かてきょーリリカルREBORN   作:BREAKERZ

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漸くSTS編の第一部が終わりそうです。


伝える想い

ーなのはsideー

 

ツナとエンマが雲雀と交戦を始めるのとほぼ同時に、会議室にてなのはがFW陣に8年前に自分の『無茶』を話した。

自分の才能と能力に傲り、自己管理を怠り、その結果大怪我を負って、家族や仲間達の心に大きな傷を作った事を・・・・。

 

「・・・・以上が、高町なのはの失敗談でした」

 

そう言って、なのはは話を聞いていたメンバーの方に顔を向ける。なのはによる昔話と、彼女の気持ちが語られた後、メンバーはずっと俯いていた。

 

「無理をし過ぎて、今後に支障を与えないように導く。これが教導官として一番大事な事なのに、話そうとは思っていたんだけど、正直この話をするのが怖かったの。それで先送りにして行った結果がこの有り様・・・・ツナさんやリボーンさんに言われて、ようやく決心がついたの」

 

ツナとの大喧嘩を見ていたエリオとキャロ、目が覚めてからのリボーンの説教を聞いていたティアナとスバルは、あえて口には出さなかった。

 

「導いていく筈の立場なのに、自分は何もしなかった癖に、頭ごなしに生徒に怒りを抱いて傷付けて・・・・生徒が気づいてくれているって勝手に決め付けて、勝手に暴走して・・・・こんなんじゃ私、教導官失格だよね」

 

「そんな事ありません!」

 

なのはの言葉に、今回の騒動で一番の被害を受けたティアナが力強く否定する。

 

「なのはさんは悪くありません! 全部私が悪いんです! 私が・・・・!」

 

ティアナは溢れ出てくる涙を拭おうともせず言葉を続けようとするが中々出てこない。

すると、なのはが口を開く。

 

「ありがとう、ティアナ。でもこれは、教導官としての、皆よりほんのちょっとだけ大人のつもりの、私なりのケジメだから、ちゃんと謝らせて」

 

「・・・・はい」

 

「後ね、ティアナが考えた事、間違ってはいないんだよね」

 

そう言うなのはの手にはいつの間にかクロスミラージュが握られていた。

 

「システムリミッター、テストモードリリース」

 

[Yes]

 

「命令してみて。『モード2』って」

 

なのははそう言ってティアナにクロスミラージュを渡す。ティアナは戸惑いながらもそれを構え・・・・。

 

「・・・・モードーーーー2」

 

とクロスミラージュに命令した。

 

[Set up. Dagger Form]

 

「っ! コレは・・・・!」

 

そしてティアナは、自分のデバイスに起こった事に驚愕に目を見開いた。

ーーーークロスミラージュから、魔力で造られた剣が出現したのだ。

 

「ティアナは執務官志望だもんね。此処を出て執務官を目指すようになったら、どうしても個人戦が多くなるし将来を考えて用意はしてたんだ」

 

「っ・・・・う、うわぁぁぁぁ・・・・!!」

 

なのはの想いに、ティアナは再び涙を流した。泣きじゃくる彼女を、なのはは優しく抱きしめたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

ーツナsideー

 

「「た・・・・ただいま~・・・・」」

 

ティアナが泣き止んで眠るのと同時に、身体も衣服がボロボロになったツナとエンマがヨロヨロと会議室に入ってきた。

 

「おぉ沢田、古里、お疲れ様だ」

 

「こっちはどうなった?」

 

「おう。もう大丈夫だぜ」

 

了平が帰りを労い、リボーンの問いかけに山本が親指で指差すと、眠っているティアナを獄寺が背負っている姿があった。

 

「なんで俺がコイツを部屋に送るんだよ・・・・!」

 

「文句言わねぇで連れてってやれよ」

 

ブーたれる獄寺にヴィータがそう言うと、愚痴りながら部屋に送って行く。

 

「10代目、お疲れ様です。ちょっとティアナ<コイツ>を置いてきます」

 

「ああ、ゆっくりしてていいよ獄寺くん」

 

