君のギアスは   作:JALBAS

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糸守に、全く興味の無かったルルーシュ。しかし、三葉の隠れた才能を知り、ルルーシュの心に変化が・・・・また、糸守に古来より伝わる伝統に、徐々に興味を示していきます。
後半は、三葉側・・・・ルルーシュを巡る女の闘いです。



《 第六話 》

朝、三葉の体で目が覚め、いつものように制服に着替えて下に降りると・・・・・

「何で、制服着とんの?」

と、四葉に突っ込まれる。何だ?今日は祝日だったか?・・・・・

 

今日は、山の上にある御神体に、口噛み酒とやらを奉納する日らしい。この町だけの行事なので祝日では無いが、学校や仕事は休みらしい・・・・三葉め、そういう事はちゃんと申し送りしておけ!

俺と四葉、祖母の3人で出かける。宮水神社の、裏手の山を登って行く。しかし、何故御神体が神社にでは無く、山の上にあるのだ?逆に、何故御神体の所に神社を建てなかったのだ?・・・・・日本人のやる事は、良く分からん!

結構な山道を、ひたすら歩く。俺や、四葉は何とかなるだろうが、祖母にはこの山道は辛そうだ。非常に、歩みも遅い!これでは、いつ御神体に辿り着けるか分からない・・・・しかし、俺に力仕事は向いていない・・・だが、まさか妹の四葉に祖母を背負わせる訳にもいくまい・・・・

「お婆ちゃん!」

仕方無く、俺は祖母に背中を差し出す。祖母は、にっこり笑って“ありがとうよ”と言って俺の背中におぶさる。

立ち上がる時に少しよろけたが、祖母はあまりにも軽かった。おぶって歩くのも、大して苦にはならない・・・・・ただ、本来の自分の体より、三葉の体の方が疲れが少ないというのが、少し情けない・・・・・・

山頂までの道中、俺の背で、祖母が日本古来の“ムスビ”の事を語った。糸を繋げることも、人を繋げることも、時間が流れることも、全部同じ言葉“ムスビ”を使う。それは神様の呼び名であり、神様の力でもあると。日本の古典になど興味は無いが、何故か、この祖母の言葉は耳に残った・・・・・

ようやく頂上に着くと、そこには、大きなカルデラ状の窪地があった。その中央には、巨大な岩と一体化した巨木があり、それが御神体らしい。俺達は、その御神体を囲むように流れる、小川の前まで行く。

「ここから先は、隠り世。」

祖母が、また語る。この先はあの世、つまりは死後の世界であり、戻るには、俺達の一番大切なものを、引き換えにしなければならないらしい・・・・その一番大切なものが、口噛み酒なのだと・・・・・この酒は、三葉と四葉が米を噛み、唾液と共に吐き出したものらしい。これが、三葉達の半分なのだそうだ・・・・どうにも、日本人の考える事は理解し難い・・・・・

御神体の前まで行くと、小さな入り口があり、下に降りる階段が付いていた。中まで降りて行くと、小さな祠があり、口噛み酒はそこに奉納された。俺はふと、天井に目をやる。何かが描いてある。蝋燭のわずかな光ではっきりは見えないが、紐のような、蛇のような・・・・いや、もしかすると、これは彗星か?何故?こんなところに彗星の絵が?・・・・・

 

御神体を出て、山を降りると、もう陽が雲の後ろに隠れ掛かっていた。

「もう、カタワレ時やなあ・・・・」

また、祖母の言葉が耳に残る。そういえば、古典の授業で教師が言っていたな・・・・殆ど、授業など聞いていなかったが、何故か、この言葉だけは気に掛かったので覚えている・・・・夕方、昼でも夜でも無い時間・・・人ならざるもの、魔物や、死者に出くわす時間・・・・・

考え込んでいる俺に、祖母が横から声を掛ける・・・・

「あんた今、夢を見とるな・・・・」

 

 

 

このところ、“ゼロ”の仕事が多かったので、久しぶりに学校に来た。でも、こんなに出席悪くって、ちゃんと進級できるんだろうか?

「ルル!」

廊下で、声を掛けられる。こう呼ぶのは、私以外ではシャーリーだけだ。

「ルル、今日の放課後・・・ちょっと、時間ある?」

「ん?・・・ああ、だ・・大丈夫だけど・・・」

「ほんと?じゃあ・・・4時半に、屋上に・・・来て・・・」

「う・・・うん・・・・」

そう言って、シャーリーは、頬を赤らめて走って行った。

どうも、シャーリーはルルに気があるようだ・・・・日頃の、態度を見ていれば分かる。

でも、ルルには、C.C.さんがいる・・・・ルルは、シャーリーのことをどう思ってるのかな?さすがに、C.C.さんの事は言えないだろうけど・・・・黒の騎士団の一員でもあるし、同棲してるなんて、学校に知れたら大変だ・・・・・

ところで、C.C.さんって、どういう存在なんだろう?働いてはいないよね・・・・いつも、ルルの部屋でピザ食べてて・・・あれじゃ、まるで愛人だよね?・・・・それでいて、いつも偉そうに、私に命令してばっかり・・・・ルルったら!あんな女のどこがいいのよっ!・・・・・って、何で私、怒ってんだろう?

