ーツナsideー
クロノは腕の傷を応急措置で済ませ、比較的に軽傷の魔導師達を引き連れて逃げた守護騎士と雲雀恭弥の追跡に向かった。
そしてその夜。リンディ達のマンションに集まったツナとリボーンとなのは、炎真とフェイトとアルフ、リンディの護衛としているクローム、そしてツナの相棒の『天空ライオンのナッツ』が、リンディから襲撃者達の事を聞いていた。
ちなみにナッツはなのはの膝の上に座り、時々なのはが頭を撫でて気持ち良さそうにし、フェイトはナッツが気になるのか、チラチラとナッツを横目で見ていた。
リンディが『闇の書』の事を詳しく説明した。
「クロノが追いかけているのは、古いロストロギア、『闇の書』。古代ベルカの時代から四人の守護騎士とともに、さまざまな主の元を渡ってきたと言われてる」
「(『闇の書』・・・・。何処かで聞いたような・・・・?)」
リボーンが『闇の書』について考えていたが、リンディは構わず続ける。
「だけど、私の知ってる闇の書の情報と、あの騎士達の様子が一致しないの」
「フェイトちゃん、あの剣士の女の人とお話してたよね?」
「うん・・・・」
ナッツをちょっと意識していたフェイトが、気持ちを切り替える。
「仲間の為、主の為にやるべき事があるって・・・・」
『・・・・・・・・・・・・』
一同は守護騎士達の言葉の意味を考えるが、突然リンディが両膝を付いて、フェイトとアルフに手を合わせる。
「フェイトさん、アルフ、ごめん! 私、休暇を一旦返上して、お仕事復帰して良い?」
「はい。それは全然」
「なんだけど、できれば・・・・」
「私達も、協力させてほしいんです」
「俺達も、協力します」
「雲雀恭弥さんが関わっているなら、僕たちも黙っていられません」
「私も、出来ることなら・・・・」
「うぅ~~ん・・・・」
正式な管理局の魔導師ではないなのはとフェイトと使い魔のアルフ。
不可侵条約が結ばれているボンゴレファミリーのボスであるツナとクローム達守護者。ボンゴレと協力関係にあるシモンファミリーボスの炎真の介入に、リンディは渋面を作って悩むように唸る。
高ランク魔導師であるなのはとフェイトが参加してくれるのはありがたい。昼間の戦闘から見ても、雲雀恭弥の実力は管理局の魔導師では手に負えない。しかもリボーンから聞けば、雲雀はまだまだ実力を隠していると聞いているので、正直少なくともツナと炎真の協力は得たいと考えていた。
「ダメですか?」
「・・・・・・・・一緒にお願いしてみましょ」
「「っ・・・・はいっ!」」
「「よろしくお願いします」」
リンディの提案に、なのはとフェイトは笑顔を浮かべて頷き、ツナと炎真も頭を下げた。
ーはやてsideー
「へぇ~、ディーノさんって会社経営もしてはるんですか?」
「ああ、元々は俺の親父が経営していたんだが、俺が学生<ストデント>の頃に病死しちまってな。それからは俺が会社を継いで、経営しているんだよ」
「は~、ディーノさん立派なんやね」
八神はやては、ディーノと一緒に来ていた草壁哲矢から、ディーノとロマーリオの事を聞き、持ち前の人懐っこさを生かしてディーノとの会話に花を咲かせていた。
草壁はロマーリオと共に二人の会話を微笑ましく見ていた。
「機会が合ったら、はやてや家族のみんなをイタリアに招待するぜ」
「ホンマに?! でもパスポートとかがなぁ・・・・」
「何なら俺の方でパスポートを準備してやるよ」
会社経営はあくまでも“表の顔”、ディーノの本当の姿は、イタリアでも強い勢力を持つ『キャバッローネファミリーボス 跳ね馬ディーノ』。
その気になれば、はやてだけでなく、パスポートどころか戸籍も無い、シグナムとヴィータとシャマルのパスポートを準備する事などわけないのだ(ザフィーラはペットとして連れていけるが)。
