轡木
「!?…八神さん…お疲れ様です。」
理事長室に入って来た太一を見て轡木は頭に乗っているコロモンに驚いたがすぐに気を取り直して開口一番に労いの言葉を言って来た
太一
「いや、今回はすまなかった…手加減出来なかったとはいえこの学園を破壊しかけてしまった。」
轡木
「最後のあの揺れですか?確かに凄い振動でしたよ。」
太一
「本当にスマナイ…」
轡木
「いえいえ、【七大魔王】を倒す為にはあのくらいしなければならなかったのですから仕方の無い事です。それにお二人が敵を遠ざけてくれたお陰で結果的に学園が揺れる程度で済んだのです。ですから気にしないで下さい。」
鈴
「………」
太一と轡木の会話を聞いて鈴は目を丸くしていた
セシリア
「どうしました鈴さん?」
鈴
「あ、いや、理事長もデジモンの事を知ってたんだって思って…」
マドカ
「あぁそう言う事か。お前には教えてなかったな。この学園で太一兄さんの正体とコロモン達デジモンの存在を知っているのは山田先生を含めたココに居る人間で全員だ。」
鈴
「そうだったんだ…」
それから少しして真耶が理事長室にやって来た
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
真耶も合流した事で太一達は理事長である轡木も交えて今度後の話し合いを始めた
尚、束も電話経由でこの話し合いに参加していた
太一
「シェルターにいる連中を抑えておくのにも限界がある。必要な事をさっさと決めるぞ。」
太一がそう言うと全員が頷いた
千冬
「ではまず、今回の件でデジモンの存在を学園の全生徒と教師、更には各国の重鎮達が知ってしまった事についてだな。」
オータム
「ああ、【バルバモン】の野郎が闇のデジモン達をわんさか呼び出したせいで誤魔化しが効かなくなっちまった。」
マドカ
「更に太一兄さんがアグモンを連れてアリーナに現れたのはあの場にいた全員が見ている。その後のウォーグレイモンへ進化させたところも指示を出して一緒に戦っていた事も全部な。」
轡木
「となると…生徒や教師以上に来賓の方達はデジモンの事を知ろうと躍起になるでしょうね。」
真耶
「はい、デジモンの戦闘力の高さは今日の戦いだけで十分に思い知ったでしょう。特にアリーナで戦っていたオルコットさんがデジモンに敗れた事もその証明になりますね。」
セシリア
「…すみません…」
真耶
「あ!せ、責めてる訳では…ご、ごめんなさい!」
セシリア
「いえ、山田先生の仰る通りです…あの時は自分の不甲斐無さを痛感しました…
マドカ&鈴
「………」
セシリアのその言葉にマドカと鈴も同じ気持ちなのか顔を俯かせていた
太一
「お前達も落ち込んでどうするんだ?負けたと言ってもそれは最初の事だろ?」
コロモン
「そうだよ!最後には完全体を倒せたんだから気にしなくていいよ!」
そんな3人を太一とコロモンが慰める事で何とか3人は下げていた顔を上げた
太一
「話を戻すぞ?」
持ち直した3人を見て話を再開した太一に全員が頷いた
太一
「まずはデジモンの存在をどう公表するかだ。さっきも言ったがもはや誤魔化しは効かない。」
轡木
「そうですね、ですが公表するにしてもどの様にしますか?」
オータム
「う~ん…いっその事全部話しちまうか?この世界に【七大魔王】が来た理由を知れば少しはこの世界の連中もマシになるかもしれねえぞ?」
太一
「…そうだな…それも悪くないな…だがそうするとなると…セシリア!鈴!」
セシリア&鈴
「?」
オータムの案に太一は賛同したのだが突然セシリアと鈴を呼んだ
太一
「お前達に確認するが全てを公表するという事は【七大魔王】がお前達の心に憑りついていたという事も暴露する事になる。」
セシリアと鈴
「!?」
全てを公表する上での問題、その一つが依り代になったセシリア達4人だった
