ラナークエスト 作:テンパランス
最初の依頼は定番のモンスター退治。
冒険者になったばかりのチームに相応しい
討伐用の
亜人種で身体の色は緑色だったり茶色だったりするが背丈は一様に一メートル足らず。
粗末な棍棒や小刀などを装備し、下顎から牙が生えていて知性の低いモンスターが多い。一口に
一般的に知られているのは弱い部類だ。確認されている個体数は圧倒的に多い。
中には魔法を使う
アダマンタイト級の冒険者でもないと対処できない強敵で名前の通り、赤い帽子をかぶっている。
性格は残忍で狡猾。素早い上に力もある。小さな身体を生かした攻撃を得意としている。
それも複数体。
猫背気味で知能は低いが筋肉が発達しているので序盤のモンスターとしては強敵に位置する。一応、大きな棍棒を持っている事があるので油断は出来ない。
力任せの戦闘をしてくるので動きはそれほど早くは無いが
銅プレートにとっては強敵と言われている。
墓地に出現する
アンデッドモンスターの特性で疲労しないし、多少の攻撃にも恐れを抱かない。
訓練としては最適だが、甘く見ることは出来ない。
生物の対極に居ると言われているので多種多様の
骨の集合体が
王国ではまず目撃されないがバハルス帝国の領内にある『カッツェ平野』で目撃例が出た事がある。
金級以上、アダマンタイト級の冒険者でなければ対処できない強大なアンデッドモンスターだ。
第六位階までの魔法を無効化するので
「そこまで強いモンスターの知識は今は要らないと思いますが……」
レイナースから色々と話しを聞いていたラナーは言った。
「無謀にも戦いを挑むかもしれない。知っていて損はないと思うぞ。まず、我々の目標は
「分かりました」
「了解しました」
「……弱体化しているのだったな。了解した」
それぞれ返事をしていく。
「
「……確かに。痛いのは嫌ですわ。それと、敬称は不要です。気軽にラナーと呼んでくださいませ」
「分かりました」
「
「依頼では各二匹ずつの十匹だ。他の冒険者の為に全滅させてはいけないのだろう」
「……そういうものか」
「仕事が無くなっては困るからな」
戦闘の知識ではレイナースが上なので説明は今のところ彼女に任せておいた。
† ● †
装備品などを確認し終えた五人は目的地に向かう。
モンスターがよく現れる森の近くに村を模した施設がある。
「ここだな。
「レイナースさんがリーダーを務めた方がまとまり易い気がします」
「そうなんだろうけれど……。クルシュは戦闘は得意ではないのか?」
「平和的に暮らしておりましたので……。こういう事は男連中が得意ですから」
自分でラナーを推薦しておいてリーダー面はしにくい。けれども、ふざけた気持ちで戦闘を始めるわけにはいかない。
油断すれば自分の右側の顔に受けた呪いの二の舞もありえなくはないのだから。
現場に集まっている
レベル5となっている今、油断が出来ない。
アルシェ達、魔法を扱う者達は物理攻撃がとても低くなっている。
「まずは戦士職の私が適度に痛めつける。君たちはトドメを刺すがいい」
「分かりました」
「……うむ。存分に働け」
ナーベラルは尊大な態度だが仕方が無い。彼女は異形種で人間嫌いだそうだから。
それでよく人間の都市の冒険者組合に来たものだ。
手加減できる自信は無いが、身体を慣らす意味でもやらないよりはましだと思った。
レイナースの突撃で
少し前より身体が重く感じるが懸命に剣を奮う。
思っていたよりも遅く、苛立ちを覚える。
「……ちっ」
ガスガス、と切れ味の悪い音が聞こえる。思っていたより刃の通りが悪い。
それはそれで構わない。当てっているし、相手の攻撃も見える。
手際は少し悪いが仕留めた
杖などを叩き付ければいいだけだ。
「……銅プレートはこんなに弱いのか……」
歴戦の騎士たるレイナースはがっかりした。だが、弱体化すれば油断が生まれる。これはこれで良い訓練となる。
強さに胡坐をかかない。
剣を握る手に力を込めて
† ● †
ガツンガツンと女性陣が
「それぞれ規定の数のモンスターは倒しましたか?」
「はい」
「なんとか」
ラナーは死んだモンスターから部位を切り取っていた。
切り取る部位は冒険者組合から貰う書類に記載されていて
これが収入になるらしいが、どうして必要なのかが分からない。というか、何に使うのか。
「
殆どレイナース一人で討伐したようなものだが合計二十体をよく倒しきったものだ、と自分で驚いていた。
「死体はどうするんですか?」
「ひとまとめにしておく。後で回収する者が居るのだろう」
ナーベラルは死んだ
「……駄目だな、不味くて……」
「無茶をするな。病気になったらどうする」
「毒無効のアイテムは持っているから」
「無茶はしないでくれ。中には毒を持ったモンスターも居るんだからな」
ナーベラルは顔をしかめたが、言い分は理解したので反論はしなかった。
異形の身体とはいえ病気にならないとは言い切れないし、石化の呪いを受ける可能性も言われていた。
軽はずみな行動は自分の主に叱られる原因となる。
「宿屋の食事の方が安全だと思うがな」
「何事も調査は必要かと思って……」
「……万全の体制を整えてからやってくれ」
「……了解した」
素直になったナーベラルを見て、レイナースは組合に戻る事を提案する。
それぞれモンスターの死体を集めて冒険者組合へと戻る。
今日の獲得経験点は2206ポイント。
それぞれ441ポイントずつ割り振られる。ただし、戦闘の仕方などで獲得した様々な経験値は各人に随時加算されていくので割り振られることはない。
値が低いのは
チームでの討伐の場合、モンスターを全滅させるか、倒した後で逃げ切るか、した場合に経験点が合計されて、それぞれに割り振られるようだ。あと、小数点以下は切り捨てになる。ただし、獲得した、という実感が無いのでラナーやクルシュは小首を傾げた。
そもそも
「……
モンスター以外の戦闘などで得たポイントも微々たるものだが獲得していたようだ。
棒で一回殴るとどれほどの経験値になるのか、それはよく分からない。
「不毛……ですわね」
「何となくは……、そう思っていた。昇進する頃にはレベルアップしているだろう」
「……そういえば、私、レベル5になるの忘れてましたわね。……往復するのも大変でしょうから、このまま続けますわ」
初日は殆どレイナースが活躍した。それぞれ独自に動けるようになるまで随分とかかりそうな予感を感じた。
楽してレベルアップは出来ない。