咲ちゃんが悲しむ世界なんてなかった   作:くずのは@

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5局目

「よろしくお願いします」

 

「「「よろしくお願いします」」」

 

東1局

 

東:F子 25000 親

 

南:宮永咲 25000

 

西:渋谷尭深 25000

 

北:亦野誠子 25000

 

誠子は咲に対して最大限に警戒していた。あの高火力、そして和了速度の前では25000点が微々たる数字にしか見えない。

しかし、白糸台でも上位に入る和了速度を持つ自分ならば同等に争える筈だ。向こうが火力ならこちらは速さで勝負だ。

 

誠子の推察は当たっていた。しかし、それは咲の素の状態の話である。周りは咲を高火力の選手と思っていた。よもやそれが本来の打ち方ではないと誰も思わないだろう。ただ1人を除いて。

 

そして、対局が始まり早々に誠子は動き出した。

 

 

「ポン」

 

 

先ずは1福露。

 

 

「ポン」

 

 

これで2福露。

 

 

「ポン」

 

 

3福露。これで…聴牌した。

 

そして数巡後…誠子は卓に牌を叩きつける

 

 

「ツモ1300、2600」

 

 

誠子は鳴く事で力を発揮する。3福露したら5巡以内に和了出来る。それが誠子の能力。

河から牌を釣り上げる様に掴むその光景は白糸台のフィッシャーの異名に相応しい姿だった。

 

東2局

 

北:F子 22400

 

東:宮永咲 23700 親

 

南:渋谷尭深 23700

 

西:亦野誠子 30200

 

まだまだ勢いは止まらないとばかりに誠子は鳴いた。

 

 

「ポン」

 

 

1福露。

 

 

「ポン」

 

 

2福露。誠子は河に牌を捨て…

 

 

「カン」

 

 

それを咲に拾われた。そして…

 

 

「ツモ。12000です」

 

 

唖然。対局者だけではなく周りに居たギャラリーも今の一部始終に言葉を失う。

そして、ざわめきが広がる。麻雀と言う競技においてカンはリスクが高く余り好まれない。

今までの圧倒的な闘牌と比べて見れば咲の今の打ち方はまるで初心者のそれとなんら変わらない。

周りのギャラリーは誠子の不運と言う形でこの話を終わらせ再び静かに観戦する事にした。

 

そんな中、菫と淡は戸惑いを隠せなかった。だが、戸惑いの中で1つの仮説が生まれた。もしも、今の不可解な打ち方がまだ底が見えぬ咲の本来の打ち方の一端なのだとしたら…

その答えはこの対局で明らかになる。そう感じていた。

 

東2局 1本場

 

北:F子 22400

 

東:宮永咲 35700 親

 

南:渋谷尭深 23700

 

西:亦野誠子 18200

 

誠子はついてないなぁと思い配牌を並べながら先程の事を考えていた。

嶺上開花で上がれる確率は約0.3%しかない。こんな大事な対局でなんたる不運なんだろうかと。

だが、勝負はこれからだ。過ぎたことを悔やんでも仕方ない。誠子は自分に活をいれる。

 

自分がすることは…ただ1つだ。

 

 

「ポン」

 

 

1福露。もっと…

 

 

「ポン」

 

 

2福露。もっと速く…

 

 

「ポンッ!」

 

 

3福露。よし、聴牌だ。

 

この局はもらった。誠子は河に牌を置き…

 

 

「カン」

 

 

またもや咲に牌を拾われた。そして王牌に手を伸ばし手牌に加えると4つ牌を倒した。

 

 

「もいっこカン」

 

 

なんだこれは?理解が追い付かない。混乱の最中にいる誠子に咲は告げる。

 

 

「ツモ。24300です」

 

 

咲の周りに百合の花が咲き乱れる。これが咲の嶺上開花。これが、咲の本来の打ち方。

注目の一戦はたったの3局で終局した。この対局で咲の名は白糸台で一気に駆け巡った。そしてこの対局で咲の1軍入りが確定した。

 

終局

 

F子 22400(-8)

 

宮永咲 60000(+50)

 

渋谷尭深 23700(-6)

 

亦野誠子 -6100(-36)

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

全ての対局が終了し部員は各々の対局データを手に反省会をおこなっている。

照、菫、淡の3人は1軍の別室に戻り先程の対局について話をしていた。

 

 

「サキー凄かったね」

 

 

「ああ、そうだな。それに途中から咲ちゃんの打ち方に変化があったがあれは…」

 

 

菫と淡は照を見つめる。視線に気づいた照はお菓子の準備を止めて2人がほぼ確信しているであろう答えを言う。

 

 

「あれが咲の本来の打ち方」

 

 

「やはりそうだったか」

 

 

「じゃあサキーの能力はリンシャンカイホー?」

 

 

「うん。森林限界を超えた高い山でさえ咲かす事が出来る花。それが咲の嶺上開花」

 