ラウラとシャルルは現在気絶している上に何も知らないので今から説明するにも時間が足りないので放置するにしても、事前に真実を知っているこの二人には確認を取る必要があった
太一
「構わないか?」
セシリア
「はい!!構いません!!」
鈴
「そんな事覚悟の上よ!!」
だが太一の心配を他所に二人は迷いなく答えた
太一
「…そうか…なら全てを公表する方向で話を進めよう。」
二人の覚悟を受け太一も全てを公表する事にした
千冬
「お前こそいいのか?全部話すって言う事はお前の正体もバラす事になるんだぞ?」
だが、今度は千冬が太一に同じ事を聞いて来た
太一
「まあ流石に俺が95のジジイだって事は隠すよ。それに死んだ人間が生き返って若返ったなんて言っても信じないだろうしな。」
それに対して自分の実年齢だけは隠すと言って答えた
真耶
「それはまぁ…普通は信じませんよね?」
轡木
「そうですね、デジモンの場合は存在そのものが確認されたので信じられますが、八神さん自身の場合は証明のしようがありませんからね。」
轡木の言う通り太一の正体は言っても信じられない様な事ばかりしかなかった
束
『それでも信じる奴がいるかもしれないからたっくんが異世界から来た事以外は黙ってた方がいいね………異世界から来たって言うだけでも狙われる要素は十分なんだけど…』
全員
「………」
束の言葉に全員が黙り込んでしまった
それは束の言う通りだからだった
異世界から来たというだけでも太一の体を調べようと狙う奴等が現れるのが目に見えていた
だが、太一が他にも一度死んで生き返った上に、若返った事まで知られると更に不穏な輩を呼び寄せる要因となってしまうのも全員が簡単に想像出来てしまっていた
その為、太一が異世界から来た事以外は隠す事にしたのだった
轡木
「で、では公表する内容ですが…」
千冬
「まずデジモンと呼ばれる生物が存在する事…」
真耶
「そのデジモンの勢力の一つ…【七大魔王】がこの世界を侵略しに来ている事…」
オータム
「その【七大魔王】を止める為に別の世界から送り込まれた人間が太一だった事…」
束
『そのたっくんのパートナーデジモンがアッくんって事………このくらいかな?』
公表する内容を改めて確認すると全員が頷いた
すると…
太一
「そんな所でいいだろ…」
千冬
「八神、コロモン…お前達に最後の確認をする。」
太一&コロモン
「ん?」
千冬
「本当にお前達の事を公表してもいいんだな?今ならまだ誤魔化した公表に変える事も出来るんだぞ?」
千冬は最終確認として自分達の事を正直に話してもいいのかと聞いて来た
全員
「………」
その千冬の最終確認に全員が黙り込んだ
千冬が何を言いたいのか全員が分かったからだ
太一
「…俺達がこの世界の人間達から狙われるって言いたいんだろ?」
千冬
「………そうだ…」
それは太一とコロモンも同様だった
だが…
太一
「なら気にするな…何時までも隠せるとは思っていなかったしな…いずれはこうなっていた事だ…それに、そう言う奴等は返り討ちにしてやればいいだけだ。」
コロモン
「そうだよ♪」
千冬達の心配を他所に2人は全く気にしてなかった
千冬
「そうか…(確かにそうだな…コイツ等は一夏と違って力も経験も申し分ない…狙われても逆にそいつ等を壊滅させる事も出来るからな…)分かった…」
そんな2人を見て確かにその通りだと思う千冬達だった
しかし…
千冬
「だがな、全てをお前達2人だけで解決しようとするな!デジモンに関しては確かに無理だが他の事なら力になれる!何かあれば私達を頼れ!いいな!」
太一&コロモン
「………」
千冬は何時でも力になると言って来た
その千冬の言葉にその場にいる全員が頷いた
太一
「感謝する…」
コロモン
「ありがとう…」
2人は素直に感謝を述べ頭を下げた
そんな二人に千冬達は満足そうに笑みを浮かべた
太一
