マイクラの世界で   作:闇谷 紅

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・二十二日目「ナニコレ」

 

「おはよーございまーす」

 

 とりあえず、声をかける相手が居なくて寂しいので、太陽に挨拶してみる。

 

「さーて、下はどうなったかなぁ? えっ」

 

 下を見ると燃えてるゾンビが二、三体、匠は足下に三体他数体。

 

「ナニコレ」

 

 完全に殺りにきてませんかね、この布陣。

 

「お、落ち着こう。まだこっちには気づいてないし、飛び降り次第ダッシュすれば逃げられはするはず」

 

 ついでに言うなら匠は水に触れてる時は自爆出来なかった気もする。降りるのに使う水を流用すれば返り討ちに出来るかもしれないのだ。

 

「ふふ、くくく……オッケーこの挑戦、受けたっ」

 

 バケツをひっくり返し、降下地点を作る。朝方からクライマックスだがやむを得ない。

 

「いざっ! って、あ」

 

 飛び降りようとする直前僕は見た。ピンク羊だと思ったそれが豚であったのを。

 

「と、っと、たわぁっ! はぁ、危なかったぁ……けど、いきなり急いで降りる理由が消失した件」

 

 どうすればいいのだろう、、この形容しがたい心のモヤモヤは。

 

「んー、羊の誘導するにも匠は邪魔だけど、防具無しであの数は……いや、一度は覚悟した訳だしうむむ」

 

 僕に迷いが産まれたのは仕方ないと思う。数が数、全部の匠を爆破させずに切り抜けるのは、おそらく不可能だ。

 

「柵被害が出たらこれまでの苦労がなぁ」

 

 今居る寝台は飼育場所の真横にあり、一匹だけ保護したピンク羊の囲いは今居る寝台を挟んで飼育施設の反対側。寝台の柵は西側のみ設けていないので、柵を巻き込まないことを前提にすると必然的に逃げられる方向は西に限られる。

 

「うー、ええい、ままよ!」

 

 このままでは埒があかない。僕は意を決して飛び降り。

 

「うわーっ!」

 

 叫びながら一気に駆け出す。

 

「って、やっぱ追ってきますよねー」

 

 振り返ると「どこいくのー」とばかりについてくる緑ぃ生き物が二体ばかり。

 

「やられてたまるかぁぁぁっ」

 

 斜面を駆け下り、川に飛び込んで、泳ぐ。

 

「ぷはっ、はぁはぁ……中州があって、助かった……」

 

 目の前の砂地に上陸すると振り返り。

 

「逃げ切った、かな」

 

 恐る恐る振り返ると、そこに匠の姿はなく。

 

「ふぅ、問題はこれからどうするかだけど」

 

 戻ればまだ自爆魔はあの場所に居るだろう。

 

「んー、豚じゃなくてピンク羊だったら無理に戻っていたんだけど」

 

 死闘を演じて火薬を手に入れても今の僕には使い道がない。

 

「重火器とか作れるなら話は変わってくるんだけど」

 

 砲台を作る技術力は僕にはない。

 

「となると、草原を大回りに迂回して様子を見ながら、伐採作業ってところかなぁ」

 

 飼育場所の柵にかなり消費した木材を何処かで補充する必要がある。

 

「一本、二本、んー、こんな所かな……あ、やっぱりまだ居る」

 

 あくまで主目的は偵察。南側に移動し、こんもり盛り上がった小山というか小さな丘のような形状の地形に生える木を間引きしつつ、逃げてきた先を見れば、佇む緑の自爆野郎。

 

「川沿いに進んで南側に回ろうかな」

 

 当初の計画通りだ。途中で川辺に生えてたサトウキビを斧で回収したが、別に甘いモノが欲しかった訳じゃない。

 

「地下農園にサトウキビ畑も作らないといけないからね」

 

 しかし、僕は誰に向かって説明しているのだろう。

 

「さてと、問題はここから……祭壇から見た時、こっちにも居たん……居た」

 

 離れているから各個撃破出来る位置取りではある。

 

「むぅ……あ、バケツの水組み忘れてる」

 

 そして、まさかの敵前逃亡とは誰が思おうか。

 

「ふぅ、水確保。あれ?さっきのクリーパーどこに行っ」

 

「シュー」

 

「ちょっ」

 

 まぁ、その川辺で再会するとかも思ってなかった訳なんですけどね。

 

「せいやぁ!」

 

 反射的に斧を振れたのは幸いだった。

 

「あ」

 

 だが、(クリーパー)任務了解モード(じばくシークエンス)は解除されず、吹っ飛んだ先で生じる爆発。

 

「わぁ、クレーターが出来ちゃったぁ♪ アイテム、アイテム~♪」

 

 散らばる麦の種と土を回収し、口を閉じた僕は嘆息すると「なんかごめん」と謝った。誰に向けて謝ってるのかはわからないが、謝った。

 

「……柵とか全く関係ない場所だったのはせめてもの救いだけど」

 

 クリーパーはまだ数匹残っているはずで。

 

「考えてても仕方ない。何匹残ってるかだけでも確認しておこう」

 

 頭を振ると、恐る恐る飼育施設に近づき。

 

「あれ?」

 

 祭壇の根本に辿り着くとあれだけ居たクリーパーは一匹も残っていなかった。

 

「肩すかし……って言いたいところだけど、あいつ保護色だからなぁ……火薬とか使わないモノも手に入っちゃったし、一度家の方に戻ろう」

 

 これ以上クレーターが増えると、羊の誘導に支障をきたす。僕は柵の羊たちに背を向けると山を登り始め。

 

「ただいまー」

 

 何だか久しぶりな気がする第二拠点。

 

「まずは荷物をしまって、次は農園のチェックかな?」

 

 火薬他要らないモノを放り込むと僕はチェストを乗り越え地下に向かった。

 

「カボチャは三つ、麦は七束かぁ、順調順調」

 

 ほくほく顔で収穫を終えるも、ちょっとだけ遠い目をする。

 

「麦の種だけはここで取る意味ないくらい草原で回収しちゃったけどさ」

 

 ついでなので畑をもう二列程拡張してから梯子を登り。

 

「次は地下三階の作成かな」

 

 育てる作物が縦に長く成長するサトウキビと言うこともあって高さが居るのが難点だが、他の階と比べて部屋の高さを多くとれば良いだけのこと。

 

「よーし、だいたいこんなモノかな?」

 

 途中でつるはしが折れるアクシデントはあったが、作業は概ね上手く行き。

 

「上から水が滴ってるのがちょっと気になるけど、上も畑だからなぁ」

 

 部屋の天井を高くしたことで上の階の床が薄くなったこともある。

 

「そろそろ夜だし、今日はもう休もうかな」

 

 つるはしを折って新しいつるはしを作りに梯子を登り寝室に戻ると、窓の外い見えたのは真っ赤な夕焼けだった。時間経過を考えれば、日が沈んでいてもおかしくはない。

 

「あー」

 

 そして、寝室に戻れば案の定。

 

「明日は魔物、大量に残ってないと良いなぁ」

 

 今日のようなことがないように、ベッドに入った僕は祈りつつ眠りにつくのだった。

 




まぁ、拠点整備中だから当然なんだけどさ、いつ村の描写出来るのかしらん?

プレイデータのコピーを作ってそっちをピースフルで動かせば時間経過を考えずじっくり村を観察出来るってようやく思い至ったのに。

次回、二十三日目

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