ー雲雀sideー
「『アクセルシューター』。『フォトンランサー』」
レイジングハートとバルディッシュから、藍色が混じった桃色と金色の魔力弾を放つD・スペード。
「子供騙しだね」
が、球針態の上に立つ雲雀はトンファーを回転させて、魔力弾を全て弾き飛ばした。
「では、これではどうです? 『ソニックムーブ』」
一瞬で姿を消したD・スペードは、雲雀の背後に回り、砲撃モードのレイジングハートの砲口を雲雀の背後に突き付けーーーー。
「『ディバインバスター』」
ドォオオオオオオオオオンッ!
砲撃魔法が放たれる。
がーーーー。
「それがどうしたんだい?」
「ほぉ」
何と雲雀は、砲撃が放たれる一瞬で、レイジングハートの砲口を後ろ回し蹴りでずらした。
「ふっ!」
雲雀がトンファーを振るい、D・スペードがバルディッシュで防ごうとするが。
ーーーーガシャンンッ!!
「ほぉ」
雲雀のトンファーがバルディッシュを砕き、レイジングハートの砲口を再び向けようとするが、雲雀はそれよりも早くレイジングハートもトンファーで砕き、2つの杖の宝石部分が雲雀の足元に落ちる。
「これはこれは、やりますね・・・・!」
次にD・スペードは、レヴァンティンとグラーフ・アイゼンを生み出して、雲雀の近接戦闘を繰り広げる。
その際、雲雀は球針態の上に転がっているレイジングハートとバルディッシュの宝石部分を踏み潰したが、雲雀は気にも止めずにD・スペードと交戦する。
ーツナsideー
「うぅ、レイジングハート・・・・」
「バルディッシュ・・・・」
ツナと炎真の側にいるなのはとフェイトは、いくら偽物とは言え、相棒のデバイスが容赦なく破壊され、さらに踏み潰させる光景に、複雑な心境で辛そうに顔を歪め、ツナと炎真が優しく二人の頭を撫でた。
[本物である私であれば、あのようなトンファーごときで破壊されません]
[同じくです]
レイジングハートとバルディッシュが、心なしか不機嫌そうな声をあげていた。
「今度は、レヴァンティンか・・・・」
「アタシのアイゼンまで・・・・」
シグナムとヴィータも、長い時の中で数多の戦場を共に駆け抜けた相棒達の力を利用されている怒りと、今度は自分のデバイスが破壊される光景を見せられるのでは無いかと言う不安感で複雑な心境だった。
ーーーーグワシャンッ!!
と、そこで予想通り、根元まで刀身を粉々にされたレヴァンティンと、ハンマー部分を破壊されたアイゼンが、海へと落ちていき、シグナムとヴィータが渋面を作った。
「よ、容赦ないわね、雲雀さん・・・・」
「ウム・・・・」
「雲雀は戦闘において、慈悲や容赦なんて持ち合わせないタイプだからな」
何のためらいも躊躇もなく皆のデバイスを破壊する雲雀に、シャマルとザフィーラも頬をピクピクとさせ、リボーン達、雲雀を知る人間達は、雲雀なら当然だなと言わんばかりだった。
ー雲雀sideー
「ん~ヌフフフフ。いくら偽物とは言え、仲間の武器を容赦なく破壊する事に罪悪感を持たないとは、貴方はかなりの冷酷な人間のようですね!」
D・スペードが笑みを浮かべながら、今度は片手にツナのグローブを、もう片方に炎真のグローブの生み出し、拳で攻撃しながら雲雀を煽ろうとするがーーーー。
「仲間? 誰の事だい? それに偽物の玩具ごときを破壊する事に、何で罪悪感を持たないといけないんだい?」
まったく気にしていない雲雀は、小さな球針態を数個取り出すと、D・スペードに向けてトンファーで殴り飛ばす。
「おやおや」
が、D・スペードは後ろに黒い渦のような炎を展開させると、その中に飛び込み、球針体を回避する。
「っ・・・・」
雲雀は止まり、全身の感覚を研ぎ澄ませる。
ーはやてsideー
「な、何やあの真っ黒な炎はっ!?」
「ツナさん達の大空の七属性と違う・・・・!」
「炎真達の大地の七属性とも明らかに違う・・・・!」
「あれは『夜の炎』。復讐者<ヴィンディチェ>の頭目にして、かつては俺達と同じ最強の赤ん坊・アルコバレーノだった『バミューダ・フォン・ヴェッケンシュタイン』が生み出した大空とも大地とも違う、まったくの異質な死ぬ気の炎だ。能力は『転移と加速』。D・スペードは過去に復讐者<ヴィンディチェ>と手を組んで得た炎だ」