「ルルーシュ・・・どうしたの?」

廊下で立ち止まっていたから、また声を掛けられた。振り向くと・・・・

「あ・・・やあ・・・カレン・・・」

「早くしないと、授業に遅れるわよ!」

そう言い残して、カレンはさっさと行ってしまう。

本当に、学校にいる時は無愛想よね・・・・黒の騎士団の時は、やたら“ゼロ!ゼロ!”ってくっ付いてくる癖に・・・・だけど・・・・あれもやっぱり・・・・ゼロに気があるのよねえ?

 

放課後、屋上に行くと、既にシャーリーが待っていた。

「シヤーリー、遅れてごめんや・・・・ごめん!」

つい、訛りが出そうになった・・・・・シャーリーは、頬を赤らめ、両手を後ろに回して俯いている。

「る・・・ルル・・・・」

「・・・な・・・何?」

私は女だから、何となく分かる・・・・何かを、渡そうというのだろう。プレゼント?それとも、ラブレター?

「こ・・・これっ!」

シャーリーは、後ろ手に持っていた物を、私の目の前に差し出す・・・・・コンサートのチケットのようだ。

「お・・お父さんが、送ってくれたの・・・よ・・良かったら、一緒に・・・どう?」

「あ・・・ああ・・・・」

どうしよう?勝手に、OKしていいのかな?で・・・でも、逆に断ったら、シャーリーが・・・・・・

シャーリーは、縋るような目で私を見上げている・・・・この気持ちを・・・裏切れない!

「い・・・いいよ!」

「そう!良かった!」

シャーリーは、凄く喜んでいる・・・・でも、私の気持ちは、少し複雑だった・・・・・

 

シャーリーからチケットを受け取り、部屋に帰って来た。そのチケットを見て、C.C.さんが冷やかしてくる。

「おや?デートか?隅におけないな・・・・」

て・・・・何で、保護者みたいな物言いなのよ!自分の彼氏が、デートに誘われてんのに・・・・

丁度いいわ、この際だから聞いてやろう!

「・・・ねえ?C.C.さん?」

「何だ?」

「C.C.さんとルルって・・・・どういう関係やの?」

すると、C.C.さんは私を見て、いやらしい笑みを浮かべる。

「何だ?・・・・気になるのか?」

「う・・・うん・・・ちょっと・・・ね・・・」

「将来を約束した関係だ!」

「え?えええええっ?」

な・・・なに?そ・・・それじゃ・・・もう婚約してるっていうの?もしかして、実は籍も入ってたりして・・・・・・

私が動揺していると、C.C.さんは、声を出して笑い始めた。

「ははははは・・・・・本当に若いな!お前は!」

な・・・なによ!その、上から目線は!私と、大して年変わらないじゃない!まるで、何十年も生きてるみたいに言わないで!

 

私は、階段を駆け上がって、屋上を目指している。何故・・・・屋上には、彼が居るから・・・・屋上に出ると、彼を巡って、2人の女が言い争いをしている。

「放して!ルルは私のものよ!」

「いいえ!ゼロは私のものです!」

シャーリーとカレンが、ルルのそれぞれの腕にしがみ付き、彼を奪い合っている。

「待って!」

そこに、私は割って入る。

「る・・ルルは、私のものやよ!」

「8年前の女は、引っ込んでなさい!」

カレンが、私に怒鳴りつける。

「私の方が、ずっと前からルルを知ってるんだからっ!」

と、シャーリー。

「時間を言うのなら、私の方が何年も前からそいつを知っているぞ。」

私の後ろから声が・・・・出た!あの女、C.C.のお出ましだ。

「ルルーシュ、行くぞ。」

「ああ・・・・」

C.C.の一言で、ルルはシャーリーとカレンの手を振りほどいて、C.C.に向かって歩き出す。私の横も、簡単に通り過ぎて行く・・・・・

「待って!ルル!行かんでっ!」

「ごめん、三葉・・・俺とC.C.は、将来を誓い合った仲なんだ・・・・」

ルルはそう言って、C.C.の元へ・・・二人で手を取り合い、彼方へと消えて行く・・・・

「ルル・・・いや!行かないでっ!ルル―っ!」

 

そこで、目が覚める。自分の体・・・・自分の部屋だ・・・・

「な・・・何でこんな夢、見なきゃいかんのよっ!」

私は、枕を壁に投げつけた。ふと気付くと、右手の襖が少し開いていて、そこに四葉の顔が・・・・み・・・・見られた・・・・・

「・・・・・・・」

「あ・・・あのね、四葉・・・・」

四葉は、すごい勢いで襖を閉め、階段を駆け降りて行く。

「お婆ちゃん!とうとうお姉ちゃんが壊れた!」

「こ・・壊れてへん!」

 




後半は、ちょっとしたお遊びです。
でも、旗から見るとルルーシュとC.C.の関係って、パトロンと愛人って感じですよね?
カレンも、さぞヤキモキしたことでしょう。C.C.の言う“将来の約束”というのは“契約”の事なんですが、ギアスの事を知らなければ、結婚の約束としか思えません。ナナリーはずっとそう思って、兄とC.C.を見ていたんでしょうか?

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