「さー、今日こそは距離を稼ぐぞー!」
祭壇を広げたせいで池に落ちられず墜落死ってオチを避ける為、祭壇からまた滝を作って僕は下に降りる。しかもそこが池なので水の補充は簡単だ。正面にも湖があることだし。
「あ、サトウキビ」
地図からは外れるものの、湖畔にサトウキビを見つけた僕はフラフラっと寄り道し。
「うわぁ、微妙に登りかぁ。しかも森だし」
木々に邪魔をされつつ何とか森林を抜ければ、お次は谷。
「洞窟の入り口も見えるし、地図から外れるけど北に迂回しよう」
谷の先に見える雪の積もった山が次の目的地だ、もっとも。
「迂回したら中腹に洞窟の入り口があるとか」
出来れば山に登って周囲を見回したいが、ここで魔物と出くわすと拙い。右手はけっこう急傾斜の谷なのだ。しかも洞窟の入り口つき。
「んー、迂回をこれ以上すると完全に地図から外れるし、やむを得ない」
どうか魔物と遭遇しませんように。
「よし」
フラグ臭くあるなと思いちょっと警戒したが、入り口の上に登って念のために直進。
「うん、反対側から登――」
大事をとったつもりが、そこにはまた洞窟の入り口が。
「ちくしょーっ!」
魔物は居なかったが慌てて引き返し、頂上に登るべくつるはしで岩肌を崩して足場を作る。
「あ」
昨日壊れそうと評したつるはしが逝った。
「ありがとう、さようなら……」
壊れた道具に感謝の気持ちを抱き。
「あ、石炭。うん、たいまつ作って減ってるし、補充ぐらいしても良いよね?」
たぶんちょっと欲を出したのが拙かったのだろう。
「おっけー、さ、あとは登るだ、けぇ?」
石の階段を絶壁に作り、回り込んで登った先に待ち受けていたのはぽっかり口を開けた洞窟。
「ちょ、何でーっ?!」
慌てて引き返し、足下に石を積む。
「はぁ、はぁ、はぁ、あ……」
今度こそ辿り着いた山頂。そこから眺める景色にあったのは。
「海だ。あと、カボチャ」
ただ、前回の船旅があるからこそ知っている。この海が拠点のちかくにあったあの水辺に繋がっている可能性は低いと。
「とりあえず、目印、次はバケツの水で降りてカボチャの回収かな」
カボチャランタンはいいものだ。明るいし、通常のカボチャ同様にゴーレムの頭部パーツにも使える。
「ひゃっほー!」
そして僕は山を流れ落ちる。
「あ」
何だか水の大半が洞窟の入り口の上に落ち、中に注ぎ込まれて行くのが見えたが、この状況ではどうしようもない。
「しーらない、っと」
どうせ溺れる者が居たとしても魔物だ。
「それよりカボチャだ! カボ……って、遠っ」
山頂から見た時はそんなに離れているように感じなかったと言うのに、地図で見ると山から明らかに東北へ地図を突き抜けた位置にその群生地はあり。
「はぁ、けっこうな寄り道になっちゃった。えーと、地図を見る限り、北東の端は海を渡った島のもう一つ先の島辺りかな」
最も南の端がギリギリ引っかかるぐらいだが、手前の島には嫌な感じがする。
「感じというかこんもり盛り上がってていかにも洞窟有りそうだし、奥の島の方が視界開けてるからなんだけど」
おそらく、今日の冒険はあの島で終わりになるだろう。気づけば、太陽がかなり陸地に近い。
「んー、ボートは回収めんどくさいし、泳ごう……」
距離だってそんなにない。僕は海に飛び込むと、すぐに一つ目の島に上陸し。
「わ、予想通りか」
右手に見えたのは、洞窟の入り口。当然ながらそのままスルーして先に進む。
「再びだーいぶっ!」
僕は誰に言っているのか。焦りから来る現実逃避か。ともあれ、何事もなく目的地には着いた。誤算があったのは、別のこと。
「んー、地図によると……あ、島の先っぽが入ると思ったら、これ海から生えた木がギリギリはいるくらいだ」
とは言え、もう日は暮れていて、時間はない。
「今日は木の上が寝床かな」
樹上の葉を取り払って丸石を敷き詰め、たいまつを置けば、一晩過ごすだけの場所としては充分だ。
「ふー、ちょっと凝りすぎたかな」
出来上がったのはランタンを二つ、たいまつを二本灯した石造りなオープンすぎる樹上の寝室。
「おやすみなさーい」
あまり大声では下をうろついてる匠に気づかれる。誰に出もなく小声で言い、僕は目を閉じた。
くっ、戦闘も大きな発見もないとここまで短くなるのか……。
うーむ。
次回、十日目に続きます。