マイクラの世界で   作:闇谷 紅

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ああ、そうだ。

このプレイで使用してるシード値晒しておきますね。

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・六日目

「さてと、カボチャの回収と……あーっ、麦が実ってる」

 

 麦の方は小麦が回収出来そうなのが三つ種をまいた内の一つだけだったが、農園の中のカボチャは複数。

 

「このカボチャはランタンにしよっと、それからこの農園ももうちょっと広くしたいよね……あっ」

 

 青空が何度か覗いたのは、きっと仕方ないと思う。

 

「んー、ここも拡張限界なのかな」

 

 やはり、巣立ちの時は近づいているのか。

 

「とりあえず、出城じゃなくて、移動用の中継拠点を作る場所の目星だけでも付けとこうかな……もしくは割と安全な海に船で漕ぎ出すとか」

 

 地図はあるし、ランタンを目印にしておけば、そう遠出しない限り迷う可能性は低い。

 

「よし、とりあえず、海まで行くルートの確認をしてこよう」

 

 中腹からも海は見えるが、本格的に船出をすることをここまで考えていなかったので、海辺に降りるルートは全く未確認だった。

 

「えーと、木材はあるから先に船を作っておいても良いよね」

 

 木材なら荷物を圧迫するので樫の板を64枚チェストにぶち込んでるくらいなのだ。

 

「よーし、船完成。さー、下見だ、あ?」

 

 外に出て、下を見た僕は言葉を失う。

 

「海、案外近いわ」

 

 最初に木を切り出した湿地の横、ドアを出てすぐ右の下の方に見えた湖だと思ったモノは海の一部だったらしい。

 

「これだと、湿地と海辺の間にランタンで灯台もどきを作るか、湾みたいに陸地に食い込んできてるこの水地の出口に灯台を建てるかの二択になるよね……」

 

 外海から見る場合を考えるなら、おそらく後者一択だ。

 

「問題は建設への所要時間、かぁ」

 

 後者なら、ここに戻ってくるまでがけっこうかかってしまう。往復すればそれだけ作業時間も削られるのだ。

 

「んー、行ってから考えるかなぁ。丸石結構あるし、最悪生け贄の祭壇作れば夜もしのげるし」

 

 案じるより産むが易し。急斜面を駆け下り、相変わらず海辺に居た二匹の羊から羊毛を頂いた僕はそのまま海にダイブする。

 

「うわっ、深っ」

 

 勢い余って少し潜ってしまったが海底は深かった。あとでっかいイカが泳いでいるのも見えた。

 

「ぷはっ、灯台は……あそこの……木の生えてる所かな」

 

 せっかくだから切り倒して材木にして幹の有った場所に石の柱を立てれば、消える前の葉っぱを足場に安全に降りられるだろう。蔦も生えてることだし。

 

「はぁ、はぁ、意外に遠かった」

 

 湾の一番広いところを縦断したのだから、呼吸が荒くなるのも仕方ないと思うが、こんなに泳いだのは、サトウキビを採りに行った時以来だ。

 

「……うん、よく考えたら泳がなくても船、と言うかボートあったよね」

 

 だから、木に斧を入れるまで作った船のことを忘れていたのは仕方ないと思うの。

 

「ちくせう、こうなったらこのまま海に出てやるっ! ボンボヤージュだーっ!」

 

 勢いとは魔物かも知れない。ボートを海に浮かべると、僕は地図を片手にまず陸地にそいながら左手側に梶を切り。

 

「早っ、凄っ、んー、やっぱり移動は船だなぁ」

 

 飛ぶように流れる風景。殆ど空白だった地図が時間を代償にしてどんどん埋まって行く。

 

「へぇ、ここも湾になってるんだ。あ、あっちには洞窟がある……けど、人工物は皆無、っと」

 

 時折陸の近くに浮いている睡蓮の葉や泳いでいるイカとの接触事故を避けつつ、僕は船を進ませ。

 

「あ」

 

 夢中で進んでいたツケは遅れてやって来た。

 

「太陽が、もうあんなとこまで……」

 

 夕暮れ、タイムリミットと言い換えることも出来る。

 

「今から陸地に戻って安全地帯を作るのは難しいよな」

 

 海の上なら海底神殿の付近以外に魔物は居らず、この場合、陸地を離れて船上で夜明けを待った方が安全であるとゲーム上の経験で僕は知っている。

 

「うーん、魔物に襲われにくいのを利用して夜通し船を走らせて地図を埋めるのも手なんだけど」

 

 障害物に気づきにくい夜は座礁や浮遊物との接触事故によって船を壊し、海に投げ出される危険性も増大する。

 

「くっ、悩ましい」

 

 暫しオレンジ色の光に染められつつ唸った僕は、結局夜の海を船で進むことにした。いや、引き返すと言った方が正しいか。まだ船で乗り入れ可能な水地は残っていたモノの、陸地の近い明らかな川で魔物の湧く夜の侵入は躊躇われたのだ。

