今回はたまがけじめを付けに行きます。
鉄血39話では1期で的だったスピナ・ロディが凄い動いててジルダを圧倒してましたね。
ロディ・フレーム採用MS好き
◆たま
病院から家に帰った珠は暗い顔をして自室へ入って寝床に着いた。
珠かどんな顔をしていようが気にする者は無かった。
今日はもう疲れた。何もする気が起きない。
寝床に着いてから球の意識はすぐに深い眠りの中へと吸い込まれていった。
カーテンが閉められているが今は夜なのか月明かりがカーテンの隙間から差し込んでやや薄暗くなっているこの部屋はベッドが左右に二つずつ並んでいて他にも備付けられている物を見るに恐らく病院の大部屋だろう。
珠はその部屋の入り口辺りに立っていた。
そこからは部屋全体を見渡すことが出来る。
部屋を見渡していると球は部屋の右奥のベッドに人影を見つけた。
顔は良く見えないがあれが誰か球にはあれが誰だか良く分かった。
歩み寄ろうとしたが初めの一歩で足が止まる。
すると不意に後ろから声が聞こえた。
「ねえ、どうして行かないの?」
珠は慌てて振り返るとそこには上も下もパジャマの魔法少女ねむりんがいた。
「そこの人は?」
「ええええっと私にも良く分からない」
「本当?じゃあ確かめに行こうよ」
「いや、私には無理だよ・・・」
「どうして?」
「だって私のせいだもん・・・」
珠は俯いて泣きそうな声で「こんな私じゃやっぱり何も言えないよ」と言った。
するとねむりんは笑顔を球に向けて言った。
「だったら変わればいいと思うな」
「変わるって?」
「何が言えないのかは私には分からないけど、それだったら変わればいいと思うの」
「どんなに頑張っても変わんないこともあるよ・・・」
「それは本当に変わろうと思って頑張ったの?本当はどこかで諦めてたんじゃないの?」
「諦めてなんか・・・」
珠は諦めてなんかないと言おうとしたが自信を持てず言うことを諦めた。
「変わらないものなんて無いよ。私だってニートしてたけど今は立派な社会人だよ」
「ねむりんが変われても私には無理だよ・・・」
「それに今の仕事場でも初めは良く怒ってたりもしたけど最近は優しくなってきてるよ」
ねむりんの話を聞いてそういえば最近ルーラが怒鳴ったり罵倒することが減ってきていることを思い出した。
「まずは少し頑張ってみようよ」
珠はねむりんを見つめながら頷いて「頑張ってみる」と言い部屋の右奥のベッドまで歩みを進め、そのベッドで眠る人物の顔を覗き込む。
目を覚ますと日はもう昇っていて鳥のさえずりが聞こえる。
珠は夢を見ていた気がするがどんな夢だったか思い出せない。
だが、何だか勇気が出る夢だった。
今日は学校が休みだったので珠は病院へ行くことにした。
受付でアストンは大部屋に入院しているというこ聞き、その部屋へ向かう。
大部屋に着くとそこは見覚えがあるようなベッドの配置だった。
左見右見でアストンの姿を探す。
部屋の一番奥の右側にあるベッドにアストンの姿を認めた。
彼はどこか上の空で窓の外を見つめている。
珠が近づいて声をかけるとアストンは少し驚きながら「犬吠埼が一番最初に見舞いに来るとは思わなかった」と言って笑った。
球はそれを見て元気そうでよかったと安心した。
「昨日はありがとうね」
「実は遠くから見てたんだけどさ、危なくなってた時に考える前に体が動いてたんだ」
「ごめんね……」
球は泣きながら何度も謝りはじめた。
「あぁ泣くなよ」
「うんごめんね」
涙を拭って球はまた謝った。
「まだあの時の答え言ってなかったね」
「うん」
「いいよ」
「マジ?」
珠はそう言うとアストンにじゃあねと手を振り病院の大部屋から出た。
大部屋から廊下へ出ると見覚えのある少女がいた。
忘れるはずがない。
その少女はくせ毛の長い黒髪に服装は黒いセーラー服を着ていて全身が黒で統一されていてまるで悪魔と呼ぶに相応しいような風陰気を周囲に発している。
魔法少女ムーンライトバルバトスだ。
珠はその姿を見て後ずさりをするとムーンライトバルバトスがこちらへ歩いてきた。
体が凍ってしまったように動かなくなる。
ムーンライトバルバトスは珠の肩に手を置いた。
まるで内気な少女を不良少女がカツアゲしているようでもある。
「ちょっと来て」
そう言われて珠はムーンライトバルバトスの後をついていいった。
連れて来られた場所は人気の全く無い建物の裏だった。
本当にカツアゲのようである。
「たま、昨日俺達にある倉庫の警備の依頼が入った」
「うん」
「なんとなくわかるんだけど多分この前のやつだ」
「この前のやつ?」
「たまが一緒にいたやつ」
「えぇとゲイレールさんか」
ムーンライトバルバトスは小さく頷いた。
この小さな動作ですら恐ろしく見える程威圧感がある。
「たまはどうする?」
「どうするって何を?」
「ゲイレールと戦うか戦わないか」
「俺にはわかる。たまはあいつと戦える。でもそれを決めるのはたま自身なんだ」
「何でそんなことがわかるの?」
「いいから答えて」
ここで戦わないって言ったらどうなるのだろうか。
ムーンライトバルバトスに殴られるのだろうか、それともそのまま去っていくのだろうか。
様々な考えが浮かんで来る何だか恐ろしい。
「ねぇ早くしてよ」
ゲイレールに言われて今目の前にいるムーンライトバルバトスを襲った。
━━その結果はどうだった?
