ラナークエスト 作:テンパランス
ひと狩り行ってきますわ
リ・エスティーゼ王国の王都『リ・エスティーゼ』にあるヴァランシア宮殿に暮らす第三王女にして『黄金』の二つ名を持つ『ラナー・ティエール・シャルドロン・ライル・ヴァイセルフ』*1は暇を持て余していた。
『ぱわーれべりんぐ』とやらでレベル75となっている彼女は退屈な城の生活から抜け出すことを唐突に決意する。
ただ、王女という身分なので遠出は――基本的に、というか勝手に――出来ない。
一人で外出する事を許されないので何人かお供を連れて行くしかない。
昔から側仕えをしている少年兵『クライム』*2と友人『ラキュース・アルベイン・デイル・アインドラ』*3を巻き込む形でチームを結成。
アダマンタイト級冒険者『漆黒』に対抗し『黄金』として登録。
ラキュースには一時的に『蒼の薔薇』を離脱してもらった。王女の気まぐれということで。
† ● †
登録するとき、受付嬢は顔を引きつらせていたようだけど。貴族の我がままに対して文句など言える立場ではない。しかし、時には規則を楯に言い返す権限――または権利――はある筈だと思って。
「あくまで冒険者の仕事を体験したいだけですわ」
屈託の無い金髪碧眼、十代後半の王女は言った。
人民に対する輝く笑顔は今回に限っては怪しさが目立つ。――そう、言うなれば不穏な輝きだ。
「我々が見張っているので……」
王女の側で補足を入れるのはアダマンタイト級冒険者チーム『蒼の薔薇』のリーダー。
昔からの付き合いがあるとはいえ、ラナーの突発的な思い付きに頭を痛める被害者第一号でもある。もちろん、危険な事はしないように、と色々と条件を付けてみたのだが、殆どが失敗に終わっている。更には
そのラキュースは貴族でもある。普段から金髪を縦ロールにしているが装備品は一級品。
まず彼女が身にまとう白銀の鎧は『
起動させると宙に浮いた剣を拝める。
まだ二十歳前であるラキュースの名を一躍有名にした武器『魔剣キリネイラム』は鞘に――特別に造ってもらった特注品――納められているがバスタードソード並みの大きさがあり、夜色の刀身には星々の煌きが映っていて、まさに夜空を表しているに相応しいものだった。美術品としての価値は充分にある代物である。
少年兵のクライムは短く刈り込まれた金髪で凛々しい面構え。ミスリル合金製の白銀の
「わ、分かりました……。では……説明は省きましょう。依頼書をご確認下さい」
と言った瞬間にラナーは事前に選んでいた依頼書をバンと受け付けカウンターに叩き付けてみた。
冒険者らしい荒々しさで。
一度やってみたかったと言っていたので夢が一つ叶った事になる。
現在、ラナーが装備しているのは簡素な軽装鎧。ただし、ミスリル製。
重い
ラキュース程ではないが気品溢れる装飾を少しだけ施してもらった。
「も、モンスター退治ですね。……了解しました」
数匹のモンスター退治は最低ランクの銅プレート冒険者にとっては入門編となる依頼だ。
報酬は少ないが冒険者の能力向上の為に依頼を出すのは地元の貴族の厚意である。
育たなければ警護の依頼を引き受けてくれる者が――いずれは――居なくなってしまうおそれがあるので。
「ラナー様。飛び道具には気をつけてください」
「はい」
王女といえど戦場に立つことは珍しくない。過去には第一王女や第二王女も武装して戦場に赴いた歴史がある。――ラナーはまだ未経験だっただけ。
さっそく現場に移動する面々。
王都から東に向かった先にはアゼルリシア山脈があり、その麓であるトブの大森林に程近い平原地帯が目的の場所だ。
見晴らしもよく、モンスターが現れてもおかしくない。
近隣の村を襲撃するようだが、実際には
冒険者の訓練所のようなもので。これらは地元の領主たちの資金提供によって
手に負えなくなるほどの大群に発展した場合は軍を差し向けて鎮圧する、事になっている。
「
「はい。私、とても楽しみですわ」
「ケガしても治癒するから。無闇に集団に行かないように」
武器の握りなどを指導しながら
