かてきょーリリカルREBORN   作:BREAKERZ

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想いを伝える

ーツナsideー

 

「・・・・・・・・」

 

ツナは六課隊舎の屋上で、空を見上げながら物思いに耽っていた。

なのはがティアナにやろうとしている事を察し、思わず飛び出し、そしてなのはと戦う事になってしまった。ヴィータから、

 

【もうなのはも良い歳してんだ。口で言っても聞かない駄々っ子のままなら、千や万の言葉よりも、一発の拳骨の方が効果的だろ? それに、なのはの奴。自分はもう“ツナより上だ”って、思っちまってるからさ。いっぺんお調子に乗ってる鼻っ柱を、根元から思いっきりへし折ってやった方が目を覚ますだろうよ】

 

と、言われていたが、もっと他にやりようがあったのではないかと、考えてしまう。

 

「はぁ~・・・・」

 

『ガゥ・・・・』

 

『ガォガォ』

 

足元にいるナッツが、前足をツナの足に置いて、慰めるような声を上げる。ココはシャンとしなさいよ。と言いたげな声を上げていた。

 

「二人とも、ありがとな」

 

ツナは笑みを浮かべながら、なのはとの戦いの後に、リボーンに言われた事も脳裏に浮かんだ。

 

【なのはは話し合いであーだこーだ言った所で、自分の意見を簡単に曲げる性格じゃねぇ。大体フェイトの時もヴィータ達との時も、アイツは話し合いよりもどつき合いをやって来たんだから、殴り合いが一番なのはにとって効果的な方法だ】

 

と、言われ、確かになのはは話し合いよりも、殴り合いでフェイト達と分かり合って来たなぁ、と苦笑いをした。

 

『ガゥ!』

 

『(プイッ)』

 

と、その時、ナッツが屋上の扉の方を向いて、期待に目を輝かせ、ココはフンッとソッポを向いた。

 

ーーーーキィ・・・・。

 

扉が小さく音を立てると、なのはがオズオズと出てきた。

 

「なのはちゃん・・・・」

 

「ツナ、さん・・・・」

 

『ガゥ♪』

 

ナッツが嬉しそうになのはに近づこうとする。

が、

 

『ガォ』

 

『ガッ!?』

 

二人の間の空気を読んだのか、なのはに近づけたくなかったのか、ココがナッツの背中に乗って、ナッツを抑えた。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

お互いに無言になってしまうツナとなのは。そして、なのはの方が口を開いた。

 

「ツナさん・・・・私、どうしたら、良いの・・・・?」

 

「っ」

 

頬に涙を垂らしながら、なのはが泣きそうな声でツナに問いかけた。

それを見て、ツナは察したようにゆっくりとなのはに近づく。なのはもツナの動きに合わさるように膝を床について座ると、ツナがなのはを抱き締め、なのはの頭を優しく撫でた。

まるで、迷子の女の子を優しく慰めるかのように。

 

「ツナさん・・・・?」

 

「なのはちゃん。間違った事をしたって分かっているんだよね?」

 

「・・・・うん」

 

「じゃぁ、謝らないとね。ティアナにだけじゃなくて、心配や面倒をかけたヴィータや皆にも、ね」

 

「でも・・・・」

 

自分の失敗や過去と向き合う勇気が持てないなのはは、自信なく声を発するが、ツナは優しく説いていく。

 

「俺もさ。良く初対面の人達に、【情けないやつ】とか、【頼りないやつ】とか、【本当にネオボンゴレボスなのか?】って言われてきたんだけど。それでも、この情けなさも、臆病なのも、ありのままの俺だから。出会った人達に俺って人間がどんなヤツなのか知って欲しいからさ。こんな自分で晒け出そうと思うんだ」

 

「・・・・ぁ」

 

なのはは、戦っていた時にツナに言われた事を思い出した。

 

【お前は生徒達に、自分のカッコ良い姿だけを見せてばかりで、自分は頼れる教官だとカッコつけた姿しか見せて来なかったんじゃないのか? 自分の事を相手に理解して欲しいならば、先ずは自分の方から、情けない姿や醜い姿を見せてやらなければ、思いや願いや欲を伝えなくては、分かり合う事なんてできない!】

 

「・・・・・・・・っ」

 

そしてなのはは再び、『魔法を手にする前の幼少期の自分』の幻影が現れた。

 

「(そうか・・・・そうだよね・・・・。あなたもーーーー私なんだよね・・・・)」

 

