マイクラの世界で   作:闇谷 紅

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・十一日目

 

「結局徹夜かぁ」

 

 時間の流れるのは思ったよりも早いらしい。

 

「とりあえず、ボートで地図の範囲の外に、かな」

 

 二枚目の地図がある今、東の海に赴く支障はない。

 

「行ってきます」

 

 ドアをくぐる時の挨拶に帰るつもりはないのにと苦笑。斜面を滑り落ちて、水辺で日光嫌だジャンプをしていたゾンビの頭を斧でかち割る。

 

「あー、腐肉かぁ。荷物一杯だから今回はパスで」

 

 沈んで行くそれにもったいなさを感じたのは、纏まった数が有ればエメラルドと交換してくれる職業の村人がこの世界には存在するから。

 

「ゾンビスポナーで湧いたゾンビから腐肉を集めたりもしたなぁ」

 

 難易度変更の出来たゲームだからこその思い出だが。

 

「ま、それはそれ」

 

 ボートを取り出すと、浮かべて乗って入り江の外にGO。

 

「ふーむ、この辺も見収めかもなぁ。南の砂漠とか上陸してないから、あっちの先に村とか有ったら僕ってただの馬鹿になりかねないけどさ」

 

 方針を変更する気にもなれなかったのは、船に勢いがつきすぎていたのと岸の上陸のし辛さが原因だと思う。

 

「乗り捨てにするんじゃなきゃ浅瀬がないとなぁ」

 

 アイテムに戻したボートが沈んでゆき、回収不能になってしまうのだ。慣れない頃はよく、ボートを水底に還したものだ。別にボートは海の底から産まれてきた訳じゃないけど。

 

「有言実行、東の海に向かってよーそろー」

 

 船は飛ぶように、それで居て浮かぶ蓮の葉は避けて進み。

 

「ここからだ、よーし二枚目の地図解禁っ!」

 

 一枚目の地図の範囲を抜けたところで新品の地図を開く。

 

「さてと、地図はあるから、思うままに突っ走ってみるかな」

 

 まずは未到達地帯を減らすこと。

 

「まずは右手に曲がって逆時計回りに……って、凄っ岩山に穴が空いて海が貫通してる」

 

 所謂トンネル地形だが、船が通れそうなタイプはけっこう珍しい気がする。

 

「せっかくあんなのがあるならくぐらない手はないよね」

 

 トンネルの脇の足場に匠とか湧いて降ってくる嬉しくないサプライズとかあったら嫌だが。

 

「ふぅ、無事通過っと。次は……んーあっちの入り江は殆ど凍ってる、のかな。だとすると東に行くしかないけど……うーん、チラホラカボチャがなってるような。けど、上陸はなぁ」

 

 更に東へ行けば、正面と右手には川の出口が見え、左手は陸地が水を遮り、草原が続いている。

 

「んー」

 

 ここまでと船旅に見切りを付け上陸するか、もしくは水辺沿いに引き返すか。難しい問題だった。

 

「ん? 正面の川、思ったより川幅がある……川を辿ってみよっか」

 

 悩みつつ慣性で船が進む内、僕はそれ以外の選択肢を思いつき東へ直進。

 

「ちょっ、危なっ」

 

 何度も岸に船を接触しかけ、後悔しつつも今更後戻りなんて出来ない。

 

「ふー、怖かったぁ。何度船が壊れるかと……」

 

 何とか切り抜け、進んだボートはやがてかなり広い空間へと出る。

 

「湖、かぁ。しかも中央に小さな島がある」

 

 見晴台兼、生け贄の祭壇を作るには丁度良い立地だった。山頂で作るのと比べて資材を食うことを覗けば、だが。

 

「ここから先は下手すれば上陸しか無いかも知れないし、高い場所から周りを見ておくのも良いよね」

 

 雨で時間がわかりにくいと言うのもある。前の失敗を繰り返す事になりそうな予感はあるが、なにぶん見知らぬ土地。周辺情報は欲しかった。

 

「よいしょー、こらしょー」

 

 そして始まる建築のお時間。当然柱にはランタンを組み込む。目印、重要。

 

「わぁ、ものの見事に周辺森林。あ、東には船で行けそっかな。あはは」

 

 上から見ると東側にもこれまで抜けてきたのと同じくらいは太い川があり、自分の見落としの酷さに苦笑する。どうしてこんな川を見落とした、自分。

 

「とか言ってる間に西の空が赤く燃えてるし……日没じゃん」

 

 これはもうこの展望台で夜を明かす他ない。

 

「えーと、羊毛はまだあるはず……ってあれ? レッドストーン? あー、置いてくるつもりが間違って持って来ちゃったのか」

 

 しかも荷物確認を続けるとバケツで水も汲み忘れている。

 

「だ、大丈夫。ブロックで二つ分の島だから……祭壇の方が広いし」

 

 本当に、何をやっているんだろう。

 

(はぁ……見える限り東にちょっと草原があって後は山岳と森。完全に村とは無縁の地形だなぁ)

 

 オレンジ色に染まる世界の中、見通しの暗さも相まってため息をつくと石柱の周りに丸石をくっつけて足場を作って行く。

 

「船旅でお腹もあまり減ってないし、今日はリンゴで良いかな」

 

 個数がないのに荷物を圧迫していることもある。リンゴを食べないと作った作業台も手に持てない。

 

「東の方にちょっと明るい場所が見える気もするけど、あそこは森林だから村の筈はないし、多分溶岩溜まりか何かかな。さて」

 

 リンゴを食べ終えた俺は作業台を作ると例によって床を掘ってはめ込む。後はベッドを作成し、設置すれば寝床は完成だ。雨は止まず降り続いているけど。

 

「責めて、屋根が欲しいよね。うん、贅沢だってわかってるけど」

 

 屋根を作れば、そっちにも湧き潰しが必要になる。

 

「寝よう……おやすみ」

 

 呟きは、多分雨音にかき消された。

 




あっかーん、ストックがいつの間にか0にと言うことで纏めて予約投稿1。

あ、公開は一日一話になっております、ご理解を。

次回、十二日目

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