「う~ん・・・・本場のピザやスパゲッティやジェラートも食べてみたいなぁ。・・・・でもそこまでして貰うのは、ディーノさんに悪いやろうし・・・・」
「気にするなって。後ピザはピッツァって言うんだぜ。俺のお勧めの店も紹介するし、ヴェネツィアやローマのコロッセオやトレヴィの泉、サンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂に、イタリアファッションも見せてやるぜ♪」
「イタリアのコロッセオかぁ~、シグナムが好きそうやな。トレヴィの泉やサンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂も本で読んだ事あるから見てみたいわ~」
等と会話に花を咲かせていると、はやての目の前に、『闇の書』が宙に浮きながら現れた。
「「っ・・・・!」」
ディーノとロマーリオの瞳に、一瞬警戒の光が走るが、草壁が視線で押さえ、はやてはディーノ達の様子に気づかず『闇の書』に目を向ける。
「ん・・・・『闇の書』、おかえり~」
『闇の書』はゆっくりとはやてに近づく。
「あれ? シャマルと一緒やなかったけ?・・・・まあええか。せっかく雲雀さんの先生のディーノさんが来てくはったのに、シグナム達が帰ってこんくてな。ディーノさんとお話してたんよ」
すると『闇の書』が宙を浮きながら、はやての頭にすり寄る。まるで慰めているように。
「ン・・・・アハハッ、平気やで。少しくらい離れててもウチら家族や。寂しいことないよ」
はやては優しく『闇の書』を撫でる。
端から見ると奇妙な光景だが、ディーノは『闇の書』に少し警戒しながらはやてに聞く。
「はやて。草壁から聞いてはいたが、これが『闇の書』ってヤツなのか?」
「うんそう。半年くらい前やったかな。雲雀さんがウチでご飯を食べて、哲矢さんが迎えに来た時やったけな・・・・」
はやては当時の事をディーノに話し始めた。
ークロノsideー
守護騎士の捜索をしていたクロノに、リンディからの連絡が入ってきた。
「戦力が増えるのはありがたいですし、艦長に復帰していただけるのも助かるのですが・・・・」
《ごめんなさいね、我が儘で》
《ごめんね、クロノ》
《ごめん》
《頼むよ、クロノ》
《雲雀さんが相手じゃ危険が高いしさ》
《今回はボンゴレではなく、沢田綱吉と古里炎真個人で協力するから、条約違反にはならねえぞ》
「ハァ。じゃ、艦長は明日から。なのはとフェイトは、嘱託魔導師として、綱吉と炎真、それとクローム達守護者のみんなには、民間協力者としてこちらからの協力要請に応じて貰う形で・・・・」
《ええ》
《ありがとうクロノ》
クロノはにこやかに笑みを浮かべた。
ーはやてsideー
「はやてちゃん! ごめんなさいすっかり遅くなっちゃって!」
「えぇ~、雲雀さんと山や海で実戦の特訓したん?」
「ああ、恭弥は人の教えを素直に聞くヤツじゃねえからな。自分と真剣勝負をしないと、教えを受けないって言うほど、プライドの高いヤツなんだよ」
「大変やったんやね~。あっ、シャマルおかえり~」
「おかえりなさい。シャマルさん」
「おっ? このレディがミス・シャマルか?」
「草壁、お前えらい別嬪さんの彼女ができたなぁ」
「・・・・・・・・あら?」
その頃。夜10時を回り、管理局の追跡を振り切るために地球と違う次元世界を経由して、夜遅くに八神家に慌てて戻ったシャマルは、待ちぼうけしているであろう、主はやてのいるリビングに入ると、その主と、自分と懇意な関係の少年(?)草壁哲矢が、見知らぬ金髪の男性と壮年の男性と、楽しく談笑しており、思わず間の抜けた声を上げた。
