幻想怪獣記   作:大栗蟲太郎

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「侵略には、まずは下準備を欠かさないように…。要注意人物の調査は忘れないようにしなければな、ふっふっふ…」



囮怪獣の進撃

「はぁ、暇ね~。ま、この神社に爆撃五秒前!何てのも困るけど」

 

博麗神社の巫女である博麗霊夢は、参拝客も来ないこの状況に暇を持て余していた。

 

「こんな日には、魔理沙でも来そうな感じだけれど…」

 

遠く、空を見詰める。

だが、何も見えずに時間だけが過ぎて行った。

 

「よし、来ないもんは仕方ない、買い出しに出掛けましょう!」

 

霊夢は支度をして、人里に買い物に行った。

モニター越しに、何者かが見ているとも知らずに…。

 

「アイツが霊夢か…。見た感じはただの少女だが、あのレクトが負けた上、アンチラ星人のヤツが警戒していた…」

 

侵略者は、円盤の中で一人呟く。

 

「ここで戦いを仕掛けても、ヤプール達に筒抜けなのが癪に障るが病むをえまい。コイツを使ってデータ採集をするとしようか…。ふっふっふっふっふ…」

 

侵略者は霊夢を見詰めながら、おぞましい怪獣が描かれたカードと、ダークリングを握り締めていた…。

 

「ふう、これで必要な物は全て買ったわね…。後は帰るだけか…」

 

そう言って、神社に向かって歩いていく霊夢。

 

歩いて神社に向かっていると、魔法の森付近に突然怪獣が現れた。

囮怪獣、プルーマだ。

 

「暴れろ、プルーマ―!私に霊夢の力をなるべく分析させろ…。倒しても構わんがな」

 

侵略者はプルーマに冷徹な指令を与え、霊夢の方向に向かって歩いて行った。

 

「何なのよ、アイツ…。まさか、私を狙ってきてる!?」

 

怪獣は唸り声を上げながら霊夢のもとに歩いてゆく。

 

「いい度胸じゃない…。売られた喧嘩は買ってやるわよ!」

 

霊夢は空に浮かび、プルーマに接近する。

 

「さあ、バトルショーの開幕だ!」

 

侵略者は高らかに声を上げる。

そして、プルーマは天に向けて吠える。

 

そんなプルーマに、霊夢はジャブの代わりに小さい弾幕を撃つ。

しかし、プルーマはその様な攻撃は効かぬかのような態度をして見せた。

 

「フフフ…。その程度の攻撃では、プルーマの装甲を破ることすら出来ぬぞ…」

 

嬉しそうに呟きながら、霊夢のデータをパソコンに打ち込んで行く侵略者。

 

「チッ…。びくともしないわね…。なら、他にもやってみるか…」

 

霊夢はプルーマの顔面に向けて札を投げる。

すると、霊力が放出されて、ようやく痛がる素振りを見せた。

 

「ふふっ…。有効打の様ね」

 

「何だ!?あの技は!聞いてないぞ!」

 

侵略者は札の攻撃には考慮していないようで、面食らった。

だが、冷静さを取り戻して、新しい指示を出した。

 

「プルーマー、攻撃のパターンを読めてないが、次はヤツの回避パターンを掴むぞ。殺さない程度に攻撃を放て」

 

プルーマは構え、霊夢に対して目から光線を放った。

 

「…チッ、相手も本気を出してきたか」

 

短く呟き、光線を避ける。

プルーマは爪でも連続で攻撃をしたが、一定の間合いを保ちながら避け続けた。

 

「ちょこまかと…。鬱陶しいわね…」

 

忌々しそうに吐き捨てると、ここに来て初めてスペルカード宣言をした。

 

「宝具『陰陽飛鳥井』!」

 

スペルカード宣言をした後、巨大な陰陽玉がプルーマの顔面を襲った。

これにはさすがの大怪獣と言えども我慢ならなかったようで、顔を抑えつつもよろめく。

 

「ふぅ、邪魔な攻撃が止んだわね…」

 

「おのれ…。油断も隙もないヤツだ。攻撃の手を緩めずにいたら防御を疎かにしたとは…」

 

侵略者は驚愕し、我が身を省みつつもデータを打ち込む。

 

「プルーマー、再びヤツとの肉弾戦をしろ。それならお前に分がある筈だ」

 

指令を出す侵略者に、それに従う大怪獣。

戦況は侵略者の言う通り、プルーマが有利だった。

 

こうして戦っている間にも、侵略者は淡々とデータを集めていき、まさに相手の思う壺。

そんなときだった。

 

