豊 「雛さん」
雛 「うむ、どうかしたかい?」
豊 「にとりとどんな関係だったんですか?」
雛 「にとり……か、懐かしい名だ」
豊 「懐かしい?」
雛 「そうだな、我々は千年毎に転生を繰り返し……………………」
豊 「あ。はい」
雛 「確か、およそ100年程前だったかな?」
豊 「そんな昔……」
雛 「いや、2~3年前だったかも……」
豊 「どっちだよ」
雛 「とにかく、遠い昔……もしくは未来」
豊 「本当にどっちっすか」
雛 「ふむ。風が荒れているな」
豊 「今無風ですけど」
雛 「仕方ない、私達の出番というわけだな……行くぞ弟子一号!」
豊 「弟子一号って呼ぶな! んでいきなり何!? どこ行くの!?」
雛 「霧の湖集合だぞ! 時間通り来るのだぞ!」
豊 「集合時間言わずに時間通り来いとか理不尽の極みじゃね?」
雛の家→霧の湖
雛 「遅いぞ! 5分遅刻だ!!」
豊 「だから……はぁ」
豊 「んで、ここでなにするんだ?」
雛 「シッ、静かに!」
豊 「?」
雛 「犯人はこの中にいる そして奴は自ら名乗り出ることになるんだ」
豊 「どういう意味……あれ、にとり」
にとり「」キョロキョロ
豊 「何してんだアイツ……」
雛 「どうした? 犯人」
雛 「ここに新鮮なきゅうりなんておいてないぜ?」
にとり「な、なに!?」
雛 「お前は自分で証明してしまったんだよ。自分が犯人だということを!!」
にとり「は、ははっ。冗談でしょ? ちょっと散歩してるだけで犯人だなんてw」
雛 「いや、証拠はある」
にとり「な、何ぃ!?」
豊 「(え、こいつら何してんの?)」
雛 「コレを見ろ! お前がこの無人販売所からきゅうりを盗んでいるところの写真だ!!」
豊 「(そんなんあるなら最初から出せよ!)」
にとり「そ、そんな……」ガクッ
雛 「名推理……」キラン
にとり「うっ……うっ……」
→雛の家
雛 「というのが私とにとりの出会いだったな」
豊 「今の回想!?」
豊 「え、俺が混ざってたけど」
雛 「それは君が勝手に割り込んできたんだろう」
豊 「あ……ええ? ごめん」
雛 「ふっ、私は寛大だから許してやろう」
豊 「あ、ハイ」
豊 「(……何のための回想?)」
豊 「あ! そうか、その一件から二人の仲が――」
雛 「悪くなったな」
豊 「えぇぇ」
雛 「あたり前田のクラッカージャマイカ?」
豊 「なんて?」
雛 「当たり前だろう、私は彼女を逮捕した、そのせいで彼女は30年薄暗い牢獄の中だったのだからな」
豊 「30年!? 無人販売所の野菜パクって30年?!」
雛 「そんなに驚くな、弱く見えるぞ」
豊 「う? うん? …………は?」
雛 「まあ、かれこれ150年程私達は会話をしていない」
豊 「へー」
雛 「それに、私は厄神を封じている身。迂闊に人里にも行けぬ」
豊 「う、うん……まだその設定残ってたのか」
雛 「? なんだ、私の言ったことを信じてなかったのか?」
豊 「え、何? 設定じゃないの?」
雛 「ふぅ……仕方ない、外を見てみろ」
豊 「外? ……ん、アレって妖精?」
雛 「能力開放……20%!」ズワァァァ
妖精「あたいったらさいきょ―――」ピチューン
豊 「な?! 親方空からタライが!!」
雛 「どうだ? これが厄神の力だ」
豊 「どういうことだ……?」
雛 「私は厄を集める厄神(を体内に封印している)」
雛 「故に私の身体の周りには厄が渦巻いてるのだ」
雛 「その厄に触れようものならたちまち不幸に見舞われる」
雛 「そして最悪……死に至る」
豊 「へー……って俺は大丈夫なのか?」
雛 「うむ……見たところ、厄はうつっていなようだ。これも天命か……」
豊 「いやいや。そんな理由なく能力がかき消されるわけ無いでしょ」
雛 「まぁ、そうだろうが、私にとってはどうでも良いのだ」
豊 「俺からしたら全く良くない……生死の問題なんだけど」
豊 「うーん。理由がはっきりするまでここには来ないようにするべきか――」
雛 「え゛っ?」
豊 「え?」
雛 「な、何故だ?」アタフタ
豊 「いや、俺は新みたいに不老不死じゃないし……死んだら困るっていうか」
雛 「そ、その時はその時だろう?」アタフタ
豊 「何あからさまにアタフタしてるんすか」
雛 「あ、いや。ゴホン」
雛 「私はさっきも言った通り数百年の間。独りだったのだ」
豊 「うん。やっぱり確かなる理由を見つける事にする。それじゃ!」バタン
雛 「だから豊が来てくれて――あ、ちょっと待って!」
雛 「また。ひとりぼっち……」ウルウル
雛 「いや、いつでもそうだった……」
雛 「いつでも人から避けられ生きてきた――」
雛 「……豊」
豊 「雛さん! 理由分かったよ!!」
雛 「豊!? は、早いぞ!?」
