「それじゃ炎真、私達お母さんに報告に行ってくるから」
その日フェイトとアルフはフェイトにジュエルシード集めをやらせている母親の所に定時報告に向かおうとしていた。
「フェイトちゃん、僕も一緒に行こうか?」
心配そうに言う炎真。
「大丈夫だよ炎真、すぐに帰ってくるから」
炎真達に心配をかけさせたくないのかフェイトは笑いながら言う。だがアルフの不安そうな顔を見ると炎真達もなにか起こるのではないかと不安になったが結局フェイト達を見送ることにした。
転移魔法で移動したフェイト達を見送った後、アーデルは買い物にらうじはその荷物持ちにSHITT・Pは遊びに紅葉はランニングに薫はバッティングセンターにジュリーはパチンコに行った。普通中学生が平日に学校に行かずにいるのは問題だが幸か不幸か炎真を除いたシモンは全員中学生離れしたルックスなので補導されることはなかった。
炎真はフェイト達の帰りを待つ留守番役を任され、一人テレビを見ていたが、全員が出掛けて十数分経った時、再びリビングに転移魔法の魔法陣が現れた炎真はフェイト達が帰ってきたのかな?と思ったが突然アルフが慌てて炎真に駆け寄った。
「炎真!すぐに来て!フェイトが・・・!このままじゃフェイトが!!」
「!!アルフ!フェイトちゃんに何かあったの!?」
泣きじゃくるアルフを宥めながら炎真はフェイトに異変が起こったことに気づく。
ーフェイトsideー
フェイトはバインドで貼り付けにあいながら母親から鞭打ちにされていた。黒い髪を腰まで伸ばし妙齢の美貌を狂気が滲ませた危険な雰囲気漂う美女がフェイトへ執拗に攻撃していた。
「まだたった4つしか集められないなんて、フェイト、あなたはお母さんを悲しませたいの?」
ビュン!バシっ!
「あなたは大魔導師プレシア・テスタロッサの娘なのよ?」
ビュン!バシっ!
「どうしてお母さんを悲しませるの!」
ビュン!バシっ!!
「ごめんなさい、お母さん、ごめんなさい」
フェイトは耐えていた。以前のフェイトであれば母親からの折檻に悲鳴をあげ涙を流し泣きながら許しをこうていたが今は必死に耐え、母親の怒りが収まるのをじっと耐えていた。
(お母さんの怒りが収まるまで耐えるんだ。耐えて耐えてそしてあそこに帰るんだ。アーデルさんが・・・ジュリーが・・・紅葉が・・・らうじが・・・しとっぴちゃんが・・・薫が・・・アルフが・・・炎真がいる・・・皆がいるあそこに・・・帰るんだ!)
必死に耐えるフェイトの姿が癪に触ったのかプレシアは更に攻撃を強くしたがフェイトは涙を滲ませ痛みに耐えながら目をつぶる、だがその瞼の裏では『相棒』といつの間にか一緒にいるのが当たり前になった『ファミリー』の姿が浮かんだ。そうすると全身を襲う激痛と苦痛が和らいだ。
(傷だらけになっただろうな・・・終わったらきっとアルフは泣くだろうな・・・こんなに傷だらけで帰ったら皆驚くかな?・・・アーデルさん治療してくれるかな?・・・紅葉はきっと一番慌てるだろうな・・・らうじもいつも心配かけちゃってるからまた心配するかな?
・・・ジュリーもしとっぴちゃんも薫も慌てて・・・炎真は・・・心配してくれるかな?・・・それとも怒るかな?・・・・・・炎真・・・助けて・・・)
フェイトの目から一筋の涙が零れた。
ビュン!ガシッ!
