ユニークスキル・神速。それがアスナに取得した新たなスキルの名前だった。二人の、キリトとユカの足手まといになりたくないと願った日に現れたスキル。そしてこのスキルを手にいれてからアスナはスキルレベルを必死に上げた。暇な時間を見つけては必死に上げた。攻略の鬼と言う名は伊達ではない。
「おいおい。閃光もユニークスキルを持ってるのか。目の色が変わっているが、アイツと同じステータスが上がる類いのものか?」
アスナが神速のスキルを発動させたことで碧眼になっている。そしてpohの推測通りステータスが上昇している。ただしユカのように思い通りにステータスを変えられるわけではない。
アスナがランベントライトを構え、ライトエフェクト発生させる。Poh、ザザ、ジョニーブラックの三人も構える。三人が構え終わった瞬間、ザザとジョニーブラックの武器が砕けた。
「は?」
アスナはpohの持つ魔剣、メイトチョッパーも破壊するため攻撃していた。ただ、耐久値が高いメイトチョッパーが壊れなかっただけだ。
「二人とも下がってろ。」
そう言うとpohは自分の腕にメイトチョッパーを突き刺しステータスを強化する。Pohはこの時点で勝てるという確証は砕け散った。閃光の構えは間違いなくリニアーだったはず。それに反応できなかった。いや、油断していたとはいえ、見えなかった。
アスナとpohは剣を交える。しかし、以前とは全くの逆の結果。Pohは防戦一方だった。Pohのステータスは筋力値を優先して上げられている。そして武器はダガーだ。筋力値が高く小回りのきく武器を持つプレイヤー。それがpoh。その為攻略組のなかでもヒースクリフとキリトには確実に勝てると言えないが負けないと考えている。自分の技術にも自信がある。そして武器は小回りがきくぶん防げる。pohはそう思っている。ユカ。あいつは敏捷より。そしてスキルが特殊だ。あいつは危険すぎる。そしてアスナ。現時点では問題ない相手だと考えていた。だが、この先手のつけられなくなる相手だとも考えていた。だから早いうちに消そうとした。
(チッ。思わぬ形で最悪の敵がうまれやがった。)
Pohは筋力よりで小回りのきく武器をもち戦闘技術のたかいプレイヤーだ。その天敵は、敏捷が高く戦闘技術の追い付かないほどの速さを持つプレイヤー。まあ、レベル制MMOのゲームにおいて反則のようなステータスを一時的にもつユカはこの際例外とするが、pohが恐れていたプレイヤーになりうるのがアスナだった。
神速のスキル。このスキルの最大の特徴は、敏捷値2,5倍。敏捷より、おそらく攻略組で最も速いアスナがこのスキルを使えば、普通のプレイヤーでは反応もできないだろう。
事実、アスナはpohを相手に圧している。
(このまま、いける‼)
アスナはソードスキルを発動した。神速のソードスキル・シームレスペネトレイター。このソードスキルは四連撃。プレイヤーを前後左右から連続で突く。速さはシームレスの名の通り、継ぎ目の無い、一撃目が当たったと認識した時には四撃目が終わっている。
アスナのソードスキルは発動し、pohを前後左右から突く。PohのHPは三割以下だ。
しかし、次の瞬間pohのHPが全快する。ジョニーブラックが回復結晶を使用したのだ。
「ヘッド~。後二つあるぜー。」
Pohはその言葉を聞き、嗤った。
突然pohは自分の左腕を斬り落とした。PohのHPは六割減少し、再び全快する。
暗黒剣スキル・血の契約。それによりpohの筋力値と敏捷値は3分間、(1+0,6)の2乗。つまり2,56倍。またメイトチョッパーの効果により対人の倍さらに1,5倍。結果3,84倍にまで強化された。
Pohは片手を失った状態でアスナに斬りかかる。アスナはそれをかろうじてかわした。もともとのステータスでは敏捷値に2倍近い差があるのだ。かわせないことはない。しかし、このままではいつか当たってしまう。そこでアスナは神速のスキル・ラピッドステップを発動させた。アスナの足が蒼く輝く。このスキルを使っている間はソードスキルを使えないが移動速度が1,5倍になる。
アスナは3分間攻撃をかわし続けた。
「ちっ。ちょこまかと…」
Pohはまた左腕を斬りつける。そして全快し…なかった。
Pohがザザとジョニーブラックの方を見ると二人は麻痺し、その場に倒れていた。そしてユカが刀を構え、突っ込んできた。
ユカは白雪を黒く輝かせ、鬼舞を発動させ、全力の一撃を繰り出した。Pohもソードスキルを発動させ、迎え撃ち、両者は後方へ飛ばされる。
「…shit」
そう言うとpohは転移結晶を取りだし転移していった。
「アスナ!大丈夫!?」
ユカは目にもとまらぬ速さでアスナの元へ移動し安否を確かめた。
「う、うん。大丈夫だよ。ありがとう!」
「ほ、ほんとに?ほんとに大丈夫?…え?なにその目?」
「これは神速のスキルの効果で、多分ユニークスキル…って近い近い!」
ユカはアスナの目をのぞきこみ、かなり接近していた。
「綺麗。」
「へっ?…だから近い、近いって‼」