獄寺が会釈して部屋を出ようとすると、手前で数秒程立ち止まると、今度こそ部屋を出ていった。

そして、獄寺と入れ替わるように部屋に新たな人物が入ってきた。

 

『っっっ!!!???』

 

その人物ーーーー雲雀恭弥を見た瞬間、なのは達六課の人間達は蛇に睨まれた蛙ように動けなくなった。

雲雀の迫力に畏れたのか、スバルは了平の背後に隠れ、エリオはキャロを自分の後ろに下がらせると、一緒に山本の近くに移動した。すぐ近くにフェイトやシグナムがいたが、どうやらFW陣は最も安全な人間の近くに移動したようだ。

 

「皆さーん、ツナさんの最後の守護者、雲雀さんですー!!」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

雲雀に肩車してもらっているリインが嬉しそうに元気に言うが、雲雀はその場にいたなのは、フェイト、ヴィータ、シグナム、シャマルを順に見据えると・・・・。

 

「ーーーーーーーーはあぁぁ・・・・」

 

『うぅっ・・・・』

 

鋭い目を薄目にし、ガッカリしたような、落胆したような、失望したようなため息を吐いた。なのは達は、そのため息の真意に気づいた。

なのはとフェイトには、

 

「(ーーーー君達、あまり成長していないね。失望したよ)」

 

なのはとフェイトの素質と才能に、雲雀なりにそれなりの期待を寄せていたが、二人から発せられる気配を感じて落胆したため息を吐き。

そしてシグナムにヴィータにシャマルには、

 

「(ーーーー君達、完全に草食動物に染まりきっているね。ガッカリだよ)」

 

経験も豊富なヴォルケンリッター達が、すっかり腑抜けてしまった事に、失望のため息を吐いた。

 

『・・・・・・・・・・・・』

 

なのはとフェイトとシャマルはバツが悪そうに顔を俯かせ、シグナムは少し下唇を噛んで渋面を作り、ヴィータは肩を落としながら後頭部をガシガシと掻く。

全員、悔しそうに拳をきつく握り締めていた。

 

「・・・・雲雀様、主はやてがハンバーグを作っています。参りましょう」

 

「ーーーーふん」

 

人間の姿となり、雲雀の後ろに従者のように控えていたザフィーラが言うと、雲雀はなのは達に欠片も興味が無くなったように鼻を鳴らすと、食堂で料理を作っているはやて(ついでにアインス)の元に向かった。

 

「あ、あれが、話に聞いていた雲雀恭弥、さん・・・・!」

 

「な、何か、凄そうな人ですね・・・・」

 

「こ、怖かった、です・・・・」

 

「キュル~・・・・」

 

FW陣は雲雀の雰囲気に畏縮してしまったようだ。

そんな空気の中、なのははフェイト達を見回して声を発する。

 

「ーーーー皆、これから模擬戦をしよう」

 

『っ!』

 

なのはの目には、ハッキリとした闘争心が燃え上がっていた。

 

「私達が弱いって言うのは、もう言い様のない事実なの。でも、このままじゃ終われないの!」

 

「・・・・そうだね。もう八年間も培ってきたプライドなんてコナゴナになっちゃったけど!」

 

「我々にだって意地がある!」

 

「私は戦闘系じゃないけど、それでも騎士としての矜持は持っているわ!」

 

「んじゃ! 今から手加減抜きで模擬戦だな!」

 

なのはに言われ、フェイトとシグナムとシャマルとヴィータが同意すると、リボーンがニヤリと笑みを浮かべながら声を発した。

 

「んじゃ、俺らも協力するぞ」

 

「本当!?」

 

「ああ。どうせやるならお前ら六課の身内同士ではなく、ツナ達と模擬戦をすれば良い」

 

「ツナ達と・・・・」

 

「そうだ。同格と相手と戦うより、格上の相手と本気で戦えば、少しは昔のハングリーさが戻るんじゃねえか?」

 

