こっからたまの強化イベントにする予定です。
11話理不尽すぎやって………
鉄華団での朝の騒がしい騒動から打って変わってここは真夜中の静まり返った王結寺。ルーラが複数の魔法少女を従え拠点として使用している廃寺である。
普通なら明かりが灯るはずの無い場所だが今は明かりが灯っている。それは今まさに寺の中に魔法少女が居るからだ。白いスクール水着のスイムスイム、犬のような服装をしているたま、双子の天使ミナエルとユナエルだ。
そこへリーダーであるルーラがやって来た。
いつも自身満々の顔で堂々と寺の中へと入って来るルーラだが今日はその顔にいつものような表情は無かった。その表情は困惑などが見受けられる。
「あれ?ルーラ何だかいつもと違くない?」
「あれ、そう?それに気付くとかお姉ちゃんマジクール」
ミナエルとユナエルの会話を耳にしたルーラが彼女達の前で歩みを止め睨みつけた。
二人は一瞬怯んだが「でも何だかおかしい」と思いきって言った。
ルーラは何か言おうとしたが口篭る。
二人はいつもの鬱憤を晴らすチャンスだとばかりにルーラの頭上を回転しながら騒ぎはじめた。
「ルーラがこんなになるなんて珍しいね」
「そうそう!自身満々のお姫様がね」
「はは!自身満々のお姫様とか的確過ぎお姉ちゃんマジクール!」
「ねぇねぇルーラどんなことがあったのよ?」
「そうよ、教えてくれてもいいじゃない」
「ああぁ、二人ともやめなよぉ………」
騒ぐ二人に対してたまが止めようとするも上手く止めることができずにオロオロとしている。
ルーラは「ムーンライトバルバトスにキスされたのよ」とボソりと呟いた。
鉄華団にてムーンライトバルバトスがルーラにキスをした時と同じように場が凍りついた。
「え、何それ?」
「それマジ?」
「そうよキスされたのよ。された後聞いてみたら可愛いと思ったのからって言われたわ」
また場が凍りついた。
「前から他のやつとは違うぞって思ってたけどここまでとはね・・・」
「バルバトスマジクレイジー・・・」
一連の会話を聞いてたまは今日の昼からの出来事を思い出した。
◆
今はちょうど昼休みで犬吠埼珠は自分の机で窓の外を見つめてぼうっとしていた。
先生やクラスメイト、この学校に居る全ての人間が自分に声をかけることなどない。そう珠は思っていた。そう誰も話しかけるはずないのだ。しかし、彼は話しかけてきた。
彼が二度三度と珠の名前を呼ぶが珠はすぐに応えることができなかった。
「あ、あの犬吠埼ちょっといいか?」
彼の後ろで4人の男子生徒が何かを話している。今珠の目の前に居る彼といつも話していたりサッカーをしている男子生徒達だ。
「え、あぁうん。えっと」
珠は自分の状況を理解できずしどろもどろに応えた。
その後少し沈黙があった。話がなかなか進まない。
「と、とりあえず来てくれ」
「あぇ、うんいいよ」
珠の声はとても小さかったがそれを聞き取った彼が「付いてきて」と言って廊下へ向かって歩き出し、珠も遅れて彼の後ろに付いていく。
クラスの視線が目の前の彼に向けられる。彼の後ろ姿はとても恥ずかしそうだ。
あの4人の男子生徒がクスクス笑っている。
教室を出て廊下を歩き、あまり使われていない教室の前を曲がり人のいない階段の前で止まった。
彼が何かを言おうとしているがなかなか言い出さない。珠はぽかんと彼を見つめて、目があうと彼はすぐにまた目をそらす。
彼は何かを決心して珠に言い出した。
あまりにも信じることができず珠の耳から彼の言葉が入ってきてまた抜けていく。
だけど一つだけの言葉、彼が言い放った第一声。
「お前のことが好きだ」
ただそれだけ珠の耳に残り、それがトンネルの中で反響するように響く。
彼の話の途中、珠はまた「えぇ」とか「あぁ」とか「うん」と曖昧な返事しかすることができなかった。
「ま、まぁよく考えといてくれ」
「あぁうん」
また曖昧な返事だ。
彼は珠に背を向け教室に向かって走り出すが、珠はただ突っ立っているだけだった。
五時間目の予鈴が鳴った。昼休みがもうすぐ終わる。
「戻らなきゃ」と言って珠は教室へ歩き出した。
教室へ戻った後、珠はしばしば彼の方へ視線をやる。授業中、休み時間、彼のことが気になる。彼はまたいつものように過ごしている。
そして学校が終わる。
生徒達は部活がある者は部活の活動場所へ、何も無い者は自宅もしくは何か店などに寄り道をしていた。
珠は帰宅の途中公園に立ち寄った。
夕陽に照らされた公園のベンチに座りスマホを取り出して魔法少女育成計画を起動しようとするが、日の光で照らされて画面が見にくい。珠は画面の明るさを調整した。
魔法少女育成計画をプレイしながら昼休み中のことを考えた。
答えは━━━まだわからない。
ふと自分の後ろに誰かがいて自分もしくは自分のスマホの画面を見つめていることに気付いた。
深い緑色と紺色の映画やドラマでよく見るような特殊部隊のような装備をして、その上から黒いコートを羽織っている女性。
「君は確かたまだったね」
珠の目の前の女性が自分の名前を呼んだ。本名なのか魔法少女としての名前なのかはわからないが多分魔法少女としての名前で目の前の女性も魔法少女なのだろう。
しかし、こんな魔法少女は今まで見たことがない。
もしやと思い珠は少し身構えた。
「そう身構えることは無い。今日は君にお願いがあって来たんだ」
「お願いって、それよりもあなたは誰なの?」
「あぁすまない。ゲイレールとでも呼んでくれ」
「あぁはい」
「話を戻そう。そのお願いというのが、魔法少女ムーンライトバルバトスを倒すことを手伝ってくれ」
ゲイレールが言った名前に聞き覚えがある。
ムーンライトバルバトスはキャンディー集めの脱落者は死ぬということを教えてくれたし、みんなが生き残る方法も考えてくれた。そんな彼女をどうして倒さなければならないのだろうか。
「奴は人を殺す。お前達の仲間の魔法少女だったグレイズを殺したのも奴だ」
グレイズはあまりチャットにも参加せず他の魔法少女とも顔を合わせないので彼女のことをあまり知らなかったが、彼女を殺したのがムーンライトバルバトスと聞いて珠は困惑した。
「どうやら奴はお前達の仲間のリーダーと今日の朝一緒にいたらしいな」
ルーラがムーンライトバルバトスと一緒にいたと聞いて珠はルーラの身に何かあってはいけないと思った。
「わ、わかりました。私手伝います」
「ありがとう。手伝ってほしい時は私から君へ伝える」
ゲイレールは公園の茂みの中へ入っていった。
珠はスマホの時計を見た。
「早く帰らなきゃ」
珠は公園を出てまた帰路についた。
次回の後編は今回珠に告白した男子生徒の話とたまがゲイレールの手伝いをする話です。
ムーンライトバルバトス相手にたまは生き残ることができるのか!?