キリトに双子の妹がいたとしたら   作:たらスパの巨匠

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妹は夢に思いを馳せます

 結論から言うとユカ一人でサラマンダーの全員を倒すのは流石に無理があった。純粋な剣だけでの勝負ならユカ一人でも勝機があったかもしれないが、魔法という遠距離攻撃に対処するのは難しかった。

 しかし、シルフ達の回復魔法と防御魔法の援護があれば、話は別だった。

 シルフ達はとりあえずサラマンダーを蹂躙するユカの援護をすることにしたようだが、ユカが敵ではないと分かっていても恐怖を覚えた。覚えたというか、見えるのだ。ユカの体から何か黒いものがにじみ出ているのだ。そんなよく分からない存在が目にも止まらぬ速さでサラマンダーの精鋭達を斬り捨てていく。

 サクヤはリーファにユカのことを詳しく聞きたかったが、虚ろな目で笑みを浮かべながら戦いを眺めているリーファを見て聞くのをやめた。

 サラマンダーの一人が口にした夢も希望もない貧乳というワードに吹き出してしまったシルフの一人は自分も斬られてしまうのではないかと気が気ではなかった。

 

 

 

 サクヤは悩んでいた。ユカをどうやって懐柔しようかと。リーファが連れてきたわけだし、サラマンダーに襲われそうになった私たちを助けてくれた。少なくとも敵ではないだろう。ユージーン将軍を一人で圧倒できるほどの戦力だ。世界樹攻略を目指すにしてもぜひとも欲しい。というか、サラマンダーの精鋭を回復魔法の支援を受けていたとはいえ、一人で壊滅させるとかおかしいよね。体からにじみ出ているあの黒いの何?あんなエフェクトあったっけ?

 まあ、それはひとまず置いておいて。自陣に取り込めればいいが、とりあえず話をしなければならない。が、彼女を連れてきたはずのリーファがうつろな目をして役に立ちそうにない。間に立って話をしてほしかった。

 サクヤはサラマンダー達を全滅させ地上に降りてきたユカに近づいた。

 

「私はシルフの領主サクヤだ。君のおかげで助かった。礼を言わしてくれ。」

 

 「・・・」

 

 な、何か気に障ったのだろうか。私を見る彼女の目がものすごく怖い。私を確実に目でとらえているのに、何故か目が合わないのだ。・・・彼女を一体何を考えているのだろうか。礼を言わしてくれという言い方が上から言われてるみたいで気に障ったのだろうか。でも、こんな風にキャラを作って話さないと私初対面の人とうまく話せないし・・・。

リーファ、助けて。

リーファはうつろな目をしている。

サクヤはユカが何を考えているか分からずうろたえていると、アリシャも近づいてきた。

 

「私はケットシーの領主のアリシャだヨ。助けてくれてありがとネ。」

 

 アリシャがユカにそういうと、ユカは視線をサクヤからアリシャに移した。すると表情が明るくなった。

 

「いえいえ、大丈夫ですよ。サラマンダーには個人的な恨みもありましたし。」

 

 ・・・おかしい。何故アリシャを見たときと私を見たときではこんなにも態度が違うのだろうか。いや、特別態度がおかしいということもないのか。今は普通だ。私とアリシャどちらにも話しかけてくれている。ただ最初がおかしかっただけ。・・・なにか嫌われるようなことしたかな。

 サクヤはわりとショックを受けた。

 

 

 

 

サラマンダー達を倒した後、ユカは地上に降りた。そこで話しかけてきたシルフを見た瞬間、ユカは衝撃を受けた。

(リ、リーファ以上だと・・・しかも何あの格好。谷間やばいし、太もも出てるし、それで和服って。あんなの動いたら脱げちゃうでしょう。いや、ゲームの装備品にそんなこと言っても仕方ないんだけど。それにしてもリーファといいサクヤといいどうなってるんだ。キャラクターの容姿はランダムで生成されるんじゃなかったのか・・・

 まさか!種族によって容姿に補正がかかるのか!?リーファもサクヤもかなり大きい。もしそうだとしたら、ニューゲームで種族選択をやり直せば私も夢のボインに!!!)

 ユカはサクヤとアリシャとあいさつを交わしていたが、夢に思いを馳せていたため何を話していたのかほとんど覚えていなかった。

 

 

 その後リーファも復活し、世界樹までリーファに案内してもらっていることを伝えると、サクヤとアリシャが世界樹攻略に協力してくれると約束してくれた。

 

 「元々この会談も世界樹攻略を目標としていたからな。」

 

 「そうそう。むしろ手伝ってくれるなら大歓迎だヨ。」

 

 「まあ、今すぐにというわけにはいかないがな。なにせ大軍を動かすには資金が必要でな。」

 

 「あ、そういうことなら」

 

 ユカはウインドウを開き、アリシャにユルドを渡した。受け取ったアリシャは予想以上の重さによろけてその場に倒れこんでしまった。

 

 「・・・え?な、ナニコレ」

 

 「・・・一等地に城がいくつか建つんじゃないのか?」

 

 サクヤとアリシャはドン引きしていた。

 ゲーム内通貨はSAOのデータがそのままALOに引き継がれていたため膨大な量だった。24時間ゲームをやり続け、文字通り命がけでプレイしており、最前線でトッププレイヤーとして活躍していた者の資金力を舐めてはいけない。

 

 (それに私はキリトと違って無駄遣いはしなかったからね。武器とか防具もほとんどモンスタードロップだったし。家とか買ったりしなかったし。)

 

 その後、サクヤとアリシャと別れ、世界樹を目指していた。二人は資金の問題はなくなったから装備を揃えたら攻略に向かうと言っていた。

 リーファと世界樹に向かって飛んでいると前方から何か飛んできた。

 

 「ユカおねーーちゃーん!!」

 

 


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