 

「問題ない、問題ない」

 

 それでも念を入れ、陸地からは相応に離れて船を進めつつ、呪文のように繰り返す。

 

「問題……あ」

 

 そして、どれ程進んだことだろう。僕の視界に二点の明かりが見えた。

 

「あれは」

 

 一つは言わずと知れた石柱にカボチャランタンをのっけただけの灯台。そしてもう一つは。

 

「たいまつもあれだけ一箇所に集めると明るいなぁ」

 

 そう、山の頂上に設置した目印の明かりだった。

 

「戻って、来たんだ」

 

 まだ夜は明けず、魔物が跋扈する陸地にあがる事は能わなかったが、数日かけてよりよい住処に仕様と努力した場所がそこにはある。

 

「え? 中腹の湧き潰し?」

 

 海から見ると山を挟んで反対側の斜面ですが、何か。

 

「それはそれとして――」

 

 夜明けまでにはまだ時間がある。今日の航海で地図も右下の四分の一強が埋まったが、入り江を出て右側はまだ船を進めてない場所であり。

 

「海が埋まるだけでも今後の行動指針になるからなぁ」

 

 ただ朝を待つより、地図を埋めるべし。僕は入り江に向いていた船首を左手に向ける。

 

「行こう、新たな発見を探しに」

 

 むろん、安全第一出だが、僕はこの決断をすぐに後悔することになる。

 

「あ、エンダーマンだ。あいつとは目を合わせないようにしないと……って、げっ、魔女まで」

 

 真っ黒な細身ののっぽは普段ブロックを勝手に動かし一人遊びをしているが、目を合わせると敵対して襲いかかってくる瞬間移動能力を持った強敵。魔女は遠くから様々な効果を持つポーションを投げてくる厄介な敵。気づけば広い川のように左右に陸地のある地形に進んだ船は厄介なモンスターの居る陸地に挟まれた。

 

「ポーション投げの射程ってどれぐらいなんだろ」

 

 水に隔てられ直接攻撃は届かないが、間接攻撃なら当たったっておかしくはない。

 

「もう少し、距離を置いて……って、あ、これは」

 

 魔女の居る岸から離れつつ、一方でエンダーマンの居る側の岸とも接触しないようにしなくてはと振り向いた俺の目に飛び込んできたのは、四角い建造物と、ピラミッドの様なモノ。

 

「砂漠の神殿、ここだったんだ」

 

 思ったより水辺に近かったその建造物はこのまま船を寄せれば辿り着くのも容易だ。

 

「探索する気ゼロだったんだけどな」

 

 近くまで来てしまうと少し迷う。

 

「うん、今は保留で」

 

 一応、船はまだ先に進めるし、日が昇る兆しもまだない。帰るにしろ探索するにしろ、太陽が出るまで上陸は無理なのだ。

 

「もっとも、川幅が狭いからこの先に海が広がってるってのは期待薄だけどね」

 

 反対側は最後に入り江になっていて、僕はそこで引き返した。だから、海だと思ったら結局でっかい湖だったってオチは充分考えられて。

 

「あー」

 

 案の定だった。いや、正確には川らしきモノは続いては居た。だが、座礁必須の極細の川へと変わっており、船で進むのはまず無理だろう。

 

「はぁ、船上で月でも見るか」

 

 もしくは岸に居る魔物を眺めるか。

 

「おー、スケルトンが狼に追い回されてる」

 

 結局後者を選んだ僕の視界の中で、弓を持った人骨はたまらず水に飛び込み、狼が後を追って飛び込む。

 

「あっちゃー。水に浸かってると日光浴びても死ななくなるんだよなぁ、しかも飛び込んだ場所、何気に神殿の前だし」

 

 これでは、朝になっても神殿への上陸は難しい。

 

「狼に期待しようにも水の中じゃ思うように進めないみたいだし」

 

 嘆息しつつ、空を仰げば月はまだ真上にあり。

 

「早すぎるのも考え物かぁ。こっち来るって決めてから殆ど時間経過してないんだ……」

 

 こうなってはお月様見物くらいしかすることがない。

 

「しっかし、船の機動力を活かして村を探すって案もこれでおしまい、か」

 

 右下中心にかなり地図は埋まったが、左上は山頂から見た限り陸地であり、船は使えない。

 

「その陸地の向こうに海がある可能性までは否めないけど……ん? って、ちょ」

 

 のんびり考えていたら何時の間にやって来たのか船縁にふれそうな場所にスライムが浮かんでいて。

 

「何でスライムが泳げるんだーっ!」

 

 慌てて逃げ出した僕が以前木を切った湿地にたどり着くと、いつの間にか朝日が昇り始めていた。

 

 




次回、七日目ってもう一週間かぁ。


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