ラナークエスト   作:テンパランス

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#157

 act 95 

 

 ずっと大人しくしていた立花は単に難しい話しに参加できないだけだった。

 腕の痛みは無いし、穏便に済めばいいかな、という事を考えていた。

 自分達の仲間以外は戦いの連続。こうして話し合いになるのは意外ではないか、と今更ながら気づく。

 思い返せば最初から穏便に話し合いになったためしなど無い。

 

「……こうして皆が集まってるのに戦いが起きないなんて珍しいですよね」

「はあ?」

 

 立花の言葉にあからさまに不機嫌を示す雪音。しかし、それはすぐに霧散する。

 確かに彼女の言う通りだと気づいた。

 急に現われるメイドを除けば穏便に進んでいるのが奇跡のように思う。

 

「ま、まあそうだな」

「私からも質問いいでしょうか?」

 

 と、左腕を掲げる立花にオメガデルタは頷きで答える。

 

「所々物騒な単語が聞こえますけど……。貴女は……その、我々の敵ってことになるんですか?」

「……ふむ。敵……か……。う~ん、まあ当たらずも遠からずだね。味方というには物騒な現場だ。加えて私自身も大変物騒な存在でもある」

 

 苦笑しながら素直に答えるオメガデルタ。

 善人とはいいがたい。それは本人も認めるところだ。

 敵かと言われると答えにくい。これはオメガデルタ自身彼女達の敵になりたいわけではなかったので。結果としてそうなる()かもしれないというだけだ。

 

「わっ、と驚かせる気は無いけれど……。ついつい未知の能力に興味が行ってね」

 

 特に『ユグドラシル』に実装されていないものは。

 彼女達の情報はもちろん持っていない。

 別の世界では当たり前の事なのか。いや、秘匿情報だから自分達の世界にもあったかもしれない。ただ自分が知らないだけとも考えられる。

 可能性の話しは不毛だが、問題なのはシンフォギアというのはゲームの事なのか、それとも現実の事なのか。

 

          

 

 武器に鑑定の魔法をかけると未知の金属のせいで、分析が出来ない。

 既存の鉱石ではないようだが、であれば何なのか。

 小さなペンダントに収納出来そうにない物体だし、と。

 

「こいつらのアームドギアを欲する代わりとしてオレの『ダウルダブラ』と『ファウストローブ』をやろう。もはや無用の長物だ。これを対価にしてほしい」

 

 異空間から自身の身長ほどもある金属製の竪琴を取り出すキャロル。

 対価として充分かは分からないが、()()()()()()()()()()だ。

 

「増やしたものはどうするの?」

「それぞれ自分のは消せるみたいだから処分するのは簡単だ」

 

 消えないと()()()困る、と天羽は思った。それと折角の労働が無駄になるのは面白くない。

 不思議な現象でついつい調子に乗ってしまったけれど、立派に怪現象だ。

 シンフォギアが増えるって何、と。

 

「長話しはそろそろ退屈だと思うので……。物騒な話題に移りますか」

「……お、おう。あたしはある程度は見て来たけど……、それよりもヤバそうなものか?」

「鍛錬程度はヤバくないですよ。ちょっと前まで首をポンポンはねていた気がしますが……。腕を落とすようなものです」

 

 ただの言葉であれば雪音意外は眉根を寄せる程度で済む。けれども鍛錬の内容を知る雪音は顔面蒼白になる。

 屠殺場と呼ばれる部屋で何が(おこな)われたかを知れば風鳴達もきっと恐怖に(おのの)く。

 モンスターが確実に存在し、それらを剣を持って惨殺していくのだから。

 

「物質を増やすより前は肉体を増やす。さて、それはどのような方法かな」

 

 オメガデルタの言葉に答えられるのは現時点では雪音ただ一人。

 

「強力な魔法を持ってすれば肉体も増産できるって仕組みか……。それマジで……出来るから屠殺場があるんだな……」

 

 モンスターを量産する。それは魔法で召喚するというイメージだったが実際は違う、という意味だと理解した。

 だが、それを実際に見ていないので信憑性が乏しい。

 仮に様子を見れば更に恐ろしさが伝わる気がする。

 


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