「むぅ………話を戻そう………公表に関してだが束に頼みたい。」
少し照れながら太一は話を元に戻した
束
『束さんに?』
千冬
「ふむ、確かにそれが一番信憑性が高くなるな。【SINウイルス】の時もお前が直々に説明したからこの学園の連中は信じたからな。」
束
『分かったよ!その代わりお膳立てはそっちに任せてもいい?』
轡木
「承知しました。ではこの後シェルターから出した各国の来賓の方達に後日篠ノ之博士からの説明があると言っておきます。前回同様説明はこの学園で行って貰い、今回は各国にも映像を繋いで説明して頂くという事でどうでしょう?」
束
『それでいいよ。』
轡木
「では準備が出来次第八神さんから連絡を入れて貰います。」
束
『お願いね~♪』
轡木
「それから博士がココにいる間の警護は八神さんにお願いしてもよろしいですか?」
太一
「構わない。」
こうしてデジモンの正体に関しての話し合いは終わった
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
一先ず公表する内容が全て決まり全員が一息吐いた
その時…
束
『ああそうだ皆!ドイツの連中に気を付けておいてね。』
突然束がドイツに気を付けろと言い出した
千冬
「ドイツ?ドイツがどうしたんだ?」
束
『実は【バルバモン】の依り代になった子の機体の事なんだけど…』
千冬
「ラウラの機体?【シュヴァルツェア・レーゲン】がどうかしたのか?」
束
『うん、さっきコアのネットワークを経由して少し調べたんだけど、その子の機体に【VTシステム】が積まれている事が分かったんだよ。』
全員(太一とコロモン以外)
「【VTシステム】!?」
太一&コロモン
「?」
千冬達が驚きの声を上げるが、太一とコロモンは【VTシステム】が何なのか分からないので首を傾けるだけだった
千冬
「確かなのか!!」
束
『うん、隠してあったけど束さんにかかれば簡単に見つかったよ。』
鈴
「あんな危険なシステムを積むなんてドイツの奴等何考えてるのよ!」
太一
「………なあ、その【VTシステム】って一体なんだ?」
コロモン
「うんうん!」
周りが慌てる中、話に着いて行けない二人が【VTシステム】とは何かと聞いて来た
轡木
「お二人はあのシステムの事を知りませんでしたか?」
太一
「ああ、聞いた事も無い。参考書にも載ってなかったと思うが?」
千冬
「そう言えばそうだった…【VTシステム】は本来、ISに搭載する事はおろか開発と研究も禁止された物だから参考書にも載っていなかったな。本に載っていないんじゃ別世界から来たこの二人が知る筈なかった…」
真耶
「そうですね、では及ばずながら私が説明させていただきますね。」
太一
「頼む。」
すると真耶が代表して説明を買って出た
真耶
「まず【VTシステム】の正式名称は【ヴァルキリー・トレース・システム】と言います。このシステムは過去にISで優秀な成績を収めた人…私達の身近な人ですと【モンドグロッソ】の初代優勝者の織斑先生ですね。そう言った人の戦闘パターンをデータ化して、それをそのまま使用者に反映させるシステムの事です。」
コロモン
「…つまりそのシステムを使えば誰でも織斑先生の戦闘力を手に出来るって事?」
真耶
「簡単に言えばそうなります。ですがこのシステムには大きな欠陥がありました。」
太一
「…そこまで聞けば大体分かる。…使用者の体がシステムに着いて行かない、もしくは限界以上の能力を引き出されて体にかかる負担が大きいってところか?」
真耶
「その通りです。主に後者が理由になります。【VTシステム】は体にかかる負荷が大きすぎて最悪は使用者が命を落とす危険性があるんです。」
コロモン
「だから使用が禁止されたんだね?」
千冬
