「うわぁぁっ?!」
いきなりガチャッと扉が開き、駆け込んでくる村人。
「って、外にいたの?!」
こっちとしては外が危険だから家の中にいるというのに。まだ外だって暗く魔物が湧いている時間帯だ。こっちとしてはひたすら頭が痛くなる。
「仕方ない、外に出よう」
この調子で外を村人がうろつく様では、外でゾンビに出くわした村人がそのまま屋内に魔物を連れて来かねない。
「それだけは避けないといけないもんね」
「う゛あー」
覚悟を決めて外に出れば、正面にある家の外を壁沿いにぐるぐる回るゾンビと、食い散らかされた羊たちの残骸。
「くそっ、ゾンビめ」
惨たらしい殺戮の犯人はさっきの狼だと思うが敢えてそこはスルーする。
「いくぞっ、たーっ!」
僕の勇気が村を救うと信じて、石の剣を振り上げ動く腐乱死体へ挑む。
「これで、トドメだっ!」
「う゛おぼ」
何度剣を振るったかはもう覚えていない。吹っ飛んだゾンビは動かなくなり。
「次は……って、厄介なところに」
周囲を見回すと村の中央にある屋根の上に立つ人骨が沈みつつある月の光に照らし出されていた。
「ん? 沈みつつ? あ」
訝しんだ次の瞬間でもあった、スケルトンが燃え上がったのは。
「夜明けだ……やった、勝ったんだ!」
村を守り通した。僕が迂回した高山の中腹に緑のリフォーマーが二体ほど佇んでいたが、距離があるからそっちはスルーで良いとして。
「とりあえず、アイテム回しゅ……羊の供養をしてあげなきゃ」
これでベッドが作れるのだから。
「あとは祭壇もどうにかしないとなぁ。スケルトンとか村人の通行妨げになってた滝の部分は確実に」
やらなければ行けないことは山程ある。その中でも最初に取りかかったのは、この溢れ出た水の問題で。
「とりあえず、丸石で囲って噴水に……よし」
「はぁん」
水浸しの地面を減らすため石で囲えば、嬉しそうに近づいてくる村人。
「あー、水浴びでもするの」
「はぁん、はぁがぼっ、がばっ」
「ちょ」
水浴びでもするのかと背中を向こうとした瞬間、やつは滝を登り始めた。
「やばっ」
そのまま祭壇の上から転落死というオチを連想した僕は慌てて村人を追いかけ、追い越す。
「間に合えっ」
空手をバケツに持ち替え、滝の源泉を回収。
「ふぅ、危ないとこ……え?」
残った水と一緒にゆっくり降りて行く村人を見て安堵の息をつこうとしたが、そこには何もなく。
「……き、きっと僕の勢いに押されて滝登りを止めてどっかに行ったんだよ!」
きっとそうに違いない。うっかり滝から突き飛ばしてしまったとかそんなことはきっと無いのだ。
「あ」
だから、残った水に飛び降りた直後、同じ紫の服を着た村人を見かけた僕が少しだけホッとしてしまったのは別の理由に違いない。
「ふぅ、とにかく……祭壇の水も撤去したし、次の作業にかかろう。えーと、この噴水は石を利用して新しい家でも作るかな? それと――」
最優先でやるべきは、屋根の上の湧き潰し。上からゾンビや匠の降ってくる家なんて僕は住みたいとは思わない。ついでに魔女やスケルトンに湧かれれば一方的に攻撃を喰らうハメになる。
「土は手持ちにないし、丸石で登ろうかな。梯子は村人が登ってきて落下事故やらかしそうだし。その前にランタンも補充しなきゃだけど」
村の外れに携帯していた作業台を置き、チェストを二個作って近くに置く。
「これで竈も有れば屋外作業スペースってとこかな」
やるべき事も多いが、僕は充実していた。もう一人じゃないのだ。
「さーて、何から作ろっかなー?」
「はぁん」
見上げた空は青く、太陽もまだ登りだしたばかりだった。
短くてすみません。
プレイ反映型のマイクラの世界で「村探索編」はこれにて終了。
一応、お話の設定の方も完結扱いとします。
続きをどうするかはまだ決めてませんが、村人に日本語話させるなら独自設定扱いになるでしょうし、別のお話として始めることになるかなぁ?
ともあれ、ご愛読ありがとうございました。