なのはは、自分に近づく幻影の自分を抱き締め、涙混じりに声を発した。

 

「(ゴメンね・・・・! ずっとあなたの事、見て見ぬふりして、拒絶して、本当にーーーーゴメンね・・・・!!)」

 

漸く過去の無力だった自分を受け入れたなのは。『魔法を手にする前の自分』と『魔法を手にしたばかりの自分』は笑みを浮かべて、なのはの中に溶け込むような消えると、なのははツナの身体を抱き締めていた。

 

「なのはちゃん。ちゃんと伝えよう? ティアナやスバル達に、それでもしあの子達に軽蔑されたとしても、何度でも向き合って、話し合おう。辛くなったら、なのはちゃんには皆がいるんだから、一人で抱え込まないで、皆に甘えたり頼ったりしよう。頼りあったり支えあったり補いあったりするのが、本当の仲間なんだから」

 

「うん・・・・! うん・・・・!!」

 

ツナの胸に顔を埋めて、嗚咽を漏らしながら、なのははツナに抱きついていた。

 

 

 

 

ーフェイトsideー

 

「・・・・・・・・・・・・はぁ」

 

ツナとなのはの様子を、エンマとリボーンとヴィータに連れられたフェイトとはやて達が、隠れながら見ていると、フェイトが重く深いため息を吐いた。

 

「フェイトちゃん・・・・」

 

「私、なのはの事誰よりも理解しているって思ってた・・・・。でも、結局何にも理解してなかったんだなぁ」

 

「そら、私達も言えるわ・・・・」

 

なのはがあんなに辛そうにしていたのに、自分達はまるで気づかなかった。それがとてつもなく情けなく、そして恥ずかしかった。

 

「悔しいなぁ・・・・」

 

と、ソコでフェイトが吐き出すように言う。

 

「フェイトちゃん」

 

「エンマ達は、なのはが不調だって事、見抜いてたんだよね?」

 

「うん・・・・。アグスタの時から薄々ね」

 

「情けないなぁ・・・・。私の方が、ツナ達よりなのはと長くいたのに、ツナ達はアッサリ気づいて、私は今日までまるで気づいていなかったなんて・・・・」

 

誰よりも一番近くにいた自負があったのに、親友の不調に全く気づかなかった。自嘲するように呟くフェイトをエンマが優しく抱き締めると、フェイトはエンマに抱きつき、エンマは言葉を出す。

 

「僕達シモンファミリーも昔、ジュリーがD・スペードに取り憑かれている事に気づかず、彼の口車に乗せられて、ツナくん達と戦った。付き合いが長いから見えている物があれば、付き合いが長いから、目にフィルターみたいな物が貼ってしまって、見落としてしまう事もあるんだと思うよ」

 

「私らは、なのはちゃんを見る目にフィルターが掛かってもうたんやな。しかも、埃にまみれた・・・・」

 

「お前らは何処かなのはを『特別扱い』し過ぎていたんだ。それをなのはもある程度分かっていたから、「自分が皆の分まで頑張らなきゃ!」って、背負わなくて良い重圧を背負っちまったんだぞ」

 

「ーーーー申し開きも、言い訳もできません」

 

はやても自嘲気味に呟き、リボーンの言葉にアインスも悲痛な顔で応え、シグナムも同意するように頷いた。

 

「もう1度やり直すんだ。なのはちゃんの友達として、ね」

 

エンマの言葉に、フェイトは涙混じりに、はやて達も少しだけ笑みを浮かべて頷いた。

 

 

 

 

 

ーティアナsideー

 

ティアナは六課の中庭で鍛練していた山本と了平から、獄寺は資料室にいると聞き、そこに着くと、

 

「おら瓜! さっさも戻りやがれ!」

 

『フニャァァァァァァッッ!!』

 

「ぎゃぁぁぁっっ!」

 

瓜をバックルに戻そうとするが、瓜が抵抗し、獄寺の顔を思いっきり引っ掻き回すと、逃げようとするが、少し呆れ目になっていたティアナの肩に乗っかった。

 

「あ? 何だお前かよ。何か用か?」

 

素っ気なく言葉を発する獄寺に、ティアナは意を決して声を発する。

 

「・・・・・・・・あの、さ。アンタに言われた事、少し分かったと思う」

 

「ふぅん」

 

「私が見えていなかったのってーーーー『自分の命』、よね」

 

ティアナが確信を込めて言うと、獄寺は小さく笑みを浮かべる。

 

