かてきょーリリカルREBORN   作:BREAKERZ

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最近シリアスだったので、ギャグをいれます。


ホテル・アグスタⅤ

ーツナsideー

 

「えっ・・・・? もしかして、ツナさんに、エンマさん・・・・?」

 

「「ん?」」

 

オークション会場で漸くオークションが終わりを迎え、獄寺達がいる現場についたツナ達。ソコにはクロームとランボの二人もいて驚いた顔になった。

搬送されていくシグナムとヴィータとザフィーラを見送ると突然、ツナとエンマに話しかけた青年がいた。そしてその青年の隣にもう一人いる。

一人は高い背に淡い緑色の長髪を棚引かせ、白いスーツを完璧に着こなした青年。そしてツナ達に話しかけたのは、これまた長い茶髪を首の後ろで束ね、ダークグリーンのスーツを纏った優しい顔立ちの青年であった。

優しい顔立ちの眼鏡の青年が、二人の記憶から一人の少年を連想させた・・・・。

 

「も、もしかして・・・・?」

 

「ユーノくん・・・・? ユーノ・スクライアくん・・・・!?」

 

「はい! ユーノ・スクライアです!」

 

そう、なのはの魔法の先生ユーノ・スクライアであった。ユーノは八年ぶりに再会した二人に笑みを浮かべて近づき、ツナとエンマと握手した。

 

「なのは達から聞いていましたけど、本当に八年前の姿なんですね!」

 

「ユーノくん、今は何をやってるの?」

 

「今は〈無限書庫〉の司書長をしています。またお二人とこうして会えて嬉しいですよ!」

 

「おいおいスクライア司書長。僕も挨拶したいんだけどなぁ?」

 

「あぁすみません。アコース査察官」

 

緑髪の青年が前に出る。

 

「初めまして、といったところかな。僕は『ヴェロッサ・アコース』。時空管理局本局の査察官さ。君達の事はいつもはやてからよく聞いているよ。勿論、あの雲雀恭弥氏との関係もね」

 

雲雀の名を出して、何やら意味深な笑みを浮かべるヴェロッサに、ツナとエンマは苦笑いを浮かべると、今度はユーノがなのは達に向ける。

 

「八年間、ツナさん達に会えなくなって、なのはとフェイトが一時期荒れてた時があったんですが、これならもう大丈夫ですね」

 

「「ユ、ユーノ(くん)っ!!」」

 

いきなりのカミングアウトに、なのはとフェイトが顔を赤くして声を上げる。はやてやヴェロッサはあたふたする彼女達にニヤニヤと笑みを浮かべる。

その空気から逃げるように、なのはとフェイトはFW陣の方に向かい、なのははティアナと少し会話をすると、二人で皆から離れていった。その後を、獄寺だけがつけていく。

それを見て、ユーノはツナに近づき、真剣な表情を彼に向ける。

 

「ツナさん。エンマさん。リボーンさんにも伝えてほしいのですが、お願いしたい事があります」

 

静かに二人を見据えながらユーノは言った。

その声色に何かを感じ取ったのか、はやてとヴェロッサが黙り、ツナとエンマも、ユーノへと視線を向けた。

その目には一筋の光。少しの悲しさと悔しさーーーーそして強い想いを感じさせた。

いまだかつて見たことのない光をその目に宿らせたユーノに、ツナとエンマは見上げるようにして対峙する。

ユーノは一回軽く息を吸い込み、澄んだ目でまっすぐに二人を見ながら口を開いた。

 

「なのはとフェイトを・・・・この機動六課を守ってやって欲しいんです。管理局の関係者である僕が頼める事じゃないし、管理局からなのは達と引き離されたツナさん達に頼むなんて都合が良い事をと思っています。けど、それでも頼るしかなかった。皆を守ってあげて下さい。お願いします・・・・!」

 

「ユーノくん・・・・」

 

直立不動からキッチリと頭を下げ、ユーノは言葉を紡ぐ。

はやてはそれを僅かに潤んだ目で見つめていた。ツナとエンマは、そんなユーノから目を逸らさず。

ポンッ、とそれぞれがユーノの肩を優しく叩いて、一瞬だけだが、超死ぬ気モードと戦闘モードの姿に変わりーーーー。

 

