようと思ってね。」

 

デュノア社長

「膿…と言うのはあいつ等の事ですか?ですがどうやって?」

 

 すると束は拡張領域(バススロット)から封筒を一つ取り出し、デュノア社長に渡した

 

「それに連中の不正の証拠が纏めてあるよ。それを使えばあいつ等を全員纏めて豚箱に放り込む事が出来る。君の本妻の方は離婚をしないといけないけど、その様子じゃ離婚するのも抵抗はなさそうだよね?」

 

 束が本妻たちの不正の証拠を出すとそれに驚くが、社長自身も本妻をどうにかしたいと思っていたので束の言う通り離婚するならむしろすぐしたいと言う気持ちだった

 

デュノア社長

「勿論です!…あいつ等に目を付けられてどれだけ優秀な部下を失ったか…彼等の事を思えばあいつと縁を切るなど何の苦にもなりません!!」

 

「ならこれは君に渡しておくよ。」

 

デュノア社長

「ありがとうございます!!早速日が昇ると同時に政府と警察にこれを提出し奴等を捕縛して貰います!!それと同時にアイツには離縁を言い渡します!!!」

 

太一

「ですが、その後が大変な事になりますよ…それは分かっていますよね?」

 

 すると今まで黙って話を聞いていた太一がその後の事を聞いて来た

 そしてそれは社長自身も良く分かっていた

 

デュノア社長

「それは分かっています。…この資料を見る限り裏でやっている非合法の商売はココとは関係ない様になってますが、それでもこの会社でもいくらか汚職をやっています。一斉検挙をすれば間違いなくこの会社は大きく揺れるでしょう…社員達も路頭に迷う事になるかもしれません…ですがそれでもやらなければなりません!!あんな奴等が大手を振って歩いているなど決して許してはおけません!!!」

 

 社長の決意を見て太一達は軽く笑った 

 

「ま、そうなるだろうけど大丈夫だよ。」

 

デュノア社長

「え?」

 

「それで最初の話に戻るけど連中を追い出した後、私と契約しない?束さんなら第3世代の新型を用意する事くらい朝飯前だよ?何なら量産型として設計してもいいよ?」

 

デュノア社長

「ほ、本当ですか!?」

 

「うん、それを出せば会社の立て直しなんて簡単でしょ?但しさっき言った男女両方のISを出す事が絶対条件になるよ。それとこの会社で開発するISは全て宇宙開発用にする事も条件だよ。どう?この条件呑む?」

 

 束の条件を聞き社長は少し考え込む素振りを見せるが彼の中では条件を聞いた瞬間、答えは既に決まっていた

 

デュノア社長

「よろしくお願いします!」

 

 そう言って右手を差し出した

 それを見て束も口元に笑みを作ると社長の手を握り返した

 

「こちらもよろしく!じゃあ本格的な契約はこの会社の膿を全部出して綺麗になってからになるけどいいよね?」

 

デュノア社長

「勿論です!一日でも早く博士の力になれるよう準備します!!」

 

 こうしてデュノア社の掃除が終わった後に束と正式に契約する事が決定した

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 デュノア社との契約の話が付いた事で肩の荷が下りたのか全員が力を抜いた

 

「あ~無事に契約の話がついて良かった…流石『たっくん』が選んだ会社だね♪」

 

デュノア社長

「…え?」

 

 束の一言にデュノア社長が反応した

 

デュノア社長

「あの…それはどういう意味でしょうか?今の言い方ですと我が社を選んだのは博士ではなく彼と聞こえましたが?」

 

「そだよ、ココを選んだのはたっくんだよ。」

 

 その一言について聞いて来たデュノア社長に束はあっけらかんとした感じに答えた

 

デュノア社長

「な、なんと!!」

 

 束では無く太一が選んだと聞いてデュノア社長は驚きの声をあげた

 そして束の隣に座る太一に視線を移した

 

デュノア社長

「まさか君が選んだとは…何故我が社を?」

 

太一

「大した理由じゃありませんよ。貴方の娘が学園に来た目的を束に調べて貰ったんですが、その時に束の新型を発表する方法の一つとしてここを利用しようと思いついたんです。それで束に更に詳しく調べて貰ったら貴方の人柄も分かったので丁度いいと思っただけですよ。」

