時の庭園・最深部ー
古里炎真とフェイト・テスタロッサとアルフ、クロノと獄寺が、プレシア・テスタロッサと対峙した。
「炎真! 十代目達はどうした!?」
「魔力を消耗したなのはちゃんとユーノを守りながら、動力炉に向かっている」
炎真はプレシアを真っ直ぐに見据えていた。
「・・・・・・・」
「・・・・・・・」
フェイトとプレシアはお互いを見つめる。フェイトを見た瞬間、プレシアの目に悲痛な光が走ったが、すぐに目を鋭くする。が、突然プレシアが咳き込む。
「ゴホっ! ゴホっ!ゴホっ!ゴホっ!・・・・」
「っ! 母さん!!」
血を吐きながら咳き込むプレシアにフェイトは駆け寄ろうとするが、プレシアは鋭く睨む。
「何を、しに、来たの・・・・!」
「っ!・・・・」
「消えなさい・・・もう貴女に用は無いわ・・・」
「・・・・貴女に、言いたい事があって来ました」
炎真とアルフ、クロノと獄寺は静かに事のあらましを見守る。
「私は、只の“失敗作”で、“ニセモノ”なのかもしれません。アリシアになれなくて、期待に応えられなくて、居なくなれって言うのなら、貴女から離れて私は・・・」
フェイトは振り向き炎真の方を見る。
「・・・・(コクン)」
炎真が頷くとフェイトは再びプレシアの方を見据える。
「私は、貴女に二度と会おうとしません。だけど、産み出して貰ってから今までずっと・・・今もきっと、母さんに笑って欲しい。幸せになって欲しいって気持ちだけは、本物です・・・・」
「・・・・!!」
フェイトはプレシアに手を差し出し。
「私の・・・フェイト・テスタロッサの本当の気持ちです・・・」
「・・・・くだらないわ・・・」
「・・・・・・・」
顔を伏せたプレシアをフェイトは悲しそうに見つめる。
「(フェイト、私の事なんて忘れなさい。こんな、貴女をずっと苦しめてきたこんな最低の母親の事なんてさっさと忘れて、貴女のファミリーの元へ帰りなさい・・・)」
顔を伏せたプレシアは持っていた杖のデバイスの柄で地面を叩くと、紫色の魔法陣が展開された。魔法陣に呼応するかのように、9つのジュエルシードが光り輝く。すると、時の庭園が鳴動する。
ーリンディsideー
「っ!」
時の庭園の突然の揺れにリンディはよろけ、リンディが立っていた床がひび割れた。
《艦長! ダメです! 庭園が崩れます!》
エイミィからの通信でリンディの顔に焦りが浮かぶ。
ー時の庭園・最深部ー
《クロノ君達も脱出して! 時の庭園崩壊までもう時間が無いよ!》
「了解した! フェイト・テスタロッサ! フェイト!」
「・・・・・・・」
クロノの呼び掛けにフェイトは無反応でプレシアを見つめる。プレシアはカプセルに入ったアリシアに寄り掛かる。
「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、私は行くわ。アリシアと一緒に・・・!」
「っ!・・・・母さん・・・・!」
「貴女は行きなさい、貴女の“帰る場所”に、貴女の帰りを“待っている人達”の所に・・・・!」
「母さん・・・?」
「さようなら、フェイト・・・!」
涙混じりに優しい笑顔を浮かべたプレシアとアリシアのいる場所が崩壊した。
「母さん! アリシア!」
フェイトがプレシア達に近付こうとするが、最後に見たのは、二人は虚数空間に飲まれていった。
「アリシア・・・」
プレシアはカプセルの中にいるアリシアを見ながらアリシアとの思い出が頭に浮かんだ。
『アリシア、お誕生日のプレゼント、何か欲しいモノがある?』
『う~んとね・・・あっ! 私、妹が欲しい!』
『っ! えっ?////』