モンスターは全てラナー一人で倒す計画だ。
今は
いくらレベルが高くても
† ● †
早速、ラナーは
討伐する予定の
潰れたような鼻に下あごから牙の生えた知性の足り無そうな醜悪な面構えの亜人種だ。
そんなモンスターに恐れを抱かず、ラナーは進む。その歩き方は冒険者らしくなく、王女としての風格――胸を突き出すように余裕のある態度――がある優雅なものだった。
普段は延ばしっ放しの金色の髪は邪魔にならないように一つにまとめられている。
「では、お相手をよろしくお願いします」
確かに挨拶は大事だ。ラキュースは苦笑し、クライムは両手の拳に力を込めていた。
何かあればすぐにかけつけられるように。
剣を持つラナー。対する
ラナーは少なくともステータス的には
「では、行きますよ」
スタスタと迷いなく歩く王女。
素早さはそれ程高くはないがしっかりとした歩調に
異様に早い歩調に見えたからだ。ラナーは普段どおりの調子で歩いているのだがステータスの恩恵が不可解な現象を表している。
気が付けば既に目の前。
「えい」
と、可愛い声で言うが風を切るような音と共に奮われるショートソード。
迷いの無い一撃はモンスターにとっては意外と脅威である。
にこやかな王女の一撃に防御の仕方を忘れたのか、いとも簡単に切られる
「ギャッ!」
汚い鮮血が舞う。
「あら、一撃では仕留められませんでしたか」
と、意外に思いつつもラナーは次の一撃を見舞う。
王女としての風格を持ちながら舞踊を嗜んでいる彼女の動きは戦闘には見えない気品があった。
もちろん、相手を精神的に追い詰めることも戦術の一つ。それは悪い事ではない。
軽快な動作で
物理攻撃が高くとも戦闘経験はまだまだ銅プレート以下だ。
現に二匹の
(思いのほか疲れますわね。……それとも無駄な動きが多いから?)
身体は正直だ。
自身のステータスの高さに身体が振り回されていると知るのはずっと後の事になる。
† ● †
部位の回収まで済ませて初期の依頼は終了した。
「お疲れ様です」
「意外と重労働ですのね、冒険者とは」
「慣れてくれば楽そうに見えますが、モンスターは強いものほど身体が頑強になり、筋力を必要とします。今は
棍棒で滅多打ちにあう気がした。
一撃では死なないかもしれないけれど、ケガを負うことは確実だ。
大人の人間よりも大きく、猫背気味で大きな棍棒を振り回す。筋肉がかなり発達している亜人種なので冒険者になり立ての者には強敵となる。
動きは遅い。だが、分厚い筋肉と
冒険者として無傷で戦闘を終えるのは熟練者になってから。
「もう少し頑張ります」
「
「そうですね。日頃から運動するのは大事ですね。紅茶のカップが持てるかしら?」
「訓練所で特訓しますか? 軽い訓練を積み重ねていけば身体も安定してくると思います」
「王女が訓練するのはなかなか見ごたえがありそうね。本当に屈強な戦士になるつもりがないなら、無理をしない程度にね。外交で急に筋骨隆々の王女が現れたら、いろんな意味で有名になると思うから」
「それは面白そうですわね」
各国首脳の慌てふためく姿は容易に想像できる。だが、クライムを心配させるのは本意ではない。
妥協点を見つけなければ自分にとっても良くない気がした。
少なくとも
商品価値の無い王女は居るだけで邪魔なのだから。
† ● †
仕事を終えて冒険者組合で報告を終える。それで仕事は完了だ。
「お疲れ様でした」
「ありがとうございました」
初任務。初給金。それは決して軽いものではなかった。
「……このまま続けられるのですか?」
小声で尋ねる受付嬢。
「そうですわね。なにせ、暇ですから」
にこやかに答える王女ラナー。
「暇つぶしに冒険者をするのでは、他の皆様にとってはご迷惑でしょう。多少の危険を冒す事もやぶさかではありません。何はともあれ、体験して学ぶことは大事でしょうから」
「そ、そうですか」
「
「……命を落さないように。冒険者組合は無闇に危険な仕事は依頼しません」
「命は大事ですものね」
