そして新年最初に活躍するのは、彼女です!
翌日、なのはとフェイトは私立聖祥大学付属小学校で勉強に励んでいる頃、リンディ・ハラオウンはリボーンが寄越した“護衛”と一緒にスーパーで買い物をしながら、クロノからの念話通信での報告を聞いていた。
「《犯人がコア収集をできるのはやはり、魔導師1人につき一度限りだそうです》」
「《そう、それならなのはさんとフェイトさんはもう、襲われる心配は無いのね?》」
「《ええ。ですが艦長ご自身が・・・・》」
「《そうね・・・まあ平気よ、リボーン君が“護衛”を付けてくれているし、私も自分の身を守るくらいなら。でも大変なら、休暇返上して手伝いましょうか?》」
「《っ! いえ・・・大丈夫です。ご心配無く》」
「《そう?》」
「《フェイトと一緒に、ゆっくりしていてください》」
「《はい、了解》」
念話通信を切ったリンディは“護衛”とスーパーを出ると、再び念話通信を送る。
「《レティ、今ちょっと良いかしら?》」
「《あらリンディ、どうしたの?》」
「《私達、古い付き合いよね?》」
「《まあ随分とね・・・なに? 急に》」
「《クロノが担当している事件って、『闇の書』関係だったりする?》」
「《っ・・・》」
クロノは隠していた様だが、母親にはお見通しであったようだ。
その後、マンションに戻り、家事をしながらレティとの通信でのやり取りを思い出していた。
「初めは、こっちでも認識できてなかったのよ。私達が知っていた『闇の書事件』とは、いろんな事が違っていたから。クロノ君には、他のチームに変わってもらうって言ったんだけど・・・」
「聞かなかったでしょう?」
「えぇ・・・自分が『闇の書事件』を担当している事、あなたには伝えないようにって」
「そう・・・・」
リンディは自室にある『自分と幼いクロノと、亡き夫クライド・ハラオウン』の写真を悲痛に見つめると、机の引き出しから手帳を取り出し開くと、『カード』が挟まれ、過去の情景が浮かんだ。
『けたたましく鳴り響く警報、逃げ惑う局員達、“黒い根”のようなモノが伸び、それに捕らわれた夫クライド、泣き叫ぶ自分』
そしてそれらを引き起こしたのが、件の『闇の書』。
リンディは挟まれていた“カード”、亡き夫であるクライド・ハラオウンの形見、『ストレージデバイス デュランダル』をポケットにしまった。
「さて、晩御飯の支度をしないとね・・・それじゃお手伝いヨロシクね、“クローム”ちゃん♪」
「はい・・・」
リンディはリボーンが“護衛”に寄越した、『ボンゴレ霧の守護者の“片割れ”』である、儚げな雰囲気を纏い、紫色の髪の毛をパイナップルヘアに結わえ、顔には眼帯を付けた少女、“クローム髑髏”と家事を始めた。
ーツナsideー
並盛中学の屋上に集まったツナとリボーン、獄寺と山本と了平、炎真が、なのは達を襲撃した騎士達と雲雀の繋がりを探っていたアーデル達シモンファミリー守護者(了平と特訓相手をしている紅葉は除く)から調査報告を聞いていた。並盛粛清委員会委員長の鈴木・アーデルハイトと一緒に調査していた加藤ジュリーが話し出す。
「雲雀恭弥の最近の動きを調査して見たんだけど、どうやら海鳴の方に何度か足を運んでいるわ」
「海鳴って事は、襲撃者はなのはちゃん達の地元に住んでいるって事なの?」
「そう言うこったな。さらに調べて見るとよ、雲雀が海鳴に行くようになったのは半年前・・・つまり俺らが『ジュエルシード事件』でバタバタやってる時に雲雀のヤロウも海鳴で何かやってたって事だな」
「その半年前から海鳴の図書館の本の増加や設備が整えられたり、海鳴総合病院では障害者用の医療設備やリハビリ設備が充実するようになったし、人目が入らない場所にも警察官が巡回するようになったり、街頭防犯カメラが設置され、海鳴を中心に裏で犯罪を起こしていた犯罪組織、暴力団や不良グループ等が壊滅させられたそうよ」
「明らかに雲雀の仕業っスね・・・・」
「雲雀の奴、並盛だけでなく海鳴まで自分の支配下に入れるつもりなのか?」
「ハハハッ、雲雀って仕事熱心なのな♪」
「山本、笑い事じゃないよ・・・・でも海鳴の裏でそんな物騒な人達がいたなんて・・・・」
「お前ら、なのはの友達のアリサとすずかは知ってるな」
リボーンの言葉に全員が当然のように頷く。
「アリサもすずかも日本でもかなり有数な大金持ちだからな、それ故に誘拐に合ったりしてるンだぞ」
おしとやかでお嬢様っぽいすずかは兎も角、獄寺とにらみ合いできる程の気の強いアリサがお嬢様だと言う事にツナ達は何とも言えない顔になった。
「それよりもさ! 本当にクロームにリンディさんの護衛を任せても良かったのかよリボーン?」
「大丈夫だろう、クロノに聞いた話じゃ今回の襲撃者達は魔導師の魔力を奪っているって話だ。前回魔力を奪われたなのはとフェイトを除いて、今俺達の周りで高い魔力を持っているのはリンディだぞ。クロームなら同じ女だし、いざ襲撃されれば“幻術”で対応できるしな」