「「必ず守る、ユーノ」」

 

と、小さく答えた。

 

「はい・・・・!」

 

ユーノは二人に向かって、涙を浮かべながら返事をした。

 

 

 

ー獄寺sideー

 

獄寺は、ミスショットをしたティアナに、なのはが『優しい言葉』をかけて慰めているのを、木陰に隠れながら聞いていた。

 

《・・・・安っぽく薄っぺらな慰めの言葉、だな》

 

「ですね」

 

コッソリ見ると、なのはは「これでティアナは分かったくれた」と言わんばかりに笑みを浮かべるが、その後ろのティアナ自身は、惨めな気持ちになっているのが分かる程、顔を俯かせていた。

通信機から聞こえるリボーンの言葉に、獄寺はフン、と鼻を鳴らした。 

 

 

 

 

 

 

 

ーゼストsideー

 

「ガリュー・・・・!」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

《どうかね騎士ゼスト。彼らの実力は?》

 

ホテル・アグスタから離れていった位置にいたルーテシアとゼスト。ルーテシアはボロボロになって戻ってきた自身の使役する召喚獣・『ガリュー』を介抱し、ゼストはスカリエッティがガジェットのカメラで捉えた山本と了平の戦闘映像を見て、驚愕と戦慄が混ざった顔になって息を呑んでいた。

 

《騎士ゼスト。これでも彼らが脅威でないと言えるのかな? 捕捉しておくが、この二人はまだ実力の半分処か、三分の一も出していないのだよ》

 

「っっ!?」

 

さらに驚愕に顔を歪めるゼスト。先ほど、スカリエッティに、目が節穴か耄碌している、と言われた時は腹が立ったが、今なら確かに自分は耄碌し、節穴になっていると認めざる得なかった。

画面越しだが分かる。映像の中の少年達の力の凄まじさ。管理局の十把一絡げの有象無象の局員なんて、まるで足元にすら届いていない。

 

「こ、これほどの実力者達が、何故今まで表に出てこなかった!?」

 

《彼らは魔導師じゃないからね。管理局としても体面や体裁が危うくなるから隠していたのだよ》

 

「・・・・随分と落ち着いているな? お前なら勝てると言うのか?」

 

スカリエッティの妙な落ち着き様、いや、何処か達観とした様子に、ゼストは訝しそうに眉をひそめる。

 

《まぁマトモにやり合ったら勝てないね。管理局の基準で認められた『ストライカー』など、彼らと比較すれば『凡庸なエース』に過ぎない。彼らこそ間違いなく、『真のストライカー』と呼ばれるだろう。ーーーーならば、こちらは悪党らしく、セコい手段を使うまでさ》

 

スカリエッティはそう呟いて、唇の端を歪ませた。

 

 

 

 

 

 

 

 

ーヴィータsideー

 

ホテル・アグスタの事件から翌日。眠った状態のヴィータは、ある光景を見ていた。

 

【ヴィータ。なのはちゃんが無理しないように、見ていてくれないか?】

 

「(あん? ツナ・・・・? つか、この光景・・・・)」

 

【何だよツナ?】

 

「(あぁ、これは夢だな・・・・くそっ、よりにもよってあの時の夢かよ・・・・!)」

 

ヴィータは直感した、これは八年前の過去、ツナ達にとってはほんの2~3週間前の出来事だが。

 

【フェイトちゃんが執務官になるための勉強で忙しいし、はやてちゃんも管理局員としての勉強をしているからなのはちゃん、自分が皆の分まで頑張らなくっちゃって一人で抱え込んでいると思うんだ。そのせいか最近、ロクに休んでいないようだし。それにリボーン達も、最近なのはちゃんはカートリッジシステムを使いまくっているのが危険だって言ってたんだ。まだ子供の身体で反動も大きいカートリッジシステムを使い続けるのは身体への負担も大きいって危惧しているんだ。だからヴィータ、なのはちゃんが無理をしないように、ブレーキ役をやってくれないかな?】

 

【過保護だなぁツナは。大丈夫だろ、アイツはつえぇーから】

 

「(・・・・何であの時、ツナの言葉をちゃんと聞き入れ無かったんだよ・・・・!)」

 

