今私の前でアスナがポリゴンとなり消えた。
嘘だ。こんなの・・・
私は剣舞のスキルを発動し、アスナがいた場所、そのすぐそばにいた男に斬りかかる。足は白色に、刀は黒色に、腕は白色に輝かせ腰につるしてある白雪を抜刀した。男はこちらに気づいていたようだ。私の刀と男のダガーがぶつかる。私は刀を振り切り男を吹き飛ばした。どうやらソードスキルの発動は間に合わなかったようだ。私はその勢いのまま男めがけてつっこむ。振りぬいた右腕を体にひきつけ突きを放つ。しかし男は左横に転がった。私の突きはかわされる。男はそのまま私から距離をとる。
「蘇生・アスナ!!」
私が追撃を仕掛けようとしたとき、後方から聞きなれた声が親友の名を叫んだ。私はその声がしたほうを向くと、二人の姿があった。キリトがアスナを抱きかかえている。
還魂の聖晶石。キリトが手に入れたアイテム。その効果は死亡したプレイヤーを十秒以内であれば蘇生することができる。
よかった。アスナはまだ死んでない。
「チッ」
男、Pohが舌打ちをした。
「はぁ~。せっかく閃光を殺せたと思ったんだが、さすがはビーター様だ。まさか死んだ人間を生き返らせるとはな。」
アスナが生き返って少し冷静になれた。周囲にはラフコフと思われるプレイヤーがたくさんいる。私はアスナとキリトのもとまで下がった。おそらく、アスナは戦えない。アスナに抱き着かれる形のキリトも動けない。・・・あれを使うか。
「興ざめだ。お前ら帰るぞ。」
私が悩んでいるとPohはラフコフのメンバーに撤退するように言った。
私は後ろを向いたPohに麻痺の効果のあるピックを投げた。しかし一人のプレイヤーがピックを剣で叩き落す。
「やっぱりお前は油断ならねえなユカ。いずれお前ら三人とも殺してやるから覚悟しておけ。まあ、閃光を殺すのはあんまり手間かけずに済むかもな。」
そういうとPohは転移結晶で転移した。それに続き、ほかのラフコフのメンバーも転移していった。
私はキリトから何があったのかを聞いた。もちろんユニークスキルのことも。Pohのユニークスキル・暗黒剣の効果がHPが0になることでリセットされたのは不幸中の幸いだった。アスナは動かないし、何もしゃべらない。ただすすり泣く声が聞こえるだけだ。現実では死んでいないとはいえ、死に等しい体験をしたんだ。無理もない。
「キリト。今日は・・・しばらくはアスナのそばにいてあげて。」
「・・・わかった。」
わたしの提案にキリトは同意すると二人は転移結晶で転移していった。・・・もしかしたら、アスナはもう戦うことができないかもしれない。
私も転移結晶を取り出し転移する。
「転移・リンダース。」
私はリズにキリトとアスナに何があったかを話した。
「わ、私のせいだ・・・」
リズは震えていた。自分の提案が結果的に親友を一度死なせてしまったことに責任を感じているんだろう。
「リズは悪くないよ。悪いのはラフコフの奴らだよ。」
「でも・・・私があの時二人にフィールドに出るように進めなければ!」
「・・・それは言っても仕方のないことだよ。誰も未来のことなんてわからないんだから。」
「でも・・・でも・・・」
私はリズをなだめるように抱きしめた。
「大丈夫。」
私はリズの店から出るといろいろなものを買い込んだ。そしてアイテムストレージからもう一振りの刀を取り出し腰につるす。この刀は55層のボスのラストアタックボーナス・雷刃。強力な麻痺を敵に与えることができる。プレイヤー相手なら一撃で、耐毒ポーションを飲んだプレイヤーでも何度か攻撃すれば麻痺させられるだろう。
剣舞のスキルはいろんな武器を使うことができるが、制限もある。例えば腰に刀を装備した状態で手に槍を持てばライトエフェクトが発生する。しかし右手に刀、左手にダガーなどではライトエフェクトは発生しない。また片手剣に大きな盾を持って神聖剣や二刀流なども試したがライトエフェクトは発生しなかった。
おそらく剣舞のスキルはほかのユニークスキルのマネはできない。手に持つのが一つの武器なら使えるはずだ。
私は二刀を携え、転移結晶を取り出し、近くにいたラフコフのメンバーが転移した、おそらくラフコフのアジトに転移する。
「転移・・・」
私の体は光に包まれた。
転移した先では索敵スキルに行くつっもの反応があった。反応のあった方向に歩いていくとオレンジプレイヤーがたむろしていた。
「なんだ、お前こんなとこに一人で来たのか~?」
そのうちの一人が絡んできた。しかし今の私には話し合いをしてやれるほど心に余裕がない。その場にいた四人を雷刃で斬り伏せる。解毒結晶を使えないようにするため両手は斬り落としておく。そのままコリドーを開きその場にいたプレイヤーを監獄エリアに送る。
全部でラフコフのメンバーを30人ほど監獄エリアに送ったところで一番の目的のプレイヤーに遭遇した。あいつには雷刃じゃあ勝てない。私は雷刃をアイテムストレージにしまい、白雪を抜く。
「・・・よくも俺のギルドのメンバーを監獄エリアに送ってくれたな、ユカ。」
「あなたには手加減ができない。だから殺すつもりでやる。」
私は目を赤色に輝かせた。