両手に力を込めるラナーの笑顔は未知の冒険に対する憧れを持った子供のようだった。
久しく輝く笑顔を見た事が無かった受付嬢は女の身でありながら心がときめくような気持ちになった。
† ● †
組合を出たラナーは軽く息を吐く。
大して演技は必要ないけれど、次回も仕事を請け負えるようで安心した。
戦争が終わって暇な時間が続いたので、すっかり身体が
今の自分は
筋肉は
「自分の身は自分で守れ、と先人達も言っておられますものね。クライム」
「はっ」
「しばらく私のわがままに付き合ってもらいますよ。ラキュースは無理しなくていいので」
「いやいや、貴女にはまだ冒険者としての心構えとか教えなければ……、ちゃんと付き合うわよ」
「……クライムと二人っきりがいいですわ」
「それはいつでもできるでしょう。治癒担当が居ないと城で大騒ぎになるわよ」
「クライムが信仰系の魔法をちょっとでも覚えてくれれば問題ないのに……」
「……すみません。俺は魔法はさっぱりで……」
軽い仕草でクライムの頭に手を乗せるラナー。
可愛い忠犬に無理はさせられないのも事実。
戦士職が魔法職を後で取ると物理攻撃が減退すると聞いた覚えがあった。それでは決定打が弱体化してしまうので、強いクライムを見る事が出来なくなってしまう。
ラキュースの代わりに手ごろな信仰系を見つける事も考慮しておこうと思った。
別にチームを組む必要は無い。
冒険を終えた後でこっそり治癒できればいいのだから。
「ところでラキュースが苦戦するほどのモンスターはどの程度のものでしょうか?」
「んっ? 私が苦戦する程というのは……、
「……意外と強敵は居るものなのですね」
「そうね。絶対に勝てる、と言っていると油断しそうね。後は疲労も大敵よ。永遠に戦い続けられるわけではないから」
「そうでした。今は楽かもしれませんが、大群相手となると危険ですわね」
「仲間は大事。時には撤退も手段の一つよ」
「……が、頑張ります」
「大怪我しない程度にね。一般の冒険者は皆、日々の生活の為に仕事をしている。無茶なことをする者はあまり居ないわ」
冒険者達も命が大切である事は分かっている。だから、アダマンタイト級まで上り詰めるような命知らずになれる者が少ないとも言える。
せいぜい白金級止まり。ミスリル級以降は国から無茶な依頼を受けさせられるかもしれない、などと思われている。
意外と堅実なのが実情だ。
† ● †
堅実に安全に。
ラナーはモンスターを倒し続ける。
元々のレベルが高いので経験値は微々たるものだが、学ぶことは多かった。
そして、ついに強敵とあいまみえる。
レベルはラナーが上だが、王国周辺では伝説のモンスターと化している
自然界ではまず発見例が殆んど無いアンデッドモンスターで、難度で現せば105となる。攻撃力は低く、盾役として優秀な能力を持っている。
敵性モンスターを引きつける能力を持ち、二メートルを超える大きさで大きなタワーシールドと波打つ形状のフランベルジュという剣を装備している。
黒いオーラを発散させていて赤黒い模様のおぞましい
大きな角付きの兜をかぶる中身は肉が腐り落ちた死者の姿があり、漆黒でボロボロのマントをたなびかせている。
ラナー達は依頼で訪れた城砦都市エ・ランテルの巨大墓地にてかのモンスターと遭遇。
「銀級の昇進試験の相手としては相応しいのかしら?」
「まさか。これほどのモンスターはアダマンタイト級でも苦戦するほどですよ。そもそも出現報告がほとんど無い相手……。撤退も考慮してください」
単独でも
目下、彼が求める強敵は特殊能力を持つモンスターである。――行方を捜したいところだがラナーを放っておくわけにもいかないので、情報収集だけに留めていた。
ちなみに現在討伐を予定しているモンスターは
「いえいえ、相手にとって不足はございませんわ」
今日はアンデッド討伐の為に
ミスリル製のハルバード。
罪人の首を撥ねる
ひ弱な女性には出来ない芸当だ。
「では、ひと狩り行ってきますわ」
「……防りは任せてください」
