キリトに双子の妹がいたとしたら   作:たらスパの巨匠

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クォーターポイントのボスは強いみたいです1

 

 

 

 「では今から第50層のボス攻略会議を始めます。」

 

 ボス攻略のために集まった攻略組に向けて白の制服に身を包んだアスナが会議の指揮をとっている。アスナの横では他の血盟騎士団の団員とは違い深紅の制服であるヒースクリフが座っている。

 

 「今回のボス攻略は我々血盟騎士団が指揮をとらしていただきます。」

 

 今回は、というかこのところほとんど血盟騎士団が指揮をっとっていたけどね。

 基本的にはボス部屋を一番早く見つけ出したギルドが攻略の指揮をとることになっている。だが血盟騎士団が本格的に活動し始めてからはほとんどが血盟騎士団の指揮でボス攻略を成功してきた。それにはアスナの活躍がとても大きい。団長のヒースクリフはあまりフィールド攻略を行わないため、実際血盟騎士団の圧倒的な攻略スピードはアスナの手腕によるものだろう。

 

 「今回のボスの名前はザ・ドラゴンオブナイト。西洋のおとぎ話の中に出てくるような背中に翼のある真っ黒なドラゴンです。私たちが行った偵察戦から考えるに、今回のボスの危険度は25層と同等かそれ以上だと考えています。」

 

 攻略組は静まり返っていた。第25攻略。軍の精鋭が壊滅させられ、13名の死者を出した最悪のボス攻略戦。その時の記憶が攻略組のメンバーにあの時の恐怖を思い出させる。そこで最前線から離れてしまったプレイヤーもいるくらいだ。

 

 「主な攻撃パターンは、尻尾による薙ぎ払い。体全体で突っ込んでくる突進。噛みつき。また空中に飛びあがり、空中からの突進や噛みつき。また後ろ足による攻撃。それと特殊攻撃として炎のブレスが確認されています。HPが少なることで攻撃パターンが変わる可能性がありますが、偵察戦ではそこまでHPを削ることができなかったので確認できていません。全長は10メートル以上あり、全身が鱗に覆われているため攻撃が通りにくいです。」

 

 かなり厄介だ。確認されている攻撃パターンも多いし空中戦は圧倒的にプレイヤーが不利になる。さらにブレスという遠距離攻撃。武器を持っていなく、人型でもないためソードスキルを使わないのがせめてもの救いか。

 

 「今回のボスは攻撃力と防御力はかなり高いですが速さはそこまでありません。そのためアタッカーの皆さんは深追いはあまりしないでください。速さこそありませんが体が大きく攻撃範囲が広いです。また不測の事態が起こった場合には私が撤退の合図をします。」

 

 その後、攻略組の中で役割を振り分けていった。私はアタッカー。キリトもアタッカーの役割だったが、同じパーティーにはならなかった。

 

 「攻略は明日の午後1時から始めます。何か意見のある方はいますか?」

 

 だれも声も上げず手も上げなかった。

 

 「ないようなので攻略会議を終了します。解散。」

 

 攻略会議が終わり皆それぞれに会議場を後にする。

 

 

 「キリト!」

 

 私は思い切ってキリトに話しかけた。キリトは体をあからさまに硬直させた。

 

 「な、なんだ。ユカ。」

 

 思いっきり声がうわずってる。こちらを向いたキリトは顔が痙攣している。

 

 「もうだいぶ治った?」

 「...ああ。あの時は悪かった。もう大丈夫だよ。」

 

 カズは普通に誤ってきた。もう大丈夫そうだ。

 

 「よろしい。その代わり次あんなこと言ったら本気で怒るからね。」

 「ああ。もう言わないよ。」

 「今度なんかおいしいものおごりね。」

 

 カズはしぶしぶうなずいた様子だった。

 

 「ねえ。今回のボス戦、どうなると思う?」

 「そうだなぁ。...かなり厳しい戦いになると思う。危険度は25層以上だってアスナも言ってたし。はっきり言って25層の時だってヒースクリフがいなきゃどうなってたかわからないしなあ。」

 「やっぱりそうだよねえ。それにこの頃のアスナを見てると心配になってくるよ。」

 「たしかにな。なんていうか今のアスナは猪突猛進って言葉がぴったりっていうかなんて言うか。」

 「そうそう。この頃全然話してもないや。会議が終わってもすぐにギルドのメンバーとどっか行っちゃうし。」

 

 そうなのだ。この頃本当にアスナが忙しそうなのだ。時々ふらついたりしてるところも見られるし。ちゃんと寝ているのかな。今のアスナは第一層で最初にあったころに近いような気がするんだよね。

 