 

話に納得した2人だったが照は話の続きを言う。

 

 

「でも咲の嶺上開花はあくまで結果でしかない」

 

 

「それはどういう事だ?」

 

 

照は咲の嶺上開花の過程こそが恐ろしと告げる。

 

嶺上牌を正確に察知できる

 

別のカン材を引き込む

 

カン材が山の何処にあるか感覚的に分かる

 

 

「嶺上牌から追加ドローをする事で和了速度も上がるし手持ちの牌が変わり手役を変え急激に打点を高くする事も可能。このトリッキーかつ自在性な打ち方こそが咲の本来の打ち方」

 

 

仮説は立てていた。立てていたのだが照の話を聞き終えて菫と淡は言葉がでなかった。

圧倒的技量からなる±0に淡並みの高火力。これだけでも手におえないレベルなのに本来の打ち方は思っていた以上に更に凶悪なものでしたと言われれば仕方ない事だろう。

 

照はざっくりとしか説明してなかったがこの能力は他にも応用力がある。

その1つの例として先程の対局で咲はカン材を誠子に掴ませて直撃を喰らわせた。

誠子の打ち方から守りの弱さを見抜き狙ったのだろう。

 

それから3人は何時も通りお菓子を食べながらくつろぎつつ、今回で決まるであろうメンバーの話題に触れた。

 

 

「咲は1軍が確定だと思うから後は1人だね」

 

 

「そうだな。まだ全ての対局データを見てはないが渋谷と亦野が候補だろうな」

 

 

「やっとメンバーが決まるんだね。対局する度に1人確保するのめんどくさかったんだよねー」

 

 

待ち望んでいた3人は気持ちが高ぶっていた。まだ居ぬメンバーを思いながら。

 

対局データの結果、最後の1人は終始安定した強さを見せ付けた渋谷尭深に決まった。

一方、亦野誠子は渋谷尭深より1位を取る回数は多かったものの守りの弱さが目立つ事も同じくらいに多かった。

 

ついに攻撃特化チームが動き出す。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

麻雀部部室

 

翌日、1軍の別室に5人の少女達が集まっていた。

 

 

「よし、みんな集まったな。みんな面識があるから自己紹介は不要だな」

 

 

菫は1人1人の顔を見て話を続ける。

 

 

「数日後にレギュラーを決める試合がある。私と照でオーダーを決めたから発表する」

 

 

そう言うと一呼吸おいて言葉を発する。

 

 

「先鋒は照。去年も一昨年も大将だったがそもそも照は先鋒の方が向いているのが理由だ。照が大量に稼げば後続も楽に打てるだろうしな」

 

 

その理由にみんなは納得の表情を浮かべる。

 

 

「次鋒は私だ。次鋒が余ったから特に理由はない」

 

 

「中堅は渋谷。中々難しいポジションだが渋谷なら問題ないと思って采配した」

 

 

渋谷はお茶を飲むのを止め力強く頷いた。

 

 

「副将は大星。お前には特に言うことはない」

 

 

「なんでさ!なんか言ってよ!!」

 

 

「うるさいぞ。そうわめくな」

 

 

「うー!わんわん!」

 

 

菫は騒がしい奴だとぼやき淡を見つめ話す。

 

 

「お前は何時も通り相手を蹴散らしてこい」

 

 

そう言われた淡は獰猛な笑みを浮かべた。

 

 

「そして大将は咲ちゃんだ。この白糸台でもトップクラスの実力者だ。どんな相手だろうと対応できるだろうと私と照は、いやこの場に居る全員が確信している」

 

 

咲はみんなの顔を見渡し、微笑み、その期待に応えるよう頷いた。

 

オーダーも決まり淡はふと思った事を口にする。

 

 

「ねーねーこのオーダーって大会でも同じ?」

 

 

「いや、仮で決めたことだから変更する場合もある。だから代表戦では全員に回る様に挑んでほしい。だから照、誰かを飛ばさずある程度削って次に回してくれ」

 

 

「ん、わかった」

 

 

「他に質問はないか?ないなら部活を始めるぞ」

 

 

菫がそう言うと照は読書を始めた。先ずは4人で始めろと言うことだろう。

代表戦まで時間がない。4人は早速始める。

 

そして数日後、代表戦が始まった。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

白糸台最強は誰か?その答えに誰もがこの人物の名を挙げるだろう、宮永照と。

では白糸台2年生最強は誰か?その答えに白糸台部員はこの人物の名を挙げるだろう『多治比真祐子』と。

 

この少女は宮永照と弘世菫のネームバリューが強すぎて余り目立たないが1年の時に数少ない1軍入りを果たした少女である。

その才能は幾つもの強豪校が少女をスカウトする程であった。

しかし、そんな強豪校のスカウトを蹴って少女は白糸台に入学した。少女もまた宮永照の闘牌に憧れた1人だった。

 

