キリトに双子の妹がいたとしたら   作:たらスパの巨匠

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妹は聖戦を始めることを決意します

 

 魔法が覚えられない。

 スイルベーンを出発してから、リーファと何度かモンスターと戦闘したが剣だけでも十分に戦うことができた。でも、リーファが魔法を使っているのを見ると便利そうだし、魔法が使えれば戦闘の幅も広がりそうだ。

 でも、魔法を使うための呪文が長い!リーファ曰く、私が覚えようとしているものでも短い方らしい。あと、スプリガンの魔法は戦闘には向いていないものばかりらしい。

 

 「おまたせー。」

 

 リーファが再びログインしてきた。交代で休憩中だったのだ。私もさっき現実世界に戻って、簡単な晩御飯とシャワーを浴びてきた。

 

 「じゃあ、行こっか。」

 

 これから、ルグルー回廊という洞窟の中を進んでいく。世界樹に行くためには大きな山脈を超える必要があるのだが、この山脈は高度制限のため飛んで超えることができない。そのため、この洞窟を歩いて抜ける必要があるのだ。ちなみに、プレイヤーの羽は日や月の光を浴びることによって飛ぶことができるので、洞窟内では飛ぶことができない。

 

 「ん?」

 

 いざ、洞窟に入ろうとしたとき、後ろからなにか気配がした。

 

 「どうしたの?」

 

 「ん~、何かいたような気がしたんだけど。見られてるような・・・」

 

 「・・・もしかしたらトレーサーがついているのかもね。」

 

 「トレーサー?」

 

 「追跡魔法で対象の位置を術者に教えるの。大概は小さい使い魔の姿をしてるわ。」

 

 「え~、そんな魔法あるの。」

 

 「これが結構厄介なのよ。こんな森のフィールドだとほとんど見つけられないのよ。私も何度か追跡されて襲われたことがあるわ。」

 

 「このゲーム、殺伐としすぎじゃない?・・・」

 

 背中の羽で自由に飛び回れる剣と魔法のファンタジーなのに、種族同士で戦争したり、殺し合いどころか暗殺にもってこいのような魔法まである。

 

 「ははは、それはあるかも・・・」

 

 リーファは大きくため息をはく。その姿を見たユカはリーファの胸で揺れる二つのそれが目に入った。

 ・・・そういえばこのゲーム、プレイヤーの容姿はランダムだったなぁ。セットアップの時にSAOと同じように体を手で触ったっけ・・・

 追加料金でプレイヤーの容姿は変えることができるらしいんだけど。・・・つまり、現実でもゲームでも貧乳が巨乳になるには金を払えということか。なるほど、殺伐とするわけだ。いっそのこと同盟を組んで、このようなクソ仕様を実装したGMを追い詰めるというのはどうだろうか?ゲーム内のシステムコンソールからこの世界を崩壊に導くというのも面白そうだ。この世の不条理を嘆くだけではなく、覆すことができるのが人間の力だ。今こそその力を見せる時だ。私の胸をバカにした者に容赦はしない。どちらかが死ぬまで殺るしかない。聖戦だ。

 

 「あ、あの。ユカ?大丈夫?」

 

 「・・・大丈夫。先を急ごうリーファ。トレーサーは私の気のせいかもしれないし。」

 

 「う、うん。」

 

 この時、ユカは自覚していなかったが、リーファはユカの体から何か黒いものが出ているのが見えた。アミュスフィアは感情を素直に表現するが、こんな感情表現実装されていたっけと首をかしげるリーファだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 洞窟内に入ってからしばらく経つ。でもやっぱり何かに見られているような気がして仕方がない。だが、後ろを振り返っても誰も・・・

 

 「うん?なんだろうあれ?」

 

 「ユカ?どうしたの?」

 

 「いや、なんか後ろに赤く光ってるものが。」

 

 リーファも振り返って目を凝らす。

 

 「やっば!」

 

 リーファは赤く光るものを見つけると、風の魔法を打ち込んだ。

 

 「ユカ、逃げるよ!あれがトレーサーだった。」

 

 「わかった。」

 

 「この先にあるルグルーって街に入ってしまえば大丈夫だから。」

 

 ユカとリーファは街を目指して走るが、街に架かる橋の上で突如出現した土の壁によって道をふさがれてしまう。

 ユカは氷華を抜き、壁を斬りつけるが傷一つつかなかった。

 

 「この壁は魔法じゃないと壊せないの。」

 

 「・・・湖に飛び込むのは?」

 

 「水龍型のモンスターがいるからなし。」

 

 「なら、ここで迎え撃つしかないか。」

 

 橋の向こうから十数人のプレイヤーがこちらにやってくる。

 

 「サラマンダー!」

 

 「ああ、最初にあった人達と同じ種族か。」

 

 サラマンダーたちは何かを話している。

 

 「おい。あいつらが報告にあった二人組か。」

 

 「そうだろうな。あのシルフは間違いない、有名だからな。そしてあのスプリガンも特徴が一致する。」

 

 「ああ、あれはかなりのまな板だ。」

 

 「長い髪に男の胸を持つ女だとか言ってたなw」

 

 奴らを許すわけにはいかない。サラマンダーは敵だ。また、あの時の二人は見つけ出して斬る。デスペナで初期ステータスに戻るくらいまで斬ってやる。慈悲はない。

 

 「ユ、ユカ?」

 

 「ダイジョウブ。」

 

 「い、いや、とても大丈夫には見えな・・・いえ、何でもないです。」

 

 サラマンダーたちは隊列を組みながらこちらに迫ってくる。大きなシールドを持ったタンクが五人で端から端まで橋をふさぎ、後ろにメイジと思われるプレイヤーが八人いる。

 

 「これは・・・まずいなあ。」

 

 この隊列はタンクを突破できないとジリ貧だ。私もユカもパワーで押すタイプじゃないし。

 

 「ユカ!一か八か、二人でタンクに攻撃するよ!」

 

 そういうと、リーファはタンクに向かって走り出す。ユカもリーファに続く。二人でタンクに攻撃するが、突破できない。

 タンクの後ろからメイジたちの魔法が飛んでくる。ユカとリーファはその魔法を避けることができず、大きくHPを削られる。リーファが回復してくれるが、このままではやられるのは時間の問題だ。

 

 「・・・ユカ、ここはあきらめよう。」

 

 「それはできないかな。」

 

 「スイルベーンに戻っちゃうし、時間はかかっちゃうけど、これは無理だよ。」

 

 「リーファもまだ生きてるし、あきらめるわけにはいかない。・・・なにより、このままじゃ私の腹の虫が収まらない!聖戦だ!!」

 

 そういうとユカは魔法を使うため呪文を唱え始める。

 

 (・・・この呪文は確か、プレイヤーの姿をモンスターに変える幻影魔法。でも、たいていは雑魚モンスターにしかならない。この魔法じゃ・・・)

 

 リーファの予想は外れた。ユカを黒い霧が取り囲み、その霧は次第に大きくなっていく。そして中から大きな鎌を持ち、黒のローブに身を包んだ死神が現れた。

 

 

 

 

 

 

 

 


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