「えっと、ただいま、はやてちゃんに哲矢さん・・・・。あの、それでその人達は?」
「あっこのお兄さんはディーノさん。雲雀さんの家庭教師の先生、お師匠さんみたいな人なんやて。こっちのおじさんは、ディーノさんの部下で、ロマーリオさんや」
「えぇっ!? あ、あの雲雀さんの!?」
天上天下唯我独尊・傲慢不遜無礼千万を地で行くあの我が儘帝王の雲雀恭弥の家庭教師。
それだけでもシャマルにとっては仰天もの、おそらくここにいない守護騎士の仲間達も驚くと思う。
ーシグナムsideー
「何? あの雲雀の師匠筋の人間が来た?」
《ええ、お陰ではやてちゃんも寂しい思いをしないで、雲雀さんの話で盛り上がったらしいわ。でももう夜遅いからお帰りになったの。はやてちゃんも眠らせるわね。そっちはどう?》
「ああ。今ザフィーラが雲雀の相手をしている。私とヴィータは、この次元世界の魔法生物から魔力を蒐集しておく」
別の次元世界に来ていたシグナムとヴィータは、崖の上から、眼下で繰り広げられている雲雀VSザフィーラのバトルを見ていた。
「・・・・!」
「くっ!」
手加減一切無しに迫り来る、雲の死ぬ気の炎を纏った鋼鉄のトンファーの攻撃を、ザフィーラは寿命が縮む思いをしながら、必死に回避と防御をし、時に反撃しながら、雲雀と戦っていた。
「ふ~ん。流石に防御は上手いね、『盾の守護獣』」
「雲雀様こそ、以前よりも、技にキレが、増していますね。修行でも、なされて、いたのですか?」
全然余裕の雲雀と、雲雀の攻撃に神経をすり減らしているのか、汗まみれで呼吸も少し荒くなっているザフィーラ。
どちらが優勢かは火を見るよりも明らかだった。
「雲雀の相手はザフィーラに任せるとして、雲雀の師匠の御仁には感謝せねばな。お陰で主も楽しい会話ができたそうだ」
「明日、帰ったらはやてに謝ろう」
「ああ」
「そういやぁよ」
「?」
「あん時<フェイトと交戦中>、何を話していた?」
「ああ、『闇の書』の事を聞かれた。我々は、『闇の書』の何を知っていて、何が目的なのか、と・・・・」
「ん? アタシ達は『闇の書』の騎士だ。主の為にページを集めるだけじゃねぇか」
「そうだな・・・・。だが、不思議と何かが引っ掛かってな」
眼下で火花を散らせながら戦う雲雀とザフィーラを眺めながら黄昏るシグナムとヴィータ。
ふと雲の死ぬ気の炎を見ていたヴィータが、以前か、気になっている事を話した。
「引っ掛かるって言えばよ。初めて雲雀の野郎や、あの『死ぬ気の炎』を使うガキ共<ツナ達>に初めて戦った時、変な頭痛があったよな?」
「そうだな。妙な感覚だが、『死ぬ気の炎』を見ていると、何かを思い出しそうで思い出せない。そんな感覚を感じる・・・・」
「たくっ・・・・何か気持ち悪いぜ・・・・!」
自分達は“何か”を忘れている。とても大切で、そして悲しい“何か”を、しかしその“何か”が分からず、シグナムとヴィータは頭を悩ませていた。
ーリボーンsideー
そして今日は解散となり、ツナはベッドにすでに夢の中に入っていたが、リボーンは屋根裏に作ったリボーン専用の書斎で、ある記述を読みながら、ある単語を口走った。
「フム・・・・『闇の書』か・・・・」
『闇の書』。リンディから聞かされたロストロギアが気になり、歴代ボンゴレの歴史が記載されていた書物を次々と読み漁っていると、1つの記録書を見つけて、本を開いた。
「・・・・これは、『初代ファミリー』の記述か・・・・ん?」
『初代ボンゴレファミリー』。元々町の自警団だったボンゴレⅠ世<プリーモ>ファミリーの記録が記載された書物に気になる単語が合った。
「・・・・・・・・・・・・『夜天の書』?」