ーリンディsideー
「皆っ!!」
アースラのブリッジで戦況を見ていたリンディは、思わず大声を上げる。
はやてと守護騎士達が、D・スペードが放つ『XーBURNER』と『超新星の閃光<スーペル・ノヴァ・ブリッツ>』の光に飲み込まれ、最悪の展開が頭を過り、茫然自失となり膝から崩れ落ちそうになった。
「し、司令! モニターを!!」
クルーの言葉でハッと正気に戻ったリンディの目に映ったのは、両手を上空に挙げて万歳しているD・スペードの姿だった。
なぜあんな格好をしているのか疑問に思うと、D・スペードの両腕に鎖が巻き付いているのが見えた。その鎖によって、両腕の方向を無理矢理変えられたようだ。そしてその鎖の先を見ると、D・スペードの後方ーーーー刺のついた紫色の雲に乗った、学ランを羽織い、両腕に鎖分銅を付けたトンファーを装備した、鋭い視線をした黒髪の少年がいた。
「雲雀、恭弥・・・・!」
十代目ボンゴレファミリー雲の守護者、雲雀恭弥であった。
ーはやてsideー
「ひ、雲雀さん・・・・!」
はやてが涙ぐんでその少年の名を呼んだ。
「ん~ヌフフ。まさか、あなたが助けに来るとは思いませんでしたよ。やはりお仲間の危機を見過ごせなかったのですか? 雲の守護者?」
「・・・・なんの事だい」
雲雀はD・スペードの両腕に巻き付けた鎖分銅をほどくと、トンファーに回収した。
「僕はただ、君を噛み殺したいだけだよ。前の時はつまらない方法で君の本体に逃げられたからね」
トンファーを構えた雲雀は、獲物を見つけた猛禽類のように、唯でさえ鋭い目をさらに鋭くして言った。
ーツナsideー
「ふんっ!」
「はっ!」
ツナと炎真がD・スペードがかけた拘束魔法を引きちぎり、はやてとヴォルケンリッターの拘束も、力技で引きちぎる。
「あ、ありがとうございます・・・・」
「す、すまない、その・・・・ボスの子孫殿」
「いや、それよりも。シグナム、お前達守護騎士は記憶が戻ったのか?」
「ええ。完全に戻りました。我らヴォルケンリッターが、貴方の御先祖、ボンゴレプリーモ・ジョット殿に、大変お世話になった事を・・・・!」
シグナムだけでなく、ヴィータとシャマルとザフィーラもツナに対して空中だが膝を付き、恭しく頭を垂れた。
「我らをファミリーに迎え入れ、仲間として扱ってくれた恩人でもあるジョット殿の子孫に対し、多大なる無礼を働きました。・・・・申し訳ありません」
「その、えっと、ご、ごめんなさい・・・・!」
「本当に、ジョットさんが私達の為にどれほどの幸せな時間をくれていたか・・・・!」
「その子孫である貴方様や、当代の守護者の方々、そして協力者でもある魔導師達にしてきた事、いくら詫びても足りませぬ・・・・!」
「あ、あの、綱吉さん、ウチの子達が凄いご迷惑をおかけしてもうたみたいやけど、皆わたしの為にしたんです。せやからと言う訳にはいかへんやろうけど、許してください!」
はやても守護騎士達のしてきた事を詫びる。
がーーーー。
「お前達が悪意を持ってやってきた訳ではないと分かっている。だが、謝罪も懺悔も後にしろ」
ツナがキッとD・スペードを睨み、Xグローブの炎を噴射させようとすると、眼前にロール(増殖体)が立ち塞がる。
「キュー!」
「っ! 雲雀の・・・・?」
「ロ、ロール、どないしたん?」
「キュッ! キュキュー、キュワー!」
ロールが何かを訴えようと声を張り上げるが、当然はやてにロールの、嫌、ハリネズミの言葉が分かる訳は無いが、何となくここから先に行ってはならないと教えているように聞こえた。
すると、狼形態となったザフィーラの背に乗ったリボーンがロールに近づくと、ロールが鳴き声を発し、リボーンとザフィーラ、後解放されたアルフもその鳴き声の意味を聞き取っていた。
「フムフム。成る程な」
「リボーン。何か分かったか?」
「ザフィーラ。ロールは何を言ったん?」
守護者達やなのは達を解放したツナが、リボーンに近づくと、口を開く。
「雲雀の奴、自分だけでD・スペードを始末するみてえだな」