王女の気軽な言葉に苦笑するクライム。
「ふふふ。モンスター退治も悪くはないですわね」
昇進試験までラナーは本当に頑張った。それは嘘ではない。だから、クライムは彼女の為に盾として立派に務めようと思った。
伝説のモンスターで帝国兵を単騎で撃破したという噂は聞き及んでいる。だが、自分達はそこらの雑兵とは違う。
相手の動きはしっかりと見えている。そして、それはラナーも。
「オオアアァァァ!」
軽快な動きで波打つ刀身のフランベルジュによる斬撃をかわす。
巨大なタワーシールドによる突進も受け流した。
決して無理に押し返さない。
戦闘に慣れてきたラナーに今の
「は、早いですわね、やはり……」
持久力の点ではアンデッドモンスターの方が上だ。
時間が経過するたびに不利になっていく。
レベル差があろうと有利不利は発生してしまう。特に人間種であるラナーは肉体的に強化されたわけではない。
アンデッドは物理防御や刺突攻撃にかなり高い耐性を持っている。
肉体的な部分では相手の方が優性。
武器を取り落とさないように気をつけつつ相手から目を離さない。動きには今も着いて行けている。
時折、クライムが鋼鉄の盾で
「意外と身軽なんですね」
重戦士というわけではないけれど戦士職にしては軽快な動きのクライムに驚いた。
相手の攻撃に負けていないところも男性だから、とつい思ってしまう。
強い男の子は大好きなラナーにとっては微笑ましい事この上ない。
防りに徹してばかりでは勝てはしないので攻撃に転じることも忘れない。
目下の問題は巨大なタワーシールド。これが意外と曲者だった。
金属にハルバードを当てると手に、身体にと振動が伝わり、脳天にまで痺れを感じさせる。
金属同士の打ち合いは危険だと判断する。だが、そうなると攻めきれなくなってしまう。
一般の戦士ならば盾同士をぶつけ合い、回りこんで攻撃を仕掛ける。だが、
「クライム。防御は任せましたよ」
「
一人では難攻不落でも二人ならば可能となる事がある。それがチームというものだ。
今日は二人っきりだが、仲間の大切さをラナーは知った。そして、学んだ。
冒険者は意外と勉強することがある、と。
† ● †
ある程度の攻撃をクライムに任せて、ラナーは的確に攻撃を当てていく。
事前に得た情報では一撃では絶対に勝てない。必ず耐え切るモンスターだと。
生憎とラナーは一撃で
最後まで気を抜くな、ということだ。
「バハルス帝国の騎士達を屠ったそうですが……。それほど脅威のモンスターなのでしょうか?」
「脅威ですよ。一般兵であればまず勝ち目はありません。この攻撃に耐えられる兵はアダマンタイト級ほどでなければ……」
「……つまり王国戦士長くらい強くならないとあっさり死ぬと……」
「そうですね。今の我々はもっと強いですから相手を軽く見られるんですよ。今のガゼフ様ならお一人でも
ラナー王女が当時の『ガゼフ・ストロノーフ』*4より強いのも滑稽な話し*5ではある。
ガス。ゴッ。とラナーは確実に攻撃を当てていく。
アンデッドモンスターは滅びるか身体がバラバラになるかで戦闘が終わる。
召喚モンスターも大抵は消滅していく。
エ・ランテルの墓地に出てくる
生者の対極に位置するアンデッドで雑魚モンスターの代名詞だが、武器などを装備すると厄介な相手となる。多種多様な
「……なかなかしぶといモンスターですわね」
「伝説のアンデッドですから」
流れる動きで翻弄するラナー。そんな彼女を必至に守るクライム。
戦闘の素人の王女とはいえ、
普通に考えて異常だ。
クライムは苦笑を浮かべる。それでも現実に起きていることなのだから仕方がない。
「オオアアァァァ!」
「うるさい骸骨ですわね」
ガツンと横っ腹に一撃を見舞う王女。
ここまで相手の攻撃を捌き、ケガを負わないのは普通ではありえないことだ。もちろん、クライムが守っているとはいえ。
長い得物であるフランベルジュを
無理に受け止めないことも疲労を最小限に留めている証拠。
