キリトに双子の妹がいたとしたら   作:たらスパの巨匠

8 / 60
二人はスカウトされました

 

 

 

 第26層の静かな喫茶店。私とアスナはそこで一人の男とテーブルをはさみ対面していた。赤い鎧を装備し、長い白髪を後ろに束ねた男。

 この男の名前はヒースクリフ。今攻略組の中で一番話題になっている男だ。

 第25層攻略の際、攻略組に甚大な被害が出た。一度目の攻略は失敗し撤退。死者は13名にも及んだ。攻略組の士気が下がり、攻略をあきらめるようなことをいうものが出てきたときにこの男は現れた。この男、ヒースクリフの装備は片手剣と大きな盾。これだけなら盾が大きいこと以外たいした特徴もないが、使うスキルが異色すぎた。神聖剣というスキルらしいが今のところ発生条件など詳しいことは分かっていない。

 二度目の第25層攻略。攻略組はヒースクリフ、神聖剣の強さを目の当たりにした。ヒースクリフはボスの攻撃をほぼ一人でさばききったのだ。攻撃をさばけるのならばあとは時間の問題だった。死者も0。強すぎる。あきらめかけていた攻略組には士気が戻った。

 

 

 

 

 そして現在、ヒースクリフはギルド・血盟騎士団を設立し、私とアスナをスカウトしに来たのだ。

 

 

 「率直に言おう。ユカ君。アスナ君。我が血盟騎士団に入る気はないかね? 我がギルドは攻略を第一として活動し、一刻も早いクリアを目指す所存だ。そのためにも君たち二人の力を貸してほしい。」

 

 

 

 悪い話ではない。第25層攻略の際甚大な被害の出たアインクラッド解放軍、通称・軍は主力プレイヤーを失い最前線での活動が難しくなっている。そして軍は聖竜連合と並ぶ攻略組の二大ギルドだ。軍が抜けることは攻略組にとって大きな痛手である。そしておそらく、この男の作る血盟騎士団は軍に代わるギルドにまで成長するだろう。何せ現在この世界でおそらく最も強いプレイヤーがクリアを目指すために作るギルドだ。そのギルドに入り活動するというのはクリアに大きく貢献することにもなる。

 

 

 「ヒースクリフさん。攻略を第一に活動し、一刻も早いクリアを目指すということは攻略組の中で軍に代わるほどのギルドを作る、と解釈してもよろしいのですか。」

 

 

 アスナがヒースクリフに尋ねた。

 

 

 「ああ。そう解釈してもらって構わない。ただ軍のように大人数のギルドというわけではなく、あくまで精鋭を集めたギルドを作るつもりだ。現在の血盟騎士団は攻略組の中から私の声のかけた人たちが私を含め8名いる。最低でも12名以上は集めたいところだ。」

 

 

 ヒースクリフは淡々と答えた。

 

 

 

 「そうですか。今すぐに答えを出せませんので、時間をいただいてもよろしいですか?」

 

 「私も考える時間が欲しいです。」

 

 「まあ、そうなるだろうな。君たちは今までコンビを組んでいたのだから。ではまた後日。いい返事を期待しているよ。」

 

 

 

 

 そういうとヒースクリフは席を立ち、店から出て行った。私はアスナの対面に座りなおした。

 

 

 

 「アスナ。どうする?入る?」

 

 「私は...入ろうかと思う。」

 

 「...そうなんだ。」

 

 「うん。あの人の作るギルドに入ればクリアへの近道になると思うし。 ユカはどうするの?」

 

 「私は...入らないかな。」

 

 「えっ...そっか。」

 

 「うん。」

 

 「どうして入らないの?」

 

 「うーん...やっぱりキリトのことがちょっと気になるかな。パーティー組みたいってことになるかもしれないし。」

 

 「...そっか。」

 

 「いや、もちろんアスナとパーティーを組むのが嫌ってわけじゃないよ。むしろずっと組んでいたいくらいだし。」

 

 「...うん。...私もギルドに入るのやめようかな。」

 

 「私に合わせる必要はないよアスナ。アスナとコンビを組めなくなるのは寂しいけど、アスナはアスナのやりたいようにすればいいよ。」

 

 

 

 

 

 アスナは浮かない顔をしている。私もアスナとコンビを解消することになるのは嫌だけど、本当はギルドに入りたいのに私とコンビを組み続けてもアスナのためにもならないだろう。それにギルドに入った方が安全であり、アスナは自分の力を十分に発揮して攻略ペースも上がるだろう。

 

 

 

 「私やっぱり...ギルドに入るよ。その方が早くクリアできると思うし。」

 

 「そっか。わかった。」

 

 「でも、ユカはどうするの?」

 

 「そうだねぇ。私はソロでやっていくかな~。」

 

 「...一人で大丈夫?」

 

 「大丈夫だよ。アスナ、私の強さ知ってるでしょ?」

 

 「それはわかっているけど。」

 

 「それよりアスナ。コンビ解消しても私と時々でいいからパーティー組んでよね。」

 

 「...うん。もちろんいいよ。」

 

 「じゃあ、アスナがギルドに入るまで攻略しに行こうか。」

 

 

 

 

 

 

 こうして私とアスナも店を出た。

 

 

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。