マイクラの世界で   作:闇谷 紅

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・四日目?

 

「さー、今日も掘り進むぞー!」

 

 さわやかな目覚めだった。やっぱりベッドは良い。睡眠はよい。このまま惰眠を貪りたい気持ちを吹き飛ばす為、僕は声を上げて上体だけ起こした姿勢のまま、拳を突き上げる。

 

「えーと、確か採掘を始めるには適した深さがあったよなぁ」

 

 最初から持っていた自分の居る高さを教えてくれる地図を片手に梯子の場所まで居りながら、うんうん唸る。

 

「10だったっか、15だったか……んー中間をとってひとまずは13くらいで良いかな?」

 

 そんなことを考えていた時期が僕にもありました。。

 

「NOOOOOOぉ!」

 

 だが現実は思惑を裏切る。下に掘り進み、実際地図が13の高さを教えてくれたところで、僕は頭を抱えて叫んだ。

 

「何で鉄鉱石より先にレッドストーン鉱脈ぅ?!」

 

 鉄以上のグレードのつるはしでしか採掘出来ない鉱石との狙い澄ましたかのような出会いであった。

 

「お、落ち着こう。横に掘り進んで鉄鉱石を探せば良いんだ」

 

 ひとまず、触ると光る赤い鉱石の周囲を掘って小部屋を作り、ここをスタート地点と決めた。

 

「あ、上まで戻るのも面倒だし、この部屋に作業台とかも作っておいておこう」

 

 チェスト二つを合わせた大きな箱と、作業台、鉱石をインゴットにする為の竈。全部体積節約の為あしもとを掘ってはめ込み式にする。

 

「これでよーし。後はどっちの方角から掘るかだけど……鉱石の無い側の方が良いような気がする」

 

 レッドストーン鉱石が露出してるのは、梯子を正面に見て、左手の足下。

 

「四つ掘ってたいまつ立てて、四つ掘ってたいまつを~♪」

 

 謎の即興歌を作りつつ分岐二つ分まずは直線に掘ってみたところ。

 

「い、やっったぁぁぁ! 鉄だぁぁぁぁ!」

 

 やぁ、とばかりに顔を出した鉄鉱石に僕のテンションはぶっ壊れた。

 

「ああ、これで羊毛の為の無益な殺生や、危険な水辺に出向いて畑を作る必要ともおさらば……」

 

 ついでに言うなら、レッドストーンと鉄からコンパスが出来るので、迷子の可能性だって減る。

 

「が、落ち着け、落ち着け僕。掘ってみないことにはまだ埋蔵量が……」

 

 とりあえず、見えているのは前方と足下でブロックにして二つ分。これで終わりだとすれば、鉄のインゴット二個で作れる道具が一つ出来るだけだ。とは言え、黙って眺めていても始まらない。

 

「よし、掘ろう」

 

 僕はつるはしを手に近寄り。

 

「一つ、二つ、み……うわぁ」

 

 掘れば掘る程次々に顔を出す鉱石に思わず声を上げる。

 

「凄い大鉱脈だ」

 

 全て取り終えて数えれば鉱石は14個もあった。早速設置したばかりの竈に放り込んで、鉱石を掘って出来た小部屋を更に奥へと掘り進むと、次の分岐を掘る予定の場所に石炭が顔を出す。

 

「って、こっちの石炭鉱脈も……大きい」

 

 夢中で掘れば、鉄鉱石を掘って出来た部屋が更に大きくなり、隣の通路にくっついて一体化する。

 

「しかも、その通路を掘ったらまた石炭鉱脈とか。今度は小さ……って、嘘、また鉄鉱石出てきた」

 

 結果的に追加で手に入った鉱石は六つ。だが、充分すぎる量でもあった。早速燃料の石炭が残っていた竈に鉱石を放り込み。

 

「つるはし、バケツ、ハサミ……少し残ったけど、どうしよう?」

 

 防具を作るか、必要に駆られたときのためにとっておくか。

 