痛みが襲ってこなくなり朦朧とする意識の中フェイトはうっすらと目を開けるとそこには見慣れた深紅の炎と背中が見えた。
「炎・・・真?」ガクっ
そこでフェイトの意識は暗闇に落ちた。
ー炎真sideー
「誰なの?あなた」
「・・・・・・」
目の前の黒髪の女性の鞭を握りしめながら炎真は無言だったが後ろにいる気絶したフェイトと涙を滲ませながらフェイトを担ぐアルフを一瞥すると。
「アルフ。フェイトを連れて行って」
「え?でも・・・」
「早くフェイトを家まで運んで、今頃アーデル達も帰ってくるだろうから」
感情を押し殺し低い声で話す炎真にアルフはフェイトを抱えて部屋からでる。プレシアも動こうとしたが目の前の少年に射竦められ動けなかった。
「あなたは、フェイトに何をした?」
低い声で聞く炎真にプレシアは若干震えながら言う。
「あの子が私の期待に沿わないから少々お仕置きしていただけよ」
「お仕置きだと?・・・・・・るな・・・・・・ふざけるな!!!!!!」
「!!??」
ゴォォウ!!!ジュワ!
炎を最大に燃やし、手に持っていた鞭を焼き尽くすと炎真は憤怒の表情でプレシアを睨んだ。
「あなたはフェイトの母親だろう!なぜこんな真似を!フェイトを苦しませる事をする!」
「(この子魔導師?いやこの子には魔力反応はない、じゃあの炎は一体?なんにしても捨て置けないわ)あなたには関係ないことです。すぐにここから消えなさい!」
プレシアは紫色の魔力弾を放つが炎真に当たる直前に魔力弾は真下に落ちていった。
「な!?く!」
次々と魔力弾を放つが全て床に叩きつけられてしまうがプレシアは冷静に炎真の能力を分析していった。
「なるほど、どうやらあなたは『重力を操る能力』を持っているのね」
「・・・」
炎真は無言だがそれを肯定ととったのかプレシアは更に言う・・・炎真の弱点を
ガキン!
「何!?」
突然炎真の両手が紫色のバインドに縛られてしまった!
「あなたは重力を操る時。両手の指を動かしていた、つまり両手を封印してしまえばあなたは重力操作ができなくなる!」
「く!何を!」
再びプレシアは魔力弾を放つが炎真は重力操作をしようとするが今度は下ではなく右へ左へ上へそして炎真自身に魔力弾が当たる。
「ぐぁ!」
「フフやはりね。あなた自分の能力を完全に使いこなせていないのよ。いかに強力な力を持っていても使う人間が二流じゃ宝の持ち腐れね」
このときの炎真は知らないが以前圧倒した相手に後にプレシアと同じようなやり方で窮地に立たされる事になる。その戦いでリボーンは炎真と共闘する事に微妙な反応したのは炎真にはまだ『実戦経験が浅い』事も理由になっていたのだ。
形勢は自分に向いていると確信したプレシアは止めを指そうと杖に魔力を込める。
「サンダー・スマッシャー!!」
紫色の雷電の奔流が炎真を襲うが炎真は当たる直前にバインドを引きちぎり重力操作をし、曲がった砲撃は壁に当たり隠し部屋が現れるとプレシアは狼狽した。
「あぁ!アリシア!」
「(アリシア?)」
炎真は隠し部屋に向かって飛びなかを調べると驚くべき光景を目の当たりにした。そこにはカプセルの中に入ったフェイトと瓜二つの少女がいた!
「こ、この子は!?」
「私のアリシアに触らないで!」
プレシアはまるで少女を守るように立ちはだかったが、炎真はアリシアと呼ばれた少女に目を向けていた。
「この子は一体誰なんだ?フェイトに似ているが・・・」
「フェイトと似ている?・・・・・・フフフフアハハハハハハハ!笑わせないで!あんな出来損ないとは違うわ!この子こそ私の最愛の娘アリシアよ!」
「どうゆうことだ?」
「教えてあげるわ、この子とあの出来損ないの真実を」
プレシアは炎真に淡々と話した、事故で最愛の娘アリシアを失ったこと。アリシアを取り戻そうとクローンを生み出しそのクローンがフェイトであること。ジュエルシードを集めゲートを開き失われた古代技術の都<アルハザード>に行きアリシアを生き返らせる事。
「じゃフェイトは、フェイトはどうなるんだ!」
「あんな出来損ないがどうなろうが知ったことじゃないわ、私にとってアリシアが全て!アリシアさえ生き返ってくれたら何がどうなろうが!誰がどうなろうが知ったことでは「バシっ!」!?」