「・・・・それが分かったんなら、お前はもう大丈夫だな」

 

『にゃぁ~』

 

瓜はティアナの顔に頬擦りし、ティアナも笑みを浮かべた。

 

「・・・・うん、ありがとう」

 

 

 

 

 

 

ースカリエッティsideー

 

そしてその頃。

 

「やぁやぁスカリエッティくん☆ 新型ガジェットは揃ってきたかい?」

 

スカリエッティの研究室に、黒髪の男が陽気に入ってくる。スカリエッティは馴れ馴れしい男に嫌悪感を出さず、にこやかに応答する。

 

「ええ、ご覧下さい」

 

スカリエッティがモニタを操作して画像を出すと、某所に向かって進撃している・・・・以前ホテル・アグスタでヴィータとシグナムとザフィーラを圧倒した新型ガジェット達十数体を見せた。

 

「今頃は機動六課はくだらない内輪揉めでゴタゴタ状態になっている頃でしょう。ここで新型ガジェット、嫌、『F<フィアンマ>ガジェット』で少し叩きのめしてあげますよ」

 

“六課の現状を知っている”スカリエッティがほくそ笑みを浮かべてモニタの映像を見ていたその時、『Fガジェット』達の前に、『灰色のオーロラ』が現れた。

 

「おぉ」

 

「わぉ」

 

そのオーロラが何を意味するのかを“知っている”二人は、『Fガジェット』達を停止させると、オーロラからーーーー“青いバーコード仮面をした戦士”と、“学ランを肩にかけた少年”が現れる。

 

「おや、あの『怪盗ライダー』ですか、しかも・・・・」

 

「うふふ、遂に『最強の守護者』が来たね☆」

 

 

 

 

 

 

ー???sideー

 

「おっと。ちょっと予定と違うけど、丁度良いかな」

 

「逃がさないよ」

 

学ランの少年が、戦士に向けてトンファーを振り抜くと、戦士は持っていた銃で防ぐ。

 

「僕の眠りを妨げたんだ。それ相応の報いとしてーーーー噛み殺す!」

 

戦士は少年が眠っている隙に、少年が身に付けている『ブレスレット』を盗もうとしたが、少年が起きて戦闘になり、『灰色のオーロラ』を使って“この時代の世界”に連れてきたのだ。

 

「んー。寝ている隙に極上の獲物を貰って置こうと思ったけど、やはり簡単じゃないか」

 

戦士は“カード”を五枚取り出すと、銃に装填した。

すると、銃から音声が流れる

 

[KAMENRIDE BURST!]

 

[KAMENRIDE PROTO・BURST!]

 

[KAMENRIDE METEO!]

 

[KAMENRIDE NADESIKO!]

 

[KAMENRIDE BEAST!]

 

「それじゃ、行きたまえ」

 

戦士が銃の引き金を引くと、カプセルを胸に付けた二人の戦士が、身体にキラキラとしたパーツを付けた戦士が、女性的な身体付きをした宇宙服のような戦士がと、金色のライオンを肩に付けた戦士が現れ、少年とFガジェットへと向かった。

 

「っ!」

 

少年が、トンファーを構えて、キラキラとしたパーツを付けた戦士が拳法を、金色のライオンを付けた戦士がサーベルを持って戦っている隙に、戦士『灰色のオーロラ』を展開して、この場からーーーー否、この世界から消えた。

 

「・・・・っ!!」

 

少年はトンファーに『紫色の炎』を燃やすと、二人の戦士を一瞬で叩きのめし、腕にロケットを装備して突っ込んでくる女性戦士も、一瞬で殴り飛ばした。

三人の戦士達はそのまま消えると、少年はつまらなそうに鼻を鳴らした。

 

「ふん。所詮はコピーでしかない。“本物の彼ら”の方が噛み殺しがいがある」

 

そう呟くと、カプセルを付けた二人の戦士が銃の引き金を引くと、メダルが何発は射出され、Fガジェット立ち上がるもレーザーを少年へと放った。

 

「(ニヤリ)」

 

少年は小さく笑みを浮かべると、次の獲物へと向かった。

 

その少年の名はーーーー『雲雀恭弥』。ボンゴレファミリー最強の『雲の守護者』である。

 




次回、遂に最強の守護者が登場! 八年後のなのは達に、彼は失望するかも・・・・。
六課の内輪揉めも終わらせたいですね。
質問ですが、なのは達って、結構周りから甘やかされて来たと思いません?

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