ラナークエスト 作:テンパランス
モンスター討伐を終えて必要なレベルに上げたラナーは王都に帰還する。実際に経験値の割り振りは未だに非公開なのだが、イビルアイは仕組みを承知している。そして、それは迂闊に公開できない事だと理解している。
長々と説明するのはまたの機会だとイビルアイは話しを切り上げてしまった。
肉体的には以前のまま大して強化されていないが経験値は割り合い増えている、という話しだった。
仲間たちが待機している宿に向かい、報告を済ませた。
「これで五人とも仲良くレベル5か」
「『カリスマ』ではなく『
「……どこが変わったか分からない……」
「それより私のレベルはどうなるんだ? この辺りのモンスターでは絶望的ではないか」
と、ナーベラルは憤慨する。
一番、レベルが下がったのは彼女なのだから仕方が無い。それに元のレベルが63なので上げ難いことこの上ない。
異形種はマグヌム・オプスを支障なく使えると聞いた覚えがある。なので案外、何とかなると思う、という軽い気持ちをラナーは抱いた。
「改めて私が金の……『黄金の仔山羊』のリーダーを努めさせて頂きますわ。早速、拠点を移動しましょう。目的地はエ・アセナルで……」
「却下」
ラナーの発言を即座にレイナースが否定する。
いきなりの異議申し立てにラナーは眉間に
「レベル5だぞ? 普通ならエ・ランテルだ」
というか、エ・アセナルに出てくるのは
「……仕方ないですわね。
「お金が稼げるなら……。安全もつくか……」
「私はあまり遠出できないのですが」
「魔導国に近いなら……、文句は無いな」
白い
それから拠点移動は今すぐか、あと少し依頼をこなすか話し合う。そして、一つの重大な事実に行き当たる。
「国を変えたら冒険者ランクってやり直しになる規定じゃなかったっけ?」
現在の城塞都市エ・ランテルは魔導国の領地となっている。
「行動範囲が狭まるので王国と帝国で協定が結ばれたはずだ。どちらの冒険者もエ・ランテルの領地内ではランクを維持したままで良い、という」
元々は王国領だった。
都市の中にあった冒険者組合の人員の流出を止める為の策であり、将来的には変更されるかもしれない。
「魔導国の依頼だと未知の領域に行く場合があるけれど、受ける?」
「それだと私は無理そうですね」
と、クルシュが自分の立場から発言した。
「未知の冒険には興味ないな」
メンバーの共通認識はとにかく元の強さに戻りたい事と金が欲しい。あと、実家からあまり遠くないところ。
五人がそれぞれ議論を交わし、結論が出たのは数時間後だった。
とにかく今は現状を維持しつつ金と経験値を稼ぐこと。ある意味では夢も希望もなく、冒険心すら必要の無い結果となった。
相当、レベルダウンが響いているようだ。
「では、結論が出たところで……」
「ひと狩り行きましょうか」
「異議なし」
「モンスター退治の仕事は確定ですか?」
「仕事は仕事だ。ついでに昇進も」
方向性が定まったので五人は冒険者組合へと向かう。
目下の目標は次のランクへの昇進。
リーダーの本来の目的はただ一つ。
モンスターを殺すこと。
憎いからではなく、純粋に殺してみたいだけなのだ。
このクソッたれな世界で楽しい娯楽といえば、世界を相手取って引っ掻き回すか。武器を手に取り、仲良くモンスターを殺すことくらいだ。
ラナーは後者を選択した。
未経験の分野には興味がある。だからこそ確かめたかった。
あまりにも暇だったので。
『黄金』の二つ名を持つラナー王女は格好付けて依頼書を叩きつける。そして、考えていた決め台詞を国民の前で見せるような微笑と共に王女に恥じない気品に満ち溢れた風格を覗かせながら言った。
「これを受けたいですわ」
歴戦の冒険者の依頼を受けてきた受付嬢はいつもと変わらぬ営業スマイルで返答した。
「念の為に聞きますが、下水道の清掃作業ですよ。本当によろしいんですね?」
表情は崩れなかったが、ラナーの顔色はみるみる青くなっていった。
そして、受付嬢はそんなラナーに止めを刺してくる。
「よろしいんですね?」
倒すべき最強のモンスターが目の前に居るとラナーは本能的に感じた。
しばらくは退屈しなくて済みそうですわ。
クロスオーバーによるパラダイムシフトにより、新しいストーリー、イベント、種族、
世界のシステムの一部が上書きされ、未知の実装が