「そうだ、今は使用、開発、研究の全てが条約によって禁止されている。…それをドイツの連中は条約を破ってラウラの機体に積み込んでいたとは…束、ラウラの機体には誰のデータが入っていた?まさかとは思うが…」
束
『そんなのちーちゃんしかいないでしょ?』
千冬
「やはり私か…なら発動条件みたいなものは分かるか?」
束
『うん…まず機体に一定量のダメージが蓄積される事、後は搭乗者の精神状態と願望だね。それが全部揃うと発動する様になってるよ。』
太一
「…ダメージ…精神状態…願望………ん?ちょっと待て!」
束から聞かされた発動条件を聞いて【VTシステム】の事を考えていた太一はある事に気付いた
太一
「その条件だと【バルバモン】が現れた時と同じタイミングで【VTシステム】が発動していたんじゃないか?」
全員
「あっ!!」
それはラウラが【バルバモン】に取り込まれたタイミングは【VTシステム】を発動させる条件が全て揃っていた事だった
太一に言われ全員がそれに気付いた
真耶
「た、確かに…条件が全て揃ってますよ!?」
鈴
「つまりアイツは…」
セシリア
「【バルバモン】に憑りつかれていなくても【VTシステム】が発動して暴れていたという事になりますわね…」
マドカ
「どっちにしろ試合が中止になって大騒ぎになっていたって事か…まあ【七大魔王】に比べたらまだ【VTシステム】の方がマシだがな…」
太一
「それでどうするんだ?デジモンの事ならともかくIS関係の問題に俺達は役に立たんぞ?」
オータム
「だよなぁ…」
太一がそう聞くと全員が考え込んだ
IS関連の話に関しては太一もコロモンも対策が分からないのだ
千冬
「………ラウラに関しては私から言っておく。【VTシステム】については束の公表が終わった後にIS委員会に報告しておけば向こうで対処するだろう。」
すると千冬がラウラは自分で、ドイツに対してはIS委員会に任せると提案した
轡木
「ふむ、それでいいと思いますがドイツ本国がボーデヴィッヒさんに責任を押し付ける事も考えられますよ?」
千冬
「確かにそうですね…ならその辺りも委員会に言っておきます。蜥蜴の尻尾切りを許すなと言っておけば分かるでしょう。」
轡木
「蜥蜴の尻尾ですか…なるほど、それなら織斑先生の言いたい事も伝わりますね。」
束
『まあそれでもドイツの連中が悪足掻きするなら束さんが止めを刺しておくよ。』
オータム
「止めって何する気だ?」
束
『連中がやってる公には出来ない情報をばらすだけだよ。』
千冬
「そんな事だろうと思った…なら委員会を経由して束からの脅しも伝えておくか。束を敵に回してまで足掻くほど連中も馬鹿ではあるまい。」
束
『よろしくね~♪』
こうして何故かドイツへの対策も取る事になり『束の脅迫』と言う力技で収める事にしたのだった
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
千冬
「では八神、そろそろお前の企みを聞かせて貰えるか?」
太一
「ああ、だが先に事情を知らない者もいるから、そっちを簡単に話しておく。」
すると太一は以前シャルルの正体を問い質した時の事をマドカ達にも話した
そしてその時、束に依頼した事も合わせて説明した
真耶
「デュノアさんが女性だったなんて…全然気づきませんでした…」
太一&コロモン&千冬&オータム
「………」
真耶のその言葉に太一達は目を細めて見つめていた
その視線に気付いた真耶は…
真耶
「…すみません…気付くべきでしたよね…」
謝る事しか出来なかった
轡木
「そ、それで八神さん?何をする気なんですか?」
そんな真耶がいたたまれなくなったのか轡木は太一に話を振って来た
太一
「それを説明する前にまずは束の調査を聞いてからだ。それで結果は?」
束
『うん、まず社長だけどこの人は白…真人間だね。』
オータム
「…って事はデュノアを送り込んだのは…」
束
『本妻の仕業だよ。つまり問題は本妻の方、こっちは真っ黒を通り越してドス黒いよ。』