今すぐ過去に戻れるなら、あの当時の自分をぶん殴ってやりたい。そんな思いすら抱いている。

そして見せられるのは、血塗れになったなのは。泣き崩れるなのはの家族達と仲間達、美由紀が自分を責めるがそれは当然だった。ツナが病室でなのはを慰め、なのはが大泣きし、リボーンがなのはの父・士郎を連れ出し、その後を母・桃子が追いかけていったその後、

 

【鉄槌の騎士。貴様は何を間違えていたか分かるか?】

 

なのはとフェイト、そしてはやてに臨時教官をしてくれている、『ラル・ミルチ』が声をかけてきた。

 

【ぐすっ・・・・分かんねぇ・・・・!】

 

【貴様は高町を特別視し過ぎて、ヤツをちゃんと見ていなかったのだ。『アイツは強いヤツだから大丈夫だ』。『アイツは凄いヤツだから心配しなくていい』。そんな盲目的な認識の甘さが、高町に依存している考え方が、このような結果を生んだのだ!】

 

【っ!】

 

「(チキショウ・・・・耳がイテェ・・・・!)」

 

ラル・ミルチの言葉が刃となって突き刺さる。

 

【起こってしまった事を嘆く暇があるなら、この事件を“糧”とし、“経験”とし、次は失敗しないように心がけておけ】

 

そう言って、ラル・ミルチはその場を去った。

 

「(・・・・アタシ、忘れてやがった・・・・)」

 

八年前、ラル・ミルチに言われた教訓を思い出し、ヴィータは自嘲するように笑みを浮かべ、八年前のツナ達に言った言葉も思い出す。

 

【お前ら、本当にガキの頃の姿なんだな!】

 

「(ガキの頃のまんまと思ったけど、アタシも全然成長してなかったんだな・・・・)」

 

八年間の自分を振り返ると、またもや自嘲してしまう、そして、夢の景色が、真っ白く染まっていきーーーー。

 

 

 

* * *

 

 

 

「ぅ・・・・ぁぁ・・・・!」

 

「ヴィータちゃん!?」

 

シャマルがヴィータの名を叫び、ヴィータは痛む身体と鉛のような倦怠感、霞む視界と微睡む意識の中、何が起こったのか思い出した。

FW陣の元へ向かう途中、突然謎の『新型ガジェット』に襲撃され、ほとんど手も足も出ずにボロ負けした。薄れいく意識の中、シグナムとザフィーラも『新型』に倒されたのを見て、さらに自分達が苦戦した『新型』を獄寺が圧勝した姿が脳裏に焼き付いていた。

 

「(くそっ・・・・不甲斐ねぇ・・・・!)」

 

過去の失敗と現代の敗北のダブルパンチに、ヴィータは泣きそうになる。

がーーーー。

 

「ぐぴゃぴゃぴゃぴゃぴゃぴゃぴゃ! ヴィータ泣いてるモンねぇ~! や~い泣き虫ヴィータ~!」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

聞き覚えのあるその小憎たらしい声を聞いた瞬間、ヴィータの目から涙が引っ込み、身体の痛みと鉛の倦怠感が一瞬で霧散し、微睡んでいた意識と霞んでいた視界も一気にクリアになり、ベッドに横になる自分を見下ろしている、そのアホ面を晒した『アフロ頭の天敵』の姿を半眼になって捕らえた。

 

「ぐぴゃ?」

 

そう、八年前の姿をしたーーーー『雷の守護者 ランボ』の姿を・・・・。

 

 

 

 

 

ーツナsideー

 

ツナとエンマは、クロームとFW陣と一緒に、治療中のシグナムとザフィーラ、そしてヴィータのお見舞いに向かっていたその時ーーーー。

 

ーーーードゴォォォォォォォォォォン!!