プレシアの言葉遮るように炎真はプレシアの頬を叩いた。
「貴女は!貴女はただ死んでしまった人の亡霊に取りつかれているだけだ!取りつかれて今を見ていない!そんなんじゃ貴女は大切な物を失うだけだ!」
「あなたに!あなたに私の何が解ると!」
「解りますよ!僕も、僕も失ったから、父さんを母さんをたった一人の妹を失ったから」
「え?」
「僕も貴女と同じように大切な家族を失った、失って、なにも出来なくて、絶望して、諦めて、あの時僕に力があれば父さん達を守れたかもしれないのにって悲嘆に暮れる毎日だった。でもどんなに望んでももう失った家族は戻ってこないんだ!」
「・・・・・・・・・」
苦しそうに話す炎真の姿なプレシアはなにも言えずただ黙って見てるしかできなかった。
「僕は貴女のように失った人への盲念に捕らわれた人を知っている。ソイツも貴女のように盲念に捕らわれ大切な仲間達を裏切り一人ぼっちになってしまった」
「!」
「(このままじゃこの人はあの頃の僕といやD・スペードと同じなる!)フェイトは貴女にとっては出来損ないの『クローン』かも知れないけど、アリシアにとっては『妹』のような存在なんじゃないのか!?」
「!?・・・・・・もう時間がないのよ」
「時間がないって「ゴホゴホ!」プレシア!」
突然プレシアは膝を折り咳き込み吐血した。
「プレシア!貴女はまさか」
「フフ大魔導師と言われたこの私も病魔には叶わないって事ね。もう長くないのよ、今更歩みを止められないのよ」
「・・・」
プレシアは立ち上がると炎真に背を向けた。
「行きなさい、しかしフェイトにこの事はけっして言わないように」
「でも・・・」
「貴方はフェイトのなんなの?」
「・・・協力者で仲間でファミリーのつもりです」
「そう・・・貴方の名前は?」
「炎真、シモンファミリーボス古里炎真」
「古里炎真、フェイトは貴方に任せます。」
「・・・はい・・・」
炎真はそれからなにも言わず去っていった。
「出来損ないの人形だと思っていたあの子をファミリーだと言う人達がいたなんてね・・・・・・・・・・・・ねぇアリシア?お母さん、何処を間違えちゃったのかな?」
アリシアを見上げるその目には大粒の涙が流れていた。
フェイトの部屋に戻った炎真は何があったのかと聞くファミリーを制してフェイトの元に行く、フェイトは身体中包帯まみれになり静かに寝息を立てている。アルフも付きっきりとの事で炎真はその場を後にし、少し考えを纏めると言って外に出た。
(どうしたらいいんだろう?フェイトちゃんの事は後でアーデル達に話すとしてもプレシアさんの体やアリシアちゃんの事はどうすれば、ツナくんに話そうか・・・ツナくん・・・山本くん・・・!?」
すぐに携帯でツナに連絡する炎真、連絡がつきツナとリボーンに事の表しを話す。イキナリの衝撃的事実に驚き混乱状態なったツナを無視してリボーンが相手になった。
「炎真、それでお前はプレシアの病気をどうしたいんだ?」
「プレシアさんの病気を直してあげたいんだ。Dr.シャマルさんならできるんじゃないのかな?」
「そのプレシアって女美人か?」
「え?う、うん、ちょっと危ない雰囲気があって多分30か40代位のシャマル先生より年上だと思うけど黒髪の綺麗な人だったよ」
「よし、相手が美女なら年上でも年下でもOKなアイツなら大丈夫だな。他にはあるか?」
「以前、薫が山本くんに瀕死の重傷を負わせたけどその傷を直した人がいるよね?その人の事はツナくんから聞いた。その人ならアリシアちゃんについて何か知ってると思うんだ」
「アイツか。だがそれは危険な賭けだぞ?ヤツはこの世界では最上級危険人物だからな」
「それは・・・『ピロロロ!ピロロロ!』?」
「俺のプライベート携帯だ。ちょっと待ってろ」
レオンを携帯電話に変身させ電話に出るリボーン、だが次第にシリアルモードになっていき。
「リボーン、どうしたんだよ?」
「どうやら向こうから連絡が来た」
「え!?」「??」
「炎真、お前と話がしたいそうだ」
「『白蘭』がな」
困った時は白蘭さんに頼ろう♪
見返りが恐ろしいけど。