「雲雀様は、お一人様でスペードを倒すみたいです」
『ええっ!?』
リボーンとザフィーラの解説に、なのは達は驚き、雲雀の性質を知っているボンゴレ&シモン、そしてディーノは、「やっぱり・・・・」、と云わんばかりに半眼になったり苦笑いを浮かべた。
「ひ、1人で戦うなんて・・・・!」
「危険過ぎる! あのD・スペードは、私達だけじゃなくて炎真達の能力も手にしているのに!」
「彼は状況が分かっているのかっ!?」
なのはとフェイト、クロノが雲雀とD・スペードの元へ行こうとするが、ロール(増殖体)が行く手を遮る。
「ハリネズミさん、お願い退いて!」
「キュワーーー!!」
なのはが退いてくれと頼むが、ロール(増殖体)が退かず、さらに増殖体を生み出して、球針体の壁を作った。
「どうして・・・・」
「無駄だなのは」
「ツナさん・・・・!」
自分の肩に手を置いて止めるツナを、なのはは見上げると、ザフィーラの背に乗ったままのリボーンが声を発する。
「雲雀が何が嫌いかと言われれば、『馴れ合う事』が嫌いだ。自分の戦いを邪魔されるのが何よりも嫌いな性格だからな。下手に手助けなんてしたら、逆にこっちに牙を剥いてくる。それが雲雀恭弥だ」
「でも! D・スペードは私達の魔法だけじゃなくて、炎真達の力も手にしているのに!」
「ディーノさん。止めなアカンのとちゃう?」
フェイトが言うように、今のD・スペードはツナ達の炎となのは達の魔法をコピーしている。雲雀だけで戦うのは危険過ぎると思うのは当然だ。はやても雲雀の師匠であるディーノに、雲雀の手助けをするべきではないかと問うが。
「いや、恭弥の性格上、それは逆効果だ」
「えっ?」
「アイツ、戦闘に関してはマジでプライドが高いからなぁ。恭弥のプライドの高さはお前らが考えている以上だ。もしも本当にヤバい時は手を貸すが、そうじゃないなら手出しはできねえよ」
「ま、雲雀がコテンコテンにのされるのも見物だけどな」
「大丈夫だろう。雲雀が負けるところなんてあんまし考えられねえしな」
「極限にアイツは強いからな」
「雲の人は大丈夫」
「アイツはツナの守護者で最強の守護者で、並盛中最凶の風紀委員長だからな」
他の守護者達やリボーンも、あんまり心配した様子ですなくそう言った。
「せやけど・・・・」
「やらせて見ましょう。主はやて」
「気に食わねえけど、アイツが半端なく強い事はアタシ達も知ってるしさ」
「はやてちゃん、雲雀さんなら大丈夫ですよ」
「主。雲雀様のご性格上、我らの助勢は不要でしょう」
『信じましょう主』
守護騎士だけでなく、リインフォースも雲雀がD・スペードと一対一の戦いをさせようと言い出した。
「はやて。良い女って言うのは、好きな男が『覚悟』を決めた戦いに挑んでいる時は、ドンッと腰を据えて見届けてやる物だぞ」
「いや、赤ちゃんで男の子のリボーンくんにそれ言われてもな・・・・」
はぁ、と溜息を吐くが意を決して、はやては両手で自分の両の頬をパンパンと叩くと、フンッと腕組みする。
「もう分かったわ。わたしも腹くくるわ。雲雀さんの戦い、見届けたる!」
『はやて(ちゃん)!?』
はやての宣言に、なのは達(守護騎士除く)が驚愕の声をあげる。
ツナ達はとっくに見届ける体制で雲雀とD・スペードの戦いを見据えていた。
ー雲雀sideー
「・・・・・・・・」
雲雀はニヤリと笑みを浮かべながら、D・スペードを見据えると、ロール(本体)に向けて声を発する。
「ロール、形態変化<カンビオ・フォルマ>」
「キュワーーー!!」
ロールが叫び声をあげると、紫色の炎となって、雲雀の身体を包み込む。
炎が消えるとソコには、改造長学ランを纏い、トンファーを構え、頭がリーゼントとなったヒバードを連れた雲雀恭弥だった。
「ん~ヌフフフ、これは少し楽しめそうですね」
「噛み殺す!」
レイジングハートとバルディッシュを構えたD・スペードに、雲雀は小さな球針体を足場にして、向かっていったーーーー。
ついに始まった雲雀とD・スペードの一騎討ち。勝つのはどっちだ!?