豊 「あ、あれ。何で泣いてんすか?」
雛 「うぐっ、何も無い。そうか、理由が分かったか」
豊 「バッチリ」
雛 「いいだろう、それを聞きながら私は通算114514364364889464度目のティータイムといこう。豊はコーヒー飲めるのか?」
豊 「あ、はい」
雛 「そうかそうか……」ニッコリ
雛 「ふむ。豊の能力『流れに乗る程度の能力』か……」
豊 「はい、雛さんって厄の流れっていうか厄が見えるんでしょ?」
雛 「そうだな。ほらココらへんを直進に――でここからS字で――」
豊 「そういうのは聞いてないです。」
豊 「それで、俺の能力で多分……何ていうのかな、厄の流れに沿っている? って解釈で多分大丈夫です」
雛 「なるほど、厄の流れに沿っているから厄の影響を受けずにいられるのか」
豊 「多分ですけどね」
雛 「しかし、短時間でそこに気づくとは……やはり天才か」
豊 「あ、いや、別に俺が一人で全部考えた訳じゃないですよ」
雛 「何?」
豊 「俺が外に出た時。丁度にとりがいて……」
にとり「あっれー 豊なにしてんのこんな所で」
豊 「あ、にとり。それがな?」
―――
――
―
―
――
―――
にとり「なるほどね。雛の能力が効かない理由……」
豊 「そうそう」
にとり「うーん。普通に豊の能力が関係してるんじゃないかな」
豊 「俺の能力?」
にとり「そう、豊の能力って『流れに乗る程度の能力』だったでしょ?」
豊 「あーそんなことも言われた気がする」
にとり「だからさ、その能力で雛の『厄をため込む程度の能力』……いや、それ自体に影響はしてないんだろうし……」
豊 「……なーにとり」
にとり「ん? どうかした?」
豊 「にとりって雛さんの事嫌いじゃないのか」
にとり「え、別に……なんでいきなりそんなことを?」
豊 「いや、雛さんがにとりとは仲悪いって……無人販売所の事件以来から」
にとり「雛ってそんな昔の事……ああ」
豊 「?」
にとり「いや、別に私はもうどうも思ってないけどね、悪いの私だし」
豊 「そうか」
にとり「そうだよね。雛ってそういう所あるんだよね」
にとり「うん、まあ話に戻ろうか。っていうかもうほとんどわかったようなもんだけどね」
豊 「本当か!」
にとり「うん。だから、豊の能力で……」
豊 「ってことらしい」
雛 「なるほどな……そういう能力は珍しい」
豊 「そうなのか?」
雛 「まあ、依存型といったところだろうか」
豊 「い、いぞんがた?」
雛 「ああ、我々の持っている能力には『強化型』『魔法型』『影響型』『依存型』があるのだ」
豊 「へー」
雛 「そうだな、私の能力は強化型に当たるが、結局は影響型と似たようなものになるな」
豊 「んで俺は依存型……か」
雛 「そうだ。まあ依存型と言うのは能力の強弱がはっきりとしている」
豊 「え、じゃあ俺の能力って……」
雛 「あー……そうだな普通だな」
豊 「普通!? 強弱はっきりとしてるんだろ!?」
雛 「ま、まあそういう意味でも珍しい……」
豊 「はぁ……」
雛 「しかし、時と場によればその能力は強力な物になるだろう」
豊 「本当か?」
雛 「時と場によれば……な」
豊 「うーん……どうだろうなぁ」
雛 「まあ、最近は平和だし。そんな能力の使い道なんてないだろう」
豊 「そうかな」
雛 「……そうだといいな」
豊 「ん…………?」
雛 「(確かに最近は平和な時間が続いている)」
雛 「(そろそろ、何か起きるかもしれん……なんだか胸騒ぎがするのだ)」
雛 「豊」
豊 「なんだ?」
雛 「もし、もしだぞ」
豊 「ああ」
雛 「何か、大切なものを守る時……たとえ私を殺してでも、先へ進むと……誓ってくれるか」
豊 「…………あー、雛さん」
雛 「どうした」
豊 「俺にとっては雛さんも大切ですよ」
雛 「なっ!?」
豊 「どんなことが起こったとしても、誰も犠牲にはしない」
豊 「タイトル詐欺なんのそのですよ!」
雛 「そ、そうか……それじゃあ……よろしく頼む」
豊 「? ああ、これからもよろしくな!」
閑話
兎海「さて、終わったぞーい」
紫 「あら? 兎海、そんな所で何してるの?」
兎海「あ、紫さん! ちょっとした手遊びというか……」
紫 「あれ? アンタ病気?」
兎海「え!? 何!? 何の病気に罹ってるんですか!?」
紫 「中二病」
兎海「え?」
紫 「だって……パソコンの画面見てみなさいな……」
兎海「え、え?!」
紫 「『強化型』『魔法型』『影響型』『依存型』」
兎海「ま、まだセーフ、セーフでしょ!? 設定だけなら!」
紫 「うーん……セーフだろうがなんだろうがイタイわよね」
兎海「……」
紫 「多分1年もしたら頭を抱えてゴロゴロすることに――」
兎海「わかってるからそれ以上言わないで!!」