千冬
「と言うと?」
束
『あの会社は裏で本妻が取り仕切ってるんだよ。社長は完全なお飾り。表向きは出遅れたISの開発で経済危機に陥ってるけど、裏じゃ女尊男卑に染まった奴等が非合法の武器を造ったりして売り捌いてるから結構稼いでるよ。でもその儲けは全部本妻とその取り巻き達の懐に入ってるね。』
太一
「ふむ、ならその非合法の商品をデュノア社が開発しているって言う繋がりはあるのか?」
束
『無いね。連中にとってあの会社は単なる隠れ蓑でしかないよ。例えデュノア社を調査しても束さん以外の奴等じゃ裏には辿り着かない様になってる。』
太一
「辿り着かないって事はその逆で裏からも表に繋がる事は無いって事だな?」
束
『え?まぁそうなるね…』
太一
「束、その本妻と取り巻き連中の不正の証拠を集められるか?裏でやってる商売を重点的に頼みたいんだが。」
束
『それなら調べた時に一緒に集めてあるけど…本当に何考えてるの?さっき束さんにスポンサーを付けるとか言ってたけどそれとどう関係するの?』
報告を終えると束は太一が何を企んでいるのか聞いて来た
束も太一が何を考えているのか分からなかったのだ
太一
「うむ…まず束?お前の夢はISで宇宙に行く事だな?」
束
『え?うんそうだよ。』
太一
「そして男女両方が使えるISを開発する事…そうだな?」
束
『そうだけど…それがどうしたの?』
太一の質問に束は首を傾けた
今の質問は全て太一も知っている事だからだ
太一
「束…お前が目的の物を完成させた時、それをどうやって世に出すんだ。」
全員
「………あ!?」
太一のその言葉で全員が気付いた
宇宙専用のISならともかく、男女両方使えるISともなれば女尊男卑の蔓延したこの世界では受け入れられる可能性は限りなく低いからだ
それ以前に生半可な方法では発表する事すら難しい状況だったのだ
かといって10年前の【白騎士事件】の様な事を起こす事も出来なかった
オータム
「言われてみりゃそうだ!」
マドカ
「男女両方使えるIS…確かに今の情勢では受け入れられないぞ!」
太一
「そうだ。そこで考えたんだが、束にどこかの会社をスポンサーとして付けようと思ったんだ。」
千冬
「どう言う事だ?」
太一
「まずその会社をスポンサーとして束と契約させる。束からは新型の設計図でも渡せば取引としては十分な筈だ。そして会社からは利益の一部を束に渡して貰いそれを研究費用にする。」
オータム
「成程…」
太一
「だがそれは前振りでしかない。本当の目的は束が男女両方のISを完成させた時、それを世に出す為の販売元にする事だ。」
束
『え?』
太一
「今のこの世界じゃ例えお前が造った物でも男も使えるISはまず受け入れられん。無論手にしようとする連中はいるだろうがそう言った人達は手を出そうとした瞬間に女尊男卑の奴等に排除されるのがオチだ。」
轡木
「そうなるでしょうね…」
太一
「そこでお前の息のかかった会社からそれを発表する。それもある程度の実績のある企業からだ。それなら下手に手を出す事は出来ない筈だ。」
マドカ
「実績って、それで兄さんが目を付けたのがデュノア社なのか?だがあの会社は今経営危機で潰れかかってるぞ?」
太一
「それは分かっている。だが仮にもあそこは【ラファール・リヴァイブ】の開発元だろ。」
セシリア
「ですが太一様?わたくしが聞いた話ですと今度行われる【イグニッションプラン】にフランスは参加しませんわよ。」
太一&コロモン
「【イグニッションプラン】?」
太一とコロモンは【VTシステム】同様、聞き覚えの無い単語に首を傾けた
コロモン
「何それ?」
セシリア
「簡単に言いますと…欧州連合の次期主力機を決める計画の事です。」
コロモン
「ふ~ん…なんでその計画にフランスは参加しないの?」
セシリア