それでも料理用のナイフとフォークしか持った事がないようなか細い手にも限界がある。
いくらラナーとはいえ長期戦になれば握力が無くなる。そこを狙われればお仕舞いだ。
つまり彼女の戦闘が終了する。――終了した後はクライムが
「ラナー様。まだ大丈夫ですか?」
「もちろんです。打撃による振動を軽減する手袋のお陰で。素手の時より楽で助かってますよ」
「それは良かった」
手甲の内部に緩衝材を詰め込んでいる。これで金属の打ち合いに関して衝撃を拡散し、長時間の戦闘を可能としている。それは彼女の為に城の従者たちが開発したものだ。
もちろん、一般に出回っている物より優れてはいるけれど、王女の手が
色白で清楚な手を守ることも従者としての責務。
「あはは。攻撃が良く当たりますわ。……クライムが必至に守ってくれるお陰ですわね」
「無駄口を叩いている暇はありませんよ」
「ふふふ。ごめんなさい」
本来は強敵相手に暢気に会話などできないのだが、二人は平然と話しながら動いている。それは割りと無駄に体力を消耗する行為で危険だ。だが、気持ち的な余裕が口から言葉を紡がせているのかもしれない。
ハルバードを繰り出し、的確に当てるラナー。これが一般兵には出来そうで出来ないことだ。
王女より弱い王国兵。
そんな噂が隣国のバハルス帝国やスレイン法国に知られれば良い笑いものだ。
だが、単純に笑っていられない事態になる事は各国共に認識する筈だ。
スレイン法国ならば非公式ながら漆黒聖典を投入する。
大部隊を率いて互角。
更に
安易に殺されずに倒さなければ被害が拡散してしまう。
それほどのモンスターを現在、二人だけで相手をしているのだから滑稽である。
「……クライム。私は帝国の軍隊を一人で倒せるほど強い、という事に気がつきました」
「おお。では、二人で……ならば帝国を支配できそうですね」
「もちろん、魔法無しでの話しですけど……。暢気に話していますが……、なかなか倒せませんね、この骸骨さんを」
「もうじき、反応があると思いますよ。随分と身体を削っていますので」
「クライムが的確に避けてくれるので気兼ねなく攻撃できるのは楽ですわね」
「ありがとうございます」
大怪我をしないように武技を絡めつつラナーの攻撃の手助けする。かつ、
本来ならば更に援護魔法も欲しいところだが、戦士と王女しか今は居ない。
† ● †
随分と攻撃を当てたはずなのに相手はピンピンしている。それは単にアンデッドモンスターだからダメージを受けているように見えないだけだ。
何しろ相手は死者だ。生者のように痛みなど感じていないので仕方がない。
「……そろそろ武技で止めを刺しますか」
「ラナー様? 武技が使えるんですか?」
「ん~、それっぽいことはできると思いますよ」
実際のところはラナーにも分からないが、いくつか必殺技は見せてもらっているので、それを参考にするだけだ。
そもそも武技はどうやって覚えるのか。
戦闘訓練もまだ初心者のラナーに分かるはずがない。
クライムは一通りの武技を人から教わって身につけた。だから、ラナーも誰かに師事すれば色々と覚えるかもしれない。
あるいは見よう見まねで習得することもありえる。
時には自ら作り出すことも出来ると聞いた事があった。
さすがに四つんばいになって移動するわけにはいかない。
「ふふふ。今からクライムは騎乗動物ですよ」
「えっ? あ、はい……」
後頭部から頬までを締め付けるラナーの太もも*8。これが普段の服装なら肌の感触があったかもしれない。だが今は軽装とはいえしっかりとした防具を身につけている。なので感じるのは冷たい金属だ。それでもクライムにとっては意外であり、頬が紅潮するほど恥ずかしくなった。
騎乗という
「さあ、骸骨さん。お覚悟を。スキル発動っ!」
と、威勢良くラナーは叫ぶ。武技なのに『スキル発動』と勢いで言ってしまったことは後で顔が赤くなるほど恥ずかしくなってしまったけれど。
それはともかく、発動されるのは騎乗戦闘*9に駆け抜け攻撃*10が加わった攻撃スキル、だと思う技。
〈猛突撃〉*11