 

デュノア社長

「む、娘!?…そう言えば君がココに現れた時も娘と…では、あの子の正体に気付いていたのか!!」

 

 デュノア社長は太一がデュノア社を選んだ理由よりもシャルルの正体がバレていた事の方に驚いていた

 

太一

「まあ…と言うかあれでバレない方がおかしいと思うんですが…」

 

デュノア社長

「え?」

 

太一

「いや、アレはどう見ても女でしょう?女顔の男と言われても信じられませんよ。声だって女の物でしたし口調を男に変えたぐらいでバレないと思っていたんですか?」

 

デュノア社長

「うっ…い、言われてみれば…あの子は母親に似て美人だからな…」

 

 驚きながらも何気に娘が美人だと自慢していた

 

太一

「………。まあ俺を含めて一部にしかバレてませんでしたからあまり強くは言えませんが…」

 

デュノア社長

「え?バレなかったのかね?」

 

太一

「はい…」

 

デュノア社長

「………」

 

 太一のその言葉を聞きデュノア社長は複雑な表情をしていた

 バレていないのは娘が男と見られている事に他ならない

 だが、本来の女として見られていない事に社長は悩んでいた

 

「何でバレなかったの?束さんも映像でその子を見たけど女にしか見えなかったよ?」

 

スコール

「もしかして女しかいないIS学園だからその辺の感覚がマヒしてるんじゃない?」

 

太一

「…あり得そうだな…それ…」

 

 そこにスコールの一言に太一だけでなく束と社長もそれはあるかもと思い頷いた

 IS学園は生徒だけでなく教師も基本は女しかいない

 男は太一と一夏、後は理事長の轡木ぐらいしかいなかった

 そんな場所で生活している彼女達では例え女でも男を名乗って現れたのなら男に見えてしまっているかもしれないと全員が思うのだった

 

太一

「…そう言えば社長さん、貴方は先程デュノアの事を美人とか言いましたが、娘をどう思ってるんですか?」

 

デュノア社長

「…大切な娘だよ…あの子は…私の宝物なんだ…」

 

太一&束&スコール

「………」

 

デュノア社長

「アイツはあの子を嫌っているが、私にとってシャルロットは何物にも変えられないたった一人の娘なんだ…本当ならあの子を守ってやりたかった!一緒に暮らしたかった!だが私にはそれが出来なかった…だからせめてあの子には母親と一緒に静かに暮らして欲しかった…なのにあの女は…」

 

 太一の質問が切っ掛けとなり、デュノア社長は今迄溜め込んでいた娘への気持ちが溢れ出したように話し続けた

 太一達も何も言わずただ黙って話を聞いてあげていた

 

デュノア社長

「アイツの命令でスパイとしてIS学園に向かうのを止めたかった…だが、私には出来なかった…私に意気地が無いばかりに…あの子を苦しめてしまった…」

 

 その後も社長の愚痴とも娘自慢の惚気とも懺悔とも取れる話を3人は聞かされていた

 だが、暫くして社長もこれ以上は不味いと気付いて話を終わらせたのだった

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

「それじゃあ束さん達は帰るね。」

 

デュノア社長

「はい!今日は本当にありがとうございました!必ずや博士のご期待に添える様に準備します!」

 

 話し合いも全て終わり社長の愚痴も聞き終わったので太一達はそろそろ帰る事にした

 するとその時…

 

太一

「………スコール…悪いがお前は残ってくれないか?」

 

全員

「え?」

 

 突然太一がスコールに残る様に言って来た

 

スコール

「何故私が残るの?」

 

太一

「社長の護衛だ。」

 

デュノア社長

「私の?」

 

太一

「今日の朝にはあの証拠を使って本妻たちを処分する為に動く訳だが…連中が大人しく捕まると思うか?」

 

全員

「あ!?」

 

 そこまで太一が言うと全員がスコールに残る様に言った理由に気付いた

 

太一

「特に社長の本妻は離縁を言い渡されて素直に応じますか?俺の予想ではキレて社長を殺そうとすると思うんですが?それにそいつならISを持っている可能性も高いと思うのですが?」

 

「うん、それ凄くありそうだよね…」

 

デュノア社長

「はい、アイツならそのくらいするでしょう。流石に専用機ではありませんがISは間違いなく持っています。」

 

