ラナークエスト   作:テンパランス

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#081

 act 19 

 

 小休止を挟み、蒼の薔薇は戦闘を止め、それぞれのサポートに周ることにした。元より戦闘目的はなく、要人警護に来ていた事を思い出したので。

 特に竜王国のドラウディロンは単独戦闘だ。そちらはティアティナを向かわせた。

 

「やることは大差ない。ひたすらモンスターを倒し続けるだけだ。無理なら早めに言ってくれ。すぐに止めさせる」

「分かりました」

「どんどんぶっ殺してやるから遠慮は無用……」

「姉様。少し黙っててくれませんか?」

 

 妹のケラルトに窘められて口を尖らせるレメディオス。

 見た目とは裏腹に子供っぽいところがあるようだ。

 聖騎士なのに口が意外と悪い。

 

「カルカ様も無理は禁物ですよ」

「先ほどの大量召喚には驚きましたが……。まだ大丈夫ですよ」

 

 イビルアイはラナー達に顔を向ける。

 こちらは慣れているのか、既に準備が整っていた。

 五人共に低レベルなので先ほどの召喚の際にはすぐさま退避していた。

 戦闘に慣れていれば無謀なことはしなくなるもの、かもしれない。

 

小娘(ラナー)は少し強い程度でいいな。ドラウディロン陛下はどのあたりのモンスターをご所望ですか?」

亜人連中ならどれでも構わないが……。蜘蛛のようなモンスターを頼もうか」

蜘蛛女(アラクネ)ですね?」

「身体の大きな奴な。それにしても噂に(たが)わず面白い施設だ」

 

 首を左右に傾けながらドラウディロンは微笑んだ。

 

「そこにまだ居る赤帽子の小鬼(レッドキャップ)は私が倒してもいいか?」

「出来るものならば……」

竜王国の女王とてたかだか難度100程度も倒せないようでは……。あのロリコンにいいように使われてしまう」

 

 イビルアイはそれぞれが要望するモンスターを選定し、無理のない戦闘を心がけるように言い含めた。

 

          

 

 数時間かけてもそれぞれが討伐した数は決して多いとは言えない。

 自分たちより少し強いモンスターというのは倒しにくいものだ。

 楽して倒せるものほど経験値は少ない。

 今日の分の戦闘を終えたラナー達は部屋を替えて小さな会談を催す。

 

「女王二人と王女一人はなかなか無い組み合わせですよ」

「互いの国はとても離れてしますし、モンスターの脅威に晒されていますから」

 

 特にカルカ達は原作の方で酷い目に遭っている。

 この出会いは二次創作だからこそ実現した奇跡だ。

 

「……とモノローグさんがおっしゃっておいでですが……。確かにそうですわね。一生出会う事が無い場合もありえるわけですし」

「もう会えない事になっているかもしれないから、この話題は避けたいな」

「……おお、我々の国もあっさり滅んでいる未来があるかもしれませんね」

 

 竜王国の宰相が言うと冗談に聞こえない、とドラウディロンが身体を震わせながら抗議する。

 というか、この宰相は人間なのか男か女なのかも不明。

 いずれ何らかの情報が出れば何がしかの修正が加わるかもしれない。

 

「……うちの宰相は……、皆の目から見れば立方体の集合体のような姿に見えているかもな」

 

 人はそれを『ポリゴン』や『(あら)いドット』、『モザイク』などと呼ぶ。

 

「……グスターボもイサンドロも絵に起こしてくれなければモザイク画と変わらないな」

「後ろ姿は描かれましたけどね」

 

 鎧姿なのでグスターボ・モンタニェス本人かは不明。

 意外と真正面を描かれているネイアの方が印象に残っているのではないかと思われる。

 

聖王国竜王国は亜人の侵攻が無ければ人間の国との交流がもう少し盛んに出来たんでしょうね」

「王国は小競り合い程度ですわね。取り立てて大きな脅威は今のところありませんし」

帝国は戦争の予定は無いのか?」

「今はそれどころではない、という事になっております。ここ数年は国家の財政を増やすことに専念されるかと存じます」

 

 同盟国となった魔導国建国の為に帝国は多大な資金を投入し、少し傾きかけていた。

 今はカルネ村村長の助力を得て、少しずつ市民生活が潤い始めたところだという。

 

「こちらは獣人(ビーストマン)の脅威。聖王国山羊人(バフォルク)でしたか?」

「他にも数種の亜人が連合を組んでいる。その中で豚鬼(オーク)達は戦闘に参加していないそうです」

「そういえば私がここに居て、モンスターを倒しているのでタイトル詐欺にならなくて済みました」

 

 と、メタ発言をするラナー・ティエール・シャルドロン・ライル・ヴァイセルフ

 多くの二次創作で『シャルドルン』と書かれているリ・エスティーゼ王国第三王女

 確かに距離やタイミング、それぞれのストーリー上の出会いが絡まないと進みにくいところはある。

 本来はメインキャラであるはずの『アインズ・ウール・ゴウン』が殆ど出て来ない。いや、ターンアンデッドを食らう役回りを担った程度で終わってしまったのは残念だが。

 王国と帝国の間はかなり距離が離れている。それぞれに拠点を設けると同時進行はとても難しくなる。

 片方を優先すれば片方がどうなっているのか分からなくなる。

 

「……度々勝手に出てくるモノローグは何なんだ?」

 

 レメディオスが疑問を抱くが、それは誰もが疑問に思うところだ。しかし、進行役はどうしても必要で、メインキャラが言わないことも説明しなければならない時がある。

 都合よく喋ってくれる保証は無い。

 

「……(おおむ)ね、その通りですわ」

「ここで私が笑いを取ろうとしても構わないと?」

 

 カルカが様々な身振り手振りを披露する。

 出番がとても欲しい、という気持ちが現れているようだ。

 ようやくにして聖王国が注目されたのだから様々な発言をしたい気持ちは理解出来る。けれどもカルカは女王であり、民が求める聖女でもある。

 

「誰か彼か出番が欲しいのは一緒だ。竜王国が滅んだ後の話しはさすがに勘弁願いたいものだが……」

 

 民が多数犠牲になるかもしれないがドラウディロンは生き残りそうな予感がする。

 それは切り札たる魔法を持っているからだ。

 

「……自分で止めを刺しそうだからな……。嫌だな、そんな展開……」

「本質的に魔導国をどうにかしたとしても敵が減るわけではありませんからね」

「……確かに」

 

 聖王国は南北に権力が分断された状態。王国は貴族派閥がある。

 竜王国も国土が広ければ色々と国内問題が持ち上がる、かもしれない。

 

「退屈しなくていいと思えば楽ですけどね」

「……殺戮が多くても困るけれど」

 

 折角集まったので昼ごろまで世間話しをし、その後はラキュース達を交えて軽い運動を(おこな)う。

 その後で宿舎に居た雪音クリス達をまねき大人数で武器を使った運動をする。

 モンスター退治が苦手でも自分の身を守らなければ生きていけない世界だ、と言い含めて。

 女性陣が多いので大浴場を利用する。

 元々は死体洗いに使っていた、という事は伏せずに。

 

「常に清潔にしているし、死体といっても自我が無い者達ばかりだ」

「……そういう事は聞きたくなかったな」

「お前たちがどう思っているかなど知らないが……。ここでは日常的な事だ。得体の知れない死体の肉を食わされないだけマシだと思え」

 

 厳しい言葉でイビルアイは言うが、それなりの人生を送ってきたからこその言葉だった。

 綺麗ごとでは済まされない人生が確かに存在する。

 


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