君のギアスは   作:JALBAS

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ルルーシュと三葉が入れ替わった先で、ドタバタする日常をもっと読みたいというご要望があったので、番外編で日常編を再度書いてみました。

メインストーリの、4話と5話の間くらいに入る話です。



《 番外編 ― 入れ替わりの日常 ― 》

今朝は、ルルの体で目覚めた。私はいつものように、ナナリーと朝食を食べていた。

「お兄様?今日は帰りは遅いのですか?」

ルルのスケジュール表には、今日は、黒の騎士団の仕事は無かった。

「いいや、今日は、特に用事は無いから、早く帰れると思うよ。」

「本当ですか!それじゃあ、夕食の後に、また折り紙を教えて頂けますか?」

「うん!ええよ・・・・い・・いいよ!」

いけない!・・・思わず、訛りが出ちゃった・・・・・

「ありがとうございます!楽しみにしています!」

私のそんな不自然さに、突っ込みを入れる事も無く、ナナリーは屈託の無い笑顔を返す・・・・可愛い、本当に、何て可愛いの?この娘は・・・・この可愛さの半分、いや、1/4、いやいや、1/10でも四葉にあれば・・・・・

 

ナナリーの可愛さに癒され、上機嫌で部屋に帰り、学校に行く準備をする。あまりに私が浮かれているので、不思議そうにC.C.さんが聞いてくる。

「何だ?何か、いい事でもあったのか?」

「別にぃ・・・ナナリーと、折り紙折る約束しただけやよ!」

そう言って、鞄を持って部屋を出る。

「・・・それだけで、あの上機嫌?・・・あいつ、糸守では、そんなに妹に虐げられているのか?」

 

「ルル!最近、あんまり学校来ないけど、また賭け事やってんじゃないでしょうね?」

学校に来るなり、シャーリーが問い詰めてくる・・・どうしよう?“黒の騎士団やってます”なんて、言える訳無いし・・・・

「さ・・最近、な・・・ナナリーの調子が悪くて・・・・」

とりあえず、無難な回答を・・・・・

「ほんと?賭けチェスじゃないの?」

「やってへんよ!そんなこと・・・」

「へんよ?・・・何か、訛って無い?」

やば・・・・何とか誤魔化さないと・・・・

「無い!無い!・・・ほんと、ほんと!」

「絶対よね?」

「うん!絶対!・・・高校生が賭け事なんて、もってのほかやし・・・・・」

「やし?」

「あ~・・・ん、んんっ!ちょ・・ちょっと、噛んだ・・・・」

「・・・・それならいいけど・・・もう絶対、賭け事なんてやっちゃダメよ!」

「うん!わ・・分かった!」

ここは、下手に逆らわない方が、いいよね?・・・・・・でも、ルルって、賭けチェスなんかやってたの?

 

「こおらあっ!ルルーシュ!また逃げるつもり?」

授業が終わって、帰ろうとしたところを、ミレイ会長に見つかった。困ったな・・・生徒会の仕事は、出ないように言われてるんだけど・・・・・

「ごめんなさい!会長!」

言い訳が面倒なので、私は本当に逃げる事にした。出入口に向かって、一目散に走り出した。

「待てえっ!追いかけっこで、私に勝てると思ってんの?」

すみませんけど、私、走るのは得意なんです・・・・の、筈なのに・・・・な・・・何?ちょっと走っただけで・・・も・・もう疲れてきた・・・・・

「待てえっ!」

る・・ルルって・・・頭はいいけど・・・体力無いの?・・・・だ・・だめ・・・このままじゃ追い付かれる・・・・

「あれ?何やってんだよ、ルルーシュ?」

突然、目の前にリヴァル君が飛び出して来る。あ・・危ない!