当時の1年生の中では少女の実力は頭1つ抜きん出ていた。あっという間に3軍から2軍に昇格し、同程度の実力者達に揉まれめきめきと力をつけていた。

そんな時に憧れの宮永照と対局する機会があり、その他を寄せ付けない強さに天地がひっくり返っても勝てない相手と心に刻まれた。それと同時に共に戦いたいと強く思った。

 

それから数ヵ月後、多治比真祐子は今年の1年生の中で最速で1軍に上り詰めた。

多治比真祐子は歓喜した。願いは叶う。しかし数分後、浮かれていたところに絶望を叩き付けられる。

どうやら攻撃特化チームではなくバランスチームに籍を置くことになるらしい…

 

1軍に昇格して数日、監督から話があるとの事で部員全員が召集された。

なんでも監督自らスカウトした子が明日から見学に来るらしい。

監督自らスカウトする程のまだ見ぬ実力者に興味が湧いた。それとかなりヤンチャらしく、その辺は暖かい目で見てほしいと言われた。

 

数日後、同級生からスカウトされた子について話を聞けた。なんでも3軍と2軍の生徒が全員負けたらしい。

対局データを見て私は嫉妬した。この少女の攻撃力に特化した打ち方に。

この少女が白糸台に入学したならば間違いなく攻撃特化チームに加わるだろう。

このもやもやした気持ちをぶつけて負かしてやりたいと思った。

 

その日、少女はやって来た。少女の名前は大星淡と言っていた。どうやら1軍狩りをするらしく先ずはバランスチームに来たと言う。返り討ちにしてやる。

 

結論から言えば無事に返り討ちに成功した。大星淡は悔しがって帰っていった。ただこの対局に私はなにか小さな違和感を覚えた。

 

翌日、再び大星淡はやって来た。そして私は昨日の違和感の正体を知る。大星淡は本気ではなかった。

私達バランスチームは本気の大星淡に何度も飛ばされ、まるで歯が立たなかった。

この日、大星淡の名前が心に刻まれた。

 

あれから数ヵ月、無事進級し2年生になり、バランスチームのエースにまで上り詰めた。

今日は代表を決める試合だ。この日の為に先輩達と切磋琢磨してきたが…先輩達には申し訳ないが勝つのは攻撃特化チームだろう。

 

白糸台の絶対的エースで高校生チャンピオンの宮永先輩。

 

部長であり、宮永先輩と共に1年生からレギュラーとして活躍し、その実力は全国でも屈指と言われる弘世先輩。

 

オーラスで役満を頻繁に和了し攻守に安定している渋谷尭深。

 

その圧倒的高火力でこの場にいるほとんどの部員を蹴散らした大星淡。

 

そして流星の如く1軍に掛け上がり、その実力はあの大星淡と同等であろう宮永先輩の妹、宮永咲。

 

結成して数日しかたってないが、歴代最強と言われた去年のレギュラーより強いのではと噂されてるが、その通りだと思う。

 

そして対局が始まった。先鋒戦は予想通り宮永先輩の独壇場だった。他の3人で共闘していたが宮永先輩は10万点削り取っていった。

そして大将戦を迎える頃にはもう覆せない点差になっていた。それでも一矢報いる為に闘志を静かに燃やす。

 

しかし、一矢報いるどころか多治比真祐子はその闘志を粉々に砕かれた。そして宮永咲の名前は心に深く、強く刻まれる結果となった。

 

白糸台レギュラーは攻撃特化チームに決まった。




咲さんには今のところ3つの打ち方があります

1つ±0(技術)

2つ嶺上開花(能力)

3つ技術、能力を使用しない素の打ち方(高火力)

3つめはラスボス補正の「1つ」として1期のラスボス衣ちゃんを採用しました。では原作と比較してみましょう

原作咲ちゃん

技術
±0

能力
嶺上開花

技術、能力の副産物
点数調整
牌が見える(±0使用時)←何処まで見えてるのか詳細不明
嶺上牌を正確に察知する
カン材を引き込む
カン材が何処にあるか感覚的に分かる

その他
魔物標準装備の超人的な強運
魔物標準装備の他家テンパイ気配察知
靴下脱ぐとパワーアップ

この作品の咲さん

技術
±0

能力
嶺上開花

技術、能力の副産物
点数調整
牌が見える(±0使用時)
嶺上牌を正確に察知する
カン材を引き込む
カン材が何処にあるか感覚的に分かる

その他
魔物標準装備の超人的な強運
魔物標準装備の他家テンパイ気配察知
幼少から照に叩き上げられた結果和了速度がぐーんと上がった←new
原作屈指の衣ちゃん並の高火力←new
麻雀を止めず続けていた為自力も高い←new
靴下脱ぐとパワーアップ←審議

結論、性格改編だけで無双できるわ!

どうにかラスボス補正を上手く使わなきゃ←使命感


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