マイクラの世界で   作:闇谷 紅

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・十六日目

 

「今日こそは、新しい地図エリアで拠点を作るッ」

 

 徹夜も生け贄の祭壇で眠るのも嫌になってきていた僕としては割と切実な思いを胸に。船を浮かべ、島を出る。

 

「進路は、北に」

 

 一応、真っ正面に向かえばすぐ地図の外だが予定していた次の探索地は北なのだ。朝令暮改は良くない。

 

「まぁ、これで北が空振りで東に村があるってあとでわかったら泣くけど……あ」

 

 フラグにならないだろうな、これ。

 

「ううん、ない。ネガティブ思考はよろしくない。北だ、北に行くんだ!」

 

 例えゾンビが燃えながら見送ってくれようとも、北上したら上陸する必要があってまたおけはざま号をアイテムに戻して泳ぎ、上陸する事になっても、その先にが湖になっててまた船で進めなさそうだとか、雷雨になって雷の落ちた場所が燃えてるとか、暗くなったからか前方の岸にゾンビが居るとかみんな関係ない。

 

「ふむ、湖の北半分が地図の外なのかな。そして、右手前方に見えますは雷の落ちた高山にございます、と」

 

 暗い上に、船で進めないというのが難点だった。上陸は、下手をすれば夜と同じぐらい危険だろう。激しい雨で視界が悪い上、水上と比べて陸では極端に機動力が落ちる。

 

「正面への上陸はゾンビが居るのも有るが、森林だからあり得ない。それならまだ右手の平原に進んでから山を登って周辺地形の確認をするべきだけど……ん?」

 

 何気に引っかかるモノを感じた僕は三枚目の地図を取り出す。

 

「あ゛、ここ三枚目の地図にも引っかかってるわ」

 

 地図の右下に湖の一部が描き込まれており。

 

「あ、トンネルがある」

 

 地図から顔を上げ、船で入れるトンネルに目を奪われたのが拙かった。

 

「え゛っ」

 

 次の瞬間がくんとボートが大きく揺れ、僕は海に投げ出された。

 

「ぷはっ、うぐっ、げほっげほっ……あ、あ、あ……おけはざまごぉぉぉぉう!」

 

 二隻目轟沈の瞬間だった。

 

「そんな……僕のせいだ」

 

 僕が脇見運転をしていたから。

 

「せめて」

 

 僕は湖に潜った。目をこらせば、底に転がった木材があり。

 

(せめて、あれだけでもっ)

 

 潜水した僕は木材を掴むと浮上する。

 

「ごめん、おけはざま号……」

 

 抱えた木材は荷物にしまう。もう、上陸するしかない。

 

「雨、まだ止まないね……」

 

 近くの岸に身体を持ち上げると、濡れた身体で、とぼとぼと僕は歩き出す。

 

「北に、北東に進もう」

 

 新しい地図を広げるために。

 

「こっちかな?」

 

 まるでぽっかり空いた心の隙間を埋めようとするかのようにとか表現すると人は笑うだろうか。見晴らしの良さも求めて、結局僕は気づけば山岳に足を向けていた。

 

「また収穫は無し、かぁ」

 

 雪の降り積もる山頂へ更に石柱を立てて上へ。

 

「そしていつもの生け贄の祭壇……」

 

 違うことは荷物の中にボートがないと言う一点だけ。

 

「今日は屋根も付けちゃおう」

 

 小さな贅沢だ。

 

「こんな天気じゃ朝になったら雪に埋まってしまっていそうだし……」

 

 暗さで時間もわからない。

 

「ただ一つ、わかるのは――」

 

 四枚目の地図の、南端、真ん中辺りにこの高い寝台があると言うことだけだ。

 

「新たな土地。結局、人工物は見あたらなかったけど」

 

 まだ、南の端だ。そして、拠点を作るという目的もある。

 

「だから、今日は寝なきゃね」

 

 明日からが、本番だ。石造りの屋根の下、作業台を作って床にはめ込み、設置したベッドは屋根の方が先に出来たから濡れても雪が積もってもおらず。

 

「お休み、おけはざま号」

 

 ベッドの下を意識したまま横たわると目を閉じる。その夜、僕はずっとうっかり作業台とベッドに使ってしまったおけはざま号の上で眠りについたのだった。

 




短くて済みませぬ。

しかし、名前を付けたらあっさり沈むなんて。フラグだったのでせうかね?

次回、十七日目。


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