 

『っ!!?』

 

突然、シャマルの医務室の扉がぶっ飛んだと思ったら、『雷牛 牛丼』が、ランボを背中に乗せて駆け出して来たのだ。

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」

 

「ら、ランボ(ガン!)んなっ!?」

 

「(ドン!)のあっ!?」

 

「ボ、ボス・・・・! 古里くん・・・・!」

 

『ツ、ツナ(兄ぃ)!? エンマ(兄さん)!?』

 

牛丼にひかれ、床に倒れるツナとエンマ。と、ソコでさらに。

 

「まぁちやがれぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!! この馬ぁ鹿牛ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっっ!!!」

 

「「ギャンっ!?」」

 

「ヴ、ヴィータちゃん・・・・!?」

 

『ヴ、ヴィータ副隊長っ!?』

 

次に入院着のヴィータが鬼の形相でアイゼンをバトンのように振り回し、ドドドドドド!と、地響きを上げながら走って来て、倒れたツナとエンマを踏みつけていった。

FW陣が呼ぶが聞こえていない、今ヴィータの頭の中には、漸くやって来た『天敵』をぶちのめす事だけだった。医務室からシャマルが呆れたような怒ったような顔で出てくる。

 

「あぁもうヴィータちゃんったら! ランボくんを見た途端に元気になっちゃって!」

 

『し、シャマル先生・・・・』

 

「あら皆来てたの? 丁度良かったわ、10代目にエンマくんの治療と医務室の片付け手伝って」

 

「えっ? い、いいんですか? あの二人は??」

 

「良いのよ。あれはあの二人なりの再会の挨拶みたいな物だしね」

 

『(どんな再会の挨拶っ!?)』

 

「・・・・・・・・」

 

あまり心配していない様子のシャマルの言葉に、FW陣は心の中で一斉にシャウトし、クロームは苦笑した。

 

 

 

 

 

 

ーランボsideー

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」

 

「待ちやがれこのクソ馬鹿牛! 漸く来やがったな! テメエが来る日をずっと待ってたんだっ! 今日と言う今日こそテメエをぶっ潰して座布団にでもしてやらぁ!」

 

闘牛のような牛丼に乗ったランボを、ヴィータはとても怪我人とは思えない馬力で隊舎中を追いかけ回していた。

食堂にて。

 

「待てや馬鹿牛!!」

 

「うわぁぁぁぁぁ!」

 

「うぉっ! 極限になんだぁ!?」

 

「お、ヴィータ、元気になったみてぇだな!」

 

食事をしていた了平と山本は驚き。

廊下では。

 

「オラッ! オラッ! オラッ! オラッ!!」

 

「わっ! わっ! わっ! わっ!」

 

追い付いてきたヴィータがランボに向けてアイゼンをフルスイングするが、ランボは頭を引っ込めたり、牛丼の上で曲芸染みた動きで回避した。

 

「ち、ちょっとヴィータちゃん! ランボくん!」

 

「何やってるの二人共!」

 

なのはとフェイトが制止するように叫ぶが聞き耳もたず。

部隊長室にて。

 

「うわぁぁぁぁぁん!」

 

「むぁてやぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

「ちょ! 何やねんいきなりっ!?」

 

「ヴ、ヴィータ! お前は何をしているのだ!」

 

「怒ったもんね! 牛丼! 放電だもんね!」

 

「モゥゥゥゥゥ!」

 

「ラ、ランボくん! ここでやったらリイン達も!」

 

ーーーーバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリ!!

 

「うおっとぉっ!!」

 

「「「ぎゃああああああああああああああああああああああっっ!!!」」」

 

牛丼が放電をし、ヴィータは防御魔法で防いだが、はやてとアインスとリインは黒焦げになって倒れた。

 

「逃げるもんね!!」

 

「待てやコラーーーー!!」

 

「「「(ピクピクっ、ピクピクっ・・・・)」」」

 

はやて達を気にも止めず、再び追いかけっこを始めるランボとヴィータ。

そしてヘリポートにて、

 

「くんな! くんなだもんね!」

 

「オラ! 下りてこいやこの馬鹿牛!!」

 

ヘリコプターのプロペラの上に丸まっているランボ。ヴィータはアイゼンを片手に、ピョンピョンと跳ねながら下りてこいと騒いでいた。

因みにヴァイスはここに来た牛丼と正面衝突して、白目を剥いて口から魂的な物を出して倒れており、いつの間にか来ていたリボーンと足を止めた牛丼は、倒れるヴァイスの傍らで、仲良く喧嘩している二人の様子を眺めていた。

 

 

 

 

 

 

この数分後、鬼の形相となったはやて達から二人仲良く隊舎の廊下で正座して、約3時間に渡ってお説教を受けたのは言うまでもない。




ヴィータとランボ♪ なかよくケンカしな♪

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