「でも・・・・」
生来の心配症故にクロームとリンディの身を案じるが。
「心配しなくても大丈夫ッスよ十代目!」
「クロームだって俺らと一緒に色んな戦いを切り抜けて来たんだぜ!」
「ウム、極限にクロームも頼りになるボンゴレ守護者だからな!」
「ウーン・・・・大丈夫かなぁ? こうしてる間にも襲撃されていたりして・・・」
ツナの予想は、この数時間後に現実となることをツナ達は知る由もなかった。
ーなのはsideー
レイジングハートとバルディッシュのお見舞いで本局の技術セクションのデバイスルームに赴き、技術士官のマリエル・アテンザ(通称マリー)と対面する。
「ふぁあ~~・・・イヤ~何とか予定日に間に合って良かったよ・・・・」
「「ありがとうございます」」
「マリーさん・・・大丈夫ですか?」
「アハハッ平気平気・・・」
気丈に振る舞っているが、髪はボサボサ、目には大きな隈、白衣をヨレヨレ、見るからに疲労が溜まっていますと言わんばかりの姿であった。
「二人は大丈夫なの?」
「バッチリです!」
「前よりも魔力量が増えたくらいだって」
マリーの質問になのはとフェイトはグッと気力が充実しているのをアピールする。
「若さだね~~・・・さ、もう準備万端だから、会ってあげて、二人の新しいデバイス。『レイジングハート エクセリオン』と『バルディッシュアサルト』だよ!」
マリエルが、修理完了しただけでなく、形が変わったレイジングハートとバルディッシュを見せた。
レイジングハートは赤い宝玉がより輝き。
バルディッシュは逆三角形の形がさらに装飾が強くなっていた。
「アッ・・・」
[しばらくぶりです、マスター]
「レイジングハート、形が・・・」
[なかなかお洒落でしょう?]
「うん・・・かわいい!」
「バルディッシュも!」
[イエス・サー]
なのはとフェイトは久しぶりに再会し、新たな姿になった相棒を絶賛した。
「変更点については、本人たちから聞いた方がいいかな」
「はい!」
「ありがとうございます」
《あっ! フェイト!》
デバイスルームにいるフェイト達に、アルフが空中ディスプレイを開けて通信を寄越した。
「アルフ、どうしたの?」
「《うん今日ね、リンディ提督やクロームと待ち合わせしてたんだけど、二人とも連絡が通じないんだ・・・フェイト、何か聞いてない?》」
「ううん、何も・・・」
「何か会ったのかなぁ? リンディさんにクロームさん・・・」
この数分後、なのは達はリンディとクロームに起こったことを知る。
ー作戦本部ー
ブゥゥゥゥン! ブゥゥゥゥン! ブゥゥゥゥン!
クロノのいる作戦本部に警報がけたたましく鳴り響く。
「観測地点にて、結界発生!」
「術式は・・・『エンシェントベルカ』!!」
古代ベルカ式の魔法、それはシグナム達が襲撃したことを知らせていた。
ー結界発生地点ー
結界が発生した地点では、管理局の魔導師数名が結界を破ろうとしていたが。
「現在滞在中の隊員4名で包囲! 結界の破壊工作中ですが!」
巨大な結界を4名の魔導師が破壊しようとしているが、所詮は低ランク魔導師、数が集まっても一流の魔導師が張った結界を破ることはできずにいた。
ーシャマルsideー
そして結界を張った張本人、『湖の騎士 シャマル』は結界から少し離れたビルの屋上から巨大な結界を展開維持しながら、管理局の魔導師の様子を伺った。
「《この結界、固い!》」
「フッ、当然よ。私と“クラールヴィント”の結界だもの。あのオレンジの炎の男の子<ツナ>の砲撃<XBURNER>クラスなら兎も角、あの程度の魔導師に破れるモノではないわ」
毒づく魔導師にシャマルは不敵な笑みを浮かべながら自分の人差し指も中指に嵌めた2つのリングのアームドデバイス『風のリング クラールヴィント』を撫でる。
「皆、そっちはどう?」
「《シャマルか?! こちらは奇妙な事が起こっている!》」
「ザフィーラ? どうしたの?」
念話で通信したザフィーラの焦った声に、シャマルも訝しそうに問う。
「《訳わかんねぇ! どうなってンだよこれっ!!》」
「ヴィータちゃん? 何かあったの、シグナム!」
「《分からんのだ! ターゲットの魔導師とその護衛のような少女を見つけたのだが・・・!》」
「本当に何が起こったの!?」
「《ターゲットの魔導師と少女が・・・・“大量に現れた”のだ!》」
「・・・・えぇっ!?」
シグナムの言った言葉が一瞬理解できず、シャマルはすっとんきょうな声を上げた。
『烈火の将 シグナム』、『鉄槌の騎士 ヴィータ』、『盾の守護獣 ザフィーラ』は今、『まやかしの幻影』に踊らされていた。
クロームの幻術は最早世界レベルと思います。リリカル側には骸やマーモン、幻騎士やトリカブト、クロームとフラン位の幻術使いは居ないと思っています。