私は、かろうじて彼を避けたが・・・・・

「ちょ・・・ちょっと、退いて!リヴァル!」

「え?か・・・会長?」

ミレイ会長とリヴァル君は、正面衝突!会長がリヴァル君を押し倒す形になって、廊下に倒れ込む。私は、その隙に、何とか逃げ切る事に成功した・・・・・

「・・・はあ・・はあ・・・ルルったら・・もう少し、体鍛えといてよ・・・・」

「あれ?・・ルルーシュ、帰るのかい?」

校舎を出たところで、スザクと鉢合わせになる。私は、息を整えて答える。

「あ・・ああ、今日は、ちょっとナナリーと約束があって・・・・」

そう言って、すれ違おうとした時、急にこの男に問い質したくなった・・・・ルルからは話すのを止められているけど、どうしても、聞いておきたい事がある・・・・・

「スザク・・・・」

「ん?何だい?ルルーシュ?」

「元日本国首相の息子のあなたが、何故、ブリタニア軍に入ったの?」

「何だ?前に言わなかったか?・・・昔の日本を、取り戻すためさ!」

「それなら、黒の騎士団に入るべきじゃないの?」

「それは、正しいやり方じゃ無い!暴力で掴み取った平和は、いずれ暴力で奪われる・・・・それでは、同じ事の繰り返しだ!僕は、ブリタニアを、中から変えていきたいんだ!」

正しいやり方じゃ無い?誰がそんな判断下すのよ?・・・それは、あんた個人の価値観じゃ無いの?先に暴力を振るったのは、ブリタニアでしょ!一方的に蹂躙される者の気持ちが、あんたに分かるっての?

ブリタニアを中から変える?笑わせないで!そんなの、あんたひとりで、できる訳が無いでしょ!どこまでお気楽な理想主義者なのよ!あんたのやり方じゃ、例え実現できたとしても、それは何年、何十年も掛かる・・・・その間に、何人の日本人が犠牲になると思ってるの?

「る・・・ルルーシュ?」

何も言わずに私は睨み続けていたので、スザクは戸惑っている。

「あ・・いや・・・それじゃ・・・・・」

そう言って、私は背を向けて、その場を後にした。

馬鹿にしてるわ!何が“正しいやり方”よ!自分を何様だと思ってるの?あんたは、史上最悪の偽善者よ!あんたなんかに、黒の騎士団を、ゼロを否定させない!見てらっしゃい!必ずブリタニアをぶっ潰して、あんたの居場所を無くしてやるから!

 

憤慨した表情のまま、部屋に帰る。そのあまりの雰囲気に、C.C.さんがまた尋ねてくる。

「何だ?何か、嫌な事でもあったのか?」

「スザクよ!あの売国奴よ!・・・・絶対に、いつか後悔させてやる!」

そう言って、私は即行で着替えて、部屋を出て行く。

「・・・・浮かれたり、激怒したり・・・忙しい奴だ・・・今は同じ姿でも、ルルーシュと真逆だな、あいつは・・・・・」

 

 

 

三葉の体で目覚めた俺は、ネットで現在(8年前)の日本地図を見ながら考えていた・・・・ここの周辺地域の大半は、ブリタニアの占領軍が進行している・・・・やはり、もっと安全な地域に移動させるべきか?・・・・

「お姉ちゃん、今朝は早いんやね?」

「ん・・ああ・・・」

四葉が何か尋ねてくるが、考え中のため気の無い返事を返す。

「ごはんやけど・・・・」

「ああ・・・先に食べてて・・・直ぐ、行くから・・・・」

 

食事の後は、いつものように学校に行く。

1時限目は数学だが、当然俺は授業はそっちのけで、今後の行動計画を練っていた。

・・・・確かに三葉の戦闘能力は高いが、無頼では白兜には分が悪すぎる・・・・かといって、紅蓮は、カレンが使うのが最も有効だ!もう1機、紅蓮並みの機体があれば別だが・・・・やはり、コーネリアとやり合うのは、入れ替わりが無くなってからでないと無理か・・・・

「宮水さん!」

突然、教師が指名してくる。

「・・・はい!」

「この問題!解いてみなさい!」

またか・・・俺が、全然授業を聞いていないのを分かっていて、そのペナルティのつもりなんだろうが・・・・

俺は、黒板の所まで行き、ものの数秒で完璧な回答を書く。

「・・・せ・・・正解です・・・も・・戻りなさい・・・・」

「はい!」

教室内には、感嘆の声が響く。俺は、表情も変えずに席に戻る。

この程度の問題で、ペナルティとは笑わせる・・・・俺に、真面目に授業を聞かせたければ、一流大学の教授クラスを連れて来い!

