「よーし、朝だーっ!」
ドアの外に魔物の影はない。だが、油断は禁物だ。
「こういうのが窓のない家の欠点だよなぁ」
安全確認が出来ない以上、走って外に出て距離をとるしかない。出来たての拠点を爆破されるなんて真っ平だ。
「よーし、匠の影は無し、かぁ」
外に出るだけなのにつくづく心臓に悪いと思う。念のために家の横の階段から屋根に登って魔物の姿がないことを確認すると、昨日石を切り出した場所に石の階段を設置する。
「ふぅ、次は河原に砂採りかな」
砂を竈で熱することでガラスが作れるのだ。窓ガラスはこのガラスを作業台で加工して作る。
「出来れば農場も作りたいけどなぁ」
羊肉がある今、食料はもう少し後で良い。
「砂、砂~♪ あれ? これは……掘り下げるしかないかな」
ただ、河原に降りてみると砂地は意外と少なく。やむを得ずスコップで穴を掘った。もちろん、登れなくなるなんてアホな真似はやらかさない。
「ふぅ、64の35で……99個か。これだけあればガラスの材料は良いや」
あとは湧き潰しの範囲を広げながら家に戻って焼き羊肉のかわりに竈へ砂をぶち込めばいい。
「んー、あとは工作、かなぁ? 柵を作って羊とか牛とかを飼育すれば、欲しい時に毛とかミルクが手にはいるし」
この世界の牛乳は何と毒消しの効果があるらしいのだ。まぁ、毒自体は魔女の投げたポーション被るか、坑道って特殊な地形にのみ棲息する毒蜘蛛に噛まれた場合なるぐらいしか知らないし、滅多になったことも無かったのだけれど。
「柵を作るのと、地下室作り、かな?」
室内農園をやるには家が狭すぎるし、家を建てたのは山の山頂。下に一階分掘ったところで農場やるには面積が足りなすぎるのだ。
「やっぱり、農場は外かな」
地下室から直通で出られるようにして魔物除けの明かりと柵が有れば、問題はないと思う。
「あー、だったら麦の種も探してこないとなぁ……明るい内にすべきはまず麦、か」
余裕が有れば伐採して苗木と材木を確保しておくのも良い。
「よし、さっき太陽が真上にあったから、急げばいけるな」
再びドアを開け、階段とは別方向に山を駆け下り、向かった先は草原と森の境目。
「切った木の葉っぱから苗木が出るまでに時間があるし、先に木を切り倒して――」
手にした斧はそのままに草を刈る。
「ヒャッハー!」
完全に危ない人だが、旅の恥はかきすてというか辺りに人は居ない。
「孤独の唯一の利点、かな」
たかをくくっていつか他人に見られるオチとか有りそうだけど。
「とか、考えてもおあいにく様。どーせ、村なんて見つかりませんよー。ふーんだ」
うん、自分でやっておいて何だが、若干気持ち悪い。
「何だかんだで麦の種も十個集まったし一端戻ろう。葉っぱが消えるのはもう少しかかりそうだし」
ついでに階段の下の方も明かりを付けたり整えて。
「あ、家の横手の階段の下も埋めておこう。上手くやれば内側の元壁だったところ削って地下室の入り口に転用出来るかも知れないし」
ここは住みよい拠点にしておかないといけない。
「よし、おっけー。さーて、そろそろ苗木が落ちてないか見てくるかぁ」
再び山の麓に降りると、そこにはアイテムが散らばっていて。
「苗木八本とリンゴ二個、まぁまぁかな。あ、日が随分と落ちてきてるなぁ」
窓を作るなら急がないといけない。
「よし、けっこうガラスは出来てる。えーと、まずは作業台で窓ガラスを作って……」
最初に壊す壁は西だ。太陽の位置を確認する必要がある。
「あー、もうすぐ夕焼けかな」
時間との戦いだった。西には床の高さからの四ブロック分ある大窓を。北にはドアがあるので小窓を一つ。南にも大窓を作り始め。
「くっ、もうだいぶ暗くなってるや」
夜の作業になりかねないと中断、とりあえずは縦長の窓一つと言うことになった。
「あとは明日かなぁ。次は――切り出した木材の加工。作るのは地下に降りるための梯子と農園か屋上用に使う柵、それに梯子と柵で大量に消費するであろう――」
木の棒。
「出来た。あとは地下室堀りだけど、壁とか貫通したら大変だし、次の日で良いかな?」
窓の外を見れば、完全に日は落ち、闇が周囲を支配していた。
「うん、そうしよう」
お休みなさいと言い残して、ベッドに横になる。色々作って疲れたのだろう。意識はすぐに闇に溶けた。
短めなので前倒し投稿してみる。
いやー、プレイ反映で一日一話ルールだと特筆することが無い日はどうしても短くなってしまいますよね。
うーむ、どうしたものか。
次回、十九日目