「って言っても、船旅は変わらないんだけどね」
変わったことがあるとすれば進む方角ぐらいだ。氷と島に行く手を阻まれた僕は船で海を南下し。
「氷無茶苦茶鬱陶しい!」
島と島との間をつなぐ氷に通せんぼされ、迂回、また迂回。行く手事態は広く速度も出るので、地図は恐ろしい早さで埋まっては行く、行くのだが。
「この辺りは中央に大きな雪原があって一部を除いて水に囲まれてる感じかぁ……けどっ、本当に人工物ないね」
「行き止まり、到達っと」
ここまででわかったのだが、中央の氷の地形を北西が開いた「C」字に水地は取り巻いているらしい。
「東と北東には陸地有り、北は開けてて……海かな、これも」
船だから、恐ろしい早さで地図の空白が減ってゆき、同時にちょっとめんどくさくなる。地図を付けてなければ迷子は確定、逃せない作業だとはわかっているのだが、ただ気の行くままに船を走らせられたらどんなに良いだろうかと考えてしまう。
「前にゲームで村見つけた時も地図のことはきっぱり忘れてひたすらあちこち船で進んだ時だったからなぁ」
最初の記憶は、見張り台をどこまで高く作れるかと遊んでいた時のことだったけれど。
「やっぱり、未踏覇の陸地が沢山に渡せる場所にまた生け贄の祭壇でも作るべきかな……」
船旅も良いが、全くと言っていい程発見がないのだ。
「村でなくても、雪原地帯にあるって言うイグルーでも良いんだけど」
村人と村人のゾンビが隠し部屋に監禁されているというマッドな実験室完備のそこでも村人と出逢えるという点では変わらない。
「地図は何だかんだで下半分の半分と右上と右下残してだいたい埋まったなぁ」
だいたい七割と言ったところか。そして、やはり収穫はなかった。
「引き返そう。南も埋めなきゃ」
もはやこの地図のエリアに見切りを付けていた僕だったが、やはりああも未到破地帯が残っているとどうにも気になる。
「うん、考え方を変えよう。二日で地図一枚分制覇出来たならそれは今までにない快……挙?」
そこまで口にして気づく。もうすっかり暗くなっていることに。
「やばっ」
ここ数日、船の上でウトウトしたぐらいでベッドで寝ていない。
「じょ、上陸して寝るところ作らな――」
そして、焦ったのが拙かったのだろう。視界に入ったのはもう避けられないところまで近づいた分厚い氷。
「しま」
しまったと言い終える時間もなかった。
「っぶ、冷たーっ」
船は壊れ、僕は水が凍る温度の水中に投げ出された。
「り、陸っ」
広い陸では駄目だ。上陸したとたん魔物が歓迎してくれる。
「あ」
そう言う意味でも視線の先にたまたま小さな島を見つけられたのは運が良かったのだと思う。
「はぁ、はぁ、はぁ、たいまつッ!」
人が二人立つのがやっとの砂地にたいまつを突き刺し、丸石を積んで柱とする。いつものアレだ。
「うわぁ」
何とかなったという安堵よりも別の感情のこもった声が口から出てしまったのは、けっこうな高さまで積み上げて作った石柱の先から眺めた景色の中に明かりらしきモノが皆無だったことだろう。
「そりゃ、このエリアは駄目だって思ってたけどさ」
落胆したのは事実だ。
「これは地図四枚目確定かぁ」
ベッドを置くための足場を作り始めながらポツリと呟き、たいまつを立ててはため息をつく。あと何回こう言った屋根のない高所にベッドを設ければいいのか。足場を組み終え、石柱の天辺をくりぬき、作業台をはめ込んで、それでベッドを作る。
「もう、手慣れて来ちゃったなぁ、この作業も」
寝床を整えたら、出来ることは寝ることと、たいまつの明かりで地図を見ること、ベッドに腰掛けて空を見上げることぐらい。
「夜空、か」
こうして空を見上げると家族で星を見に行ったことを思い出す。
「街は明るすぎて、こんな星空は見られない……けど」
ホームシック、だろうか。不意に浮かぶ思い出が無性に懐かしくて、星空が滲む。
「……寝よう」
たぶん起きていても気が滅入るだけだ。それに睡眠をしっかりとっておかなければ村探しが続けられない。
「地図も荷物を圧迫してきてるし、次の地図のエリアで二つ目の拠点を……」
ベッドに横になって横になってもつい今後のことを考えてしまい。結局、眠りにつけたのはいつのことだったか。ただ、沈み行く意識の中で、願った。村が見つかりますようにと。
短くて済みませぬ。
さようなら、初代ボートよ。
次回、十五日目。
次書きかけで現在の所ストックが切れてます。
ああ、続きをプレイする時間が欲しい。