私は今74層の転移門の前にいます。昨日アスナが3人でパーティー組もうということで、74層迷宮区攻略のために、朝9時に転移門の前に集合ということになったのだか…
キリトとアスナが来ない。約束の時間から10分以上経つのに。キリトならともかく、アスナが遅刻するなんてなにかあったのだろうか。メッセージを送っても返信はないし。
すると突然転移門の方から声が聞こえてきた。
「きゃあぁー、避けてーー!」
「あ、危ない‼」
二人の声がしたと同時にユカはいきなり押し倒された。何が何だか分からないまま上にいる人物を確認するとキリトとアスナだった。
「ご、ごめん!ユカ。大丈夫だった?」
「いててて…」
ユカは仰向きで倒れており、アスナはユカに覆い被さるようになり、ユカの目の前にはアスナの顔があった。そしてキリトはユカの脚の付け根辺りに顔を突っ込ませるようにして…
「うわあああぁぁぁぁーーー!!!」
「ご、ばぁ、ちょ、まっまった、いが」
ユカはキリトを蹴りまくった。北斗柔破斬ばりに。キリトは後方に飛ばされ、転移門横の柱にぶち当たった。流石に双子の兄相手でも許容できないこともある。
「え、えっと。ほんとにごめんね。」
アスナが今度は違う意味で謝った。
なんてことをやってると、転移門から一人のプレイヤーが現れた。制服から血盟騎士団のメンバーだということが分かる。そのプレイヤーは私たちを見ると睨み付けてきた。
「アスナ様。血盟騎士団本部にお戻り下さい。ましてやどこの馬の骨とも知れないような奴と同じ家に二人でいるなど、とんでもないことです。」
「何よ!いきなり朝家の前に来て。そもそも私は今日は活動日じゃないわよ!それに!キリトくんは私の夫です。」
「私はアスナ様の護衛です。例え活動日じゃなかろうと…え?夫?」
「ア、 アスナ。それは隠しておくんじゃなかったのか?」
「…あ!」
「と、とにかく。本部にお戻り下さい。そこで詳しいお話をうかがいます。」
そうか。分かった。こいつだね。こいつがそもそもの原因なんだね。うん。分かったよ。
腕を捕まれ連れていかれようとするアスナを、ユカは血盟騎士団のプレイヤーの腕を掴むことで止めたら。
「なんだ‼貴様は!?」
「私たちは今日アスナと約束してたんだ。護衛なら私とキリトがいるから問題ないからさ。」
「貴様らなんぞにアスナ様の護衛が勤まるか!!!」
「なら、デュエルしようよ。私があなたより強かったら問題ないよね。」
「舐めるのも大概にしろよ、小娘が‼」
そういうとデュエルの申込み画面が表示された。クラディールで読みはあってるかな?モードは初撃決着モードって。私は迷わずに◯ボタンを押した。
「ご覧ください、アスナ様。私以外に護衛が務まらないことを証明します。」
そういうとクラディールは腰に吊るしている両手剣を抜く。
デュエル開始のカウントダウンが始まり、残り10秒のところで私も白雪を抜き、
鬼舞を発動させた。
「え、ちょ、ユカ!」
「おい!ユカ。待て!お前キレてんだろ。ちょっと落ち着け!」
アスナとキリトの忠告むなしく、デュエルは開始された。クラディールはソードスキルを発動させユカに突っ込む。ユカもライトエフェクトを白雪に纏わせ、白雪は黒く輝き、ユカの手足は白く輝く。二人が衝突した瞬間、クラディールの剣は真っ二つに折れた。
「なっ、なんだと。」
クラディールはわなわな震えており、観戦しているプレイヤーからは感嘆の声が漏れる。
クラディールはアイテムストレージから短剣をとりだし、ユカに突っ込む。ユカはその攻撃をかわし、短剣を破壊する。クラディールはエストックを取り出す。ユカはエストックを破壊する。クラディールはハルバードを取り出す。ユカは破壊する。クラディールは槍を取り出す。ユカは破壊する。クラディールは…
そこからは酷かった。ユカはクラディールが取り出した武器をことごとく破壊していき、遂に武器が底をついたのか、その場に崩れ落ちた。そのクラディールに対して、護衛役を解任、別名があるまで本部で待機と命じられそのままとぼとぼと転移門から転移していった。
そして俺たち3人は迷宮区を攻略しにいった。
私たちは迷宮区を順調に攻略していき。ボス部屋を発見した。
「どうする?開ける?」
「フロアボスは守護する部屋からは出ない。姿を見るくらいなら大丈夫だ。」
「よし!見よう。」
私たちは転移結晶を用意して思いきってボス部屋の扉を開け、数歩なかに進んだ。すると真っ暗だった部屋のなかは篝火が次々とともされていき。部屋の中央にいるボスの姿をあらわにした。私が様子見で攻撃し、少しでも攻撃パターン見ようとしたところで
「きゃあぁーーーーー。」
「うわあぁぁぁぁーーー。」
という声と共に、キリトに右腕を、アスナに左腕を捕まれボス部屋とは真逆の方向に引きずられていった。
ひとしきり逃げたところで腰を下ろして、私たちは昼食をとることにした。アスナの手作り弁当らしい。
「口に合うかわからないけどユカの分もあるから食べてね。」
そういうとアスナはバスケットの中からハンバーガーを取り出した。みるからにおいしそうだ。キリトはさっきからハンバーガーにがっついている。私も一口食べてみた。
「ど、どうかな?」
アスナの料理が美味しいことは知っていた。でも前にご馳走してもらったときとは比べ物にならない位美味しい。
「お、美味しすぎるよ!でも、この味どうやって?」
「それはねぇ~、これよ。」
そういうとアスナは小瓶を取り出した。その小瓶のなかの液体を口のなかにいれてみると
「こっちは醤油…こっちはマヨネーズ…」
「ふふ、研究の成果よ。」
アスナによれば味覚エンジンを片っ端から調べて作ったらしい。ある意味、とんでもない才能だ。
「ねえ、アスナ。」
「ん?なに?」
「私の嫁に来て♪」
「へっ?」
「お願い!アスナ!」
「いや、でも、私はキリトくんの妻だから…」
「キリトは毎日アスナの手料理食べてるの?」
「え!?うん、そうだけど。」
話の内容が怪しい方向にそれ始めたとき、ガチャガチャと鎧の音と一緒に数人のプレイヤーが歩いてきた。
「おおー!キリト、ユカちゃん!しばらくだな~!」
現れたのはクラインとそのギルド風林火山のメンバーだった。
「おう、まだ生きてたか!クライン」
「久しぶりだね~、クライン。」
クラインがこちらに歩いてきた途中で固まった。そう、彼の目にアスナが映ったのだ。
「もう、何度か見たことがあると思うけど、改めて紹介するよ。こちら血盟騎士団のアスナだ。で、こいつはギルド、風林火山のクラインだ。ん?どうしたクライン?ラグってんのか?」
「ク、ク、ク、クラインというものです。独身、恋人ぼしゆー
キリトはクラインを殴った。
「あはははは。クライン。アスナとキリトはもう結婚してるから無理だよ~。」
クラインがユカの言葉を聞いたとたん、クラインは血の涙を流した。そしてクラインは目にも留まらない速さでキリトの足元まで移動し、そのまま腹をめがけて正拳突きを繰り出した。キリトはその場にうずくまる。
「キリトよぉ。お前の罪を数えろ!」
クラインガチギレである。
なんてバカなとこをやっていると、また迷宮区にプレイヤーがやって来た。