私とカズは正真正銘双子だ。それは間違いない。しかしお母さん。現実世界にいるお母さんは本当のお母さんではない。私たちの本当のお母さんはもう亡くなっている。お父さんもお母さんと一緒に亡くなってしまった。
私たちは四人家族だったらしい。私たち双子が生まれて間もないころ交通事故にあい、両親はなくなってしまった。私たち双子は運よく助かった。身寄りのない私たち双子を母親の妹夫婦が引き取り、実の子のように育ててくれた。
私たちがこのことを知ったのは十歳の時。私とカズはパソコンを使って遊んでいた。その時、自分たちの名前をインターネットで検索したのだ。そこで十年前の交通事故の記事を見つけてしまった。そこには私たち二人と名前が同じ子供と知らない二つの名前の四人家族が交通事故にあい知らない二人の大人が亡くなったこと。そしてお母さんと同じ名前の女性が二人を引き取ったことが書かれていた。
このことをお母さんに聞いてみると、お母さんは本当のことを教えてくれた。お母さんは本当のお母さんではないこと。そして私たちの本当の両親はもう亡くなっていること。そしてそれを今まで隠していたこと。私たちが二十歳になったら本当のことを話そうと思っていたこと。
このことを私たちに話した後でもお母さんは私たちに変わらず接してくれた。でも、私たちは周りに壁を作ってしまった。特にお母さんの本当の娘、私たちの妹とは特に疎遠になってしまった。
カズは私に残された家族。両親を亡くしているという実感はあまりない。顔も覚えていないのだから。しかし両親を亡くしたという事実は知ってしまった。
カズは...カズだけはなくしたくない...
「そうだ。フレンドリスト。」
フレンドリストに登録したプレイヤーは今どこにいるか知ることできる。これでカズの居場所が分かるはずだ。
私はフレンドリストを開き、キリトの文字を探した。
「えっ...」
キリトの文字が見つからない。何度見直しても見つからない。この世界で死んだとしてもフレンドリストには名前が残るはずだ。
考えられるのはカズが私をフレンドリストから外したということ。
「ユカちゃん。」
風の音に紛れて私を呼ぶ声が聞こえた。声のした方に振り返ってみるとクラインとクラインのギルド風林火山のメンバーたちがいた。
「クライン。」
クラインならキリトともフレンド登録をしていたはずだ。私はクラインに詰め寄った。
「クライン!キリトとの。フレンド登録からキリトの居場所。分かる?」
「お、おう。ちょっと待ってくれ。」
クラインも右手を動かしフレンドリストの中からキリトの文字を探している。しかし、クラインのフレンドリストからもキリトの文字は見つからなかった。
「あの野郎。...フレンドを解消しやがったな。」
「そっ...か。」
「キリトはどうしたんだ?」
「...私が来た時には、ボスを倒した後だったみたい。キリトは転移結晶でどこかに行っちゃった。」
「そう...だったのか。」
寒い。雪と風のせいかは分からないが一気に体温が下がっていくような気がした。手足が震えている。
カズはどうしてあんなことをするんだろう。たしかに前から少し危なっかしいことをしていたけど、こんなに危険な自殺行為のようなことはしなかったのに。
クラインは泣きそうな顔をしている。
「ねぇ。クライン。キリトがこんな無茶なことをする理由知ってるの?」
クラインは暗い顔をして少し考え込んでから答えてくれた。
「ああ。まあユカちゃんになら話してもいいかな。あまり人に言いまわることじゃあないんだが。」
クラインの話によるとキリトは月夜の黒猫団というギルドに入っていたらしい。中層で活動するギルドだったようだがキリトが入ったことで最前線一歩手前まで成長したそうだ。しかし、ある時キリトとギルドのリーダーを除いたメンバーが死んでしまった。そしてギルドのリーダーも後を追うように飛び下りたらしい。そしてキリトはそのことに対して責任を感じているようだ。
「それで今回の蘇生アイテムに対して躍起になっていたらしい。だが、だからといってあの野郎こんな無茶しやがって。」
「でも、その蘇生アイテムって...」
「ああ。十中八九キリトの生き返らせたい人間は生き返らせることはできないだろうな。...現実世界で死んだ人間は生き返らせることはできないからな。」
「...うん。教えてくれてありがとうねクライン。」
カズにそんなことがあったなんて知らなかった。だからあんな顔してたんだ。これは私が何を言っても無駄なんだろうなあ。言いたくてもどこにいるかもわからないんだけど。
「私は街に戻るよ。じゃあね、クライン。」
「わかった...またな、ユカちゃん。」
こうしてユカのクリスマスは幕を閉じた。