ラナークエスト 作:テンパランス
屠殺場に着いて服は脱いでもらい、武器を渡していく。そして、今回は洗脳系の餌食になってもらう。
のんびりとしていると一ヶ月ほど施設に留まったまま話しが進まなくなるので。
効率化に特化すれば各個人の感想で時間を潰す手間が省ける。
用意が出来たところで放置する。
オメガデルタは既定の時間になったら報告するようにメイドに指令を与えておく。
単純作業はつまるところ、どれだけ効率的に出来るかだ。
「ぶく姉さんは帰ったのかな」
メイドに尋ねると
一部の封印作業を指示した後で地上に出る。するとかなり巨大な生物の姿があって驚いた。
人間台の生物ばかり相手にしてきたので超大型は精神的にびっくりさせられる。
重厚な鎧をまとう赤みを帯びた白銀の獅子。
全長五十メートルほど。想像以上に巨大だった。それが既に百メートルほどの距離に居る。
「……足音が聞こえなかったな。消音の
あれだけの巨大生物なら地響きくらいはあるものだ。まして『マグヌム・オプス』は魔法的に実装された施設では無い。自然災害に激しく影響される普通の地下施設だ。
「よう、……えっとオメガ……だっけ?」
宿舎の近くから声をかけてきたのは猫科の動物。
エジプト神話系のモンスターのような姿をした知り合いだった。
「るし★ふぁー……。まだ生きてたのか」
「それはこっちのセリフ。お客さんを連れて来てやったぞ」
動物の顔なので喜怒哀楽が分かりにくいが自慢しに来たようなので、たぶん笑顔だ。
人間的にいえば好きでも嫌いでもない人物で、よく罠の実験台にされた。特にるし★ふぁーの罠はオメガデルタの原型がいつも留めないほどの規模を平然と作ってくる。
しかも仲間にも襲い掛かるような厄介なものばかり。
メインの種族は『
本来は犬科の種族で統一しなければならないところを猫にした。
るし★ふぁーのステータス。
そう小声で呟くと急いで駆け寄ってきたるし★ふぁーに体当たりされた。
それだけならば大したダメージではないが、一応攻撃なのでオメガデルタのメイド達が彼に襲い掛かる。
「おいこら! こいつらを止めろ!」
「自業自得だ。それで……、いつもダルそうなお前が珍しく仕事をしているのは何故なのかな?」
戦闘を止めずに尋ねてみた。当然の如くるし★ふぁーは激しく抗議してきたが無視した。
レベルは60台のメイド達しか居ないのでそれほど大きなダメージは食らわないはずだ。だからしばらく放置してみた。
創作系とはいえ一人で戦闘する事もあるので、それなりに戦えるプレイヤーだ。
普通ならばアダマンタイト級の冒険者をも十分と持たずに駆逐する戦闘能力を持つメイド達からの攻撃を軽傷で済ませているのだから、彼の実力は相当に高い事が窺える。
† ● †
改めてるし★ふぁーという存在の紹介から。
背中には鳥の翼が生えているが、四つんばいになって歩いたりはしない。
「滅多に登場しないから新手のモンスターかと思ったぞ」
「それは色々と仕方が無い。……というよりメイド達を下がらせろ」
「ステータスを発表して良いなら」
高レベルプレイヤーのステータスを聞く相手は現在のところオメガデルタとるし★ふぁーしか居ない。
宿舎に居る者達はまだ大型モンスターに気付いていないのか、誰も出て来ない。
窓から見ているかもしれない。
意地悪はそろそろやめにしてメイド達を下がらせる。その合図方法を教える気は無い。
数の暴力はつまるところ新しい能力に駆逐されるのがお約束だ。例えば新しい概念とか。
今までの方法は新世代には全く通用しなくなる。それが世の常だ。
「日頃の恨みを晴らせると思ったのに……」
とはいえ、このままるし★ふぁーを倒してもオメガデルタのエンディングは来ない。
まだタブラ・スマラグディナが居るから、という訳でもない。
「で、あの巨大生物だけじゃないんだろう?」
「あ、ああ。大半は人間だ。後は任せた」
そう言って帰ろうとする猫にメイドをけしかける。
そう簡単に逃がす気は無い。転移しても何処までも追いかける。それはもう『ティンダロスの猟犬』のように。
「おいおい、るし★ふぁー。タダで仕事をする程私はボランティア精神にあふれてはいないんだよ」
女体が無ければやる気をなくす程。
他人の身体は蜜の味。
「お前の
「ちょっとかよ。てめーの方法だと全部じゃねーか」
「猫を虐待する趣味は無いんだが……。全部とは心外だ。アイテムは残すよ」
それに身体は半分ほど残るし、と。
人の者を頼む時は相手を選ぶ事だ。これはこの世界においてかなり大事な事となっている。