ラナークエスト 作:テンパランス
特訓を終えて城で身支度を整えた後、死んだように眠るラナー。
数時間後に目覚めれば酷い筋肉痛で悲鳴を上げる。
握力がまだ戻ってきていない為に物が持てない。
数人のメイド達によって食事は何とか食べられたが、あまり食欲が湧かなかった。
クライムの時とは明らかに違う。
本当の特訓はもっと辛いという事だ。
「ラナー様。このまま続けられるおつもりですか?」
「もちろんです。……私は意外と負けず嫌いなんですよ」
序盤はこんなものだと予想していたが身体の脆弱さにラナー自身、呆れている。元々、武闘派ではないので仕方が無いが、もう少し戦えると思ったのが間違いだった。
良い武具を使えば楽。ラキュースを見ていて、そう思っただけだが彼女も相当な努力をしてきたに違いない。それでいて優雅に振る舞える。だからこそのアダマンタイト級冒険者『蒼の薔薇』のリーダーなのかもしれない。
単なる
「そういえば、クライム」
「はい」
「経験値が溜まった後はどうすれば良いのでしょうか?」
「それは私には分かりかねます。気が付いたらレベルアップしているものらしいです。世間一般の意見では……」
「……
卑怯な方法はあまり使いたくないけれど、必要な情報くらいは欲しかった。
今の段階では一つくらいしか上がらない。
ずっとレベル2のままでは
ある程度の強さは必要だ。
† ● †
冒険者になってすぐ
チーム戦はカウントしない。
そういうことで再度、挑戦する。
鍛錬で少しは動けるはずと思ったが筋肉痛が抜け切らない。
異様に身体が重く感じられる。
「……このままでは筋肉が付きそうですわね」
首から下が筋骨隆々の姫が出来上がるのは決して冗談ではないような気がしてきた。
想像すると面白い化け物が現れるが笑い事ではない。
あれこれ抑制していると身体を壊しそうなので多少の筋肉には目を
「では、頑張りましょう」
動きが少し鈍いが懸命に耐えた。
しっかりと相手の動きを見て剣を奮う。
手の感触では握りはしっかりしているのが分かった。
「ギャッ」
油断無く一撃、一撃を入れていく。ダメージ量はおそらく少ない。
真剣な眼差しで剣を振るうラナーに笑顔は無い。
油断すれば敗北して地に倒れ伏す。それもいとも容易く。
見守っているクライムも手に力が入る。
深く切り込めないので長期戦になるのだが、今のラナーには負ける気配はなかった。
「トドメです」
動きが鈍くなった
数値的にはHPが0になったところか。
「ラナー様。まだですよ」
「はい」
HPが0になったからといって戦闘が終わるわけではない。
確実に殺して初めて戦闘は終わる。
動かない
「あは、あははは。死にました。
笑いながら尚もモンスターを切りつけるラナー。
「あ~、ははは」
口角を上げつつラナーは振りかぶり、思いっきり
最終的に首が離れてからラナーは動くのを止めた。
最初から最後まで攻撃をやり通す。確実な討伐こそが正しい方法だ。
ただの撲殺では一人前までの道のりは遠い。
「次です、クライム」
呼吸もままならない内にラナーは剣を持ち直す。
モンスターを討伐したラナーの顔は底冷えのする冷徹さがあった。だが、それを恐れる者は誰もいない。
クライムが用意した従者は全てラナーの為に命を捧げられる数少ない者達だ。
もし、怯える者が居れば、それは
「分かりました」
新たな得物を現場に引き入れる。
ラナーが根を上げるまで訓練は続く。