結果は魔法少女の耐久力というものは凄いがなんとか守りたいと思っていたルーラを傷付け、関係の無いアストンに大怪我を負わせる事になった。
━━じゃあどうしたらよかった?
キャンディーの数が一番少なかった者が脱落する。その脱落が死でそこをなんとか全員生き残らせようとしてくれたのはムーンライトバルバトスだった。結果的にイレギュラー魔法少女が現れてそれは無かったことになったが、それでもムーンライトバルバトスは自分達のことを考えてくれていたんだ。そんな彼女をイレギュラー魔法少女であるゲイレールに言われたことを信じて襲った。それでは駄目だ。
━━じゃあどうしたらいい?
今朝見た夢を思い出した。
自分は変わらなければいけないのだ。
━━ならどうする?
答えはもう決まっている。
「わかったよバルバトスちゃん。私ゲイレールさんと戦う」
「じゃあ後で魔法の端末に送っておくからその場所に来て」
そう言ってムーンライトバルバトスは珠に背を向けて歩いていく。
「あ、そうだ。バルバトスじゃなくてミカでいいよ」
「わかったミカちゃん」
珠はムーンライトバルバトスに手を振った。
夜になった。魔法の端末にはムーンライトバルバトスから倉庫の場所が送られてきている。
珠は魔法少女たまに変身してその倉庫へ向かった。
倉庫へ到着するとそこには屈強な男達がいてその中に一人だけ黒いセーラー服を着た少女がいる。
その少女は打突部が四方向に広がっている真っ黒なメイスを持っている。
たまがムーンライトバルバトスの下へ行くとそれとは違う肉食恐竜のようなメイスを渡された。
準備は整った。
鉄華団と魔法少女二人の不審者捜索が始まった。
不審者捜索を始めてから50分でその不審者は発見された。
暗い倉庫の奥に黒いコートを着た女性がいる。ゲイレールだ。
「待っていたぞムーンライトバルバトス」
「そう。待ってたんだ」
「あぁ待っていたさ」
「だけどお前と戦うのはお前じゃないんだ」
そう言ってムーンライトバルバトスは視線を後ろのたまへ向けた。
「ほう死んでるかと思ってたよ」
「私は死んでないにゃ」
「てっきりムーンライトバルバトスに殺されたかと思っていたのさ」
「ミカちゃんはそんなことしないにゃ!」
「ほう面白い!」
ゲイレールは右手にアックスを構えてたまへ向かって突撃した。
たまはこれをムーンライトバルバトスから借りたレンチメイスで受けた。
金属が激しくぶつかり合い倉庫内に耳障りな音が響く。
たまはゲイレールをレンチメイスで突き飛ばし距離を取る。
しかしゲイレールはまた接近してアックスを振りかざす。
それをまたレンチメイスで受けて押し返す。これを何度も繰り返して埒が開かない。
この戦いにムーンライトバルバトスが介入することは無い。
たま一人でなんとかしなければいけない。
「どうしたぁ!そんなものか?」
「どうしよう・・・歯が立たない」
「そういえばあの時のガキはどおしたぁ?」
「アストン君は関係無いにゃ!」
「あのガキはあきらかに勝てっこない相手に突っ込んでいってお笑いだったよ!」
「うるさいにゃ!」
たまがレンチメイスを頭上に掲げゲイレールへ振りかざしたがゲイレールはヒョイと体を反らして避けた。
「あのガキもお前がもっとちゃんと出来てたらどうにもならなかったんじやないのか?」
「だからアストン君は関係無いって言ってるにゃ!」
「そういやあのガキはお前に惚れてるみたいだったなぁ!」
そう言ったゲイレールの蹴りがたまの腹部に直撃してそのまま壁に減り込んだ。
