キリトに双子の妹がいたとしたら   作:たらスパの巨匠

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この頃忙しくて全然投稿できていませんでした。読んでくれている方にはほんと申し訳ないです。すいません。


親友は強いです

 

 第60層・フロアボスの扉の前に攻略組のプレイヤーたちが集まっている。その先頭に立つのは深紅の鎧に身を包み、大きな盾と細長の片手剣を装備したプレイヤー、ヒースクリフだ。

 ヒースクリフは一度門の前で攻略組の方に振り返った。

 

 「では、行こうか。解放の日のために!」

 

 そういうと、ヒースクリフはフロアボスの扉に手を当てる。すると本来人一人では動かせそうもない扉が、ひとりでに開いた。

 部屋の中央には大きな狼型のボスが深い眠りを妨げられたかの如く立ち上がり咆える。

 俺も背中にクロスするようにつるしてある二本の剣を抜き、ボスに向かって走りだした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ボス攻略が開始されてから約二時間が経過したころ、狼型のボスは断末魔を部屋中に響かせ、ポリゴンとなり消えていった。死亡者は0。ボス攻略は何事もなく終わり、プレイヤーたちが歓喜の声を上げる中、突然ブザー音が鳴り響いた。何かしらのトラップを疑い、その場にいた全員が武器をかまえなおす。しかし、次に起きたことはその場の全員が思いもよらぬことだった。

 それは無機質な一切の感情がない機械の音声だった。声質は女のそれだった。

 

 「第60層突破につき、アンチクリミナルコードが解除されます。第60層突破につき、アンチクリミナルコードが解除されます・・・・

 

 おそらくこのアナウンスはこのボス部屋だけではなくアインクラッド全域に放送されているのだろう。このアナウンスは十回ほど繰り返された。

 

 「なんだ今のは。」

 「どうなってんだよ。」

 

 予想外の出来事に攻略組も混乱している。

 

 「ここでアンチクリミナルコードの無効化だと!」

 

 俺のすぐ近くにいたヒースクリフが声を出した。さすがにこの展開は予想できていなかったみたいだ。

 さらにボス部屋に先ほど倒した狼型のボスよりも一回り小さいモンスターが三匹出現した。

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私は久しぶりに第1層始まりの街に来ていた。今頃キリト君はボスと戦ってるんだろうな。私も一緒に戦いたいけど、剣を握ると体の震えが止まらくなる。どうしてもあの時のことを思い出してしまう。今では特に意味もなく街中を散歩しているだけだ。かつて攻略の鬼と言われた私はもういない。

 そんなことを考えながら歩いていると急にブザー音が鳴り、アナウンスが流れた。アンチクリミナルコードが解除されたらしい。それはつまり圏内がなくなったということ。

 突然悲鳴が上がった。おそらく街の中にモンスターが入ってきたのだろう。私は街の中心部に走った。中心部に近いほどモンスターが来る可能性は低くなるはずだ。

 走っていると子どもの泣き声が聞こえた。鳴き声の聞こえたほうに目をやると四つの人影があった。男は剣を持ち女の人を拘束している。それを二人の子どもが泣きながら見ていた。

 男は剣を振り下ろし、女の人の片腕を斬り落とす。男は下品に笑い、楽しんでいるようだ。すると一人の子どもが短剣を取り出し、男に斬りかかった。しかし、男はそれをかわし子どもを蹴り飛ばす、そして子供にとどめを刺すべく剣を振り上げた。

 アスナは我慢の限界だった。気づいた時には走り出し腰には愛剣・ランベントライトを装備し、ソードスキルを発動していた。アスナが閃光と呼ばれる所以、細剣ソードスキル・リニアー。

 ランベントライトの切っ先は男の剣に吸い込まれるように進み、剣を一撃で破壊した。

 アスナの体に震えはない。剣を握って、敵と相対しているがもう恐れはない。

 

 「そうだよね。力のある人がたたかわないと、この世界は終わらないんだよね。」

 

 アスナは誰に言うわけでもなくつぶやいた。男の剣を破壊した後、男の顔を蹴り後方に吹き飛ばす。ここで軍のギルドメンバーが現れて、男を拘束した。

 

 「お姉ちゃん、ありがとう!」

 

 小さな子どもがアスナに向かってお礼を述べた。

 

 「もう大丈夫よ。あとはお姉ちゃんにまかしてね。」

 

 そしてアスナは街に侵入したモンスターたちを倒すべく走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アスナはモンスターを次々と倒していった。はっきり言って一層のモンスターなどアスナの敵ではない。それに始まりの街には軍のプレイヤーもいるのでモンスターは次々と倒されていった。しかし、いかんせん始まりの街は広い。

 突然男の悲鳴が聞こえた。悲鳴の聞こえた方向に走ると軍のプレイヤーが二人のプレイヤーと戦っていた。フードをかぶったオレンジプレイヤー。手には一人はエストック、一人は短剣を持っている。

 

 「あれは、ザザとジョニーブラック・・・」

 

 ラフコフの捕まっていない幹部プレイヤー。まさか黒鉄宮に捕まっている仲間を開放しに来たのか?なんにせよ見過ごせない。

 アスナは二人の前に立ちはだかる。

 

 「ん~?おいおい、閃光じゃねえか。こりゃあでかい獲物だ。まえ、ヘッドに殺されたのにこりてねえのかあ~?」

 

 「邪魔、するなら、もう一度、殺す。」

 

 アスナの脳裏に自分が殺された時のことがうかぶ。目の前が真っ赤になり、自分の体がポリゴンとなり消えていく。

 でも、いつまでも震えてはいられない。

 

 「私は、負けない。」

 

 アスナが答えると、ザザが一人前に出てきた。

 

 「俺が、一人で、やる。手を、出すなよ。」

 

 アスナとザザは同時に動き始めた。二人の戦闘スタイルは似通っている。二人の間ではお互いの剣が目にも止まらないスピードで交差する。ここでアスナの剣が煌めく。細剣ソードスキル・リニアー。アスナのリニアーはもともとの硬直時間の短さと硬直時間短縮スキル、アスナのレベルも相まって、硬直時間はほとんどないに等しいものになっている。アスナのリニアーが連続で発動した。それはさながら流星群のようだ。ザザもソードスキルを発動しアスナと斬りあう。しかし、アスナのほうがレベルが高いのだろう。徐々にザザのHPが減っていく。たまらずザザは後ろに飛びのく。

 

 「おいおい、ずいぶん元気じゃねえか。」

 

 ザザとジョニーブラックの後ろから一人のプレイヤーが歩いてくる。カーソルはオレンジ。黒いポンチョを身に着け、右手には肉厚の包丁のようなダガーが握られている。

 男は嗤いをこらえるように口を開いた。

 

 「イッツ・ショウ・タイム」

 

 

 

 

 


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