「うん、防具も良いけどひとまずしまっておこう。まだ竈に溶かしてる鉱石もあるし」

 

 鉱石を掘った場所も部屋としては歪すぎる。

 

「目印兼湧き潰し用のたいまつももう在庫がないし、量産して、さっきの部屋もちょっと整えないと。大きすぎる部屋を作るとスライムが湧くって言うから、場合によっては埋め戻しも考えて――」

 

 高低差を丸石で埋めて消し、通路のように蛇行して伸びたところも埋め。

 

「けど、ここってまだ延長してない手前の通路とくっつきそうなんだよなぁ」

 

 鉄鉱石と石炭の発見で浅く掘ったのみで手つかずだった通路が気になった僕はそちらの延長作業にかかる。

 

「あ、エメラルド」

 

 そこで足下に顔を出した緑色は、この世界ではお金のかわりになっている鉱石。

 

「交易に使うんだけど村人が居ないとただの綺麗な石なんだよなぁ」

 

 他にも使い道があったかも知れないが、確か僕は使ったことがなかったと思う。

 

「けど、本当に運がいいよなぁ。何もないと、いいけどぉ?!」

 

 ほくほく顔で引き続きつるはしを振っていた僕の一言はフラグだったのだろう。大きく崩れた岩の壁。飛び込んできたのは光と熱気。

 

「ちょ、溶岩っ」

 

 幸いにもこちらの通路の方が高く、流れ込んでくることは無かった、ただ。

 

「まさか……うわ」

 

 溶岩の手前、崩した壁の向こうに少しだけ有った足場に降りて左を見ると、続く横穴。

 

「さっそく、とか」

 

 洞窟との貫通。溶岩の側だったのは、かえって運が良かったのかもしれない。魔物の姿は目視出来なかったが、僕が通った壁の穴は放置出来ない。

 

「はぁ、全滅、かぁ」

 

 慌てて引き返し、壁の穴を埋めつつ、嘆息する。洞窟は、横棒の多いアルファベットの「F」の様に僕が掘った通路の縦棒と平行に走っていた。鉱物を求めて掘った横道は、延長すれば全てがあの洞窟と貫通するだろう。即ち、あれ以上掘り進めない。

「溶岩の池で行き止まりになっていたっぽいし、梯子の正面から真っ直ぐ掘り進めば、少なくともあっちとくっつくことにはならないとは思うけど」

 

 とりあえず、同じ高さで洞窟が走ってることが確定した以上、油断は禁物だ。禁物だと思ったのに。

 

「あ」

 

「う゛ぉー」

 

 引き返し、三つ分岐が作れる程梯子の正面を掘り進んだ僕は壁を掘り抜き。洞窟に繋がった穴から見える、変色した肌。形容しがたい悪臭。

 

「おじゃましました」

 

 ゾンビとニアミスした訳だが、こっちに気づかれず本当に良かったと思う。

 

「あちゃーこっちも駄目かぁ」

 

 丁度丁字路になる形で洞窟とぶつかったのでもう一つの洞窟と繋がっている可能性もあるが、これはひょっとしたら潮時と言うことか。

 

「元々この拠点と坑道は出発の準備用のものだもんね」

 

 防具と道具一式、資材に食料がある程度用意出来れば、ここを離れるのだって一つの選択だ。

 

「せっかくここまで掘ったんだし、ダイヤモンドとかも欲しかったけど、欲をかくのって典型的な失敗パターンだしなぁ」

 

 少なくともハサミとバケツ、鉄のつるはしは手に入った。

 

「名残惜しいけど、ゾンビの声がする場所での作業って精神的にもくるものあるし」

 

 そろそろ農業へ移行しよう。

 

「バケツよーし、シャベルよーし」

 

 第一目標は土と水の確保。砂とサトウキビが手に入れば、紙と砂糖が作成出来出来るようになるのでなおよし、ただ。

 

「あ、羊だ。ハサミもあるし、羊毛を刈っていこうかな」

 

 ドアを開けて外に出た僕は、山をこっちに向かって登ってくる羊を見つけてしまい、羊毛の誘惑に負けた。

 

 もっとも、このまではまだいい。

 

「ふぅ、二つ目のベッドにはまだ遠いけど……え?」

 

 羊の毛を刈り終え、それを見た瞬間、第一目標を忘れた。

 

「サトウキビーっ!」

 

 以前木を切った湿地の右手、大きな湖の対岸にそれを見つけた僕はためらいなく湖に飛び込み、泳ぐ。

 

(紙が有れば、前に手に入れた皮とで本が作れる。僕の僕の日記ーっ!)