ゲイレールはそんなたまにジリジリと近寄って来る。
「これで終いだ!」
ゲイレールはアックスを振り下ろそうとしていてたまは死を覚悟した。
目をつぶってその時を待っていた。だがその時は来なかった。
変わりに拳で何かを殴る音が聞こえて目を開いた。
目の前には鉄華団のジャケットを着たガッチリとした体型の男性がいる。
「わりぃな、割り込んじまって。弟の友達の事を言ってたからな」
そう言った男性は拳でゲイレールを殴り飛ばしていて、ゲイレールは少し離れた場所に倒れている。
「このまま決めろ」
「あ、ありがとうにゃ」
そう言ってたまは立ち上がった。
倒れているゲイレールにレンチメイスで畳み掛ける。
一発、ニ発、三発と次々に攻撃が決まっていく。
「くそ!単純なパワーだが、さっきまでのこいつにこんなパワーがあったのか?」
たまの次の攻撃をゲイレールはアックスで防いだ。
するとレンチメイスが恐竜の口のように開き獣が咆哮を上げるようにチェーンソーが音を鳴らしはじめる。
レンチメイスがゲイレールのアックスをくわえるとギリギリと音を鳴らし削っていく。
ゲイレールはアックスを諦めその場を離れた。
たまはレンチメイスを置いてゲイレールに接近して右頬を狙って拳を放つ。
ゲイレールはそれを顔の前に腕で十字を作って防いだ。
拳は防がれたがたまの狙い通りになった。
たまは「えぇい!」という声と共に爪で十字にクロスされた腕を引っ掻いた。
「しまった!」
ゲイレールの腕に傷をつけることに成功したたまは自身の魔法を発動した。
するとゲイレールの右腕が完全に消滅した。
ゲイレールは迷うことなくたまに飛びついた。
以前右腕の付いていた場所の断面から血が飛びたまの衣装を染めた。
たまは「離して!」と叫びゲイレールをはじき飛ばした。
はじかれたゲイレールはしりもちをついた。
一度置いたレンチメイスを持ち上げたまはゲイレールへ向かって歩きはじめた。
華奢な少女の体に似合わない巨大な鈍器を持った影がゲイレールにかかる。
レンチメイスが開きそれは今目の前に倒れている相手の腹部を固定した。
「あなたは私が今まで駄目だった何よりの証拠・・」
「私もここらで潮時らしいな」
「私は変わる。そのためにも・・・」
一雫の涙が頬を流れた。
やはり自分では人を殺すことはできないのだろうか。
「何を躊躇している。とどめを刺せ」
ゲイレールは目をつぶり、たまは涙を拭いた。
「ありがとうにゃ」
たまは目をつぶった足元の相手に笑ってみせた。
チェーンソーの音が倉庫内に響き、それと同時に肉が潰れる音がした。
切断が終わった。ゲイレールはもう元の人の姿に戻っているだろう。
しかしその姿を見ることはできなかった。
ここでそれを見てしまったら決意が折れてしまいもう戻れなくなるような気がしたからだ。
たまはムーンライトバルバトスの下まで行って呟いた。
「ミカちゃん、本当にこれでよかったのかな?」
ムーンライトバルバトスはそれに答えるように小さく頷いた。
「よかったにゃ」
たまはそのまま倉庫から出て、ムーンライトバルバトスは「片付けとくよ」と言ってゲイレールの遺体の下へと歩いていった。
あぁ・・・1月に投稿するつもりが、2月になってしまった。
次回は自分ですら忘れかけてた伏線回収みたいなのを予定してます。
こんなに投稿が遅くなってしまいましたがまだ読んでくれてる人がいたら教えてほしいです。
今度は頑張って2月中に投稿したいです。遅かったら3月の始めかもしれません。
ではまた次回。