『初代雲の守護者・アラウディ』。
現在はツナの父・家光がボスを務める『ボンゴレ門外顧問・CEDEF』の創設者であり、某国の諜報機関のトップであった人物。
群れる事を嫌い、常に独断で行動し、あらゆる犯罪者を逮捕してきた凄腕の捜査官であり。自らの掲げる正義がプリーモと重なった時に手を貸し、誰よりも敵を倒し、誰よりも味方に優しかった人物。
そんなアラウディはイタリアのとある領地で『謎の失踪事件』が多発しているのを知った。
プリーモの自警団からの依頼で、その領地を調べてほしいと頼まれた。プリーモ達ではその領地を修める領主が頑なにその事を認めようとせず、領地に入る事ができず調査できなかったが、独自に調査をしたアラウディはある事実を掴んだ。
その領主が裏では『黒魔術』の収集家で研究もしており、領民を拉致し、魔術の研究と称して生け贄や人体実験をしている事を知った。
それを知ったアラウディはその領主を叩きのめし、監禁されていた領民達を救い、プリーモの自警団にその事を報告し、その領主は捕らえられた。
アラウディは証拠物として黒魔術の証拠品を押収する際、『一冊の鎖が巻き付いた本』を手に取った。
その時、本が光だし、その本から五人の男女が現れた。
『烈火の将シグナム』。
『鉄槌の騎士ヴィータ』。
『湖の騎士シャマル』。
『盾の守護獣ザフィーラ』。
そして、『融合管制騎の少女』。
五人はアラウディに、手に取った本こそ、『夜天の魔導書』と呼ばれる本である事を説明し、アラウディを『主』として忠誠を誓う。がーーーー。
【君達の助けは必要無いよ】
【【【【【えっっ!!!?】】】】】
元々群れるのが大嫌いなアラウディは五人の言葉を一蹴した。
しかし、シグナム達もそれでハイさよなら、となる訳にはいかず、何とかアラウディに付いていこうと食い下がっていった。
いい加減に鬱陶しくなったアラウディは、五人をそのまま『ボンゴレプリーモ・ジョット』に預けた。
【プリーモ。今回の事件の調査の借りとして、彼女達の事を任せるよ】
【ああ、分かった】
プリーモは守護騎士達を快く受け入れ、自警団の仲間として迎え入れた。
が、融合管制騎の少女だけは、アラウディの秘書として側に置いてほしいと頼まれ、ジョットからの口添えもあってアラウディも(かなり)渋々だが了承した。
【【【【・・・・・・・・】】】】
【不安を感じるのも仕方がないかも知れないが、安心してくれ。俺たちのファミリーの力になって欲しい】
【【【【ファミリー?】】】】
【そう。俺はこの町に生まれ育ち、この町を愛している。だが、この町にも何でもない日常を生きる人々を脅かす善からぬ輩がいる。だからこそ、そんな奴らから人々を守る為に、力になって欲しいんだ】
プリーモの瞳に宿る気高い志に、守護騎士達は協力を受け入れ、ボンゴレファミリーの一員として活動した。
シグナムはその容姿と人柄から、男女問わず(取り分け女性からの)人気があり慕われていた。
ヴィータは町の子供達の親分として君臨し、子供達の間の不穏な噂話や孤児院の経営状況などを聞いていたりし、老人達からも可愛がられていた。
シャマルは治療もできる故に、ボンゴレとは別に診療所で医学を勉強し、その穏やかさからか、男性から人気があった。
ザフィーラは動物の姿を利用しての諜報活動などを行い、戦闘力の高さもあって、ファミリーの構成員達の戦闘訓練の教官を勤めてくれていた。
守護騎士達はボンゴレファミリーにとって、掛け替えのない大切な仲間となっていった。
そんな中、四人に最も仲良くなった少女がいた。
『公爵令嬢のエレナ』だった。
“D・スペードの恋人”だった彼女は、四人の良き友人であり、あまり仲が良くなかった主・アラウディとの仲を彼女が取り持ってくれた。
【アラウディさんは、貴女達の事をどうでもいいだなんて思っていないわ】
【そう、なのか?】
【でもよ、アタシらをジョットに預けて融合騎だけ連れて行ったじゃねぇかよ?】
【それはね、アラウディさんは融合騎さんから聞いたようで、スペード達からも聞いたわ。貴女達が長い間ずっと、血生臭い戦場に立って戦っていたって。それで貴女達にはこれから、心穏やかに過ごして欲しいって思って、アラウディさんはプリーモに預けたのよ】
【そう、なのかしら・・・・?】
【きっとそうよ。信じてあげたら、貴女達の主様を】
【エレナ殿・・・・】
エレナのとても穏やかな優しさに四人は敬意をもった。
【・・・・・・・・】
主であるアラウディが所用でボンゴレに寄った際、プリーモから守護騎士達の活躍を聞かされ、
ポンッ、ポンッ、ポンッ、ポンッ。
【【【【~~~~~~~!!!//////】】】】
なんと、アラウディが守護騎士達の頭をポンポンし、守護騎士全員が顔を赤くして喜んだ。アラウディの近くに控える融合騎の少女も驚いた顔になっていた。
そして、主アラウディやプリーモとエレナだけでなく、他の守護者達とも交流を重ねた。
【ザフィーラ。ウチの連中を鍛えてくれてありがとな。礼をいうぜ】
【イヤ、我らもボンゴレファミリーの一員だ。これくらいは当然だ。『G』殿】
プリーモの幼なじみで、右腕にしてボンゴレNo.2でもある『初代嵐の守護者・G』。
【♪~♪~♪~♪~♪】
【素晴らしい演奏だな。『朝利雨月』】
【ありがとうでござるよ、シグナム殿】
遠い東の島国の音楽を愛する貴族であり、無双の剣士でもあった『初代雨の守護者・朝利雨月』。
【究極に祈りは済んだか、シャマル?】
【ありがとうございます。『ナックル』さん】
最強の拳闘士だったが、誤って命を奪ってしまった戒めとして、牧師となった『初代晴れの守護者・ナックル』。
【おら『ランポウ』! お前の土地で暴れているイノシシの退治に行くぞ!】
【俺さま領主様なんだものね。危ない事はしなくて良いんだものね】
【~~~~~!!】
ガンっ!