「正確に言えば参加しないのではなく参加を認められていないのです。実績の無い国が参加しても意味はありませんから。」
セシリアの話に今度は全員が首を傾げた
鈴
「何で?仮にもフランスはそのデュノア社が【ラファール】って言う主力量産機を開発したでしょ。実績なら出してるじゃん。」
鈴の言う事に今度は全員が頷いた
フランスはすでに実績を出しているのに何故参加を許されていないのか分からなかった
セシリア
「確かに【ラファール】は日本の【打鉄】と並んで量産機として各国で採用されています。ですがそれでもあの機体は『第2世代』なんです。【イグニッションプラン】に求められているのは第3世代がメインになってるんです。」
マドカ
「そう言う事か…いくら実績を出していても『第2世代』である以上それは無いのと同じと言う事か…つまりフランスにとって第3世代の開発は急務になってる訳だな?」
だが、その後のセシリアの説明を聞いて全員が納得したのだった
セシリア
「恐らくは…ですがあの国のIS開発の技術力は欧州最後発…例え【ラファール】と言う実績があっても第3世代に関するデータは圧倒的に不足しています。そう簡単に開発など出来ませんわ。」
鈴
「最後発…ねえ太一?そんな国の会社でいいの?」
太一
「ああ…セシリアの話を聞いてますますデュノア社を味方に付けたくなった。」
一連の話を聞き終わると太一は諦めた表情をするどころか口角を上げ笑みを浮かべていた
全員(太一とコロモン以外)
「え?」
太一
「それに【イグニッションプラン】…コイツも利用できる。」
真耶
「八神さん?何故そこまでデュノア社に拘るんですか?オルコットさんの言う通りあそこではこれ以上の開発は…」
太一
「第3世代の開発は無理だ。だが、束が手を貸せばそれも簡単だ。」
束
『確かにそうだけど…それなら他にもいいところがあるんじゃないの?』
太一
「いや、俺があそこを選んだのは【ラファール・リヴァイブ】って言う『
全員
「え?」
太一
「量産機の開発元って事はあの会社の技術力は他の国と違って『
全員
「あ!?」
太一
「量産機を作るのにあそこほど都合のいい会社はいない。それに使い手が限られる専用機より誰でも使える量産機の方が受けはいい筈だ。」
全員(太一とコロモン以外)
「なるほど!」
太一
「そしてセシリアの言っていた【イグニッションプラン】…コイツに量産型の第3世代を出せばどうなると思う?」
轡木
「真っ先に飛びつくでしょうね。オルコットさんには悪いですが同じ世代なら専用機より量産機の方に皆さん目が行くでしょう。」
真耶
「はい、コストの点を考えてもそうなると思います。」
束
『なるほね~…つまりデュノア社の膿を全部出して真っ新な会社に戻した後に、束さんお手製の量産型第3世代の設計図を元手に契約を結ぶ。』
オータム
「そして【イグニッションプラン】でそいつを発表して会社を立て直す訳か。」
千冬
「そうやって実績を作った後、束が『男でも使えるIS』を完成させた時の販売元になって貰う訳か…だが上手くいくのか?」
全員(太一とコロモン以外)
「………」
太一の立てた計画の順序を言う中、それを締めた千冬の疑問に全員が黙り込んだ
ああは言っても成功する保証は無いからだ
だが…
太一
「上手くいくかじゃない…上手くいかせるんだ!それが出来なければこの世界に待っているのは滅びだけだ!俺達が【七大魔王】を倒した後のこの世界を立て直すのはこの世界に住むお前達にしか出来ないのだからな!!」
全員(太一とコロモン以外)
「!?」
そんな不安を太一は力技とも呼べる言い方をして成功させると言って来た
だが、太一の言う通り成功させなければこの世界に未来が無いのも事実だった
そんな太一の激励とも脅しともとれるような言葉を聞いて…
千冬
「そうだな…確かにやらなければならない…」
束