なのは達も、守護騎士達の記憶から知った『夜の炎』を見て、リボーンが詳しく話した。
ー雲雀sideー
黒い渦の炎、『夜の炎』の恐ろしさは、前回の『虹の代理戦争』で経験済みだ。
「・・・・・・・・」
雲雀は静かに待つと、右後ろから、黒い渦が現れたのを察知し、トンファーをまるでチェーンのようにしなやかに伸ばして、黒い渦の中に突き入れた。
「ぐはっ!!」
渦の中から声が聞こえ、雲雀がトンファーを思いっきり引っ張ると、そこから腹部にトンファーの先端が刺さったD・スペードが出てきた。
「ば、バカな・・・・! 夜の炎の中にいる私に気づくとは・・・・!」
「君と僕とじゃ、生き物としての性能が違う」
「がはっ!」
雲雀がトンファーを引っ張り引き抜くと、D・スペードはまるで吐血したかのように声を発する。
「くっ! 『大地の重力』!!」
「っ!」
重力で押し潰そうとするが、雲雀は球針態に向けてトンファーのチェーンを伸ばし巻き付け、その球針体に向かって飛んで、重力波から逃れる。
D・スペードは腹部を再生させるが、雲雀は手錠を投げ、D・スペードの手首にかけると、手首が増殖してD・スペードの首から下の身体を包んだ。
「っ! アラウディの手錠かっ!? ぐぉおああああああああああああああああああっ!!!」
抗おうとするD・スペードだが、手錠の内部からトゲが飛び出し、手錠の締め付けにより身体に深く突き刺さる。
「お、おのれぇ!」
余裕綽々だったD・スペードの顔が苦悶に歪むと、藍色の炎で全身を包むと、その姿を消した。
「・・・・・・・・」
雲雀は死ぬ気の炎に視線を向けると、炎が僅かに不自然な揺らぎを見せーーーー。
「・・・・!!」
トンファーを振り抜くと、ガキンッ! と金属音が鳴り、ソコからD・スペードがグローブで防御していた。
「私の幻術まで・・・・!」
「幻術は嫌いなんだ。だから攻略法もすでに知っている」
完全に状況は雲雀が圧倒的に優勢であった。
ーツナsideー
「D・スペードって人が、追い詰められてる・・・・」
「デイモンは初代霧の守護者。“本物であればこうは簡単に行かない"」
「えっ? それって・・・・?」
なのは達は戦況に首を傾げるがツナ達は冷静であり、その事を聞くと、ツナが口を開いた。
「今あそこにいるのは、本物のD・スペードが『夜天の魔導書』にインプットした一部に過ぎない。本来のD・スペードの実力の半分と言った処だろう。それをナハトヴァールが蒐集した皆の力で補っているんだ。おそらくこれまでナハトヴァールに隠れて何もして来なかったのも、今の自分では俺達に敵わない事を見越していたからだ」
「が、所詮ナハトヴァールがコピーした偽物。偽物ごときじゃ雲雀は倒せねえ」
ー雲雀sideー
「さて、終わらせよう」
雲雀はチェーン状にしたトンファーを縦横無尽に振り回すと、紫の炎を纏った光の線が、D・スペードの身体を切り裂く。
「『積乱雲』」
「ぐぁああああああああああああああああっっ!!」
嵐のように激しく、雷のように鋭く、雨のように降り注ぎ、雹のように冷徹な攻撃。まさにそれら全ての始まりとなる、雲のような乱撃であった。
ーディーノsideー
それを見たディーノが、フッと笑みを浮かべる。
「恭弥の奴、あれは“10年後の俺"が編み出した『光速天翔<サルト・ヴォランテ・ヴェローチェ・コメ・ルーチェ>』と同じ技だな」
ディーノの言った『10年後の俺』と言う単語が一瞬気になったが、はやて達は再び雲雀の方に目を向けた。
ー雲雀sideー
「ぐうぅっ! ば、バカな、この、私、が・・・・!」
「本物の君なら、もっと噛み殺し甲斐があったよ」
『積乱雲』が終えると、身体がボロボロの状態となったD・スペードの眼前に、雲雀が最大出力の炎を放出したトンファーを叩き込んだ。
ーーーードンッ!!
海面に向かって急降下していくD・スペードの真下に、先ほど避けられた小さな球針態があり、それらが一気に膨張し、そのトゲにD・スペードの身体を貫いた。
「・・・・・・・・」
串刺しとなったD・スペードを見下ろす雲雀の姿に、はやても、守護騎士達も、なのは達も、リンディ達も息を呑んだ。
これこそ後に、時空監理局にその名を轟かせる『紫雲の戦鬼』の始まりだった。
次回で、D・スペードの怨霊と、リインフォースの問題を解決したいです。