 

 そう、ねんがんのにっきにまた一歩近づけるのだ。

 

「ふふ、ふふふ……やった、対にてに入れたぞ。サトウキビと栽培用の、砂」

 

 泳ぐついでに水も汲み、がっつりとは行かないまでも土もある程度シャベルで確保した。

 

「さーて、帰って拠点内農園を……あ、羊」

 

 結果的にもう一箇所寄り道してから僕は拠点に戻り。

 

「んー、寝室と農園が同じ部屋はちょっとなぁ」

 

 地下に作るかとも考えたけれど、上り下りが面倒と言うこともあり。

 

「隣に部屋を設けるかな」

 

 その後、つるはしを振るって小部屋を作ろうとした僕は壁を堀り抜いて空を見て埋め戻し、気を取り直して土を入れる為にあしもとを掘って石炭を見つけ。

 

「石炭はひとまずスルーしよう。とりあえずは麦とカボチャを撒いて……うーん、思ったより小ぢんまりとした規模になっちゃったなぁ」

 

 おそらく、壁を堀り抜いたことで自重したからだろう。結局、サトウキビ栽培用のスペースもまだ確保出来ていないし、カボチャの種も手元に余ってしまっている。

 

「これは水を汲んできてもう一部屋、かなぁ?」

 

 ドアから外を見るとかろうじて麓におり水を汲んでくるぐらいの時間は残されていそうな明るさだった。

 

「あ、水辺に羊がいた気がするし、場合によってはもう一回くらい毛も刈れるかも」

 

 旅をするならベッドの材料は幾つか持っていた方が良い。

 

「とっとっと、っとぉ」

 

 先日は降りるのも怖かった急な傾斜を滑り降り。

 

「メェ~」

 

「あ、もう毛が生えてる」

 

 あり得ない早さで復活してる羊の毛にゲーム仕様というファンタジーを感じつつ、僕は羊の毛を刈ると、水を汲む。

 

「さ、後は戻るだけ……って、あっちが西側か」

 

 滑り降りてきた場所は登れず、迂回して中腹への登山を始めた僕は沈み始めた太陽に今更ながら方角を知る。

 

「はぁ、ただいま~。割とギリギリだったぽいなぁ」

 

 綺麗な夕焼けに目を奪われている余裕もなく、再び拠点に戻った僕は地下に降りる階段の向こうにもう一部屋設け。

 

「ふぅ、サトウキビ栽培部屋も完成っと……あ、雨か」

 

 揺れるたいまつの明かりに照らされながら地面を叩く雨と遠くに見える夜の闇を見つめ、腹を満たす為持っていた牛のステーキを食べ始めるのだった。

 

 




ステーキを食べた後、主人公は寝た模様。

尚、地下での作業の間に次の日になってしまい、二日分になってる可能性があるので今回はサブタイトルに「?」つけておきました。

そして、以下が拠点1階の構造になります。

拠点1F(壁に設置したたいまつは非描写)

  扉
□□□□箱箱
□□□□□□ □麦麦
□□□竈作□ カ□□
□□火□□□ □ カ□
□□□□□□□□水カ□
□寝台□□□ カ路カ□
□□□□□□ □ □
   □□□ □灰麦
下への階段□
     □
   □カ□カ□
   □□火□□
    水 路
   □サササ□


作:作業台
火:たいまつ
カ:カボチャ
灰:石炭
サ:サトウキビ

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