走るのはクライムである。
ちなみに正確には武技ではなく『特技』と呼ばれ、どの
一足飛びに敵に駆け出し、軽く振り回されるハルバードを
「オオアアァァァ!」
叫ぶ
「……〈回避〉*12。〈不落要塞〉*13……〈流水加速〉*14」
ラナーは落ちないように脚をしっかりと絡めるが、決して首を絞めないように配慮されたものだ。それと空いた手を適度にクライムの頭に乗せて体勢を維持することも忘れない。
クライムもラナーに攻撃が及ばないように。また、落さないように気をつけて移動する。
「その首、貰いました!」
最後の抵抗とばかり振るわれるフランベルジュの攻撃をクライムと共に捌き切り、
槍は投擲武器にも出来る。尚且つ、刺突攻撃に耐性を持っていようとラナーの方がレベルは上。更に騎乗スキルで槍装備の場合は攻撃力が三倍になる。問題は近接攻撃をやめて投擲した場合は折角の攻撃力の恩恵が無くなってしまうのではないか、ということだ。細かい部分を確認する事は戦闘中では出来ないけれど。投げてしまったものは今さら覆せないし、ラナーも詳しい事は知らない。
勢いに乗った投擲攻撃は僅かなダメージかもしれないが当たりさえすればいい。0だとしても殴りつければいいだけだ。少なくともラナーは次の手を考えていた。飛び蹴りとか。
随分前に考えた『
この技名を紙に
武器を放ってすぐにモンスターが最後の抵抗としてタワーシールドで防ぎきる可能性があった事に気付いた。結構、無謀な攻撃だったことを後で反省する。しかし、既に身体がボロボロの
ハルバードを顔面に受けた後、黒い
「お見事です、ラナー様」
地面に器用に着地するラナーは重労働を終えた、という
一体だけなのに随分と疲れてしまった。
「冒険者の皆さんはいつもご苦労しているのですね」
「さすがに伝説のモンスターとは頻繁に戦いませんよ。ですが、お疲れ様でした」
良き盾役が居たからこそ勝てた。ラナーはそれを身を持って知った。
冒険者としてはまだ未熟者だが、色々と経験できて有意義だったと振り返る。
これならば王女という地位をいつでも捨てられる――ような気がした。
安心するのもつかの間、冒険者の仕事はまだ残っている。
「規定の時間までもう一頑張りですね」
「そうですね。一日は長いですから」
少しだけ休憩し、投げ捨てた武器を拾い上げて握り締めるラナー。
彼女の仕事は後数時間は残っている。
レベル 必要経験点
1
2 2000
3 2200
4 2600
5 3200
6 4000
7 5000
8 6200
9 7600
10 9200
11 11000
12 13000
13 15200
14 17600
15 20200
16 23000
17 26000
18 29200
19 32600
20 36200
21 40000
22 44000
23 48200
24 52600
25 57200
26 62000
27 67000
28 72200
29 77600
30 83200
31 89000
32 95000
33 101200
34 107600
35 114200
36 121000
37 128000
38 135200
39 142600
40 150200
41 158000
42 166000
43 174200
44 182600
45 191200
46 200000
47 209000
48 218200
49 227600
50 237200
51 247000
52 257000
53 352090
54 394341
55 441662
56 494661
57 554020
58 620503
59 694963
60 778359
61 871762
62 976373
63 1093538
64 1224763
65 1371734
66 1536342
67 1720703
68 1927188
69 2158450
70 2417464
71 2707560