何者かがプルーマの背後に向けて弾幕を放ったのだ。

想定外の事に驚いたプルーマが振り向くと、そこには霧雨魔理沙が箒に乗って飛んでいた。

 

「やっと来たわね、魔理沙」

 

「悪いな、さっきまでコイツの姿が見えなかったからな」

 

空中で会話する二人。

それを見ていた侵略者は慌てていた。

 

「んなっ!?何故だ!霊夢以外には見えないようにするステルスバリアを装着済みだった筈だ!」

 

侵略者はプルーマを見る。

すると、肉弾戦をしていたときに付いた札がバリアを無効化させていた。

 

「おのれ、おのれ、おのれおのれぇ!だが、丁度良い…。構うなプルーマー!魔理沙のデータも、霊夢と魔理沙のコンビの取るのだぁ!」

 

雄叫びを上げて二人に接近するプルーマ。

霊夢は後退りし、魔理沙はプルーマに向かっていった。

 

霊夢は後方から札を連投する。

魔理沙はその札をかわしながら弾幕を放って行く。

 

目から光線を出しても弾幕は間に合わない。

札にも翻弄され、思うように戦えないプルーマ。

そんなプルーマに痺れを切らす主人も、何も手を出せなかった。

 

「面白いもん見せてやるよ…。行くぜ、霊夢!」

 

「仕方ないわね…」

 

魔理沙はプルーマの周りを回りながら螺旋状に上昇する。

霊夢は大怪獣が魔理沙への攻撃の手を反らさせる為に札を投げる。

 

霊夢の思惑通り、プルーマは魔理沙に攻撃できないが目でだけ追って、札にも警戒しているために目を回していた。

 

魔理沙はプルーマの頭の上を飛び越すと、ニヤリと笑っった。

 

「そろそろ大丈夫かな…。行くぜ、彗星『ブレイジングスター』!」

 

至近距離から、光を纏って大怪獣の顔面目掛けて突撃する。

目を回していたプルーマには、避けるのは無理であった。

 

狙い通り、プルーマの顔面に激突した。

プルーマはあまりの痛みに顔を押さえて暴れだす。

 

「おい、落ち着け、プルーマー!」

 

侵略者の叫びも聞こえず、ただただ暴れるプルーマ。

 

少し落ち着き、顔から腕を離すと、その目はつぶれていた。

 

「よっしゃぁ!」

 

魔理沙は指を鳴らす。

 

「ぐぐぐ…。小娘が…」

 

悔しそうに歯ぎしりをするが、たよりのプルーマは目から光線を出すこともできない、敵を視認することも出来ない。

まさに手も足も出なかった。

 

そんな哀れな大怪獣に、霊夢達は最終通告を告げる。

 

「邪恋『実りやすいマスタースパーク』!」

 

魔理沙は大怪獣の腹に移動し、スペルカード宣言をする。

すると、色鮮やかな魔方陣の輪が八卦炉の、これから放たれるマスタースパークの軌道の先に現れる。

そして、レーザーが放たれて大怪獣の動きが止まる。

程なくして、通常よりも太く、威力も強いマスタースパークが放たれる。

 

どてっぱらに極太レーザーを当てられ、風穴の空いて倒れ込むた大怪獣に、魔理沙に続いてスペルカード宣言をする。

 

「霊符『夢想封印』!」

 

鮮やかな大きな弾幕を七つ顔面に向けて飛ばす。

 

すると、しぶといプルーマも流石に力尽きて倒れる。

そして、姿を消した。

 

「はぁ、はぁ…。何とか倒せたわね…」

 

「ああ…。半分は、いや、それ以上は私のお陰だろ?」

 

魔理沙が霊夢に元気な笑顔を見せる。

それを見ると、霊夢は安心したように微笑み返し、「そうね」と応えた。

 

「チッ…。あの地球人ども、予想以上に息の合った連携をしてきやがった…。だが、まあ良いか。これだけデータを取れれば、霊夢達も怖くない…。あとはアイツらに有利な怪獣を探し、取ったデータを入れるだけ…。ふっふっふ…」

 

侵略者は、死した後に円盤に転送させたプルーマから取った札を見詰めて含み笑いをする。

その声は、何時までも響いていた…。




ついに、ヤプール軍団の参謀、アンチラ星人が動き出した!
卑劣な手を使うアンチラ星人に、魔理沙の怒りが爆発する!
次回幻想怪獣記、「残酷!変身怪人アンチラ」お楽しみに

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