『だって妹がいたら、お留守番も寂しくないし、ママのお手伝いもい~ぱい出来るよ』
『そ、それはそうなんだけど・・・/////』
『妹が良い! ママ、約束!』
『・・・ウフフフ』
そして、以前炎真に言われた言葉でその時の思い出が甦った。
『フェイトは貴女にとって出来損ないの”クローン“かもしれないけど、アリシアにとっては“妹”のような存在じゃないのか!?』
「(いつもそうね、いつも私は、気づくのが遅すぎる・・・)」
「プレシアーーーーーーーーーーーーーー!!!」
「(っ! 古里・・・炎真・・・!?)」
自分を呼ぶ声に目を向けると、虚数空間の中を真紅の炎が自分に向かって来た。
「プレシア! アリシア!」
炎真はプレシアの腰に左手を回し、アリシアを右腕で抱える。
「何をしているの古里炎真!? 貴女には・・・!!」
「こんなのダメだ!!」
「っ!?」
「こんな結末、こんな終わりなんて僕認めない!!(白蘭からの情報では、この奥に・・・!!)」
炎真は懐から、白蘭からの情報とリンディ達の技術で作られた“アル物”を取り出す。『小型時空転送装置』をーーーーーーー
ーフェイトsideー
「アリシア! 母さん!! 炎真ーーーーーーーーーーーーーー!!!」
「フェイト!」
フェイトはプレシアとアリシアの元に飛んでいった炎真を追いかけようとするのをアルフが押さえた。
「放してアルフ! 炎真がぁ!! 炎真ーーーーーーーーーーーーーー!!」
叫び声を上げるフェイト、するとオレンジの炎と桃色の光が最深部の天井を貫き、ツナとリボーンとなのはが現れた。山本と了平とユーノはリンディと合流し脱出準備をしていた。
「獄寺! アルフ!」
「フェイトちゃん! クロノ君!」
「十代目! 高町!」
「待って! 炎真が、炎真がぁ!「ペチン」っ!?」
錯乱しそうになるフェイトの頬をリボーンが軽くはたいた。
「錯乱してんじゃねぇ、炎真は大丈夫だ」
「・・・・・・・」
何の根拠の無い言葉だが、何故か目の前の赤ん坊の目を見た瞬間、フェイトは落ち着いた。
「クロノ!」
「(コクン)エイミィ、脱出ルートを!」
《了解!》
ーリンディsideー
一足先に、ユーノと山本と了平を連れて脱出したリンディはアースラのブリッジで時の庭園の様子を見ていた。
「庭園、崩壊・・・!」
「クロノ執務官初め、魔導師達と協力者達の帰還を確認。しかし、古里炎真の帰還を確認できず・・・!」
「・・・・」
オペレーターからの報告に頷くリンディ。
「(炎真君、上手く行くと良いけど・・・・)」
今度はエイミィからの報告がブリッジに流れた。
《時空震動停止! 断層発生、ありません!》
「フゥ、了解・・・・」
ーなのはsideー
別室で他の魔導師達の治療を尻目に、先に脱出したユーノと山本と了平、アースラにいたアーデル達シモン守護者と合流したなのは達。
「ボンゴレ、炎真は?」
「(フルフル)・・・・」
「そう・・・・」
「んな心配そうな顔すんなよアーデル・・・」
「ジュリー・・・」
「俺らのボスを信じよう・・・」
ジュリーの言葉に頷く守護者達。すると頭に包帯を巻いたクロノと付き添いのエイミィが入室してきた。
「クロノ君・・・・!?」
「どうかしたか?」
「フェイトちゃんとアルフさんは? それに炎真さんも・・・」
なのはの問いにエイミィはあぁとなり、クロノは目を伏せる。
「済まないな、彼女達はこの事件の重要参考人なんだ、二人共、隔離させてもらっている。面会は許可できない・・・!」
「結局っ!!」
「んだとぉっ!」
「ひぃいっ!」
紅葉と薫がクロノとエイミィにメンチ切り、脅えたエイミィがクロノの後ろに隠れる。