スコール

「だから私に護衛として残れと?」

 

太一

「ああ、それにお前なら量産機位なら束になって来ても問題無いだろ?」

 

スコール

「それは確かにそうだけど…もしかして私を連れてきた本当の目的ってそっちなの?」

 

 スコールに残る様に言った理由は分かったが、新たに太一がスコールを連れて来た事に疑問出て来た

 

太一

「まあな、束はココに居ると別の問題が起きるだろうし、俺はIS学園から長く離れられない。俺達の中じゃお前がうってつけなんだよ。」

 

 そんなスコールの疑問にしれっと答える太一だった

 

スコール

「はぁ~…分かったわよ…確かに私にしか出来ないわね…という事なんだけどよろしいかしら?」

 

デュノア社長

「あ、はい、構いません!むしろこちらとしてもありがたい話です!ですが、大丈夫なんですか…先程も言いましたがアイツはISを持っているんですよ?」

 

スコール

「それなら大丈夫です。ISなら私も持っていますし量産機ではなく専用機です。あの織斑千冬が相手ならともかくその辺の有象無象に負けるほど弱くはありません。」

 

 本妻達を相手にスコール一人で平気なのか心配だったデュノア社長だが、スコール本人は自信をもって大丈夫と言って来た

 それもその筈、スコールは今でこそ束のお目付け役なんて事をやってはいるが元は国際テロ組織【亡国機業(ファントム・タスク)】の幹部の1人だった

 更に体の一部を機械化しているサイボーグの様な体のためISを使わなくてもかなり強い

 そんな体の為、外見の割にかなりの高齢なのだが、それでも太一よりかは年下になる

 

デュノア社長

「分かりました。ですがここまでして頂いた上に、護衛までして頂くのは申し訳なく思います。ですから連中の捕縛が無事に済みましたら少ないですが謝礼をお渡しします。どうでしょう?」

 

 スコールの自信を見て社長も大丈夫だと判断した

 しかし、このまま何の謝礼も無いままと言うのも問題があると考えこのように提案してきた

 

スコール

「そうですね、確かにここまですると恩着せがましくなりますね。…太一、束、私はこの提案を受けた方がいいと思うんだけど?」

 

 そんな社長の提案をスコールも受けた方がいいと判断した

 そして太一と束にも確認を取ると…

 

太一

「確かにそうだな…俺はいいと思うぞ。」

 

「束さんも~…その辺はスーちゃんの判断で決めればいいよ♪」

 

 二人も賛成してくれた

 

スコール

「分かったわ、では社長、その提案を受けます。この際ですから貴方が私に自分の護衛を依頼したという事にしてはどうでしょう?それなら周りが何か言って来ても問題無いと思いますが?」

 

デュノア社長

「結構です。では、今からよろしくお願いします。」

 

スコール

「承りましたわ。」

 

 そう言ってスコールとデュノア社長は握手をした

 これによりビジネスの一つとしてデュノア社長を護衛すると言う大義名分が出来たのだった

 

「じゃあ今度こそ束さん達は帰るね~♪」

 

太一

「それでは失礼します。」

 

デュノア社長

「ええ、何から何まで本当にありがとうございます!」

 

 デュノア社長はそう言って帰っていく二人に頭を下げてお礼を言った

 二人はそれを聞き笑顔で帰って行った

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 スコールを残してデュノア社を後にした太一は一度、束のニンジンロケットに戻ると…

 

太一

「そうだ束、さっき言っていた地球の映像データだが…いるか?」

 

「いる~~~♪」

 

 【ベルフェモン】を倒す為に【エグザモン】で宇宙に上がった時の映像データを渡しておいた

 その後、太一は【アルフォースブイドラモン】を展開してIS学園に戻って行った

 

 

 




 <予告>

 太一達から渡された大量の不正の証拠

 早速それを使ってデュノア社の大掃除を始めた社長は本妻に離縁を言い渡す

 だが、そんな社長に憤慨した本妻はISを纏って襲い掛かる

 迎え撃つのは護衛として残ったスコール

 この日、一つの企業の命運が決するのだった



 次回!《ISアドベンチャー 聖騎士伝説》

 デュノア社の夜明け

 今、冒険が進化する!


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