 「じゃあ、俺はこの後同じパーティーのエギルたちと話があるからまた明日な。」

 「わかった。また明日。遅刻するなよ!」

 「お前こそ早起きしすぎるなよ。」

 

 キリトはエギルたちのもとに歩いて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私たちは今ボス部屋の前にいる。攻略組の前に深紅の鎧で身を固めた一人の男が歩み出る。

 

 「諸君。準備はいいかな?このボスは25層以上に強いだろう。しかし諸君たちなら勝てると信じている。では、行こう。解放の日のために!」

 

 ヒースクリフは攻略組を鼓舞するとボス部屋の扉を開いた。

 それに合わして全員がボス部屋に突っ込んだ。

 

 

 私が最初に驚いたことはこのボスの大きさだ。事前に10メートル以上と聞いていたが、これは20メートル近くあるんじゃないのかな?いや、そう感じるだけか。

 ボスは全身を真っ黒な鱗で固めている。おなかの部分は鱗がなくて攻撃が通りやすそうだが、あの大きさだ。下に潜り込んだら踏みつぶされるだろう。HPバーは5本。...これは厄介そうだ。

 全員がボス部屋に入るとボスは咆哮を挙げながら突っ込んできた。攻略組は左右に分かれこれを交わした。

 

 「タンク隊は前へ。全員一か所には固まらずパーティーごとに散らばって。一か所に固まっていてはタンク隊以外は避けにくいわ。」

 

 アスナが指揮をとり始めた。全員アスナの指揮に従い動き始める。

 

 「アスナ君。最初は私が攻撃を引き受ける。」

 

 「了解。」

 

 そう言ったヒースクリフはボスであるドラゴンの前に飛び込んでいった。ドラゴンはヒースクリフに噛みつきにかかった。ヒースクリフはこれを盾で受け止め、右手に握った剣でドラゴンの顎を下から上へ剣で切り裂いた。

 戦いの火ぶたは切って落とされた。

 

 

 「まずドラゴンの足を狙います。ただ踏まれないよう下には潜りすぎないで。」

 

 アスナの指揮に従いまずキリトが突っ込んだ。ドラゴンの足に向けて片手剣ソードスキル・シャープネイルを叩き込んだ。三連続のソードスキルだ。その割に硬直時間の短い便利な技だ。私もキリトに続き、キリトとは反対の足を斬りつけた。そして回避。ドラゴンは私のほうに向かってきたがそれをタンクの人たちが防いでくれた。

 

 「スイッチ!」

 

 アスナが叫び細剣ソードスキル・リニアーを発動。目に留まらないスピードでドラゴンの目を貫いた。相変わらずのスピードと正確さだ。タンクの人がおびえてるよアスナ。これにはたまらずドラゴンも悲鳴をあげた。アスナに続きエギルが両手斧ソードスキル・ワールウインドを発動。ドラゴンの頭を下からかちあげた。

 

 「いま!足を狙って。」

 

 ここでアタッカーの三人のプレイヤーが足を攻撃し、ドラゴンは思わずその場に倒れた。

 

 「一斉攻撃。」

 

 転んだドラゴンを全員がソードスキルで斬りつける。ドラゴンは起き上がるまでに5秒ぐらいかかった。起き上がると同時に尻尾を振り回したが、この攻撃はヒースクリフによって防がれる。

 

 

 「もう一度足を狙い転倒を狙います!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アスナの指揮によりボス戦は順調に進んでいた。しかしアスナはこの結果に不安を覚えていた。確かにボスは強い。しかし順調すぎる。50層。25層の倍の階層。この階層はいわば折り返し地点。もっと厄介だと思ってたけど考えすぎだったのかな。

 ボスのHPバーの2本目が消えた。

 

 「グワアアアアオオオオオオオッッ!」

 

 その時ボスがいきなり咆えた。それも今までとは違う。

 

 「全員いったん下がって。」 

 

 アスナは全員に下がるよう指揮を出した。しかし、少し遅かった。上から何かが降ってきた。

 ダンッッ

 降ってきたのは新たなモンスターだった。ドラゴンとは対極の真っ白な鎧を身に着けた騎士。頭から足まで全身を鎧で覆っている。全長はおよそ四メートル。片手に鎧と同じで真っ白な剣を持っていた。HPバーは三本。その騎士の名前はザ・ホワイトドラグーン。

 まずいドラゴンと渡り合えていたのも団長の防御力が作戦の要でもあったのに。団長一人でドラゴンの攻撃から攻略組全員を守るのはいくらなんでも不可能だ。かといってあの騎士も一筋縄ではいかないはず。

 

 アスナが思考を巡らしている間に白の騎士は動き始めた。

 

 

 


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