72 3032467
73 3396363
74 3803927
75 4260398
76 4771646
77 5344243
78 5985553
79 6703819
80 7508277
81 8409271
82 9418383
83 10548589
84 11814420
85 13232150
86 14820008
87 16598409
88 18590218
89 20821044
90 23319570
91 31947811
92 43768501
93 59962846
94 82149099
95 112544266
96 154185645
97 211234333
98 289391036
99 396465720
100 543158036
101 744126510
不明 ?
※数値はあくまで目安です。
※経験点が規定の数値に達してもレベルアップはしません。
※溜めておける経験点の最高値は『744126509』となります。これ以上は増えません。
※もし、何らかの条件によりレベル100を突破出来た場合は更なる可能性が広がると同時に不安要素も増大するでしょう。
※レベルの限界数値は『999』ですが、無限やマイナスという概念が現れるかもしれません。しかし、数値には限界が必ずあり、無敵という概念は
エネミーレベル 経験点
1 127
2 191
3 195
4 254
5 318
6 381
7 446
8 508
9 572
10 635
11 699
12 762
13 826
14 889
15 953
16 1016
17 1080
18 1143
19 1207
20 1250
21 1300
22 1400
23 1500
24 1600
25 1700
26 1800
27 1900
28 2000
29 2100
30 2200
31 2400
32 2600
33 2800
34 3000
35 3200
36 3400
37 3600
38 3700
39 3800
40 4000
41 4400
42 4800
43 5200
44 5600
45 6000
46 6400
47 6800
48 7200
49 7600
50 8000
51 9000
52 10000
53 11000
54 12000
55 13000
56 14000
57 15000
58 16000
59 17000
60 18000
61 20000
62 22000
63 24000
64 26000
65 28000
66 30000
67 32000
68 34000
69 36000
70 38000
71 40000
72 42000
73 44000
74 46000
75 48000
76 50000
77 52000
78 54000
79 56000
80 58000
81 64000
82 70000
83 76000
84 82000
85 88000
86 94000
87 100000
88 106000
89 112000
90 118000
91 130000
92 142000
93 154000
94 166000
95 178000
96 208000
97 240000
98 284000
99 320000
100 450000
※イベントボス。レイドボス。ワールドエネミーの経験値は不明です。
※複製体は元々の身体のレベルに依存します。ゆえに複製体を倒して経験値を得ることは可能です。ただし、完成していない複製体からは経験値を得ることは出来ません。
※媒介を用いない召喚モンスターは経験値を持ちません。
※召喚モンスターが倒したエネミーの経験値は特別な場合が無い限り保留にされます。
※レベル差が開くごとに経験点は減少する。基本的には経験点÷レベル(チームならば平均レベル)で計算されるが50レベル以降は経験点÷(レベル×10)となっていく。