「そんなぁ・・・」
「しとぴっちゃん、フェイトちゃんに会いたい♪」
らうじとSHITT・Pも顔を沈め、アーデルとジュリーも渋い顔をする。
「と、とりあえずずっとこのままって事はないから、もうちょっと待って・・・・」
「・・・・はい・・・」
クロノの後ろに隠れながら弁解するエイミィ。顔をうつむかせるなのはの肩に、ツナがそっと手を置く。リボーンと獄寺達も了承し、アーデル達も渋々(本当に渋々)了承した。
ーフェイトsideー
「・・・・・・・」
「・・・・(フェイト)」
ベッドに座りながら、炎真の事やプレシアとアリシアの事で沈んでいるフェイトをアルフが心配そうに見つめると。隔離されている部屋にリンディがサービスワゴンを引いてにこやかに入った来た。
「あの、炎真は・・・?」
フェイトの問いにリンディは困り顔を浮かべ。
「ごめんなさい、古里炎真君はまだ・・・」
「・・・・・・・・」
リンディの言葉に再び俯くフェイト。
「(これは重症ね、炎真君、早く戻って来て欲しいわね・・・・)お食事、持って来たわよ。一緒に食べましょう」
「「??」」
リンディからの言葉に唖然となるフェイトとアルフ。
ーなのはsideー
その頃、なのはとツナ達、リボーンとユーノ、シモン守護者は、クロノとエイミィと共に食堂でフェイトの今後を聞いていた。
「フェイトは、この事件の重要人物だし、このまま無罪放免と言う訳にも行かない、だけど彼女は真実を知らなかった。言い方は悪いが、“道具”として利用されていただけだ。情状酌量の余地はある。少なくとも執行猶予は取れるよう働きかけて見るよ」
「あ、ありがとう、クロノ君!」
「ただ、この手の裁判って長引くのよね~・・・」
「それで、炎真達の方はどうなんだ?」
リボーンの問いにクロノは渋い顔浮かべ。
「この世界のマフィア、それも管理局にとって“触れてはならないモノ”とも呼ばれているトゥリニセッテの一角の管理者、ボンゴレファミリーと友好関係にあるマフィアが関わっているとなると、管理局としては、マフィアが関わっていたこと事態を“無かった事”にするだろうね」
「そんな事が出来るの?」
「管理局は警察と軍隊が混ざった組織だからな、『マフィア<犯罪組織>と協力した』なんて、体裁悪いだろう」
「身も蓋もない事を言えばそうだな・・・」
ツナの疑問にリボーンとクロノが応えた。
ーフェイトsideー
「そうね、最短でも“半年”、長ければ二・三年かそれ以上、まぁその間も“保護責任者”な元で“良い子”にしてれば、割りと普通の生活が出来るから・・・・」
「“保護責任者”って・・・・?」
「わ・た・し♪ アースラ艦長、リンディ・ハラオウンが貴女達の“保護責任者”、宜しくねフェイトさん、アルフ♪」
「あの、アーデルさん達は・・・・?」
フェイトの言葉にリンディは困った笑みを浮かべ。
「・・・・残念だけど、彼女達はまだ“未成年”だからね、法的にも貴女達の“保護責任者”をやらせる訳にはいかないの」
「そう、ですか・・・・」
「大丈夫、アーデルハイトさん達にもキチンと説明して納得して貰うから」
「ハイ・・・・」
リンディの言葉にフェイトは頷くしかなかった。
ー???sideー
「ここは!?」
「ここがそうなんだ・・・・」
何処か分からないその場所に少年と女性と少女が降り立った。
「行こう、プレシア。アリシアを“生き返らせる”為に・・・!」
その少年、古里炎真は、カプセルに入ったアリシア・テスタロッサを担ぎプレシア・テスタロッサを連れて、その都に向かう。
『忘却の都 アルハザード』へ・・・・・・・・・・。
次回で遂に無印編を完結させたいです。