現在最前線は56層。今は攻略会議中で攻略組のプレイヤーがパニの村というところに集まっている。強力なモンスターをどうやって倒すか会議中だ。
「フィールドボスを村に誘いこみます。」
アスナが会議の指揮をとっており、フィールドボスを村に誘い込もうと提案した。
「ちょっと待ってくれそんなことしたらNPCが...」
「それが狙いです。フィールドボスがNPCを襲っている隙に攻撃してボスを倒します。」
キリトがアスナの案に異論を唱えたがアスナが間髪入れずに返した。
「俺はその作戦には従えない。NPCだって村の中で
「生きている。とでも?あれはオブジェクトと同じです。例え死んだとしてもまたリポップします。」
キリトが話しているところでアスナが言い放った。
「今回の作戦の指揮をとるのは血盟騎士団副団長のアスナです。私の言うことに従ってもらいます。」
アスナがものすごい目つきでキリトを睨む。その目つきに周りの攻略組は恐れおののき何も言えなくなってしまった。
でも私も村のNPCが殺されるのは見たくないなぁ。
「私もできれば人型のNPCが殺されるのは見たくないな。」
「なら、ほかに何かいい案あるんですか?」
「う~ん。50層のボスの時のように私が基本的にボスと一対一で戦うから隙を見つけて攻撃するっていうのはどう?」
「ダメです。危険すぎます。あの時は仕方なかったですけど、今はそんな危険なことをする必要はありません。」
すぐに却下されてしまった。
「でも俺も人型のものがモンスターに殺されるのは見たくない。副団長さんはそれを見てもなんとも思わないのか?」
「私はこの方法がプレイヤーにとって一番安全で確実だと言ってるんです。」
この後もキリトとアスナの意見のぶつかり合いは続いた。私を含めた攻略組の面々は飛び火しないようにただ黙って見つめていた。しかしあまりにも長いこと言い争うのでエギルが仲裁に入ってくれた。一時はデュエルでどうするか決めようってアイディアがでたが攻略組の中にはボスなどのレイド単位の攻略が必要になった際、一番最初に見つけたプレイヤーやギルドが指揮をとるという暗黙の了解とアスナの案のほうが安全だということでボスを村に誘い込むことになった。確かに私やキリトの意見はあくまでも感情論だ。デスゲームでなければ私もアスナの案を最初から指示していただろう。
攻略会議はアスナの案を採用するということで終了した。
SAOではフィールドの状況にもよるが、基本的に気象設定は現実世界と同じように設定されている。そして今日はものすごく天気がいい。迷宮区に潜るにはもったいないくらいだ。今日は攻略を休んでゆっくりしようかと考えながら歩いていると、木の下で眠っている二人のプレイヤーを発見した。
...あれ、ちょっと待って。え!?キリトとアスナ!?何で二人が木の下で眠ってるの?しかもアスナはキリトにすがりつくように眠ってるし。あの二人って付き合ってたの?いつから?ていうか会議でよくぶつかり合ってたけど、あれってじゃれあってただけ?と、と、と、とりあえず、記録結晶で
パシャッ!
記録結晶とは現実世界でいうカメラのようなものだ。一応とったけど、私一人で抱えるにはこの問題は大きすぎる。とりあえず誰かに話したい!!
う~ん、リズに話すとアスナにばれるかもしれないし、アルゴさんは論外だし。私の知り合いで話しても大丈夫そうな信頼できる人は・・・
「エーギルーーー!」
「おう!ユカ。どうしたんだ?俺の店に来るなんて珍しいじゃないか。」
私はエギルにさっきのことを言いに来た。エギルなら大人だし。一度ロリコンじゃないかと疑っちゃったけど、現実世界じゃすでに結婚してるって聞いたし。
「エギル聞いて!あとこのことは誰にも言わないで。」
「お、おう。何があった。」
「とりあえずこれを見て。」
私はエギルに記録結晶で撮ったキリトとアスナを見せた。
「こ、これは。」
「ねえ、やっぱりあの二人って付き合ってるの?」
「いや、そんな話は聞いたことないが。これは...」
「私もあの二人っていつも言い争ってたから付き合うような関係じゃないと思ってたんだけど。」
「ああ。俺もあの二人は気が合わないと思ってたぜ。」
「くそ。キリトめ!私のアスナを奪いやがって。あの女顔は調子に乗りすぎた。いつか私がしかるべき報いを。」
「まだあの二人が付き合ってるって決まったわけじゃないだろう。」
...やばい。このままじゃ
「ど、どうしようエギル。このままじゃ私攻略組で唯一のぼっち(ソロプレイヤー)になっちゃうよ。」
「とりあえず一度落ち着け。」
そういうとエギルはコーヒーを出してくれた。
「ありがとう。」
「でもまあ、この写真を見る限りじゃあ付き合っていてもおかしくはないが、まだ確かなことはわからないんだ。変に勘繰ることはしないほうがいいぞ。」
「うん。わかった。」
確かにまだ付き合ってるって決まったわけじゃないからね。ただ一緒に木の下で寝ていただけかもしれないし。...普通木の下で白昼堂々一緒に昼寝ってするのかな?
「なあ、ユカ。よかったらこの写真俺に売ってくれないか?」
「...どうする気なの?」
「なに、今すぐ広めたりなんかしないさ。時期が来ればキリトに高値で売る。」
「ちょっと待ってね。コピーするから。」
さすがエギル。大人だ。その発想はなかった。
私はエギルにコピーした写真を渡し店を出た。写真を渡した後エギルは私に何か買わないかと言ってきたからだ。商魂がたくましすぎるよ。
とりあえずこの日は憂さ晴らしに攻略しに行った。
後日。私は攻略を終え57層の主街区・マーテンという街に来ていた。この街にあるNPCの料理がおいしいのだ。肉よりもお魚のほうがおいしいんだよね。そんな時ベンチに座る二人のプレイヤーが目に入った。キリトとアスナだ。やっぱりあの二人付き合っているのかな?どうなんだろう?
私は隠蔽スキルを発動させ見つからないように二人に近づき少し様子を見ることにした。あっ、アスナがなんか取り出した。サンドウィッチ?もしかしてアスナの手作り!もうこれは確信犯じゃない?確信犯じゃない?
キリトがサンドウィッチを地面に落としてサンドウィッチは耐久値がなくなり消滅した。何やってんだよカズ。双子の妹として恥ずかしいよ。しかも急に叫びだしたし。ほんと何やってるんだろ。
一度叫んでからずっとしゃべってばっかりだ。もう少し近づいてみよう。声が聞こえるくらいまで。
「結婚すると...どうなるんだ?」
「確か結婚するとアイテ...共有...されるはず。」
えっ?結婚!?相手と共有!?何が?ていうかそこまで進んでたの。
「なあ、アスナ。ため...結婚してみないか?」
あ!やばい。キリトがアスナに殴られてこっちに飛んできた。しかも私の足元くらいに。
「いてて、あれ?ユカどうしてこんなとこに?」
「いや、その、たまたま通りかかって。」
キリトの体の一部が私の足に触れたことで隠蔽スキルがとけてしまった。
「ユカ。久しぶり~。」
「う、うん。久しぶり、アスナ。」
「どうしたの?なんか変よ?」
「いや、どうしたっていうかどうかなってたというか。」
「「ん?」」
キリトもアスナも頭の上に?を浮かべている。
「その~、さっき聞こえちゃったんだけど、二人が結婚するって。」
この後アスナに説教されました。どうやら結婚はしないみたいで付き合ってもなかったみたいです。ちなみにキリトはリニアー百裂突きの刑に処されていました。とても怖かったです。