 

「す・・すごいやない、三葉!あんな難しい問題を、あんな短時間で!」

名取がやたら感心しているが、それ程のことでも無いだろう!今の時代でも、東京の学校なら、あの程度の問題は大概の者が解けるだろう!

「おい、お前ら、いつまで喋ってるんや!2時限目は体育やぞ!」

「な・・・何?」

「今日の体育は、マラソンやな!三葉の得意分野や!」

何だと?三葉のやつ、マラソンが得意なのか?よ・・よりによって、俺が、最も苦手とする長距離走が得意とは・・・・・どうする?ここは、体調不良とでも偽って、見学するか?

「何してんの?三葉?更衣室行くよ!」

こ・・更衣室って・・・女子更衣室か?・・・い・・いくらなんでも、それはマズイだろう・・・だいたい、後で三葉やC.C.に何を言われるか・・・・やはり、ここは、見学にするしかあるまい・・・・

俺は、職員室まで、見学の許可を貰いに言ったが・・・・・

「何だ?全然顔色もいいし、それでどこが悪いってんだ?お前まさか、マラソンが嫌でサボろうってんじゃねえだろな?」

何だ、この今時何処にも居ないような、根性論丸出しの体育教師は!これだから、日本のド田舎は始末に負えん!

「ちょっと、体温計持って来るから熱測ってみろ!」

ええい、面倒だ!こうなれば・・・・・

「私は調子が悪い!今日の体育は見学させろ!」

俺の左目の紋章が輝き、鶴のように羽ばたいて、体育教師の目の中に飛び込む。

「・・・分かった・・・今日は見学していろ!」

くっ・・・また、つまらん事に、ギアスを使ってしまった・・・・・

 

「お姉ちゃん!今日、夕飯の当番やよ!」

家に帰ると、四葉がそう言ってくる。

「え?そうなの?」

「ねえ、たまには、変わった物が食べたいんやけど!」

「変わった物?・・・・・」

そう言われても・・・・ん、まてよ・・・・それならば・・・

俺は、メモに走り書きをして、四葉に渡す。

「この材料を、買って来てくれる?」

「え~っ!何であたしが?」

「変わった物、食べたいんでしょ?文句言わないの!」

「で・・でも、この辺じゃ、売ってない物ばかりやよ・・・・」

そ・・・そうか?確かに、ブリタニアに占領される前の日本では、まだ出回って無いか・・・・

俺は、一旦メモを取り上げて、一部書き換える。まあ、似通った食材を使えば、80%くらいは再現できるだろう・・・・そのメモを再び四葉に渡し、買い出しを依頼する。

 

「お・・・おいし~っ!」

四葉は、満足そうな笑みを浮かべ、ものすごい勢いで食べまくっている。これだけ喜んで貰えると、作った甲斐もある・・・・ナナリーには遠く及ばないが、こういう天真爛漫な妹も良いものだな・・・・・

「ねえ、お姉ちゃん!これ、何ていう料理?」

「あ・・ああ、これは、ブリタニアのアッシュフォード家に伝わる伝統料理で、“アッシュフォード・ディネ”というんだ!」

昔、ミレイ会長に何度も作らされて、レシピ覚えちゃったんだよな・・・・・

「え?何でお姉ちゃん、ブリタニア料理なんか知っとんの?」

「え?・・・あ・・ああ・・が・・学校に、ブリタニアから留学生が来てて・・・そ・・・その人に聞いたの・・・・・」

しくじった・・・料理の名前なんて、適当に誤魔化しておけば良かった・・・・・

 




そんな訳で、入れ替わりの日常でした。
三葉vsスザクのくだりは、本編で書きたかったんですが、スザクが絡むと話がややこしくなるので、省いていました。ただ、これは三葉の気持ちというより、私の感想です。
初期の頃のスザクの思想は、ひとりよがりで、シャルルのように“自分にやさしい世界”を目指しいるとしか思えません。

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