キリトに双子の妹がいたとしたら   作:たらスパの巨匠

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兄と親友は

 

 

 

 

 第50層・アルゲート。日が完全に落ち、あたりは暗くなってきている。もうそろそろ閉店の時間だ。客は一人もおらず静まり返った店内に、カランッ、と店のドアが開く音がした。

 

 「これはまた珍しい客が来たもんだ。」

 

 店のドアにはフード付きのマントを装備し、顔にトレードマークの髭のペイントを描いた小柄なプレイヤーが立っていた。

 

 「エギル、ここにユーちゃんは来てないカ?」

 

 鼠こと情報屋のアルゴがユカについて聞いてきた。

 

 「いや、来ていないが。何かあったのか?」

 

 アインクラッドで一番の情報屋と言っていいアルゴが、一人のプレイヤーを、それも有名なプレイヤーを探して俺のとこまで聞きに来たんだ。何かあったと考えるのが普通だろう。

 

 「今さっき32人のラフコフのメンバーが黒鉄宮に送られてきタ。」

 

 「なに!!それは本当か!?」

 

 ラフィンコフィンのメンバーが32人。確かラフィンコフィンのメンバーは全部で40人前後だったはずだ。事実上ラフィンコフィンは壊滅したといってもいいだろう。

 

 「ああ、本当ダ。Pohやザザなんかの幹部は送られてこなかったガ、ほとんどのギルドメンバーが捕まったといってもいいだロ。そしてそれを捕まえたのがユーちゃんらしいんダ。」

 

 「あいつ、なんて無茶を・・・。ここには来ていないがキリトやアスナのとこにはいないのか?」

 

 「オレっちもそう思って二人のとこに行ったんだガ、いなかったんダ。」

 

 アルゴの表情がより一層暗くなる。感情表現が豊かなSAOではすぐに顔に出る。

 

 「・・・どうやら最初にラフコフに遭遇したのはキー坊とアーちゃんだったらしいんダ。」

 

 「・・・どういうことだ。いったい何があったんだ?」

 

 「キー坊とアーちゃんが二人でフィールドに出ていた時にラフコフに襲われたらしいんダ。そしてアーちゃんは一度殺されタ。」

 

 「なんだと!!」

 

 「まあ、最後まで聞いてくレ。アーちゃんはキー坊が持っていた蘇生アイテムで生き返ったから今もちゃんと生きてル。そしてユーちゃんが二人のもとに駆け付けたから助かったんダ。この後キー坊はアーちゃんに付き添ってル。そしてユーちゃんは何らかの形で知ったラフコフのアジトに向かって、捕まえたらしいんダ。」

 

 そんなことがあったのか・・・。

 そしてアルゴは続けた。

 

 「そして、最後に送られてきたプレイヤーが、ユーちゃんが・・・人を殺したって喚き散らしたんダ。」

 「今頃一人で自分を責めてるんじゃないかって思うんだ。アーちゃんのことを軽く見ているわけじゃないけど、アーちゃんにはキー坊がついてる。でも、ユーちゃんの知り合いをあたってみたけど見つからなかった。」

 

 「・・・子どもにとんだ業を背負わしてしまったな。それなのに俺たち大人は何をしているんだろうな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ラフコフに襲われた次の日、俺はアルゴが出している新聞に目を通した。アインクラッドで起こったことをいち早く、正確な情報が載っているためプレイヤーからの人気は高かった。そしてその新聞の内容は驚くべきものだった。

 

 「ラフィンコフィンのメンバーのほとんどが捕まった・・・」

 

 新聞の内容はユカが一人でラフコフのメンバーのほとんどを捕まえたという内容だった。

 

 「あいつ・・・危険なことしやがって。」

 

 だがこの新聞にはユカがラフコフのメンバーを殺してしまったということは載っていなかった。

 

 アスナはまだ眠っている。あんなことがあったんだ、目を覚ましても前と同じようにはいかないだろう。最初から二刀流を使っておけば洞窟の外に逃げることもできたかもしれないのに。

 

 「キリト君。」

 

 声のするほうに振り向くとドアを開け、アスナが立っていた。だが、以前のような凛々しさはなかった。そこには弱々しい雰囲気の一人の女の子が立っていた。

 キリトの脳裏に守ると約束したのに守ることができなかった少女の顔がうかぶ。

 そうだ、アスナはまだ生きているけど、俺はまた守れなかったんだ。

 

 「キリト君?どうしたの?」

 

 「いや、何でもない。」

 

 「・・・私は大丈夫だよ。気にしないで、キリト君のせいじゃないんだから。」

 

 そういうと、アスナは椅子に座ってうつむいている俺の頭に手を置き微笑んだ。

 

 「ねぇ、キリト君。こんな時にこんなこと言っても多分キリト君を困らせるだけだし、ちょっとずるいかもしれないけど、もう言えなくなるといやだから言うね。」

 

 そういうとアスナは俺の頭の上から手を離した。

 

 

 

 「私は、キリト君のことが好きです。」

 

 

 

 俺は思わず顔をあげた。俺はアスナのことは嫌いじゃない。でも、俺は彼女の隣にいていいのだろうか。

 

 「俺は・・・

 

 アスナが縋るような瞳でこちらを見てくる。

 

 「俺もアスナのことは嫌いじゃないよ。でも俺なんかがアスナの隣にいていいのかがわからないんだ。」

 

 俺は思っていることを正直に言った。

 

 「私はキリト君がいいんだよ。」

 

 アスナは微笑みながらそう言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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