【グヒャン!】
【良いからさっさと行くぞ! このボンクラ領主!】
【いだだだだだ!! ヴィータ! アイゼンで叩くなものね! 引きずるなものね!】
領主の息子で臆病な性格をした最年少の守護者、『初代雷の守護者・ランポウ』。
守護騎士達は長い戦い日々の中で、これほど穏やかで幸せな時を過ごして来た事は無かった。
そして、エレナの恋人である『初代霧の守護者・D<ディモン>・スペード』とも・・・・。
【貴殿も変わっているなD・スペード。貴族の出自なのに自警団に参加するなど】
【ヌフフフフ。安い見栄や自尊心に、くだらない家柄自慢しかやることがない、腐敗した貴族社会で生きているより、力なき領民達の為に尽くす事こそ、高貴なる者の務めですよ。その為にも、ボンゴレはもっと勝ち続けなれば・・・・!】
【おいおいディモン。あんまり過激な事を考えるんじゃねぇよ】
【いいえ。ボンゴレは大きくなりました。大きくなった組織を疎んじる人間は多くいます。そんな人間達を黙らせる為には、ボンゴレをより強固に、より強大に、何者をも手出しができないくらいの“絶大な組織”にしなければならないのです】
【ディモンさん・・・・】
【あまり、思い詰めない方が良いぞ、スペード・・・・】
【・・・・・・・・これからプリーモと会議があります。私の考えを彼に伝えてきます】
時おりD・スペードが見せる危険性を、守護騎士達は不安そうに見ていた。
そして、プリーモはこれ以上の組織の拡大は、無用の争いを生み出すと考えD・スペードの意見を聞き入れなかった。D・スペードもエレナの口添えもあってその場を退いてくれたが・・・・。
平和路線に切り替え、戦力を縮小しようとするボンゴレの動きを狙って、敵対勢力が手薄になった縄張りにあるD・スペードの屋敷を襲撃した。
【手薄になった時を狙ったか! 舐めた真似をしてくれる!】
【負傷者もいる、シャマル! お前も来てくれ!】
【わ、分かったわ、でもエレナさんが・・・・】
【エレナにはディモンがついてるから大丈夫だろ!】
襲撃者達は、偶然遊びに来ていたシグナム達が全滅させた。
しかし、隙を見て逃げ出した襲撃者の1人が、D・スペードとエレナのいる部屋に爆弾を投げ込んだ。
ーーーードンッ!!
【【スペード! エレナッ!】】
【【ディモン(さん)! エレナ(さん)ッ!】】
ヴィータとシャマルが急いで屋敷に向かい、シグナムとザフィーラが逃げ出した構成員を始末し終えて、二人の部屋の前に着くと、茫然自失となったヴィータとシャマルを見て、血の気が失せた。そして、部屋はーーーー。
【エ、エレナ・・・・!】
爆発で焼け焦げた部屋に横たわる火傷だらけのエレナを抱き上げる、同じように火傷だらけのD・スペードだった。
【私のせいだ・・・・! 私が、あの時プリーモの考えをしっかりと正していれば・・・・強くなくては弱き者どころか、愛する女性一人救えないのだと・・・・】
【【ディモン(さん)・・・・】】
【【スペード・・・・】】
悲しみにくれるD・スペードを、守護騎士達は辛そうに見つめる。
【エレナ、見ていておくれ・・・・お前の愛したボンゴレは、もっと強くなる・・・・私が創ってみせる!! 名を聞いただけで震え上がる程のボンゴレを!!】
D・スペードの慟哭を聞いて、守護騎士達の耳にある音か聞こえた。この幸せな日々が、崩れていく音をーーーー。