『うん…流石の束さんも世界を滅ぼした大悪人で人類の歴史に幕を閉じるは嫌だからね…』
オータム
「ならやる事は一つだ!」
轡木
「この計画…必ず成功させましょう!!」
マドカ&セシリア&鈴&真矢
「はい!!」
全員が必ず成功させると意気込むのだった
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
太一
「さて、これで話し合いは終わりでいいか?まだ何かあるか?」
轡木
「いえ、ありません。」
太一がそう聞くと代表して轡木が答えた
太一
「ならそろそろシェルターにいる連中を出してもいいだろう。その後の事は分かってるな?」
そう聞くと全員が頷いた
そして、これからする事の最終確認を始めた
千冬
「ああ、後日束から今回の事を説明すると言っておく。その時までは押さえておく!」
オータム
「その後はブーイングした馬鹿共の処分だな。」
千冬
「そうだな…アイツ等にもそれ相応の罰を与えておかないとな!」
太一
「他の生徒達からも質問があるだろうがそっちは俺やマドカ達が上手く受け流して誤魔化しておく。いいな?」
マドカ&セシリア&鈴
「はい!!!」
確認も終わると太一は…
太一
「それで皆には悪いが俺はこれから束と合流してデュノア社に行ってこようと思う。」
今からデュノア社に行くと言って来た
それを聞いて全員驚くが…
太一
「こう言う事は早めに動いた方がいいと思うんだが…いいか?」
太一がそう聞くと…
轡木
「分かりました。こちらは私達に任せておいてください。」
千冬
「なら、帰って来るまでは戦闘の疲れで部屋で休んでいるとでもしておく。一夏あたりがシェルターから出たらお前の部屋に乗り込もうとするかもしれんが鍵をかけておけば問題無いだろう。それでも騒ぐなら私が黙らせておく。」
轡木が代表して答え、千冬が太一の不在の時の対処を考えてくれた(特に一夏に対して)
太一
「スマナイな…それから千冬、ボーデヴィッヒが目を覚ましたら伝言を頼む。」
千冬
「ん?構わないが?」
太一はそう言って千冬に小声で耳打ちした
太一からの伝言を聞き終わると千冬は力強く頷いた
千冬
「成程…アイツにはお前のこの言葉が必要だろうな…確かに伝えておく。」
太一
「頼んだぞ。だが、目を覚ましたアイツを見て言う必要が無いと判断したら言わなくていい。その辺の判断はお前に任せる。それからデジモンの事はあいつ等には話しても構わん。どうせ数日後には束から説明されるからな。」
千冬
「分かった!」
太一
「…じゃあ明日の朝までには戻ると思うからそれまでは頼む。」
マドカ
「一晩で契約出来るのか?」
太一
「いや、流石に一晩じゃ無理だ。だが、束との契約の話だけなら一晩で出来る。それにあの会社の膿を出す必要もあるからその証拠を束に持ってきてもらう。束、構わないか?」
束
『オッケ~♪じゃあ後で合流しよ♪…落ち合う場所は何処にする?』
太一
「そうだな…セシリア、確かドーバー海峡はイギリスとフランスの間にあったよな?」
セシリア
「はい、その通りです。」
太一
「ならその海上で会おう。どうだ?」
束
『うん♪そこでいいよ♪じゃあ束さんは今から向かうね♪…たっくんは間に合うの?』
太一
「【アルフォースブイドラモン】で行けば間に合うだろ?」
鈴
「それなら余裕よね…」
マドカ
「【ロイヤルナイツ】最速だからな…」
太一
「なら俺は行ってくる!後は頼んだぞ!!」
全員(太一&コロモン以外)
「はい!!!」
こうして太一は学園の外に出ると【アルフォースブイドラモン】を展開し飛び立った
<予告>
束と合流しデュノア社へ向かう太一
そして出会うのはデュノア社の社長にしてシャルルの父
この世界の滅びを回避する最初の一手を決める話し合いが今始まるのだった
次回!《ISアドベンチャー 聖騎士伝説》
未来を決める一手
今、冒険が進化する!