リボーンに提案され、フェイトは先日完膚なく敗けたエンマはやめて了平と、シグナムは山本と、ヴィータがエンマと、シャマルはクロームと模擬戦をする事になった。スバルとエリオとキャロは、ランボの子守りをしながら模擬戦見学。

そして言い出しっぺのなのはだがーーーー。

 

「何で私だけお部屋でお休みなのっ!?」

 

「なのは、お前謹慎処分中の身だって事、忘れてねえか?」

 

「にゃっ!?」

 

そう。なのはは暴走して暴れた処分として、五日間の謹慎処分を言い渡されていた。本来なら部屋を出るのもダメなのに、特別として出ていたのだ。

 

「と言う訳でなのはは後二日はお休みだからな。ツナ、面倒を見てやれ」

 

「う、うん」

 

「フェイトちゃん! 皆!」

 

「ゴメンなのは、暫くお休みしていて」

 

「自業自得だ」

 

「身から出たサビだな」

 

「医務官として、休息を推奨します」

 

「そんなぁ~!!」

 

ツナに首根っこを引かれ、ズルズルと引きずられながら、なのはは情けない声をあげるしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

「うぅ~! 私だけ~!!」

 

「ほぉ~らなのはちゃ~ん、ナッツで落ち着こうね~」

 

『ガゥ!』

 

「(ポフッ)ーーーーす~は~、す~は~、す~は~、す~は~・・・・」

 

自分だけ謹慎してしまって癇癪を起こしそうになるなのはに、ツナはナッツのお腹の臭いを嗅がせると、なのははナッツのお腹に顔を埋めて気分が落ち着いていった。

 

『ガォ・・・・』

 

それを見てココは、『バッカみたい・・・・』と言いたげな目で呆れていた。

 

 

 

 

 

ー獄寺sideー

 

背中に眠っているティアナを背負い、廊下を歩く獄寺が愚痴っていた。

同じ部屋のスバルが運べばいいだろと言ったのだが、当のスバルがまだ獄寺に攻撃されたダメージが残っていて無理だからと言われたので、獄寺は少し怪しげに見ながらもそれ以上何もいえなかった。

しかも何故かあの場にいた全員からティアナを任せると言われ、渋々と獄寺が運ぶ事になったのだ。

 

「ん・・・・あれ?」

 

「たくっ、やっと起きたかランスター」

 

「獄寺・・・・? あれ?私・・・・」

 

「わんわん泣いた後、テメエが寝ちまって、何故かオレが運ぶ事になったんだよ」

 

「そうなんだ・・・・って、えぇっ!?」

 

その瞬間、ティアナは寝ぼけていた頭が一気に覚醒し、すっとんきょうな声を上げた。

 

「ちょっ、何で獄寺がっ!?///////」

 

「知るか! 俺だって不本意なんだよ!!」

 

「って言うか、降ろしなさいよ!///////」

 

「うるせー! 今下ろしてやるから暴れんなっ! 重いんだよっ!」

 

「お、重いってなによっ! 私、スバルよりは軽いのよっ!」

 

廊下で痴話喧嘩を繰り広げる二人を見かけた隊員達が、微笑ましげな笑みを浮かべていた。

 

 

 

 

ー雲雀sideー

 

「(モグモグ・・・・)」

 

雲雀ははやての特性ハンバーグを食べていた。傍目からは気づかないが、はやてとアインス、リインとザフィーラは、雲雀が美味しそうに食べているのが分かっていた。

 

「(ゴクン・・・・)草食動物にはなったけど、料理の腕前は上がったね」

 

「せやろ」

 

「それでザフィーラ。この時代の僕が作った巨大企業『HUHKI』に案内して貰うよ」

 

「はっ!」

 

この時代の雲雀がミッドチルダでの拠点である和装雑貨店兼警備会社『HUHKI』では、以外と重役ポジションのザフィーラならばアポ無しで入れるのだ。

 

「ありゃ雲雀さん。こっちで暮らさへんの?」

 

「・・・・群れる気はない」

 

そのあまりにも雲雀らしい返事に、はやて達は苦笑するしかなかった。




次回、エピローグ兼第二部のプロローグになります。

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